米国でプールをまるまる3Dプリント、いずれはお風呂の浴槽も出力か?
グラスファイバープールの老舗が製造ラインのAM化を決定
記録的猛暑となりそうな今夏。お盆休みはお子さんを連れてプールに出かけようと計画中の方も多いことだろう。
ところで、普段、私たちが使っているプールはどのような素材でできているかご存知だろうか。実はその多くがグラスファイバー(ガラス繊維)とポリエステル樹脂なのだ。このグラスファイバーとポリエステル樹脂はお風呂の浴槽の製造などにもよく使われている素材で、一般にガラス繊維強化プラスチック(FRP)とも呼ばれており、主にその耐久性、防水性の高さと、軽量さによって採用され続けている。
現在、数多くのプールで使用されているグラスファイバー(ガラス繊維)プールを1958年に発明したのは米国のSaunJuanという企業だった。
その画期的発明から70年が経過した今日、同社が社運をかけて取り組んできたのは、労働力を削減し、市場投入までの時間を短縮するための技術革新。そして、その技術革新において主役となったのがお馴染み3Dプリンターである。
その際、同社が組んだのはカスタム3Dプリンターを構築し、AM(アディティブマニュファクチャリング)サービスを提供する企業Alpha Additiveだった。いわく、グラスファイバープールの製造をAM化することにより、従来の数分の一の時間でプールを製造することができるようになったという。
プールにはそれぞれの会場に適した形状が異なるものだが、従来はまず最終的なグラスファイバー製品を形成するために必要な木型の構築に数か月かかっていた。しかし、製造プロセスを3Dプリント化したことで、木型構築のプロセスが省略され、製造全体の時間が大幅に短縮されることになったというわけだ。
SaunJuanが製造した世界初の3Dプリントプール Baja Beach
もちろん、AM化で得られるメリットはそれだけではない。ガラス繊維製品がこれまで抱えてきた問題、そう環境負担を大幅に減らすことができる可能性があるのだ。伝統的に作られたグラスファイバープールと比較して、今回3Dプリントされた新たなグラスファイバーは「完全にリサイクル可能」なのだという。この3Dプリントされた素材が使用を終えた際には、プラスチックシュレッダーに通すことで、それらのプラスチックペレットを再利用することができるのだ。
実はすでにSaunJuanの3Dプリントグラスファイバープールは完成しており、ニューヨークはマンハッタンに出荷されている。Baja Beachと名付けられたそのプールは、傾斜したプールの入り口と、壁面の透明ガラスを擁し、大きさは7.92mx 3.66 m、深さは91 cmで、面積は7平方メートルと泳ぐには手狭なサイズである。だが、これが今後のプール業界において大きな転換点となることは間違いない。あるいは同様に、今後、お風呂の浴槽の3Dプリント化も進んでいくかもしれない。当然、この流れが進んでいけば、やがて業界全体に低価格化の波が訪れるだろう。
米国ドラマや映画などでおなじみのプール付きの庭や大きな浴槽のあるバスルームも夢ではなくなる日が来るかもしれない。今後の展開に期待したい。