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3Dプリンターで入れ歯を即日製作!移動型歯科診療車「O-Gai」が過疎地の歯科医療を変える
「3Dプリンターで入れ歯を作る」──そう聞くと驚くかもしれませんが、これはもう近未来の話ではありません。大阪府堺市のベンチャー企業が開発した移動型歯科診療車「O-Gai」は、口腔内スキャナーと3Dプリンターを車両に搭載し、従来1ヶ月以上かかっていた入れ歯の製作をわずか数時間で完結させます。 移動型歯科診療車「O-Gai」とは 2026年3月、MBSテレビ「よんチャンTV」で紹介され話題となった「O-Gai」。開発したのは大阪府堺市のベンチャー企業「オーガイホールディングス」です。 キャンピングカーを約500万円かけて改造したこの車両には、口腔内スキャナーと3Dプリンターが搭載されています。診察から入れ歯の製作までを、車両の中だけで完結させるという画期的なコンセプトです。 ワークフローはシンプルです。 O-Gaiの診療フロー ステップ1:口腔内スキャナーで患者の歯列を3Dデータとして取得 ステップ2:取得データをもとにCADソフトで入れ歯を設計 ステップ3:車載3Dプリンターで入れ歯を造形 ステップ4:その場でフィッティング・調整 従来の入れ歯製作では、歯科医院でシリコン印象材による型取りを行い、その型を歯科技工所に送付。技工士が石膏模型を作成し、手作業で入れ歯を製作して医院に返送──という工程を経るため、完成まで1ヶ月以上かかることも珍しくありませんでした。 O-Gaiはこのプロセスをデジタル化し、すべてを車内で数時間に圧縮しています。 全国784地区・19万人の「歯科難民」問題 O-Gaiが解決しようとしている社会課題は深刻です。 厚生労働省の調査によると、近隣に歯科医院がない「無歯科医地区」は全国に784地区存在し、対象人口は約19万人にのぼります。高齢化が進む過疎地域ほど歯科へのアクセスが困難であり、通院の負担から治療を諦める高齢者も少なくありません。 訪問歯科診療という制度はありますが、持ち込める機材には限界があります。診察や簡単な処置は可能でも、入れ歯の製作・調整といった本格的な治療は対応が難しいのが現状です。 O-Gaiの開発者である野田真一社長は、自身の父親が歯の治療に苦労していた経験から「誰も取り残さない医療」をモットーに掲げています。年内の実用化を目指しており、すでに岡山県で実証実験を実施しています。 なぜ3Dプリンターで入れ歯が作れるのか ここからは少し技術的な話になりますが、3Dプリンターがなぜ歯科治療に使えるのか、その背景を解説します。 光造形方式の「精度」が鍵 歯科用途で使われる3Dプリンターは、主に光造形方式(SLA / DLP / LCD)です。紫外線で光硬化性樹脂(レジン)を硬化させて積層する方式で、数十μm(マイクロメートル)単位の精度を実現できます。 口腔内にフィットする補綴物(入れ歯・クラウン・ブリッジなど)には、この高精度が不可欠です。数百μm(0.数mm)のズレでも、装着時の違和感や痛みにつながるため、FDM(熱溶融積層)方式では対応が難しいとされています。 光造形方式であれば、積層ピッチ25〜50μmといった高精細な造形が可能。入れ歯のような複雑な曲面形状も、滑らかに再現できます。 歯科専用レジンの進化 プリンターの性能と同じくらい重要なのが、素材(レジン)の進化です。歯科用3Dプリントに使われるレジンは、一般的な光造形用レジンとはまったく異なる厳しい要件を満たす必要があります。 要件...
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壊した街から家具を作る?3Dプリントが変える“都市のリサイクル”
解体現場のガレキの山に佇む3Dプリント家具「PU」と「YOU」(出典:Yanko Design) 壊した街が、家具になって戻ってくる 都市の再開発で取り壊された建物のコンクリートやレンガ。普通なら産業廃棄物として処分されて終わりです。 でも、もしそのガレキが3Dプリンターで「街の家具」に生まれ変わるとしたら? 中国・広州のデザインスタジオ「Bentu Design」が手がけるプロジェクト「Inorganic Growth(無機的成長)」は、まさにそんな取り組みです。ただのリサイクルではなく、消えた街の記憶を、素材ごと次の時代に残すというアプローチが、世界のデザインメディアで注目を集めています。 Bentu Designとは何者か Bentu(本土)は2012年に広州で設立されたプロダクトデザインスタジオ。「本土」という名前には「地元の素材でものを作る」という哲学が込められています。建築家・安藤忠雄に影響を受け、コンクリートとリサイクル素材を使った家具制作を一貫して行ってきたスタジオです。 プロジェクト「Inorganic Growth」の全貌 素材:解体現場のガレキそのもの 中国の都市開発では「城中村」と呼ばれる古い住宅エリアが丸ごと取り壊されることがあります。このプロジェクトでは、その解体で出たコンクリート片、赤レンガの瓦礫、モルタルの粉を原材料として使っています。 解体廃棄物の加工プロセス(出典:Yanko Design) 処理工程はかなり本格的です: ジョークラッシャーで一次破砕 インパクトクラッシャーで二次整形 多層振動スクリーニングで粒度別に分別 微粉末(廃棄物の30〜35%)に機械的・化学的活性化処理を施す フライアッシュ、スラグ粉末、シリカフュームなどの産業副産物を配合してセメント系バインダーを生成 ナノ懸濁液による表面改質で骨材の吸水率を8〜10%から3〜5%に低減、界面遷移帯の強度を40%以上向上 完成した材料の最大85%がリサイクル固形廃棄物。解体現場の近くに処理設備を設置することで、廃棄物全体の92%を材料として利用できるとBentu Designは報告しています。 印刷:デュアルヘッドで「街の色」を再現 チェア「PU」とスツール「YOU」― 解体廃材の色がそのまま残る(出典:Yanko Design)...
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社員全員の“耳”を3Dプリント?音をリアルにするための意外すぎるアプローチ
「もっとリアルな音を作るにはどうすればいいか?」 そんな問いに対して、ある企業が出した答えはかなりユニークなものでした。 それは――社員全員の耳を3Dプリントすること。 一見するとユニークな実験のようですが、実はこれ、映画やゲームの“音のリアルさ”を支える最先端の取り組みです。 小さなチームが作る“ハリウッド級の音” この取り組みを行っているのは、ポルトガル・リスボンに拠点を置く音響ソフトウェア企業「Sound Particles」。 わずか十数人規模のチームながら、その技術はすでにハリウッド作品にも使われており、映画の迫力ある音響表現を支えています。 例えば、巨大なモンスターの咆哮や爆発音など、“その場にいるように感じる音”の裏側には、こうした技術が関わっています。 音を“粒”として扱うという発想 Sound Particlesのコア技術は、少しユニークです。 音を単なる波形として扱うのではなく、「空間の中に存在する粒(パーティクル)」として扱うという考え方を採用しています。 これにより、 音の位置 動き 距離感 を3D空間上でコントロールでき、複雑なシーンでも自然な音の広がりを作ることができます。 さらに、少数の音素材から何千ものバリエーションを生成できるため、制作の手間を大きく減らせるのも特徴です。 なぜ「耳」を3Dプリントするのか ここで本題の“耳”の話です。 Sound Particlesのオフィスには、社員一人ひとりの耳や頭部、さらには上半身までを再現した3Dプリントモデルが並んでいます。 なぜここまでやるのか。 理由はシンプルで、...
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3D制作、実は“そこ”がムダだった?Chat3Dがやっていること
3Dモデリングは、ゲームやアニメーション、さらには3Dプリントまで、あらゆる分野で欠かせない存在になっています。 しかしその一方で、制作現場では「ツールが増えすぎて複雑化している」「実際のワークフローに合っていない」といった課題も根強く残っています。 こうした現場のギャップに対して、まったく異なるアプローチで挑んでいるのがフランス発のテック企業「Chat3D」です。 “新しいソフト”ではなく“仕組み”を作る Chat3Dの特徴は、いわゆる汎用3Dソフトを開発する企業とは少し違います。 彼らが目指しているのは、「新しいツールを置き換えること」ではなく、既存の制作環境に自然に入り込む技術を作ることです。 具体的には、モデリング、テクスチャ、リギングといった制作工程の中で、時間のかかる作業や繰り返し処理を自動化する小さな仕組み(モジュール)を開発し、既存ツールに組み込んでいきます。 つまり、アーティストの使うソフトを変えるのではなく、「そのままの環境で効率だけを上げる」という考え方です。 なぜ今こうしたアプローチが必要なのか 3D制作は年々高度化し、ツールの数も増え続けています。しかし、それらが必ずしも実際の制作現場に最適化されているとは限りません。 Chat3Dはこの点に着目し、 「問題はツールの性能ではなく、ワークフローとのズレにある」 という視点から開発を進めています。 これは、単にAIで自動化するのとは異なり、現場の流れそのものを理解した上で最適化するという発想です。 AIは“主役”ではなく“裏方” 近年の3D業界では、生成AIや自動設計が注目を集めています。 実際、AIは複数の設計案を生成したり、構造や材料を最適化するなど、設計プロセスを大きく変える可能性を持っています。 しかしChat3Dのスタンスは少し異なります。 彼らはAIを前面に押し出すのではなく、日常的な制作の中で自然に使われる“裏側の技術”として活用することを重視しています。 つまり、「ワンクリックで全部作る」、「AIが完全に代替する」といった方向ではなく、人の制作を支えながら、効率だけを引き上げる存在として設計されています。 3Dプリント分野との相性の良さ このアプローチは、特に3Dプリント(積層造形)との相性が良いとされています。 3Dプリントでは、形状の最適化、強度や構造の調整、出力データの整備といった工程が重要になります。 一般的な最適化ソフトも存在しますが、設計・解析・出力準備が分断されていることも多く、現場では手作業による調整が残りがちです。 Chat3Dはこうした工程に対して、設計の初期段階から製造条件を考慮したデータ生成を可能にする仕組みを提供しています。 これにより、「作ってから修正する」のではなく、最初から“作れる形”で設計することができるのです。 “現場と一緒に作る”という開発スタイル もうひとつ注目すべき点は、開発の進め方です。...
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レーザー溶接機で金属3Dプリンターを自作するという挑戦
3Dプリンターの世界で「金属を3Dプリントする」という分野は今でも高価で専門的な設備が必要とされています。 そんな中、市販のレーザー溶接機を使って金属3Dプリンターを作ろうとする個人プロジェクトが登場し、海外のハードウェアコミュニティで注目を集めています。 紹介するのは、DIY精神あふれるクリエイター Cranktown City による挑戦。彼は、なんとレーザー溶接機を3Dプリンターに取り付けて金属プリンターを作るという大胆な実験を進めています。 発想のきっかけは「安くなってきた高出力レーザー」 近年、ファイバーレーザー技術の進歩により、高出力レーザー機器の価格が下がってきています。 レーザー溶接機は本来、金属の溶接、金属の切断、表面のクリーニングといった用途で使われる機械ですが、この強力なレーザーを利用すれば、金属粉末を溶かして固めることも可能です。 これは、産業用の金属3Dプリンターで使われる「レーザー焼結(SLM / DMLS)」と似た考え方です。 つまり、レーザー溶接機 + 3Dプリンターの動き = 金属3Dプリントという発想です。 中古3Dプリンターをベースに改造 このプロジェクトでは、ゼロからすべてを作ったわけではありません。 ベースになっているのは、倒産したインソール(靴の中敷き)メーカーの3Dプリンターから取り外したモーションシステムです。 そこに以下のような改造が加えられました。 フレームを鋼材で補強 通常のホットエンドを取り外す 代わりにレーザー溶接ガンを装着 トリガー操作をCNC制御スイッチに変更 これにより、プリンターの動きに合わせてレーザーを照射できる構造が完成しました。 使われているレーザーは2000W この装置の心臓部は、2000Wのファイバーレーザー溶接機です。 ...
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【FDM】選択的アイロニングとは?模様・ロゴを3Dプリントに追加する方法を徹底解説
FDM方式の3Dプリンターには「アイロニング(Ironing)」という機能があります。 これは、プリントの最後にノズルをもう一度トップ面の上でゆっくり動かし、少量のフィラメントを押し出しながら表面を均すことで、より滑らかな仕上がりを作るテクニックです。 しかし、この機能を少し変わった使い方をすると、単に表面を綺麗にするだけではなく、模様やロゴを描くことができるんです。 その方法が「選択的アイロニング(Selective Ironing)」です。 この記事では、選択的アイロニングの仕組みから、各スライサーでの具体的な設定、CADでの模様の作り方、向いているケース・向いていないケースまで、実践で使えるレベルで詳しく解説していきます。 そもそもアイロニングとは? まず基本のおさらいから。アイロニングとは、FDMプリンターのスライサーに搭載されている機能で、最上面(トップサーフェス)をノズルで再度なぞって表面を平滑にする処理のことです。 通常のプリントでは、最終レイヤーの表面にどうしても積層ラインが残ります。アイロニングを有効にすると、最終レイヤーのプリント後にノズルがもう一度トップ面を走査し、ごく少量のフィラメントを押し出しながら表面のデコボコを埋めてくれます。 結果として、トップ面が滑らかで均一な質感の仕上がりになります(素材や設定によって光沢寄りになったりマット寄りになったりします)。一方、アイロニングされていない部分には通常の積層ラインが残ります。 この「アイロニングされた部分」と「されていない部分」の質感の違い。これが選択的アイロニングのカギになります。 選択的アイロニングの原理 通常のアイロニングは、トップ面全体に均一に適用されます。つまり、表面全体をならして滑らかにするための処理です。 選択的アイロニングはその発想を少し変えます。表面の一部だけにアイロニングを適用するのです。 これにより、アイロニングされた部分とされていない部分で質感や反射に差が生まれ、結果として模様が浮かび上がるようになります。 しかも面白いのは、この方法ではモデルの高さを一切変えずにデザインを追加できることです。 つまり、「色を変える必要なし」「追加のパーツなし」「形状変更なし」で、ロゴやパターンを入れることができます。 ▲ 選択的アイロニングの完成例。表面の質感差だけで模様を表現している(出典:Julius Makes) 実装の全体フロー このアイデアを考えたのは、Iulius Curt氏(YouTubeチャンネル:Julius Makes)です。...
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ラベルはもう不要?部品そのものにQRコードを“印刷する”
製造業では、部品の管理やトレーサビリティ(追跡可能性)が非常に重要です。しかし現場では今でも、ラベルやインク印字で部品を識別する方法が多く使われています。 ところが最近、3Dプリントの世界では少し違うアプローチが広がり始めています。 それは、QRコードを部品そのものに埋め込んでしまうという方法。 つまり、あとからQRを貼るのではなく、最初から部品の一部としてQRコードを作ってしまうというわけです。 QRコードを「造形の一部」にする 3DプリントQRコードは、普通のラベルとは違います。 製造後に貼り付けるのではなく、CADデータの段階でQRコードの形状をモデルに組み込みます。 方法は主に2つあります。 ① 凹凸で作るタイプQRコードの黒い部分を溝や突起として造形します。影のコントラストでスマホが読み取れる仕組みです。 ② マルチマテリアル印刷複数素材やインクを使って、よりはっきりしたコントラストを作る方法です。 どちらの場合でも、QRコードは部品そのものに永久的に刻まれることになります。剥がれたり、擦れて消える心配はありません。 なぜメーカーはこれを使い始めているのか 例えば医療機器メーカーでは、同じ部品でも設計が何度も更新されます。外見が同じでも、実は別バージョンの部品ということは珍しくありません。 ある医療機器メーカーでは、すべての試作部品にQRコードを埋め込み、「今手に持っている部品がどのバージョンなのか」を確実に判別できるようにしています。 QRコードをスキャンすれば、設計バージョンや製造履歴、組立マニュアルといった情報に直接アクセスできます。 つまり、物理パーツとデジタル情報がリンクするわけです。 現場で便利な使い方 この方法が特に役立つのは、次のような場面だと言われています。 治具や工具 工場の治具やツールは何年も使われることがあります。そこにQRコードを入れておけば、スキャンするだけで最新の作業手順を確認できます。 規制産業 航空宇宙や医療機器などでは、部品の履歴管理が必須です。部品そのものに識別コードを入れておけば、ラベルの貼り間違いなどのリスクを減らせます。 試作品管理 試作部品は見た目が同じことが多く、バージョン管理が大変です。QRコードを埋め込めば、見た目では分からない違いを簡単に識別できます。 静的QRコードと動的QRコード ただし、この方法にはひとつ重要なポイントがあります。 それは一度プリントしたQRコードは変更できないということ。 ...
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「市場で最も明るい?」Prusaが発表した蓄光フィラメント「PETG Ultraglow」
3Dプリントの世界では、素材の進化がそのまま表現の幅につながります。最近、フィラメントメーカーとしても知られる Prusa Research が、新しい蓄光フィラメント Prusament PETG Ultraglow を発表しました。メーカーによれば、この素材は「市場で最も明るい蓄光フィラメント」のひとつになる可能性があるとのことです。 暗い場所で光るフィラメント自体は珍しくありませんが、今回のUltraglowは明るさと発光持続時間の両方を強化した材料として開発されています。 強力な蓄光性能を持つPETGフィラメント Prusament PETG Ultraglowは、その名の通りPETGベースの蓄光フィラメントです。通常のPETGと同様に扱いやすい特性を持ちながら、光を吸収して暗闇で発光する粒子が配合されています。 蓄光フィラメントは、昼間や照明の光を吸収し、そのエネルギーをゆっくり放出することで暗い場所で光ります。これにより、以下のような用途で活用できます。 夜間に光る装飾オブジェ キーホルダーやアクセサリー 安全マーカーやサイン ボードゲームのコマや小物 特に暗所で視認性が必要なパーツでは、こうしたフィラメントが便利です。 ただし“かなり摩耗しやすい”素材 一方で、このフィラメントには注意点もあります。 蓄光フィラメントは一般的に非常に研磨性(アブレイシブ)が高い素材として知られています。 Prusament PETG Ultraglowも例外ではなく、ノズルに対する摩耗が強いとされています。 そのため、長時間使用する場合は以下のような対策が推奨されます。 hardened steel(硬化鋼)ノズル...
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「アイロニング」は本当に必要?|3Dプリント表面をきれいにする別アプローチ
FDM方式の3Dプリンターで出力したパーツを見ると、どうしても気になるのがトップ面のライン(積層痕)です。その対策として多くのスライサーに搭載されている機能が「アイロニング(Ironing)」です。 アイロニングは、造形が終わる直前のトップ層でノズルをゆっくり動かしながら、ごく少量のフィラメントを押し出して表面をならす処理です。これにより、積層ラインをつぶして滑らかな表面を作ることができます。 ただし、この方法にはひとつ大きな問題があります。とにかく時間がかかることです。 表面を滑らかにする別の方法 Makerコミュニティのクリエイター「Make Wonderful Things」は、この問題に対してシンプルな疑問を投げかけました。 「そもそもアイロニングしなくても、最初からきれいに出力できるのでは?」 そこで彼が試したのは、プリント設定を統計的に最適化するというアプローチです。 特に重要だと考えたパラメータは次の3つ。 ライン幅(Line width) フロー率(Flow ratio) 印刷速度(Print speed) トップレイヤーの品質は、この3つの組み合わせで大きく変わります。 組み合わせは1万通り以上 問題は、設定の組み合わせが膨大になることです。計算すると、テストすべき条件は約19,200通りにもなりました。 当然、すべてを試すのは現実的ではありません。 そこで彼は、統計学者 George E. P. Box の研究などを参考に、ベイズ統計(Bayesian analysis)を使ってテスト回数を大幅に減らす方法を採用しました。 つまり、 少数の条件でテストする...
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鱗のように連なるレンズ|イッセイ ミヤケが生んだ、少し未来へと向かうサングラス
サングラスというのは、基本的にはとてもシンプルな道具です。レンズが2枚あって、フレームがあって、顔にかける。それ以上でもそれ以下でもありません。 ところが、ときどきファッションはその常識を軽やかに裏切ります。 イッセイ ミヤケ のアイウェアライン「Issey Miyake Eyes」が発表したサングラス「UROKO」は、その好例。レンズはなんと片側4枚、合計8枚。普通のサングラスの倍どころか、まるで鱗のようにレンズが並んでいます。 8枚のレンズという異様な美しさ UROKOの最大の特徴は、レンズの構造。左右それぞれに4枚ずつのレンズが横一列に配置されています。 しかもレンズは、通常のように外側へ膨らむ凸レンズではなく、内側にカーブした凹レンズ。この形状によって、複数のレンズをフレーム内にコンパクトに収めることが可能になったとのこと。 結果として生まれるのは、普通のサングラスとはまったく違うリズムを持ったデザイン。整然と並ぶレンズが、どこか機械的でありながら、不思議と有機的な印象も与えます。 まるで、未来の昆虫の複眼のようでもあり、日本の伝統模様のようでもあります。 インスピレーションは日本陶芸 このデザインのルーツは、意外にも陶芸にあります。 UROKOのモチーフとなっているのは、陶芸家・加守田章二の作品。彼の陶器に見られる、繰り返しのパターンや独特の表面表現が、このサングラスのデザインに取り込まれています。 整然と繰り返されるモチーフ。しかし完全な均一ではない揺らぎ。 その感覚が、フレームのディテールにも反映されています。 フレームは3Dプリント UROKOのフレームは3Dプリントで製造されています。ただし、ここで目指されているのは工業製品らしい完璧な滑らかさではありません。 むしろその逆です。 仕上げ工程では、あえて表面に微妙な凹凸を残す加工が施されています。これは、加守田章二の陶器に見られる「完全に整いすぎない質感」を再現するためのもの。 近くで見ると、金属フレームでありながらどこか焼き物のような表情を持っています。小さなシルバーのネジが見える構造も、どこか工芸品のような佇まいを感じます。 つまりこのサングラスは、単なるファッションアイテムではなく、工業と工芸の境界にあるデザインということ。 テーマは「Dancing Texture」 UROKOは、IM MENの2026年春夏コレクション「Dancing Texture」の一部として発表されています。 カラーはダークグレー、ブラウンの2種類。...
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3Dプリントしたニチノールを“構造”で強くする
形状記憶合金として知られる「ニチノール(NiTi)」は、医療機器やアクチュエーターなどで広く使われている材料。曲げても元に戻る、温度で形が変わるという特性を持つ、非常に魅力的な金属として知られています。 しかし、このニチノールを3Dプリントで製造すると、従来の工業製法に比べて性能が落ちるという課題がありました。 スペインのIMDEA Materials Instituteとマドリード工科大学(UPM)の研究チームは、この問題に対し、材料そのものではなく“構造設計”で解決するというアプローチを打ち出しました。 この研究成果は『Virtual and Physical Prototyping』誌に掲載されています。 3Dプリントしたニチノールの課題 これまでの研究では、3Dプリント製のニチノールは、従来の工業製造品と比べて変形性能が約半分程度に低下することが報告されていました。 積層造形プロセスでは、微細な欠陥や組織変化が生じやすく、その結果、材料がやや脆くなってしまう傾向があります。つまり、「素材としてのポテンシャルを十分に引き出せない」というのが問題でした。 解決策は“素材改良”ではなく“形” 今回の研究チームは、材料成分やプロセス条件の最適化ではなく、ジオメトリ(形状)によって機械性能を高める方法に注目しました。 レーザーパウダーベッド融合(LPBF)方式を使い、織物のように編み込まれた構造体を設計・造形しました。具体的には、 メッシュ構造球状構造リング状構造チューブ状ラティス円筒形の織り構造 などの、複雑なアーキテクチャを持つニチノール部品を製作しています。 UPMおよびIMDEA Materials Instituteのアンドレス・ディアス・ランタダ教授は、「これまでで最も複雑な織り構造のニチノール」と説明しています。 アルゴリズムで設計する新フレームワーク この研究の大きなポイントは、アルゴリズムベースの設計フレームワークを導入した点です。 積層造形向けに最適化された設計アルゴリズムにより、ニチノール構造を2つの主要ファミリーに分類して開発しました。 チューブ状ラティス構造 円筒型の織り構造 そして機械試験の結果、剛性、耐荷重性能、エネルギー吸収能力、靭性(タフネス)などの特性が設計のみで大きく調整できることが分かりました。 これらの特性が、数桁レベルで変化可能であることが確認されています。つまり、材料の成分を変えなくても、「構造を変えるだけ」で性能を自在にコントロールできるということです。 CTスキャンで精度も検証 さらに研究チームは、造形後のサンプルをコンピュータ断層撮影(CT)で解析し、デジタルモデルとの一致度を検証しました。...
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FDM方式が「試作」から「量産」へ|2026年、デスクトップ3Dプリンターが工場になる日
FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンター。「試作用」「ホビー向け」──そんなイメージがまだ根強いかもしれません。でも2026年、その常識はかなりの勢いで塗り替えられつつあります。 「おもちゃ」だったはずのプリンターが工場を脅かしている 3Dプリント業界の専門メディア3DPrint.comのジョリス・ピールス氏は、2026年の業界予測の中でこう述べています。 「200ドルのプリンターが確実に印刷でき、800ドルのシステムで高い歩留まりが出る──デスクトップ3Dプリンティング革命が、予測から10年遅れでようやく到来した」 歩留まり90%超。数年前の産業用マシンでも簡単には達成できなかった数字が、今デスクトップ機で出ている。ピールス氏はこれを「アディティブ・マニュファクチャリング最大の進展」とまで言い切っています。 速度競争が変えたゲーム 何がここまで変えたのか。まず大きいのは「速度」です。 CoreXY構造の普及により、デスクトップ機でも加速度20,000mm/s²超、印刷速度600〜1,000mm/sが珍しくなくなりました。数年前の5〜10倍のスピードです。 画像出典: Tom's Hardware この高速化を支えるのが、サーボモーターへの移行。たとえばBambu Lab P2Sは押出トルクが従来比67%向上し、最大10kgの押出力を実現。フィラメントの流れをリアルタイム監視する閉ループ制御により、高速でも安定した品質を保っています。 焼結式のステンレスノズル(300℃対応)が標準装備され、カーボンファイバー配合フィラメントもノズル摩耗を気にせず使える。数年前なら「産業用」の仕様が、今やスタンダードです。 AIが「失敗」を見張る 速度だけではありません。AIによる品質監視が、FDMの信頼性を根本から変えようとしています。 プリンターに内蔵されたカメラが、印刷中にリアルタイムで異常を検出。いわゆる「スパゲティモンスター」(フィラメントが絡まった失敗プリント)を早期に発見して停止させる。無人での長時間印刷が現実的になります。 さらにモーター電流、押出速度、温度変化をリアルタイムで記録し、1パーツごとにQAレポートを生成する仕組みも登場。プリントファームが「品質保証付き」の部品を納品できるようになるわけです。 マルチカラー・マルチマテリアルが「使える」レベルに 画像出典: Tom's Hardware / Formnext 2025 Prusa Researchの「INDX」システムは、最大8つのツールヘッドを自動切替。従来のパージタワー方式と比べて印刷速度5倍、材料廃棄量80%削減。PLAとTPUなど硬さの違う素材を1つのプリントで組み合わせることも可能です。 Bambu Labの「Vortek」システムも、ホットエンド丸ごとを物理的にスワップする方式で、カラー切替時のパージを劇的に削減。マルチマテリアル印刷が「本当にコスト効果のある量産ワークフロー」に変わりつつあります。...
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3Dプリント住宅が世界で同時多発的に建ち始めている|2026年、6つの現場から
画像出典: COBOD / 3DCP Group 「3Dプリンターで家を建てる」。数年前まではSF映画のような話でしたが、2026年に入って状況が一変しています。アメリカ、ヨーロッパ、そして日本──世界各地で3Dプリント住宅の建設が"同時多発的に"始まっているのです。 プロトタイプの時代は終わった 3Dプリント建築は、これまで「技術デモ」の域を出ないものがほとんどでした。見た目のインパクトは大きいけれど、実際に住める家として認められるのか? コストは本当に下がるのか? ところが2026年、世界各地で次々と「実際に人が住む」3Dプリント住宅が着工・完成し始めています。しかもそれは単発の実験ではなく、数十戸規模のコミュニティとして。 アメリカ:3つの州で同時進行 カンザス州トピカ──州初の3Dプリント住宅 画像出典: WIBW 2026年2月末、カンザス州トピカのオークランド地区で、同州初の3Dプリント住宅の建設が始まりました。手がけるのは地元企業Trident Homes。 創業者のクリス・ステムラー氏は、「従来工法の3〜6倍のスピードで、約2ヶ月で居住可能になる」と見込んでいます。コストも1平方フィートあたり約50ドル(約7,500円)安い。購入者はカンザス州議会議員のマリ=リン・ポスキン氏。「看護師や教師など、地域で働く人が買える住宅が必要だ」と語っています。 テキサス州ヒューストン──80戸の手頃な住宅地「Zuri Gardens」 画像出典: HiveASMBLD / The Architect's Newspaper ヒューストン初の3Dプリント住宅コミュニティ「Zuri Gardens」は、規模がケタ違いです。ミネテックス地区に80戸の一戸建てを建設中。 開発を手がけるHiveASMBLDは、ICONの元メンバーが2022年に設立した企業。2階建て・約126平方メートルの住宅が28万ドル(約4,200万円)から。さらに、市からの最大12万5,000ドル(約1,875万円)の頭金補助が受けられます。 画像出典: HiveASMBLD...
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電動モーターを"丸ごと"3Dプリント|MITが実現した「材料費75円・3時間」の衝撃
工場の生産ラインで、ある日モーターが壊れる。代替品を取り寄せるには数日──場合によっては数週間かかる。でも、もしその場で「プリント」できたら? MITの研究チームが、そんな未来に一歩近づく成果を発表しました。 5つの素材を1台で。3時間で完成する電動モーター 2026年2月、MITの研究チームが学術誌「Virtual and Physical Prototyping」に発表した論文が話題になっています。内容はシンプルに言えば、「電動モーターを3Dプリンターで丸ごと作った」というもの。 しかも、使った素材は5種類。絶縁体、導電材料、軟磁性体、硬磁性体、そして柔軟素材。これらをたった1台のプリンターで、約3時間で組み上げることに成功しています。 材料費は、なんと約50セント(日本円でおよそ75円)。 完成したリニアモーターは、印刷後に磁石部分を着磁するだけで動作。従来の油圧増幅器を使うリニアエンジンの数倍のアクチュエーション(駆動力)を発揮したとのことです。 画像出典: Virtual and Physical Prototyping / Jorge Cañada et al. なぜ「モーターの3Dプリント」がそんなに難しいのか 3Dプリンターで何かを作ること自体は、もう珍しくありません。フィギュアもケースも治具も、みんな普通に印刷しています。では、なぜモーターの印刷がここまで注目されるのか。 答えは「素材の種類と形態の違い」にあります。 一般的なFDMプリンターは、基本的に1〜2種類のフィラメントしか扱えません。マルチマテリアル機でも、同じ形態(フィラメント同士)を切り替えるのがほとんど。ところがモーターを作るには、電気を通す素材、通さない素材、磁石になる素材、バネのように弾む素材──まったく性質の異なるものを組み合わせなければなりません。 今回のシステムでは、フィラメント、ペレット、導電性インクという3つの異なる形態の素材を、4つのエクストルーダー(押出機)で切り替えながら印刷しています。フィラメントは加熱溶融、ペレットはスクリュー押出、インクは圧力ディスペンシング。それぞれまったく違うメカニズムを、1台のプリンターの中でシームレスに動かす必要があったわけです。 研究を率いたMITマイクロシステム技術研究所のルイス・フェルナンド・ベラスケス=ガルシア主任研究員は、こう語っています。 「同じ"押し出し"という手法の、まったく異なる表現を、シームレスにひとつのプラットフォームに統合しなければなりませんでした。大きなエンジニアリング上の挑戦でした」 5つの素材、それぞれの役割 今回のモーターに使われた5つの機能性素材を整理してみましょう。 ▶...
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海底で“その場で造る”|コーネル大学が挑む、水中コンクリート3Dプリントの最前線
海の中は、建設にとって決して優しい環境ではありません。水圧、視界の悪さ、深度による制約──そして何より、海底インフラはすべて見えない場所にあるからです。 港湾構造物、海底パイプライン、ケーブル保護構造物など、水中での施工や修理は想像するだけでもコストも時間もかかる作業です。そんな海底建設に関して、コーネル大学の研究チームが試みている新しいアプローチが注目を集めています。 研究チームが試みているのは「海底で直接3Dプリントして構造物を作る」という挑戦です。 海底で“その場製造”という考え方 この研究を率いるのは、コーネル大学の土木・環境工学准教授スリラミヤ・ネア氏。チームは「陸上で作って海に運ぶ」のではなく、必要な場所で直接構造物を造形する“in situ(現地製造)”方式を開発しています。 もしこの方法が実用化されれば、陸上でのプレハブ製造や大型クレーンによる海上設置、大規模な船舶輸送といった従来の手間を大幅に削減できる可能性があります。 ネア氏は「海を乱さずに建設したい」と語っています。その背景にあるのは遠隔操作型の水中ロボットが静かに現場に入り、必要な構造物をプリントする──そんな未来像です。 DARPAの挑戦「水中でコンクリートを印刷せよ」 このプロジェクトは2024年に始まり、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)の支援を受けています。DARPAは1年以内に「数メートル水中で3Dプリント可能なコンクリート」を開発するというチャレンジを提示しました。 2025年には、技術的な目標を達成した場合に支給される140万ドル(約2億円)の助成金を獲得。現在は他の5チームと競いながら、最終デモンストレーションに向けて開発を進めています。 最終課題は、水中でコンクリート製のアーチ構造を3Dプリントすること。シンプルに聞こえますが、海中環境では極めて難易度の高い挑戦です。 材料は“海底の土” さらにDARPAは大きな条件を課しました。使用するコンクリートの主成分は海底の堆積物(セディメント)であること。 セメントの使用は最小限に抑える必要があります。これは輸送コストを減らすための条件ですが、材料的には非常に難しい問題です。これまで、海底堆積物を使って構造用コンクリートを3Dプリントした例はありません。 つまり、材料設計からすべて手探りの状態です。 水中最大の敵は“洗い流し” 水中コンクリートの最大の課題は「ウォッシュアウト(洗い流し)」だと言われています。セメント粒子が水中で拡散してしまい、十分に結合せず、構造が弱くなる現象です。 これを防ぐために化学添加剤を使うことは可能ですが、今度は材料の粘度が上がりすぎてポンプで押し出せなくなります。 つまり、水に流されないこと、ポンプで送れること、押し出した後に形を保つこと、層同士がしっかり結合すること、これらすべてを同時に満たす必要があるのです。 研究チームはコーネル大学内の大型水槽施設で何度もテストプリントを繰り返し、このバランスを探っています。 視界ゼロでの自律施工 実際の海底では、堆積物が舞い上がると視界はほぼゼロになります。そのため、人間が目で確認しながら作業することは困難です。 そこでチームは、センサーによるリアルタイム監視、ロボット制御、自律補正システムを組み合わせ、水中での自動造形を目指しています。 水中では「見えない」ことが前提。そのため、このプロジェクトは単なる材料開発ではなく、ロボティクスと制御技術の融合でもあります。 海底建設の未来はどう変わるか まだ研究段階ではありますが、この研究が成功すれば、海底パイプラインの補修、港湾基礎の補強、海中構造物の追加建設、洋上風力発電の基礎構造などを、より静かに、より柔軟に行えるようになる可能性があります。...
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0.6秒で立体完成?|中国チームが発表した超高速3Dプリント「DISH」とは
「3Dプリントは速いけど粗い」 「高精細にすると時間がかかる」 3Dプリントにはどうしても速度と精度のトレードオフがつきまとうもの、そう言われてきました。しかし、中国の研究チームが発表した新しい技術は、その常識を本格的に覆す可能性があります。 先日、清華大学・Imaging and Intelligent Technology Laboratoryの研究チームが、「DISH」と呼ばれる新しい3Dプリントプロセスを公開。この技術では、ミリメートルスケールの複雑な立体物をわずか0.6秒で造形し、しかも非常に高い解像度を維持できることが報告されています。 DISHとは何か? DISHは「Digital Incoherent Synthesis of Holographic Light Fields(デジタル非干渉ホログラフィック光場合成)」の略称です。 名前は少し難しく聞こえますが、ポイントは「光を高度に制御して、立体を一瞬で作る」という点にあります。 従来の3Dプリンターは、点を積み重ねるか、層を一枚ずつ積み上げるという方式でした。しかしDISHは違います。構造全体を同時に形成する“体積造形(ボリュメトリックプリント)”方式を採用しています。 高次元のホログラフィック光場を計算光学によって制御し、レジン内部に一気に立体構造を生成します。つまり、部分ごとに作るのではなく、「一瞬で全体を固める」イメージです。 実はこの技術、数年前より各国で開発が進められてきました。ただ今回、清華大学の研究チームはこれまでにない解像度における体積造形を成功させたのです。 驚異的なスピードと解像度、さらに 研究チームによると、DISHでは最小12マイクロメートルの微細構造を再現できたとのこと。これは非常に高い解像度です。 さらに、体積あたりの造形速度は最大333立方ミリメートル/秒。研究メンバーのウー・ジアミン准教授は、「これまでで最速の3Dプリント速度になる可能性がある」と述べています。 0.6秒で立体が完成するというのは、従来の積層型プリンターとは桁違いのスピードですが、実はもう一つの注目点は、装置構成のシンプルさです。 DISHでは、従来の光造形で必要だった大きなレジンタンクや可動式プラットフォームが不要とされています。必要なのは平坦な光学面のみで、その面は造形中も動きません。 これは装置の小型化や高い安定性につながる可能性があります。可動部が減ることで振動やズレの影響も抑えられます。...
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落書きがそのまま3Dプリントに| Cookiecadの「Doodle Mode」で誰でも自由に3Dモデルを作れる時代へ
3Dモデルを作るというと、CADソフトを使って細かい操作を覚える必要があり、「ちょっと試してみたい」という人にとってはハードルが高いものでした。そんな中、フィラメントメーカーのCookiecadが発表した新しいツール「Doodle Mode」は、その常識を大きく変えようとしています。 このツールの最大の特徴は、自由に描いた落書きをそのまま3Dプリントできるデータに変換できることです。複雑なCAD操作は必要なく、まるで紙にペンで絵を描くような感覚で3Dモデルを作ることができるというんだから、これは画期的です。 CAD不要、描くだけで立体になる これまで3Dプリント用のデータを作るには、Fusion 360やBlenderなどの専用ソフトを使い、押し出しやスケッチなどの操作を理解する必要がありました。しかしDoodle Modeでは、ユーザーは画面上に自由に線や形を描くだけで、その内容が立体化され、3Dプリント可能なモデルになります。 このツールを使えば、たとえば名前を書いたプレートやオリジナルのキーホルダーといったものを、文字通り“描いて作る”ことができるようになるとのこと。 このシンプルさは、これまで3Dモデリングを敬遠していた初心者にとって大きな魅力でしょう。 3Dプリンターをもっと身近なものに Cookiecadはもともとカラフルなフィラメントで知られるメーカーですが、今回のDoodle Modeは「作る体験」そのものを広げる方向の取り組みです。 3Dプリンターはすでに家庭でも使われるようになりましたが、「何を作ればいいのか分からない」「モデリングが難しい」という壁がありました。Doodle Modeはその壁を取り払い、思いついたアイデアをすぐ形にできる環境を提供します。 これまでの3Dプリントは、設計 → モデリング → スライス → プリントという工程が必要でした。 しかしDoodle Modeによって、描く → プリントするという、極めて直感的な流れが実現します。 これは、3Dプリントを専門的な技術から、より身近な創作ツールへと変える一歩と言えるでしょう。 試してみたい方は是非CADitで新しいプロジェクトを立ち上げDoodle modを選択してみてください。 ...
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チェーンなしで走る自転車?|3Dプリントしたギアで動力を伝えるユニークなDIYプロジェクト
3Dプリンターの魅力のひとつは、「壊れたものを直す」だけでなく、「仕組みそのものを作り直せる」こと。そんな発想をわかりやすく示してくれるのが、YouTubeチャンネル「The Q」を運営するセルギイ・ゴルディエフによる、チェーンを使わずに走る自転車のプロジェクトです。 彼は本来チェーンで動力を伝える自転車を、3Dプリントしたプラスチック製ギアだけで駆動する仕組みに作り替え話題を呼んでいます。 3Dプリントしたギアで動力を伝える この自転車の仕組みはシンプルですが、非常に面白いものです。 大きなギア1枚と、小さなギア4枚を直線状に並べて連結し、それぞれが噛み合うことで回転を伝えていきます。 ペダル側の大きなギアが回転すると、その動きが順番に小さなギアへと伝わり、最終的に後輪を回転させます。つまり、チェーンの代わりにギアの連動だけで動力を伝えているのです。 構造としてはシンプルですが、実際に機能させるためには高い精度も必要です。ギアのサイズや歯の間隔が少しでもズレていると、回転がスムーズに伝わらず、動作しなくなってしまうからです。 ここで3Dプリンターの精度が活きてきます。設計通りのサイズでギアを正確に出力できるため、プラスチック製でもしっかりと動力伝達が可能。かくしてチェーンなし自転車が誕生しました。 設計から取り付けまで、すべて自作 動画では、まずギアのサイズを正確に測定し、自転車のフレームに合うよう設計しています。その後、試作したギアを木製の台に取り付けて回転テストを行い、問題がないことを確認してから自転車本体に取り付けているプロセスがわかります。 最後のギアは後輪のハブに固定され、そこにギア列全体が連結されることで、時計の歯車のように滑らかに回転します。 3Dプリントされたギアはそのままでは白色ですが、視認性を高めるためにオレンジ色に塗装。見た目のアクセントとしても効果的で、DIYプロジェクトならではのカスタマイズ性を感じさせます。 3Dプリンターなら、交換部品も自宅で作れる このプロジェクトが示しているのは、「特殊なパーツでも自分で作れる」という3Dプリンターの大きなメリットです。 通常、自転車の特殊な部品が壊れた場合、専用の交換部品を探したり、修理店に持ち込んだりする必要があります。しかし3Dプリンターがあれば、設計データさえあれば、自宅で何度でも同じパーツを作り直すことが可能です。 特にギアのような機械部品は、サイズや歯数を自由に変更できるため、自分の用途に合わせたカスタマイズも容易です。例えば、 ・より軽量なギアを作る・異なるギア比を試す・壊れたパーツを即座に再生する といったことも、自宅で完結できます。 自作の幅を広げる3Dプリンターの可能性 今回のプロジェクトではギアのみが3Dプリントされていますが、理論的には他の部品も同様に自作できます。ペダル、カバー、アクセサリーなど、自転車のさまざまなパーツを自分仕様にカスタマイズすることも可能でしょう。 3Dプリンターは単なる造形ツールではなく、機械の仕組みそのものを作り替えるための道具でもあるんです。 今回のチェーンレス自転車はその好例。「壊れたものを直す」「部品を交換する」という発想から一歩進んで、「新しい仕組みを作る」というDIYの楽しさを教えてくれるプロジェクトに注目です。 🔥...
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宇宙で「3Dプリントする」という発想|月の土から電子回路まで
宇宙に3Dプリンターを持ち込む──このアイデアはかつてはSFの世界の話に過ぎませんでした。しかし2026年現在、それはすでに現実の技術となり、しかも次の段階へと進みつつあります。その象徴的な取り組みが、「月の土から電子部品を作る」というプロジェクトです。 宇宙での3Dプリントは2010年代から始まっていた 宇宙での3Dプリントの本格的な実用化は、2014年に始まりました。国際宇宙ステーション(ISS)に初めて3Dプリンターが設置され、プラスチック製の工具や部品が実際に宇宙空間で作られたのです。 これが重要だった理由はシンプルです。宇宙に物資を運ぶコストは非常に高く、わずか1kgの荷物を運ぶのに数十kg分の燃料が必要になります。つまり、「必要なものを地球からすべて持っていく」という発想には物理的な限界があります。 そこで生まれたのが、「宇宙で必要なものは宇宙で作る」という考え方。3Dプリンターは、そのための最も現実的な手段でした。 ISSではその後も、修理用の部品や実験器具などを現地で製造する試みが続き、「宇宙で製造する」という概念が実証されていきました。しかし、ここで新たな問題が浮かび上がります。3Dプリンターを宇宙に持ち込めても、材料まで地球から運び続けるのでは意味がありません。それでは結局、荷物がいっぱいになってしまいます。 次のステップは“現地の材料”を使うこと そこで注目されているのが「ISRU(In-Situ Resource Utilization)」、つまり現地資源利用です。月や火星にある材料をそのまま使い、建築や製造を行うという考え方です。 その中でも特に重要視されているのが、「レゴリス」と呼ばれる月の表面を覆う土壌です。 月のレゴリスは単なる砂ではありません。実はその約40〜45%が酸素を含んでいます。これはロケット燃料や生命維持に不可欠な資源です。 イギリスの企業Metalysisは、このレゴリスから酸素を取り出す技術を開発しています。彼らが使っているのは「溶融塩電解」という方法で、高温の塩化カルシウム中でレゴリスを処理し、電気を流すことで酸素を分離します。 そしてここからが重要です。 酸素を取り除いた後には、金属を含んだ導電性の残留物が残ります。 これまでは、この副産物は単なる副生成物として扱われていました。しかし今、この残留物が新たな価値を持ち始めています。 月の土から、電子回路をプリントする デンマーク工科研究所(DTI)は、このレゴリス由来の金属残留物を、3Dプリント可能な材料に変換する研究を進めています。 具体的には、電子回路を印刷するための導電インク、また導電性を持つ3Dプリント用粉末として利用することを目指しています。 これが実現すれば、月面で通信アンテナや配線、センサー部品、電子回路といった重要なインフラを、現地の材料だけで製造できるようになります。 これは単なる技術的進歩ではなく、宇宙開発のあり方そのものを変える可能性があります。 宇宙における“製造”という新しい概念 これまで宇宙開発は、「地球からすべてを運ぶ」ことが前提でした。しかし3Dプリントと現地資源利用の組み合わせにより、「現地で作り、現地で修理し、現地で進化させる」ことが可能になります。 例えば、月面基地の修理、ロボットのメンテナンス、通信ネットワークの構築、新しい科学機器の製造など、こうした月面で必要な作業を、地球からの補給なしに行えるようになります。 これは、宇宙開発を“遠隔操作”から“現地活動”へと変える重要な転換点です。...
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失敗プリントはゴミじゃない|家でフィラメントを再生する「ExtrudeX」という選択肢
3Dプリントは必要な場所にだけ材料を積むため、製造業の中では比較的ムダの少ない技術と言われています。それでも現実には、失敗プリントやサポート材、テスト出力の山が確実に溜まっていきます。「また素材が無駄になっちゃった」というため息をついたことがある人もいるのでは? そんな悩みに真正面から向き合ったのが、若いスタートアップ Creative3DP が開発したフィラメント再生機「ExtrudeX」。3Dプリントの無駄遣い問題を解消する、新たなソリューションとなるかもしれません。 フィラメント再生機は珍しくない。でも… フィラメントを再生する装置自体は、実は以前から存在しています。業務向けではオランダの 3devo などが有名で、品質や安定性の面では非常に優秀です。ただし、サイズも価格もそれなりに覚悟が必要になります。ExtrudeXが狙っているのは、そうした業務用途ではなく、「個人メイカーが自宅や作業場で使える」現実的なラインです。 ExtrudeXは全長約65cmとコンパクトで、FDMプリンターの横に並べて置けるサイズ感です。側面には持ち運び用のハンドルも付いており、イベントやシェア工房への持ち出しも想定されています。「リサイクル装置=大きくて重い」というイメージを、かなりうまく裏切ってくれます。 このマシンの一番ユニークな点は、完成品を買うのではなく、自分で組み立てることを前提にしている点です。シャーシや押し出し機構の一部は3Dプリント部品で構成され、モーターや電子部品は汎用品を使用しています。コストを抑えられるだけでなく、壊れたら直せる、仕組みが分かる、というのは日常的に使う道具として大きなメリットです。 対応素材はPLA・ABS・PETG ExtrudeXが扱える素材は、現時点ではPLA、ABS、PETGの3種類。サポート材や失敗プリント、不要になった造形物に加え、新品のペレットも混ぜて使用できます。Creative3DPが推奨しているのは、粉砕した廃材40%に対して、バージンペレット60%という配合。同じ素材同士で混ぜることが前提になります。完全なリサイクルではありませんが、品質と安定性を考えれば、かなり現実的なアプローチです。 運用手順は難しくありません。端材をシュレッダーやハサミで細かくし、素材に合わせて加熱温度を設定します。ホッパーに材料を入れてモーターを回すと、溶けた樹脂がストランド状に押し出されるので、それを引き取り機構に通して冷却し、フィラメントとして巻き取ります。慣れてくると、「プリント前の準備作業」に近い感覚で扱えるようになります。 完全自動じゃない、だからこそ面白い ExtrudeXは、ボタン一つで完璧なフィラメントが出てくる装置ではありません。フィラメント径の管理や材料の状態には、ユーザー側の理解と調整が必要です。ただその分、「失敗プリントが次の材料になる」という循環を、実感として味わえます。これは業務用の全自動装置では得られない楽しさとも言えるでしょう。 Kickstarterはすでに終了しており、価格は249ドル。現在は公式サイトで品切れ状態とのことですが、ExtrudeXが示したのは、3Dプリントにおける「捨てる以外の選択肢」です。失敗プリントをゴミ箱に入れるたびに少し引っかかっていた人にとって、このマシンは“循環を自分の作業場で完結させる”という、かなり魅力的な未来像を提示してくれています。 ExtrudeX https://creative3dp.com/products/extrudex-diy-filament-recycling-machine 🔥 人気記事 FDM方式が「試作」から「量産」へ|2026年、デスクトップ3Dプリンターが… → 電動モーターを"丸ごと"3Dプリント|MITが実現した「材料費75円・3時間… → 宇宙で「3Dプリントする」という発想|月の土から電子回路まで →...
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