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米国企業が3Dプリンターを使って電気自動車を完全自動製造|オートメーションと〈ものつくり〉の未来とは?
3Dプリント技術が目指している到達点 3Dプリンターの本質は立体物を自動で出力することにある。 つまり、その理想形は、造形から組み立てに至る製造の全行程を、オートマティックに行うことにある。それも、シンプルな構造のオブジェクトのみにとどまらない。大量の部品によって複雑に構築されたような精密機械も、その射程には含まれている。たとえば自動車だ。すでに自動車業界は部品やカスタムパーツに関して、多く3Dプリント技術を導入している。世界各国の名だたる自動車メーカーにとって3Dプリント技術はすでになくてはならない技術になっている。ただ、現状において自動車一台を丸々3Dプリントしたという例はない。パーツそれぞれは3Dプリントすることが可能だとしても、それらを組み立てていく過程において、なんらかの手作業の介入が必要とされてきた。今、米国アーカンソー州に本拠を置くAMBOTSが、そうした状況に一石を投じようとしている。AMBOTSが試みているのは、自動車の完全自動製造だ。今回、AMBOTSが行なった小規模なデモンストレーションは、その可能性を十分に示すものだった。 小型電気自動車を製造するAMBOTSのオートメーション AMBOTSのデモンストレーションでは、同社の3Dプリント技術がロボットプログラムと接続することによって、自動車製造の全行程を自動で行うことが試みられた。まず3Dプリンターが電気自動車のフレームを製造、さらに別の3Dプリンターがカバープレートを印刷する。その工程が終わると、輸送ロボットが3Dプリンターを移動させ、他のコンポーネントを3Dプリントしていく。こうしてパーツの全ての3Dプリントが完了すると、ピックアンドプレースボットに自動的に搬入され、それらの組み立てがロボットによって行われる。残念ながら、その際に取り付けられる、モーター、バッテリー、マイクロコントローラーなどは既製のものだが、組み立ては基本的にオートマティックに行われる。組み立て後の接着硬化も同様で、レーザーボットが自動的に行なってくれる。ちなみに、こうした様々なマシンの移動を制御するのは、作業領域に設置されたグリッドフロアだ。このグリッドフロアが、製造工程の全体を管理する監督の役割を果たしていく。こうして完成したのが以下の小型電気自動車だ。 製造工程のオートメーション化については、20世紀を通してその実現がさまざまに目指されてきた。しかし、それは常に障壁に阻まれてもきた。進歩した3Dプリント技術は、その最後の障壁を突破するポテンシャルを秘めている。今回、AMBOTSはその夢がかなりの高い水準で実現しつつあることを示した。ここからの課題は、それが実際の製造タスクに適用できるかどうかを検討していくことだろう。少なくとも、今回の作業領域を、実際の工場のサイズにスケールアップすることは技術的、物理的にも可能だと言われている。こうした自動製造が一般化した暁には、自動車の製造コストは大幅に抑えられることになるだろう。 もちろん、労働の現場から人間の役割をこれ以上減らして良いのだろうか、という問いもある。しかし、それはまた別の議題だ。あらゆるものが自動化されたとしても手仕事の魅力が消えるわけではない。むしろ、その時ようやく「ものつくり」は次の段階に入るのだと言えるかもしれない。
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世界が注目する3Dプリント製バイオリン「Karen」|リリースしたのは日本の楽器メーカー
長野の楽器メーカーが開発した3Dプリント製バイオリン 楽器の3Dプリントに関してはこれまでも種々の楽器の出力が試されてきた。しかし、そのほとんどは、「試しに出力してみた」というレベルのものでもあり、大規模な生産工程で利用できる高価な3Dプリント楽器となると、これまでほとんど例がなかったのも事実だ。そんな状況を、ある楽器メーカーが変えようとしている。KATAHASHI INSTRUMENTS、この日本の長野県の楽器メーカーが開発したある3Dプリント楽器が、今世界中の3Dプリントメディアから注目を集めている。今回、KATAHASHI INSTRUMENTSがリリースしたのは、スペインのデザインスタジオ Anima Design が提供するコンピュテーショナル・デザイン・システムによってデザインされた未来的な3Dプリントフレームを搭載したエレクトリック・バイオリン「Karen(可憐) Ultralight」だ。 楽器の基礎となる部分の全てを設計したのはKATAHASHI INSTRUMENTS。そこに加えてAnima Designが計算設計システムを使用して人間工学に基づき、可能な限りでの軽量化を果たした。肝心のボディはリサイクル可能なナイロン素材を使用して3Dプリント、さらにネック部分はバーチフィンガーボードを備えたメープルウッドで作られている。もちろん、バイオリンをアンプに接続するための1/4インチのジャック、9Vバッテリーで駆動するプリアンプ、アクティブ/パッシブスイッチ、ヘッドフォン出力、さらにトーンコントロールノブも搭載されている。気になる価格は1850ユーロ。ブラックピアノ、パールホワイト、ダークプラチナ、レッドカッパーの4色の展開だという。もちろん、新しいのは製造法ばかりではなく、音質にも徹底したこだわりが反映されているという。KATAHASHI INSTRUMENTSのサイトによれば、この新しいバイオリンを「Karen(可憐)」と名付けたのは、女性らしい華奢な体型に加えて、立ち居振る舞いがエレガントである、という意味を込めてとのことらしい。実際、そのフォルムは実に独創的だ。 かつてなら楽器職人が複雑なデザインを求めた場合、それは数ヶ月、あるいは数年の作業を必要とするものだった。あるいは、使用している材料の特性に応じて、試みることが不可能な形態も多くあった。今回のKarenのフォルムも、3Dプリント技術なしでは実現しえない未来的なフォルムとなっている。果たしてKATAHASHI INSTRUMENTSの挑戦は、バイオリンユーザーたちにどのように受け止められるのだろうか。現在、ホームページより実際にKarenを購入することができるようになっている。日本の技術をベースとした楽器の未来を切り拓くエレクトリックバイオリン。気になる方は是非チェックしてみてほしい。 KATAHASHI INSTRUMENTShttps://katahashi.com/
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人体のスペアパーツを3Dプリントする時代に|小耳症患者を救う「AuriNovo」の挑戦
個人に合わせて新しいカスタムボディパーツを3Dプリント 人体の修復に関しての大きな問題。それはスペアパーツを入手するのが難しいということだ。いかに医学が発達した現代においても、膝関節や新しい肺をすぐに購入するということは不可能だからだ。その際、医師と外科医が提示するオプションとしては、ドナーからの移植というものがある。しかし、これらは常に不足しており、さらに患者の体に拒絶されてしまうリスクもある。では個人に合わせて新しいカスタムボディパーツを3Dプリントすることができればどうだろう。おそらく、多くの問題を解決することができるようになる。この可能性に関して、3DBio Therapeuticsによって開発された新しい人工内耳が、新しい一歩を踏み出そうとしている。 バイオ3Dプリントされた自分の耳 その新しい3Dプリント・インプラントは「AuriNovo」と名付けられた。これは「新しい耳」という意味を持つ言葉で、主に小耳症と呼ばれる、耳の先天異常を補うように設計されている。小耳症は耳の先天異常のうち変形が一番強いものと言われ、耳の形が完全にできあがらなかったため、耳が通常よりも小さいものを呼ぶ。世界的にみて地域差のデータはなく、頻度は、およそ1ー2万人に1人の割合だと推定されている。現在の治療法は、患者の肋骨から軟骨のサンプルを採取し、それを手作業によって典型的な耳の形に似せ、移植するという方法が一般的だ。これは、患者自身の細胞から作られているため、拒絶の可能性が低い状態で移植することができる。あるいは、インプラントを合成材料から作り、皮膚の下に配置するという方法もある。AuriNovoが採用しているのも基本的にはこの方法だが、AuriNovoは従来の方法とは異なり、肋骨から大量の軟骨を採取する必要はないという。代わりに、先駆的な手術によって、患者の既存の耳の構造から生検としてわずか0.5グラムの軟骨を採取する。そこから、軟骨細胞と呼ばれる特殊な細胞を分離し、その後、独自の栄養溶液で培養され、数十億個に増殖させていく。患者のサンプルから成長した軟骨細胞は、コラーゲンベースの「バイオインク」と組み合わされる。こうして得られた混合物が、生物学的構造を作成するために特別に構築された3Dプリンターによって新たな耳として造形されるというわけだ。インクとプリンターはどちらも、合併症や患者の体からの拒絶の可能性を減らすために、すべてを無菌状態に保つように特別に設計されているという。さらに、耳にはサポート用の特別な生分解性オーバーシェルが与えられ、冷蔵で出荷され、到着後すぐに、印刷された構造が患者の皮膚の下に埋め込まれる。オーバーシェルは、時間の経過とともに体に吸収され、印刷された軟骨構造のみが残ることになるのだ。 「AuriNovo」が見据えるカスタムボディパーツの未来 これが「AuriNovo」の3Dプリントに関しての一連の流れだが、これはまだ初期の段階であり、現在、11人の患者を対象とした臨床試験が進行中だという。ただし、見通しは良好で、結果として得られる構造は、生体適合性のある材料と、患者自身から成長した細胞でできているため、拒絶反応の恐れはない。さらに、インプラントは生体材料でできているため、柔軟性を維持し、通常の人間の耳の質感を長期間維持することができるとも言われている。外耳の構造は比較的単純であり、複雑な生化学、静脈、または神経を伴わずに、主に単一の材料で作られているという利点がある。したがって、耳の再建は、新しい体のパーツを最初から作成するという試みにおいて、出発点的な位置付けになると言われている。このプロジェクトの成果は、より機械的な複雑さを伴う部位の交換に取り組む科学者にとっても大きな示唆に富むものになるはずだ。長期的な目標としては、腎臓や肝臓などの臓器全体を3Dプリントすることが含まれている。もちろん課題もまだ多く残されてはいるが、AudiNovoは、カスタムボディパーツをオンデマンドで3Dプリントできる新しい未来への確かな第一歩であることは間違いない。
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次の注目すべき素材は「小麦ふすま」?|デスクトップ3Dプリンターで技術革新を
デスクトップ3Dプリンターで技術革新 昨今、3Dプリント素材の多様化が進んでいる。従来の金属粉末やプラスチックなどの素材に加えて、現在は環境時代を意識した、よりオーガニックな素材を3Dプリントする試みが各方面で行われているのだ。たとえばポーランドの新興企業GREENFILL3Dは、小麦ふすま3Dプリント原料の用途を拡大している。GF3D Branfillと呼ばれる3Dプリント材料を製造するために、同社が組み合わせたのはPLAとパスタ製造時に排出される廃棄物だ。これまで、同社はフィラメントを使用してポップアップのPOSスタンドを3Dプリントしてきたが、現在はDeckard Designと協力して、ふすまで満たされた部分にフルカラーのUVラベルを追加した鉢植えの植物ラベルを3Dプリントしている。 Deckard Designとはポーランドで家具装飾に関するガジェットを提供する企業であり、これまで主に北米、ヨーロッパに向けて自社の3Dプリント製品を流通させてきた。今回の3Dプリント植物ラベルは、庭に植える可能性のある植物やハーブの説明用に使用できるという。素材となった小麦ふすまは部品の表面仕上げを改善するばかりでなく、部品を丈夫にもするらしい。カラフルな着色技術もまた庭を彩るのに最適だ。またさらに注目すべきは、両社が非常に安価なデスクトップ3Dプリンターを使用して今回の技術革新に挑んでいる点だ。これはつまり、数万円の3Dプリンターを購入する余裕がある人なら誰でもこのテクノロジーに参画できるということ。これこそまさにイノベーションの民主化というものだろう。 彼らがこれらの生産をうまくスケールアップすることができれば、低コストの基盤を持つビジネスモデルとして、今後、大きな市場へと育っていく可能性もある。チャンスは至るところに転がっているのかもしれない。
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3Dプリント月面基地「LINA」のデザインをNASAが発表|SF映画のような未来的デザインが話題に
世界初の3Dプリント月面基地「LINA」とは NASA のフィールドセンターの一つである宇宙建築テクノロジー企業 AI SpaceFactory が、ケネディ宇宙センターのエンジニアらと共同で開発した、世界初の3Dプリント月面基地「LINA(Lunar Infrastructure Asset)」のデザインを発表、その未来的なフォルムが話題となっている。 そもそも3Dプリント月面基地「LINA」とは、NASAの共同研究発表プロジェクトとして、月面に安全な避難所型構造物を建設することを可能にする技術の開発に焦点を当てた「Relevant Environment Additive Construction Technology」プロジェクトのひとつとして始まったものだ。今後 AI SpaceFactoryとケネディ宇宙センターは、「LINA」を具現化するための技術と材料開発を発展させていく予定だという。 ちなみにこのプロジェクトの背景にあるのは「アルテミス計画」と呼ばれる計画だ。これは今後10年以内に月の南極に宇宙飛行士を送り込むためのプロジェクトであり、「LINA」もまたそのための施設として研究されている。実際の施工においては自律型ロボットを使用する予定で、月の南極部にあるシャックルトンクレーター付近に建設を予定しているという。さて、この斬新なデザインの基地を実際に構築するために、今回AI SpaceFactory は-170°から70°Cの温度範囲で真空中でも動作するように設計された宇宙仕様の3Dプリントシステムを開発した。素材には、NASAによって合成された、月のレゴリス(表土)とポリマーバインダーから調合した材料が使用される予定とのことだ。また、今回の「LINA」では、地球から運び入れるポリマーの質量を最小限に抑えるため、厚いシェルから薄いシェルまで様々な形状を検討し、荷重が分散されるように設計された、放物線状の断面を採用したという。 「LINA」は共同の中庭を有する3つの独立したユニットから構成されている。各ユニットの面積は75平方メートル、中央のステージングエリアは90平方メートルで、3Dプリントされたシェルは8メートル×9.4メートル、高さ5メートルの空間となる。人がその中で生活する上で十分な広さだろう。 「LINA」に電力を供給するのは大規模な太陽光発電機能。さらに「LINA」は、少なくとも50年の寿命を持つよう設計されており、宇宙探査車や通信機器、居住モジュールなども収納することができる。いずれにしても、月面探査の拠点が3Dプリンターによって建設されようとしているというのは、なんとも胸が躍る話である。今後の展開にも注目し続けていきたい。
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米国でプールをまるまる3Dプリント、いずれはお風呂の浴槽も出力か?
グラスファイバープールの老舗が製造ラインのAM化を決定 記録的猛暑となりそうな今夏。お盆休みはお子さんを連れてプールに出かけようと計画中の方も多いことだろう。ところで、普段、私たちが使っているプールはどのような素材でできているかご存知だろうか。実はその多くがグラスファイバー(ガラス繊維)とポリエステル樹脂なのだ。このグラスファイバーとポリエステル樹脂はお風呂の浴槽の製造などにもよく使われている素材で、一般にガラス繊維強化プラスチック(FRP)とも呼ばれており、主にその耐久性、防水性の高さと、軽量さによって採用され続けている。現在、数多くのプールで使用されているグラスファイバー(ガラス繊維)プールを1958年に発明したのは米国のSaunJuanという企業だった。その画期的発明から70年が経過した今日、同社が社運をかけて取り組んできたのは、労働力を削減し、市場投入までの時間を短縮するための技術革新。そして、その技術革新において主役となったのがお馴染み3Dプリンターである。その際、同社が組んだのはカスタム3Dプリンターを構築し、AM(アディティブマニュファクチャリング)サービスを提供する企業Alpha Additiveだった。いわく、グラスファイバープールの製造をAM化することにより、従来の数分の一の時間でプールを製造することができるようになったという。プールにはそれぞれの会場に適した形状が異なるものだが、従来はまず最終的なグラスファイバー製品を形成するために必要な木型の構築に数か月かかっていた。しかし、製造プロセスを3Dプリント化したことで、木型構築のプロセスが省略され、製造全体の時間が大幅に短縮されることになったというわけだ。 SaunJuanが製造した世界初の3Dプリントプール Baja Beach もちろん、AM化で得られるメリットはそれだけではない。ガラス繊維製品がこれまで抱えてきた問題、そう環境負担を大幅に減らすことができる可能性があるのだ。伝統的に作られたグラスファイバープールと比較して、今回3Dプリントされた新たなグラスファイバーは「完全にリサイクル可能」なのだという。この3Dプリントされた素材が使用を終えた際には、プラスチックシュレッダーに通すことで、それらのプラスチックペレットを再利用することができるのだ。実はすでにSaunJuanの3Dプリントグラスファイバープールは完成しており、ニューヨークはマンハッタンに出荷されている。Baja Beachと名付けられたそのプールは、傾斜したプールの入り口と、壁面の透明ガラスを擁し、大きさは7.92mx 3.66 m、深さは91 cmで、面積は7平方メートルと泳ぐには手狭なサイズである。だが、これが今後のプール業界において大きな転換点となることは間違いない。あるいは同様に、今後、お風呂の浴槽の3Dプリント化も進んでいくかもしれない。当然、この流れが進んでいけば、やがて業界全体に低価格化の波が訪れるだろう。 米国ドラマや映画などでおなじみのプール付きの庭や大きな浴槽のあるバスルームも夢ではなくなる日が来るかもしれない。今後の展開に期待したい。
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100年の歴史を持つ駅舎を3Dプリンターで改修|細かな装飾もスキャンして再現
複雑な伝統技術を3Dスキャンして修復 ここ数年、3Dプリント住宅に関する話題が多い。世界各国で競い合うように3Dプリント住宅建設が試みられ、大規模なプロジェクトがいくつも進行している。その一方であまり注目を浴びていない分野がある。修復工事における3Dプリント技術の活用だ。実はすでに建物の細部を復元する上で、3Dプリント技術は大いに活用されている。ただ、そのようなプロジェクトは通常、あまり脚光を浴びていない。そんな中、あのフォード社が手がけている修復プロジェクトが注目を浴びている。修復対象はアメリカ・ミシガン州のミシガンセントラル駅だ。100年の歴史を持つこの駅舎が、現在、起業家、新興企業、フォードのモビリティチームが、都市交通ソリューションを作り出すためのハブとして機能するように改修されようとしているのだ。フォード社はこれまでもヘンリーフォードアメリカンイノベーション博物館の復元を始め、3Dプリント技術を多く活用してきた。今回の改修工事においてもまた3Dプリント技術が重要な役割を果たすことになる。特にミシガンセントラル駅には装飾的な柵やタイルが多く用いられており、それらを精巧に復元する上では、3Dプリント技術が最適だというわけだ。 細やかな装飾の施されたミシガンセントラル駅の装飾 チームはまず、現状のミシガンセントラル駅を構成しているピースを3Dスキャンし、それらをCADファイルとして調整したデータをフォードの先端製造センターで3Dプリントした。今回フォードが意識したのは、ミシガンセントラル駅をいわゆる近代的な建造物に改修するのではなく、100年の歴史が持つ雰囲気を崩さず、改修の入らない部分と入る部分とのギャップに違和感が生じないような改修を行うことだった。駅の3Dスキャンにはおよそ数ヶ月を要したという。一方、3Dプリントは3週間で完了した。フォードの研究と高度なエンジニアリングによるこのプロジェクトは、今後、大きな可能性を持ったモデルとなるとみられている。各国には様々な建築があり、そこには素晴らしい技術の数々の痕跡がある。それらの職人技をコピーすることはたやすくない。通常であれば法外な費用と時間がかかってしまうだろう。現状では、3Dプリントと3Dスキャンが、費用対効果の高い方法でこれらを復刻する唯一の方法だろう。もちろん日本においても例外ではない。精巧な寺社建築の装飾などの改修に、今後3Dスキャン技術と3Dプリント技術がが用いられていくケースはどんどん増えていくだろう。職人技術を繋ぐのはもはや人ではなくテクノロジーなのかもしれない。
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障害を抱えた友達が困っている時に3Dプリンターを使って出来ること
3Dプリンターが日常の些細な「SOS」を解決する いまや様々な産業で役立てられ、技術革新を起こし続けている3Dプリンターだが、3Dプリンターが活躍するのは必ずしもそうした大きな場面ばかりではない。日常の些細な場においても工夫ひとつで3Dプリンターが大いに役立つことはある。たとえば、STEM for ALL賞を受賞したアメリカ・テネシー州のアダライン・ハムリンの3Dプリンターの活用の仕方は非常に心温まるものだった。ハムリンは15歳の学生だ。彼の創作は学校生活の中である場面に遭遇したことをきっかけに始まった。ハムリンが遭遇した場面、それは同じ学校の障害を抱えた生徒が食堂を歩いている時、ランチトレイの中身を落としてしまっている場面だった。その光景を目にしたハムリンは考えた。「僕に何かできることはないだろうか」。こうしてハムリンの実験が始まった。どうすれば身体に障害のある人でもランチトレイを安定して使えるようになるだろうか。結論から言えばハムリンのアイディアは実にシンプルなものだった。トレイに付属させるアタッチメントを制作することにしたのだ。プレートやカップなど、トレイに収まる全てのものに合うようなストッパーを形成し、それをトレイに接着。そうすることで、ランチトレイから物が落ちるのを防ぐことにしたのだ。 15歳のアダライン・ハムリンと学友 ハムリンはこのアタッチメントを3Dプリンターで造形、出力した。技術的には極めて簡単な技術だ。3Dプリンターに少し触れたことがある人にとってはわけもないものだろう。しかし、この些細なアイディアはすぐさま評判となり、他の学校にも波及することになった。かくしてハムリンはIT技術、ロボット技術の教育に関するアワードであるSTEM for ALL賞を受賞するに至ったのだ。もちろん、技術の革新はとても重要なことだろう。しかし、それ以上に重要なことは、その技術をどのように使うかという点である。ハムリンは3Dプリント技術の初歩的な技術を使用して、これまで誰もきちんと気づくことができずにいた小さな「SOS」に向き合い、応えたのだ。これはまさにテクノロジーの理想的な形ではないだろうか。 皆様も是非、日常に潜む小さな「SOS」をあらためて目を凝らし、探してみて欲しい。あなたがすでに持っている技術で救える人は、きっとあなたが思っているより多くいるはずだから。
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バクテリアを用いた生体素材を3Dプリントすることでファッション産業による環境汚染を防ぐ
バイオマニファクチュアリングがファッション業界を刷新する 3Dプリント技術がファッション業界を揺り動かしている。この環境時代において、ファッション業界は多くの批判を集めてきた。とりわけ2000年代以降のファストファッションが全盛する状況において、着なくなった大量の衣服の廃棄物と、シーズンごとに大量生産される際に用いられる膨大量の資源について、世間の目は厳しさを増す一方だった。ファッション、特にモードとは時代の先端の価値観の表現でもある。そのモードが時代から取り残されているとしたら、これはその存在の存続に関わる大きな問題だ。当然、ファッション業界も自身の行く末を考えさせられることになった。その中で注目を集めているのが3Dプリント技術だ。これまでもSK本舗メディアでは3Dプリント技術を用いた様々なファッションを取り上げてきたが、その多くは靴だった。3Dプリント技術を用いることによって、素材の無駄遣いを省くことができる。また方法によっては、一挙に大量生産せずに、需要に応じて製造することも以前より容易になる。ただ、取り組まれてきたのはそれだけではない。いかに素材の無駄遣いを減らすといっても、それが環境負荷の高い素材だった場合、結局、そこで作られた靴が短期間で廃棄されてしまえば元も子もない。そこで、業界は素材の開発にも努めてきた。たとえば、Bolt Threadsのスパイダーシルクアパレル、Pangaiaの持続可能な成長を遂げた海藻繊維と花のジョガー、MycoWorksのマッシュルームレザーなど、メーカーーはそれぞれ持続可能な素材を開発し、エコファッションの追求を進めてきた。あのアディダスもまた、新たに発表されたUNLESSベンチャーにて、廃棄物を出さない靴の製造に取り組むことを発表している。これはある意味で新たなニッチセグメントでもある。今、そこに特化して取り組んでいるのが、イギリスのスタートアップであるModernSynthesisだ。同社は微生物繊維プラットフォームなどを作成する、いわゆる「生体材料」のメーカーとして知られる。 ModernSynthesisの素材の特徴はバクテリアを利用して、農業廃棄物の糖分をナノセルロースに変換することだ。ナノセルロースとは、その豊富さと強さで評価されている生分解性材料である。同社はこのナノセルロースを素材に、かつ3Dプリンティングによってピースを形作るよう設計することで、端材や廃棄物のスクラップをゼロにすることを目指している。 先日、同社は410万ドルのシード資金を調達した。これによってプロジェクトは一気に進むと見られている。 「私たちは、より明るい物質的な未来への楽観的な見方を共有し、バイオテクノロジーとファッションの両方の分野からの豊富な経験を私たちのチームにもたらす投資家のグループと提携することに興奮しています」そう語るのはModernSynthesisのCEOであるジェン・キーンだ。ファッションに特化したバイオマニュファクチャリングを行う同社は、もしかしたらファッション業界を刷新するキーマンとなるかもしれない。
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大学生チームが3Dプリントして製造したロボットが低重力の小惑星探査を可能にする
低重力対応の探査ロボット「Space Hopper」 今後の宇宙開発において重要なことは無人探査技術の発達だ。宇宙探査と聞くと有人宇宙飛行ばかりに注目が集まりがちだが、実際に有人探査が可能な地球以外の星は現時点において月に限定されている。これまでにも有人火星探査が何度も計画されてきたが、現時点においてはまだ実現していない。オバマ元大統領が2030年代半ばを目標にした有人火星探査を発表しているが、それも不透明さを多く残している。すると、やはり重要になってくるのが無人探査技術である。その際、人間に代わって別の惑星を探査してくれるのはロボットだ。実は最近、最先端の3Dプリント技術を用いたあるロボットが開発された。この低重力用に設計された新しいロボットが、将来の小惑星探査の鍵となると言われている。このロボットの名前は「Space Hopper」。3本足を持つホッピングロボットであり、開発者たちはこれを太陽系の未知の領域を探査することができる革新的なモビリティプラットフォームであるとしている。 開発にあたったのはなんとまだ大学の学部生のチームらしい。今回の開発においては、炭素強化コンポーネントを3Dプリントすることでロボット設計の最適化が図られている。この学部生研究チームはそれぞれ様々な工学分野を専攻したメンバーからなり、中でも繊維複合技術に関してはチューリッヒ拠点の企業「Scheure Swiss」のサポートを得ながら、安定性と軽量性を兼ね備えた部品を3Dプリントしたとのことだ。宇宙探査においては超えなければならないハードルが様々あるが、まず何より考慮すべきは重力の問題だろう。地球の4割程度の重力の火星や1.5割程度の重力の月ならばまだいいが、その他の小惑星の重力はもっと低い。とてもじゃないが人間がその上を歩き回ったりするというのは困難である。そうした低重力惑星を探査するためには新しいソリューションが必要であり、今回開発された「Space Hopper」にその可能性があるというわけだ。こうした小惑星を探索するために設計された「Space Hopper」の動きを制御するのは人工知能で、3本の足を巧みに動かしながらジャンプによって向きを変えて進行ができるようになっている。このメカニズムが低重力での運動を可能にするという。研究チームによれば、そのために必要なボディの支持構造を製造する上では積層造形技術が理想的であり、また費用対効果も優れているという。最も課題だったのは、ロボットの総重量を最小限に抑えるためにも、脚をできるだけ薄壁にすること、その上で飛び跳ねる衝撃に耐えうる強度を担保することだったそうだ。開発期間はわずか8ヶ月。まさに若い才能が新たな可能性を切り拓いたのだ。 小惑星は、地球を含む内惑星を形成した過程で残された断片であり、太陽系の形成や地球に暮らす我々の存在にまつわる根源的な問いを明らかにする可能性を秘めた存在である。あるいは、もう一つの探査の目的として、長期間の宇宙ミッション中にエネルギーを補給するための小惑星資源を抽出する方法を発見するというものもある。今のところ、第一のハードルは、ロボットが長距離を飛び回り、所定の地点に着陸し、空中で姿勢を制御し、科学的なデータを運ぶことができること、かつ着陸に失敗した後に立ち上がることができることを証明することだという。果たして、うまくいくのだろうか。いずれにせよ、3Dプリント技術が宇宙空間の謎を解く役に立つかもしれない、というのは胸が躍る話じゃないだろうか。
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熱や光で造形する時代は終わる? 超音波3Dプリンターの可能性
音波が起こすキャビテーションで造形 3Dプリントを熱や光で行う時代はやがて終わるかもしれないと言われている。ではその時、何が立体物を造形することになるのか。今もっとも注目されているのは超音波だ。超音波を用いた3Dプリントは、すでにこれまで多く研究が行われてきた。まだ一般化されてこそいないが、それも時間の問題だとも言われている。実際、2022年4月に『Nature』誌に掲載されたある論文が現在注目を集めている。 論文を執筆したのはカナダのコンコルディア大学の研究者だ。彼は超音波で活性化される音響化学反応を使用した3Dプリンターを提案している。これは音波がキャビテーション(液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象)を引き起こすことで、液体ポリマーを固体にするというアイディアだ。その際に必要なものは集束超音波ビームである。 現在、実験的に超音波3Dプリントされたオブジェを見てみると、お世辞にも綺麗なエッジとは言えない。はっきり言って見栄えは悪い。しかし、この方法の優れた点は、障壁物を透過して、その内側に物質を作り出すことができる点だ。これは特に医療の分野で注目されている。つまり、誰かの関節にポリマーを注入し、そこに超音波ビームを当てることで侵襲性をほぼ伴うことなく、体内の構造を3Dプリントできるようになるかもしれないのだ。 もちろん、簡単な技術ではない。しかし、以下の動画にもあるように、すでに超音波造形は実現している。あとは今後、造形の精度をどれくらい高めていけるかだろう。
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3Dプリントインテリアの最前線|技術がデザインのモードを更新する
オランダの積層造形会社Aectualの3Dプリントインテリア 家具の3DプリンターはIKEAを始めとしてすでに多く取り組まれている。通常の製造法と比較した際、3Dプリント技術を用いた場合、非常に多くの利点がある。まずは生産量の調整を行いやすい。必要なタイミングで必要な量に限定していて製造するということが行いやすく、言ってしまえば無駄な材料を出さずに済む。また、造形において、3Dプリンターを用いることで、通常の造形方法だとつくることが難しい形状の家具を作ることができる。多くの場合、造形は素材からの切り出しによって行われるが、3Dプリントを用いた場合、主に積層造形によって行われるため、切り出しなどでは表現しづらい複雑な幾何学パターンの形状を生み出すことができるのだ。先日開催されたミラノデザインウィークでも3Dプリントされたインテリア群が注目を浴びた。制作したのはオランダの積層造形会社Aectual。これまで3Dプリント技術を使用して、床、音響拡散パネル、間仕切りスクリーン、天蓋とパビリオン、洋服ハンガーなど、持続可能でカスタマイズ可能な建築製品を作成している企業だ。今回、Aectualがミラノデザインウィークに出品したのは、同社が製造している円形の製品だ。コンセプトラインは、プランターウォール、パーティションスクリーン、ウォールクラッディング、シートプーフなど、カスタマイズ可能な一連の3D印刷されたインテリアオブジェクトと仕上げで、リサイクルされたテトラパックドリンクカートン素材から作られている。 AectualのCEO兼共同創設者であるHansVermeulenは次のように語っている。「毎年約2,000億個の飲料用カートンが生産されており、世界には推定50億個の建物があります。では、これらのカートンを価値の高い建築材料に変えて、日常生活や作業スペースの構築と提供に使用される未使用の材料の必要性を減らすとしたらどうでしょうか?」「テトラパックとのコラボレーションは、再生された円形の素材がインテリアデザインの標準になる未来を示していると確信しています」Aectualは、ゼロウェイストのオンデマンドデジタル制作ネットワークを使用して、循環型のオーダーメードのカスタマイズ可能なアーキテクチャ製品を作成し、回収サービスを通じて、材料を最大10回再利用している。これにより同社は製造にあたって排出されるCO2の量を最大80%削減することに取り組んでいる。一見するとサボテンのような南欧風の造形は実に繊細で精緻だ。プランタースクリーンは、テラコッタの色とマットな外観のためにセラミックに似ており、PolyAlから3Dプリントされている。この材料は、ドリンクカートンのリサイクルされた内側のホイルから得られるポリマーとアルミニウムの混合物だという。 一方、Aectualの別のパートナーであるHouseofDUSは、グラデーションカーブスクリーンを設計している。このシステムは、グラデーション効果によって徐々に開閉するカスタマイズ可能なセルで構成されており、ウィンドウスクリーン、フィーチャーウォール、部屋の仕切りなどに使用できるようだ。 これまでもデザインのモードは技術の革新とともにアップデートされてきた。たとえば19世紀末に流行したアールヌーボー、20世紀初頭に流行したアールデコもまた、技術や素材の革新と共に生まれたデザインの潮流だった。すると、3Dプリント技術の登場もまたデザインの様式を更新する可能性がある。果たして今後3Dプリントデザインはどのように発展していくだろうか。時代を作る新たな潮流を生み出してくれることを期待したい。
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世界で最も高い3Dプリンターとは?|超高価格帯3Dプリンターの現在
3Dプリンターの低価格化の一方で かつて3Dプリンターといえばハイエンドな先端機器であり、個人にはとてもじゃないが手が届かない高価なものだった。それが変わったのは2010年代だ。黎明期の3Dプリント関連技術に関する重要な特許のいくつかが期間満了となったことで、個人でも購入可能な低価格3Dプリンターが市場に登場し始めたのだ。 SK本舗が取り扱っているのも、そうした低価格3Dプリンターの一群だ。特にここ数年、低価格3Dプリンターの機能は向上の一途をたどっており、それに比例するように一般の個人の方でも3Dプリンターを使用すると方が増えてきている。それゆえ、最近では3Dプリンターに関して「いかに低価格で高品質か」という点ばかりが注目されやすい。もちろん、それは非常に大事なポイントなのだが、一方で現在ももちろんながらハイエンドな高価格3Dプリンターも開発されている。いわゆる企業向け、工業向けの3Dプリンターなどの中にはそれこそ目が飛び出るような価格の3Dプリンターも多い。ここで気になる疑問がある。では現在、世界で最も高価な3Dプリンターとはどのようなもので、どれくらいのお値段なのだろうか。3Dプリンターの種類はあまりにも多く、また価格の変動もあるため、どれか一つのプリンターを取り上げ、これが最も高い3Dプリンターだと言い切ることは難しい。ただ現在、最も高価格帯の3Dプリンター群としては、現在の為替レートの円換算で「7000万円以上」が一つの基準になるかもしれない(もちろん億越えする3Dプリンターも存在する)。ここでは試しにこの価格帯に入る3Dプリンターを「超高価格帯3Dプリンター」と呼んでみることにしよう。 7000万円以上の超高価格帯3Dプリンター では、ここでいう「超高価格帯3Dプリンター」とはどんな3Dプリンターたちなのだろうか。超高価帯プリンターは通常、独自のテクノロジー、高度なオートメーション、そして大容量であることなど、いくつかの要素を備えている。中にはマシンの上部に到達するために階段が用意されているような巨大規模なものも少なくない。たとえば超高価格3Dプリンターのひとつ「ブラックバッファロー」などは、モジュール式の建築3Dプリンターであり、最大3階建てのプロジェクトに使用可能だといい、その容貌は3Dプリンターというよりまるでコンサートの舞台装置かのように見える。 ブラックバッファロー あるいは中国を拠点とするEPlus3Dの3Dプリンターもすごい。同社は中国の厳しい製造業向けに大規模な金属3Dプリンターを製造しており、同社の最もハイエンドなマシン「EP-M450H」などは、航空宇宙、自動車、電子機器、工具で使用され、重工業用の金型などの巨大な部品だけでなく、大量生産された部品も製造している。ビルドボリュームは、456 x 456 x 1,080 mm。さまざまな材料で1時間あたり55cm³の速度で99.9%の密度の金属部品を製造できるという。 EP-M450H もちろんビルドボリュームが小さめの超高価格帯3Dプリンターも存在する。オーストリアを拠点とするUpNanoが開発した「NanoOne Bio」などは、一見すると10万円以内の家庭用3Dプリンターと見た目はほとんど変わらない。しかし、同社は2光子3Dプリンターと、メソスケールとマイクロスケールの両方で生細胞を含む3D構造の直接印刷を可能にするヒドロゲルベースのバイオインク「X Hydrobio INXU200」を開発しており、「NanoOne Bio」は、同社のNanoOneシリーズのレーザー駆動プリンターをベースに設計された、超最先端バイオ3Dプリンターなのだ。UpNanoによれば、「X Hydrobio INXU200」と「NanoOneBio」の組み合わせは、産業界と学界の両方で生物医学の研究開発に新しい可能性を開き、製薬会社や研究機関が人体の自然な成長条件を模倣する細胞モデルを設計できるようにするのだそうだ。 NanoOneBio 超高価格帯3Dプリンターとしては他にもOptomec社のハイブリッド金属3Dプリンターである「LENS 860」や、イスラエルのXJet社のセラミック3Dプリンター「Carmel1400C」、ドイツのSLMSolutions社の「工業生産における革命」とまで言われた金属3Dプリンター「NXG...
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STEM業界で活躍する120人の女性を象った3Dプリント彫像がスミソニアンで展示
女性史月間にあわせて制作された120人の女性彫像 3Dプリントでアート作品を制作することは、いまや決して珍しいことではなくなっている。鑑賞者が気づいていないだけで、あの作品にもこの作品にも実は3Dプリンターが使用されている、ということなどざらにあり、わざわざ「3Dプリントアート」と銘打つ必要すらないというのが現状だろう。とはいえ、やはり「あっと驚く」ような3Dプリント作品もある。たとえば、今年の3月、スミソニアン博物館において展示された「女性彫像の最大のコレクション」などは、やはり3Dプリンターならではのスケール感に満ちた作品だった。 同作は今年の女性史月間(歴史上の出来事、あるいは現代社会の出来事に対して女性が行った貢献に焦点を当てると定められた月間のこと)に合わせて制作発表されたもので、STEM(科学、技術、工学、数学)分野で先駆的な働きを行なった歴史上の120人の女性の彫像を3Dプリント造形したものだ。目的は、現代の若い女性にSTEM分野でのキャリアを検討してもらうというもの。あらゆる業界における男女平等が推進される現在においても、STEM分野においてはいまだ男性がマジョリティを占めている。そうした状況を変革しようという、スミソニアンらしい意欲的な試みだ。プロジェクト名は#IfThenSheCan – The Exhibit’というハッシュタグで示された。主導したのはLydaHillPhilanthropies。その創設者であるLydaHillによれば、「人が大きな夢を見て、そこに到達し、より高く飛躍するように促すものとは何ですか? #IfThenSheCan – The Exhibit'は、若い女の子の夢を刺激し、科学への関心をサポートすることを目的として作成した大きなアイデアでした」とのこと。またLydaは「私たちはスミソニアンに、これらの彫像を私たちの国の首都の非常に多くの人々が利用できるようにしてくれたことに深く感謝しています」とも述べている。 STEM業界で活躍する次代の女性たち 3月の初めから行われた展示では、3D印刷された彫像が、芸術産業ビル、スミソニアン城、さらに隣接したイーニッドA.ハウプトガーデンに、およそ1ヶ月にわたって展示されたようだ。3D印刷された各彫像には、訪問者がスキャンして、モデルとなった女性の個人的な話について詳しく知ることができる固有のQRコードも付与されたという。間違いなく、そこから多くの若い女性たちが学びを得たに違いない。モデルとなった女性たちは皆、サメのタグ付け、癌の治療、YouTubeプラットフォームの構築からロボットの振り付け、地球外生命体の探索などなど、様々な形でSTEM分野で活躍した人物たちだ。 たとえば、そのモデルの一人であるエイミー・エリオット博士は、3Dプリントの戦略的アプリケーションについてコンサルティングを行っている。現在、彼女はオークリッジ国立研究所(ORNL)の製造デモンストレーション施設(MDF)で働いているそうだが、本展示に合わせて会場を訪れている様子が映像に収めらている。 その他のモデルも皆素晴らしい功績の持ち主ばかりだ。コーネル大学の学部生であるカリナ・ポポヴィッチは、パンデミックの初期にMakers for COVID-19を設立し、医療従事者向けに82,000個以上の個人用保護具を3Dプリントした功績が評価された。ジェシカ・エスキベルは、物理学の博士号を取得した米国でわずか150人の黒人女性の1人だ。国立地理学の探検家で野生生物の生態学者で、野生生物や絶滅危惧種を絶滅から救うために取り組んでいることを評価されモデルに選ばれたレイ・ウィン・グラントは、自身の彫像が今回の展示に含まれたことについて次のように語っている。「名誉の深さは衝撃的です。考えうる最善の方法で得られる最も深い名誉だと言えます。それはお金や名声を超えています」そしてもう一つ、この素晴らしい3Dプリントアートのプロジェクトを手掛けたのもまた女性であることを忘れてはならないだろう。
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造形時間が10分から20秒へ! 驚異の速度と正確さを誇る造形方式LAPD方式とは?
光造形と熱溶解積層、それぞれの利点を完全に兼ね備えた出力方式 自宅用に3Dプリンターを購入しようと考えている人にとって、まず最初に行う必要のある主要な決定は、光造形プリンター(レジン)と熱溶解積層方式プリンター(フィラメント)のどちらを購入するかということだろう。一般的にレジンを素材とする光造形には造形物のディティールが細かいという利点があり、フィラメントを素材とする熱溶解積層にはより強度のある造形物を出力できるという利点があると言われている。実は今、光造形と熱溶解積層、それぞれの利点を完全に兼ね備えたある方式が登場して話題を集めている。その新方式を開発したのは、スイスのエコールポリテクニックフェデラルデローザンヌ(EPFL)内の応用フォトニックデバイス研究所(LAPD)の研究者たちだ。彼らが開発したのは、速く、正確に、かつ強度の高い出力を行う、新時代の3Dプリンターだ。 記録破りの時間で造形物を作成するLAPD方式 実はこの3Dプリンターの開発は5年前に遡る。2017年、研究チームはほぼ瞬時にオブジェクトを製造できる3Dプリント技術をすでに開発していた。しかし、それを一般に流通させるマシンへと改善していくために5年の月日を要したのだ。LAPDの3Dプリンターは既存の光造形プリンターと同様に、レジンに特定の光のパターンを当てて硬化させることで造形を行う。主な違いは、レジンを最初にシリンダーに入れて高速で回転させるという点だ。特定の領域でレジンを硬化させるために、非常に正確な強度とタイミング、かつさまざまな角度で樹脂に光を当てることで、この最新3Dプリンターは記録破りの時間で造形物を作成できるという。たとえば、研究チームが小さなヨーダ(映画『スターウォーズ』の登場キャラクター)を作成してテストしたところ、彼らがそれを作るのにたった20秒しかかからなかった。一方、従来の積層造形プロセスでは約10分かかった。 ©2022EPFL 「私たちの方法は、光がずれることなくレジンを直線で通過する場合にのみ機能します」とLAPDのポスドクであるアントニー・ボニフェイスは述べている。「これまで私たちは常に透明なレジンを使用していましたが、生物医学産業で使用されているような不透明なレジンでオブジェクトを印刷できるかどうかを確認したかったのです」。2017年の段階では、彼らの3Dプリンターは透明なレジンにおいてのみしか、その機能を果たすことがなかった。しかし、彼らはレジンの不透明性によって生じる光線の歪みを補正するためのコンピューター計算を設計することでこの問題を解決した。これにより、不透明なレジンで透明なレジンとほぼ同じ精度でオブジェクトを3Dプリントすることができるようになったのだ。これは重要なブレークスルーだと言えるだろう。 ©2022EPFL LAPD方式は、人工動脈などの生体物質を3Dプリントするために使用できるという。次のステップとして、エンジニアは一度に複数のオブジェを3Dプリントし、かつ解像度を10分の1ミリメートルから1マイクロメートルに上げることを目指している。あるいは現在のプロトタイプ3Dプリンタは高価格のため一般人にはまだ手が届かず、加えて現在は小さな造形物に限定されているという点もクリアーされなければならない課題だろう。いずれにせよ、このLAPD法の進化は、3Dプリンティングの速度と精度を劇的にあげる可能性を大いに秘めている。今後の発展に注目したい。
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革新的3Dプリント技術のアワード「3Dパイオニアチャレンジ」2022の受賞プロジェクトを紹介
今最も注目すべき革新的な3Dプリントプロジェクトとは? 3Dプリントにおける最も革新的で画期的なプロジェクトを表彰する「3Dパイオニアチャレンジ」。今年、審査員たちが栄えある同賞に選出したのは、一体どんなプロジェクトなのだろうか。カテゴリ別に選出された同賞からいくつか見ていきたい。まず全体の最優秀賞を受賞したのはETHチューリッヒinspireAGのメンバーが考案した「ハイパーループブレーキ」だ。ハイパーループとはチューブ内をポッドやカプセルなどと呼ばれる車両が空中浮遊して高速移動する新しい輸送システムのことで、これによって時速1000kmを超える移動が可能になるとも言われる夢の技術だ。現状ではまだ実現していないものの、もしハイパーループが実現した場合、そこにはブレーキの存在が必要になる。 このプロジェクトは、そんな「獲らぬ狸の皮算用」的なブレーキを3Dプリントしようというものになっているのだが、チームはいたって真剣。いわく「ベローズを加圧することにより、コンプライアントシステムが強制的に切り離されるようにブレーキが作動する。これにより、ガイドレールとブレーキの間にギャップが生じる。圧力が解放されると、ベローズを収縮させることによって即時ブレーキが開始される。統合されたジャイロイド構造がブレーキ力を吸収し、エアチャネルがブレーキの解除を支援する」とのことだ。建築と持続可能性のカテゴリで受賞したのはWASPのデュアルハウス3Dプリントだ。WASPについては以前にも別記事で取り上げたことがある。その時はWASPが3Dプリントしたディオールのコンセプトストアについてだったが、この際に使用されたのもデュアルハウス3Dプリント技術だった。 同社は、天然素材とその巨大なCraneWASP3Dプリンターを使用して建造物を3Dプリントすることで知られている。その土地で採取される粘土と現代の技術を組み合わせる彼らの方法は、デジタル粘土の未来を示していると言えるだろう。審査員いわく「3Dプリントされた家のパイオニアであるWASPは、地元の粘土を使用し、地面から家を建てるという古風な原則に則り、説得力のある試みを行っています。ディオールのようなグローバルブランドがこの持続可能な原則に焦点を当て、それを誰もが理解できるように提示しているのはとても良いことです」とのこと。学生カテゴリーで受賞したのは、Burg GiebichensteinKunsthochschuleHalleのShuyunLiuとStefaniePutschによる「GlasKlar」プロジェクトだ。このプロジェクトでは、特定の材料におけるバクテリア発生の促進と管理が試みられた。バクテリアを使った生きたプロダクトを生産するという、環境時代に相応しい試みとして評価された。 エレクトロニクス部門で受賞したのは、英国の製造技術センター(MTC)による3Dプリントモーターだ。MTCは、高出力密度の3DプリントモーターであるFEMS3を披露。チームは従来のエンジン製造と比較して、質量を65%削減すると同時に、部品と組み立て手順の数を削減することに成功した。審査員いわく「機能的な電気モーターの軽量化–全体的なコンセプトの持続可能性。モーターは産業において用いられるエネルギーの大部分を消費します。アディティブマニュファクチャリングによって電気モーターを改善するというアイデアは、パフォーマンスを向上させ、持続可能性を改善するための優れた手段です」と述べている。 医療機器部門で受賞したのは、中国科学院遺伝与発生物学研究所、種子デザインイノベーションアカデミー、中国科学院、北京中国//マンチェスター大学英国//北京国立情報研究センターによって作成された多軸バイオプリンティングロボットだ。チームによれば、この多軸バイオプリンティングロボットによって「血管が新生され、収縮性がある、長期間生存する心臓組織を3Dプリントできるようになる」と主張している。 デジタル部門で受賞したのは、Schubert Additive SolutionsによるPARTBOXだ。PARTBOXにおいては3Dプリントの知識は必要とされず、パブリックインターネットではなく、モバイルネットワークを介してデータをボックスに直接ストリーミングし、パーツを受信して印刷できるらしい。 さて、主だった受賞プロジェクトを見てきたが、今年の「3Dパイオニアチャレンジ」は全体として「持続可能性」への関心が際立っていたように見える。環境問題が深刻化する現代においては、SF的で夢のような技術よりも、今ある無駄を減らすことに意識が向かっていくことは当然なのかもしれないが、そんな中、最優秀賞を受賞したのが「ハイパーループブレーキ」だったということには、審査員たちの技術進歩へのささやかな期待が込められているようにも思えた。果たして、来年はどんなプロジェクトが受賞を勝ち取ることになるのだろうか。
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博物館収蔵の文化遺産の精巧なレプリカを3Dプリント|本物は民族の元へと返還か
3Dプリンターが博物館を変える? 世界各地には様々な民族が存在していて、それぞれに文化遺産となるような歴史的遺物を有している。現状、そうした文化遺産の中でも、特に彫刻や土器などの遺物に関して貴重なものは、多く博物館に所蔵され、歴史学習のために用いられている。 だが、本来ならそれらの文化遺産は、それぞれの民族の財産であり、民族によって独自に保管されて然るべきだ。今までは民族が独自に博物館を持っていなかったりすることから、文化教育の観点からもそうした文化遺産が他所の博物館へと寄贈されることが多くあったが、そうした流れを3Dプリント技術が変えつつある。先日、ハドソン博物館が下した決断はその一つのきっかけを生むかもしれない。ハドソン美術館はメイン大学のアーティストやエンジニアのチームとともに、北米の先住民族であるトリンギットのカエルの彫刻品のレプリカを3Dプリンターによって作成した。そのクオリティは非常に高く、本物と見紛うばかりだ。 画像引用/メイン大学 なぜレプリカを制作したのか。これはトリンギットの中央評議会が、これまでに寄贈した民族の文化遺産のいくつかを博物館に対して返還するよう請求したからだ。この請求を受けてハドソン博物館の館長はトリンギットからレプリカの3Dプリントの承認を得て、エンジニアたちとともに、その正確なレプリカの制作に着手。今後は展示品をレプリカに切り替えることを決定したのだ。館長いわく「私たちはネイティブアメリカンのコミュニティと非常に緊密に連携しており、これらのオブジェは彼らの文化的慣習に不可欠です。したがって、(今回の返還は)これらのコミュニティを、彼らの先祖によって作られた彼らの文化的伝統と再接続するものです」とのこと。おそらく今後、こうした文化遺産や歴史的遺産の返還の流れはその他の民族、博物館へも波及していくことだろうと思う。本物のオブジェを気安く鑑賞できなくなってしまうことには寂しさもあるが、それぞれの民族にとってその返還がポジティブな効果をもたらすことになるのであれば、これは当然の権利であると言えるだろう。それに現在の3Dプリント技術を用いれば、小さな傷や欠陥などの詳細までをも再現した精巧なレプリカを模造することができる。本物同然の鑑賞体験をえることだって不可能ではないのだ。これもまた技術が歴史を変える一つの事例となるだろうか。3Dプリント技術によって博物館のあり方が変わろうとしている。
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2025年に使うべきCADソフトウェアはどれ?
2025年に最高のCADソフトウェアはどれ? 3Dプリンターで何かを出力するためには、出力の元になる3Dデータが欠かせない。CADソフトウェアとは、この3Dデータをデザイン、モデリングするためのソフトウェアのことだ。そもそもCADとは「Computer Aided Design」の略で、「キャド」と読む。かつては手作業だった設計や製図をコンピュータで行うためのソフトウェアとして開発され、様々な分野において活用され続けてきている。今回はこの3DCADデータを作成するためのソフトウェアの中でも今最も注目のソフトウェアを紹介したい。まずは以下にラインナップを示したい。 SketchUpVectaryOnshapeSelfCADAutoCAD WebTinkerCAD 必ずしも3Dプリント用のデータ作成に適したソフトウェアに限らない。ブラウザベースで使用できるCADソフトウェア全体の中から機能性に優れたソフトウェアが紹介されている。ちなみに、当メディアでは以前にも3Dデータ作成ソフトについて、基礎的な情報を紹介したことがある。以下の記事では3DCADソフトと3DCGソフトの違い、そのメリットデメリットなどについても解説している。こちらも併せてご参照いただきたい。 世界が愛用する6つのCADソフト さて、では2025年にオススメの3DCADソフトウェアを順番に見ていこう。SketchUpTrimbleのSketchUpは、専門家に最も人気のあるCADソフトウェアの1つだ。建築家や造園家や商業用インテリアデザイナーなどの関連分野に最適な「スケッチ」「押し出し」機能を持ち、すでに多くのユーザーに親しまれている。フルでインストールするとかなり重いアプリケーションになるが、SketchUpShopというブラウザベースのバージョンもあり、こちらは非常に使いやすい。もちろん、SketchUpShopでは部分的に使用できない機能もあるが、まず試してみたいという方はブラウザ版からトライしてみるのがいいだろう。SketchUpの特筆すべきポイントはSketchUpWarehouseと呼ばれる、簡単にインポートできる何千もの3Dモデルがソフトウェア内に用意されているところだと言われている。これはブラウザベースのSketchUpShopでも使用可能であり、大変便利だ。また初心者にも使いやすいと定評があり、さらに無料枠も用意されていることから、とっつきやすさも利点の一つ。なお欠点としては、パラメトリックCADモデラー(※)の履歴機能がないため複雑なエンジニアリングには向かないということなどが指摘されている。※パラメトリックモデラーについては日経XTECHの以下の記事がわかりやすい。https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20130705/291110 【SketchUp】https://www.sketchup.com/ja VectaryVectaryはテクニカルなデザイナーよりも芸術系コミュニティを対象としたブラウザベースのCADソフトウェアだ。エンジニアリングに使用されるシステムであるパラメトリックモデラーの一種ではあるが、Vectary自身が自身の機能をハイブリッドとして定義しており、あくまでも芸術的なアプリケーションとして打ち出されている。特徴はその強力なレンダリング機能だと言われる。ライブレンダリング機能が備わっているため、作業中にもデザインがどのように機能しているかを知ることができる。また、VectaryはオンラインARビューアー機能を持つため、現実の空間でデザインを見ることもできるという点も魅力の一つだ。そして何より優れているのは、全てのバージョンが無料で商用利用できるという点だろう。機能のほとんども無料利用枠で使用できる。ただ、無料枠においてはユーザーを25プロジェクトに制限し、バージョン履歴を禁止し、プロジェクト共有とWebARビューアーへのアクセスが制限される。もし全ての機能にアクセスしたければ月額12$、年額99$のプランに加入する必要がある。 【Vectary】https://www.vectary.com/OnshapeOnshapeは現状で最も高度なオンラインCADソフトウェアの一つとして知られている。ブラウザベースのソフトウェアとしては信じられないほど強力なCADを詰め込み、最先端のプロフェッショナルユーザーや企業に適したプログラムを提供する、ブラウザで使用可能な最高水準のパラメトリックモデラーだ。Onshapeの優れた点としてまず充実したコラボレーションツールの存在を挙げることができる。Onshapeはあらゆるプロジェクトに「ブランチアンドマージ」機能を提供してり、これによりデザインの編集を分岐して特定のイテレーションと区別することができる。これは大規模なオープンソースプロジェクトなどに最適な機能だ。一般的にOnshapeは高度な製品設計などに最適なソフトウェアとして知られており、芸術的な3Dモデリングには向いていない。また、通常のユーザー向けには開かれておらず、企業組織を対象としたソフトウェアとして提供されている。商用利用するためには年間1500$が掛かる点からも、3Dプリンターの一般ユーザーが使用することは考えづらい。あくまでも、こういうソフトウェアもある、という程度に認識しておいてほしい。 【Onshape】 https://www.onshape.com/ja/SelfCADSelfCADは非常にユニークなオンラインCADソフトウェアだ。シンプルさと堅実さ、またTinkerCADのような初心者向けソフトウェアとしての親しみやすさも兼ね備えている。TinkerCADよりも多くの機能を提供しているが、より高度なソフトウェアと比較すると少し控えめだ。要するに、一般向けとプロ向けのちょうど中間くらいの機能を持つソフトウェアだということだろう。基本は無料で使用できるが、高度なメッシュモデリング機能を使用する場合は有料となる。またスライサーも統合されており、スライサーソフトいらずなのもありがたい。インタラクティブなチュートリアルも搭載されていて、コミュニティと技術を共有することもできる。 【SelfCAD】 https://www.selfcad.com/AutoCAD WebAutoDeskが提供する、CADソフトウェアの代表的な存在として知られるAutoCADのブラウザ版。注目は非常に簡略化された2DDWGエディタだ。通常のAutoCADのような高度なオプションはないが、デスクトップで開くなどの便利な機能がもたらされている。すでにAutoCADを使用している方が、より迅速なオンラインソリューションを探しているという場合、このAutoCAD Webが最適な答えとなる。 【AutoCAD WEB】 https://www.autodesk.co.jp/products/autocad/overview TinkerCAD最後はすでにお馴染みのTinkerCADだ。すでにお使いの方も多いだろう。おそらく一般に最も知られているオンラインCADソフトウェアだ。完全に無料のソリッドモデリングプログラムで、主にCAD初心者を対象にしている。ソフトウェアのシンプルな性質により、多くの場合、シンプルなデザインを作成するためのソフトウェアとして用いられているが、一般の3Dプリンターユーザーにとっては、決してそこまでの不足は感じないはずだ。子供や若者向け機能として、TinkerCADでデザインしたデータをMinecraftやLegoなどの人気ゲームに取り込み使用することができるという機能もある。また初心者向けにかなり充実した、ガイドやレッスンのプロジェクトも含まれている。ギャラリー機能も充実しており、他の人の作品などを閲覧することで、制作のインスピレーションを得ることもできる。そして何より完全に無料のソフトウェアであるという点も魅力だ。ただ、やはり初心者向けではあるため、より高い機能を求める人には物足らないのも事実だろう。さらなるステップを求める人はまず上述したSelfCADを試してみるといいかもしれない。 【TinkerCAD】...
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メットガラ2022を魅了した3Dプリント技術の想像力|イリス・ヴァン・ヘルペンのハイブリッドデザインがモードを革新する
ファッションの世界的な祭典で注目を浴びる3Dプリントファッション メットガラといえば、毎年5月の第一月曜日にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されるファッションの祭典である。今年の5月に開催されたメットガラ2022にも、多くのハリウッドセレブやアーティストが参加し、次代の最先端モードの一端を垣間見せてくれた。 どうやら、クラシック回帰の流れは今年も健在のようで、たとえばキム・カーダシアンが着用していたのは、かのマリリン・モンローがケネディ元米国大統領の誕生日パーティーで着用した有名なドレスのデザインを再構築したものだ。あるいはブレイク・ライブリーは19世紀末を思わせるヴェルサーチのロングドレスで登場し、そのゴージャスさに誰もが息を飲んだ。 そんな百花繚乱のメットガラ2022の中でもひときわ目立っていた存在がいる。オランダ人デザイナーのイリス・ヴァン・ヘルペンだ。彼女がデザインしたいくつかのガウンたちは、まさに過去と未来を融合させた、レトロフューチャーな新しさに満ちていた。 イリス・ヴァン・ヘルペンは2010年より3Dプリント技術を洋服デザインに取り入れてきた3Dプリントファッションのパイオニア的存在だ。これまでもビヨンセやレディガガなど名だたるセレブ達にドレスを提供し、業界の注目を集めている。 今回まず目を引いたのは、女優で歌手のダヴ・キャメロンが纏った宇宙世界のスパイラル星雲をモチーフにした真っ白なドレスだ。19世紀風の刺繍をモチーフにしつつ、それを3Dレーザーカット技術によって再構成したというデザインは、まさに伝統技術と現代先端技術を交差させる仕上がりになっている。10人以上で手がけ、600時間以上の作業によって作られたというだけあり、そのデザインは極めて繊細だ。 【New Photo】Doveは本日、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催される大規模ファッションイベント #MetGala2022 に出席。とっても美しいですね.....🕊 pic.twitter.com/oK0uvDlWmu — Dove Cameron Japan (@DoveJapan) May 3, 2022 ...
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光造形3Dプリンターの設定に関するデータベースサイト「MAKER TRAINER」が登場
機種ごとに違う3Dプリンターの推奨設定 3Dプリントを成功させるためには、機能性の高い3Dプリンター、品質の良いレジンがあれば十分かと言えば、もちろんそんなことはない。どんなに良い機材、素材を使っていても、環境や設定が適切なものでない場合、思い描いたような3Dプリントを行うことはできない。 3Dプリンター並びに必要なソフトウェアの適切な設定に関しては、一応の基準値のようなものは存在する。ただ、実際のところ、3Dプリンターの機種によって設定すべき数値はまちまちだし、何を出力したいかによってもその数値は変わってくる。 すると難しいのは、自分の環境、目的に応じた適切な設定についての情報を、どう得ることができるのかということだ。結局、それぞれがトライ&エラーの中で手探りで適切な設定を探っていくしかないのだろうか。 実はこの3Dプリンターユーザーを悩ます問題に、一筋の光を差すようなサイトが登場して話題になっている。そのサイトの名前は「MAKER TRAINER」。果たしてどんなサイトなのだろうか。 光造形3Dプリントの設定を網羅するコミュニティデータベース 「MAKER TRAINER」はオープンソースの3Dプリント関連情報のデータベースサイトで、3Dプリントに関する基礎知識、最新情報を網羅的に扱う3Dプリント版Wikipediaのようなサイトだ。開設者はAdam Buteという人物で、光造形3Dプリント分野で働く人々を支援するために、光造形3Dプリントの設定に関するコミュニティデータベースとしてこれを立ち上げたようだ。 MAKER TRAINER https://makertrainer.com/wiki/Main_Page 中でも同サイト内で注目したいのが、「All resin settings」という項目だ。ここでは現在、市場で流通している代表的な光造形3Dプリンターが紹介されており、同時にそれぞれの機種に関して、使用するレジンごとの適切な設定が紹介されている。 MAKER TRAINER /All resin settings https://makertrainer.com/wiki/All_resin_settings...
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