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昆虫のためのユートピア|モアザンヒューマンと3Dプリントの交差点
フランスのアーティスト/デザイナーであるラファエル・エミーヌ(Raphaël Emine)が手がけた新プロジェクト「Les Utopies Entomologiques(昆虫学的ユートピア)」は、環境保全とアート、そして先端の3Dプリント技術を重ね合わせる試みとして注目を浴びています。 不思議なタイトルの作品の正体は、都市空間に置かれるセラミック製の「バグホテル(虫のホテル)」。六角形のパターンや曲線的なフォルムは、ミツバチの巣やシロアリの塚など自然界の建築物に着想を得てデザインされたものだそうです。 Raphaël Emine 「モアザンヒューマン」と「マルチスピーシーズ」 ここ数年、人文学では「モアザンヒューマン(more-than-human)」や「マルチスピーシーズ(multi-species)」という視点が活発に議論されています。 これは、人間中心主義(ヒューマニズム)を一度問い直し、人間以外の存在 ― 動物、昆虫、植物、菌類、さらには非生物的な存在まで ― とどう共生していけるのかを探るものです。 例えば、アナ・チンの『マツタケ』という著作に代表されるような多種共生的な世界観をフィールドワークやデザインに取り入れる動きが広がっています。 この潮流は、単なる生物学やエコロジーではなく、人間の暮らしや都市空間、テクノロジーの使い方そのものにも再考を迫っています。 土とデジタルのあいだに エミーヌの「バグホテル」も、まさにこうした思想に根差した作品です。 イタリアのセラミック3Dプリンタ企業WASPと協働し、WASP 40100 LDM や Delta WASP 2040 Clay といったマシンを使ってリサイクル粘土から複雑な形状を造形。その後、一つ一つを手作業で仕上げ、釉薬をかけずに焼成することであえて多孔質の表面を残しています。 これにより、苔が育ちやすくなり、昆虫が巣を作りやすい環境が整う。作品が都市の公園や庭に設置されると、それは単なる彫刻作品ではなく、昆虫、コケ、バクテリア、微細な植物などが共生する“生きたラボ”になるのです。 Raphaël Emine...
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自然のしくみを家具デザインに活かす。Ta.Tamuが示す3Dプリント家具の最前線
最近、家具界隈でひそかに話題を呼んでいる椅子があります。それがDassault Systèmes(ダッソー・システムズ)とフランス人デザイナーのパトリック・ジュアンが発表した、世にも美しい3Dプリントチェア「Ta.Tamu」。 こちらの写真がその椅子。一見、繊細でレースのような骨組みが目を引きますが、このデザインには最先端のテクノロジーと自然の知恵が詰まっている、とのことです。 4年間のコラボが生んだ革新的プロジェクト Ta.Tamuは、Dassault Systèmesの3DEXPERIENCEプラットフォームを活用して開発されました。開発は約4年にわたって進められ、AIを活用したバーチャルツイン(仮想双子)技術と、材料効率を追求するデザインプロセスを組み合わせて形にされたそうです。 驚きはその耐荷重。椅子自体の重さはわずか3.9kgなのに、最大で100kgもの重量を支えることができるそう。構造は生物の骨の密度や関節の動きから着想を得たバイオミミクリ(生体模倣)デザインで、内部はラティス(格子)構造になっています。 しかも、Ta.Tamuは折り畳まれた状態で平らに3Dプリントでき、追加の組み立てが不要という点もユニークです。 自然から学ぶ、無駄のないデザイン哲学 パトリック・ジュアンは、この椅子に込めた思いについて「自然は必要な分だけのエネルギーと材料を使う。私たちもそのシンプルな哲学をTa.Tamuの開発に取り入れました」 と語っています。 Dassault Systèmesの新しいコラボレーション技術を活用することで、従来の家具づくりでは考えつかなかった形や構造を、効率的に、しかも廃棄物を減らしながら生み出すことができたのです。 3Dプリント家具に挑み続けるデザイナー ところでパトリック・ジュアンという方、この人は2004年に「Solid Collection」という3Dプリント家具を発表して以来、この分野を切り拓いてきた第一人者です。2019年からはDassault Systèmesとのパートナーシップを開始し、ジェネレーティブデザインや折り畳める構造の開発に取り組んできました。 Dassault Systèmes自体も、航空宇宙や自動車、ライフサイエンスなど幅広い産業で37万社以上が利用するプラットフォームを提供しています。まさに業界のパイオニア。その彼が満をじしてリリースするのが、このTa.Tamuということです。 デザインとテクノロジーの未来 Ta.Tamuのような椅子は、単なるプロダクトではなく、これからのデザインやものづくりの在り方を示す一つのビジョンでもあります。自然に学ぶ材料効率の考え方、AIで形状を最適化するジェネレーティブデザイン、そして3Dプリントでしか形にできない造形美。 これらが組み合わさることで、家具は単なる道具ではなく、構造美を備えたアートのような存在へとも進化していきます。デザインの最前線が、自然のしくみとテクノロジーの融合で、どこまで進化できるのか――これからの展開にも注目したいところです。 Dassault Systèmes 公式サイト Patrick Jouin 公式サイト
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ガラス3Dプリントがついに一般ユーザーにも可能に?低温造形に挑むLincoln Laboratoryの新技術
ガラス。 それは私たちが日常で当たり前のように使っている素材の一つです。窓やコップはもちろん、スマホの画面や光ファイバーなど、ガラスはさまざまな形で私たちの生活を支えています。 ガラスが優れているのは、単に透明だからというだけではありません。化学的に安定していて、電気を通さず、熱に強く、さらにリサイクル性も高い。こうした特性は産業分野でも非常に魅力的です。 ところが、これまでガラスは3Dプリントにはあまり向いていないとされてきました。その最大の理由は、成形に必要な温度の高さです。ガラスを溶かすにはおおよそ1,000℃以上もの高温が必要で、しかも温度管理を少しでも誤ると割れやすくなったり、内部に気泡が入ったりと、非常に繊細な工程になります。 そもそもガラスの3Dプリントはどう進化してきた? 実はガラス3Dプリントの研究自体は10年以上前から進められてきました。代表例として有名なのが、MIT(マサチューセッツ工科大学)のG3DP(Glass 3D Printing)プロジェクトです。 2015年頃に発表されたこのプロジェクトでは、高温で溶かしたガラスをチャンバー(加熱室)の中で押し出すことで造形する手法が注目を集めました。ただしこの方式は1,000℃以上の高温に耐える機材や安全対策が不可欠で、一般的な樹脂3Dプリンターのように気軽に使えるものではありませんでした。 他にも、微細なガラスパウダーをレーザーで焼結させる方法(SLS方式)や、紫外線硬化型のガラス樹脂を使う研究も進められていますが、いずれも高価な設備や高度な後処理が必要になる点は課題として残っていました。 低温でガラスをプリント?Lincoln Laboratoryの挑戦 こうした中、アメリカのMIT Lincoln Laboratoryの研究チームが発表した新しい技術が話題を呼んでいます。今回のチームは、「Direct Ink Printing(直接インクプリント)」と呼ばれる手法を使い、なんと常温からわずか250℃の加熱でガラスの3D造形を実現したんです。 従来の高温での溶解とは異なり、この手法ではシリケート溶液と無機ナノ粒子を組み合わせた特製の「インク」を使います。インクは直径約410ミクロンのノズルを通じて、一層ずつ押し出されます。このとき、プラスチック、金属、ガラス、シリコンなど様々な基盤に常温で積層できるのが大きな特徴です。 積層後、シリケート粒子同士が化学反応を起こし、シリカ粒子と結合して3次元構造が形成されます。いずれにせよ、これはすごい技術革新です。 造形後の後処理もポイント Lincoln Laboratoryのプロセスでは、プリント後に後処理(ポストプロセス)が行われます。具体的には、造形物を250℃に加熱したミネラルオイル浴に浸し、構造を硬化させます。その後、残留した鉱物成分を取り除くために有機溶媒(トルエンとイソプロパノールの混合液)で洗浄します。 実はこの一連の流れにより、高解像度で収縮の少ないガラス構造体を比較的低温で作ることができ、熱安定性も確保できるとのこと。ポイントは後処理にあったんです。 MIT Lincoln Laboratory の公式サイトより 気になる今後の可能性 今回の成果はまだ初期段階。しかし、これまで高温がネックだったガラス3Dプリントにとっては大きなブレイクスルーになる可能性が十分にあります。 もちろん、後処理工程が増えるため、造形にかかる時間自体は短縮できません。しかし、装置の安全性やエネルギーコストの面では大きな躍進です。...
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PartCrafterという新しい挑戦|これまでの3Dモデル生成AIとどう違う?
最近また一つ、AIが3Dプリンティングの可能性を大きく広げるプロジェクトが登場しました。それが PartCrafter(パートクラフター) というツールです。これは一枚のRGB画像から、異なる形状の複数の3Dメッシュを生成できるというもので、2Dのイラストからでも非常に複雑な3Dモデルを作り出せるのが特徴とのこと。 もしこのプラットフォームがその性能を十分に発揮できれば、わざわざモデリングソフトを使って一から形を作らなくても、写真一枚から必要な部品を3Dプリントできるようになるかもしれません。 3Dモデル作りの「面倒くささ」をAIが解決? 3Dプリンティングにおいて、3Dモデルを作る工程はとても重要で、同時に一番ハードルが高い部分でもあります。3Dモデリングは時間がかかる上に、思い通りの形にするには専門的なソフトの操作スキルが必要です。 一部では、既に完成した3Dデータをオンラインプラットフォームで探してダウンロードする方法も普及していますが、自分の欲しい形が必ず見つかるとは限りませんし、カスタマイズ性にも限界があります。 「どうすれば、もっと効率的にモデリングできるか?」「エラーや失敗を減らして、時間も短縮できないか?」こうした課題に対して、PartCrafterは一つのヒントを示しています。 PartCrafterの仕組みとは? PartCrafterは、中国の北京大学、アメリカのカーネギーメロン大学、そしてByteDance(TikTokで有名ですね)のチームが開発したオープンソースのプラットフォームです。 使い方はとてもシンプルで、ユーザーがまず2D画像をアップロードします。するとツールがその画像を解析して、3Dのパーツに分解していきます。 ここでポイントになるのが、PartCrafterが活用している膨大なデータベースです。複数のソースを組み合わせて、約13万点の3Dオブジェクトを収集しており、そのうち10万点は複数のパーツで構成されています。 ただ集めただけではなく、テクスチャのクオリティやパーツの数、パーツ同士の交差の割合(IoU:Intersection over Union)などの基準でフィルタリングを行い、質の高いデータを残しています。最終的にはおよそ5万点のタグ付きオブジェクトと、30万点もの個別パーツで学習しているそうです。 AIは新しいデータを学習し続けることで進化していくので、PartCrafterも使われれば使われるほど、より正確で複雑な形状を生成できるようになります。つまり、これは進化型ツールであるということです。 実際にどんなことができる? たとえば、複雑な形状の航空機の部品を写真一枚から再現できたらどうでしょう?これまでなら専門のエンジニアが何時間もかけてモデリングしていたものを、PartCrafterが自動で3Dメッシュに分解してくれます。 そのメッシュを3Dプリンタ用のデータに変換すれば、部品の試作などにもすぐ活用できるかもしれません。 もちろん、まだまだ課題もあります。たとえば、本当に既存の3Dモデリングソフトで作ったものと同じレベルの精度や解像度が出せるのか?テクスチャや細かいディテールはどこまで表現できるのか? こういった点は今後ますます改良されていくだろうと予測されていますが、現行の3Dデータ生成ツールにおいて、このPartCrafterは一つ頭が抜け出る可能性を秘めています。 実用レベルまで進化する日はいつ? 3Dプリンティングの分野では、AIを使った自動モデリングの研究は以前から進められてきましたが、PartCrafterの面白いところはオープンソースである点と、画像一枚から複数パーツを生成できる点にあります。 もしこれが実用レベルまで進化すれば、デザイナーやエンジニアだけでなく、3Dプリンティング初心者でももっと気軽にオリジナルパーツを作れるようになるかもしれません。現状、その日がいつになるかは発表されていませんが、近い将来、リリースされることになりそうです。 実際にPartCrafterはGitHubでプロジェクトがすでに公開されていて、誰でもコードや論文を読むことができます。気になる方はぜひチェックしてみてください。 AI×3Dプリンティングの未来は、まだまだ発展途上ですが、だからこそ目が離せません。今後も面白い動きがあれば、またご紹介していきます。 PartCrafter GitHub リポジトリ PartCrafter...
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2025年 夏季休業のお知らせ
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。誠に勝手ながら、弊社では下記の期間を夏季休業とさせていただきます。 休業期間2025年8月12日(火)~2025年8月15日(金)8月9日(土)~11日(月祝)、8月16日(土)~8月17日(日)は通常休業です。 お問い合わせフォームでのお問い合わせは、2025年8月18日(月)以降に順次ご対応となりますため、ご返答までに通常よりお時間をいただきますこと、あらかじめご了承くださいませ。 なお、在庫がある商品で2025年8月8日(金)午前9時以降のご注文の商品の発送は、2025年8月18日(月)より順次発送予定でございます。(天候や社会情勢により発送が遅れる場合がございます。)お急ぎの方は余裕をもって8月5日(火)頃までにご購入いただけますようお願いいたします。 ご注文に関する注意 ※通常より商品の発送までにお時間かかりますことをあらかじめご了承ください。※天候や社会情勢および配送会社都合により配送が遅れる場合がございます。※休業中に在庫切れによる予約商品になった場合、発送日は上記対象外となり、商品入荷次第の発送となります。 ※住所不備(郵便番号相違、番地以降漏れ)、注文内容のお間違えが大変多く発生しております。不備などが発生いたしますと、確認のためのご連絡など発送までにお時間を要してしまいますため、恐れ入りますが確定前にご自身で内容を今一度ご確認くださいますようお願いいたします。 ご不便をお掛けいたしますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
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伝統のハリスツイードと最先端の3Dプリント技術が出会ったら?
スコットランドの最果て、アウター・ヘブリディーズ諸島で織られる「ハリスツイード」。 日本でもファッション好きの間でおなじみの高級ツイード生地ですが、その裏には100年以上続く職人たちの伝統技術が詰まっています。実はこのハリスツイード、スコットランドの法律でも守られていて、「アウター・ヘブリディーズの職人が手織りしたもの」だけが正式にハリスツイードと名乗れるんです。 20世紀初頭のハリスツイードの機織り機 そんな歴史ある技術の世界にも、ちょっと意外なハイテクの風が吹いてきました。そう、3Dプリント技術が、伝統を守りながら未来へとつなぐために活躍しているんです。 壊れたら半年待ち?伝統機織り機の課題 ハリスツイードの生産には、専用の手織り機(loom)が必要ですが、これがまた精密で複雑。中には100年前の機械を使い続けている職人さんもいます。もし部品の一つが壊れてしまったら、なんと修理に最大半年かかることも。 ある織り職人のジョン・ベニーさんは、部品が壊れたときに、なんと自分の車のパーツ(Ford Kaのフライホイール)を使って修理したというエピソードも。創意工夫でどうにかする精神はまさに職人魂ですが、さすがに限界があります。 そこで立ち上がったのが、Harris Tweed Loom Spares社とスコットランドの国立製造研究機関(NMIS)のコラボチーム。3Dプリンターとデジタル技術を活用して、壊れた部品をその場でプリントして修理できる仕組みを開発しています。 これにより、例えば7つの部品で構成されていた複雑なパーツも、わずか3つの3Dプリント部品に集約。しかもコストは従来の1%以下、最短2時間で修理完了という驚きのスピード感。現場の職人さんたちも「壊れてもすぐ直せるから、仕事に集中できる」と喜んでいるそうです。 画像引用:NMIS 伝統×イノベーション=未来への橋 このプロジェクトの注目ポイントは、単に修理効率を上げるだけではなく、伝統を守るためのテクノロジー活用だということ。ハリスツイードの機織り機は、それぞれの職人によってカスタムされているため、部品も一つひとつ違います。そこで開発チームは、カスタマイズしやすい柔軟な部品設計を目指して、職人と一緒にテストと改良を重ねています。 ハリスツイード協会のマネージャー、ケリー・マクドナルドさんもこう語っています。 「私たちは伝統を大切にしています。でも、次の世代のためにはイノベーションも欠かせません。3Dプリントによって、生地の質を保ちつつ、職人が安心して働ける環境が整いました。」 日本のファンにも届けたい、伝統工芸とテクノロジーの物語 ハリスツイードはその美しさと品質で世界中のファッションブランドに愛されています。ヴィヴィアン・ウエストウッドやディオールといったハイブランドも、この生地を使っています。 でも、こうした伝統の背景に3Dプリンターが活躍していることは、あまり知られていないかもしれません。手工業と3Dプリント技術は対立的に語られることもありますが、実は新しい技術が100年の歴史を持つ織物の世界を支えていることもあるんです。 参照記事https://www.nmis.scot/whats-happening/news/harris-tweed-weaves-next-generation-technology/
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3Dプリントを変えるAI技術|7つの最前線
AI(人工知能)はあらゆる産業に変革をもたらしていますが、3Dプリントの世界も例外ではありません。設計から製造、品質管理、そしてメンテナンスまで、AIが関わることで「速く」「賢く」「ムダなく」ものづくりができるようになってきました。 ここでは、3Dプリント×AIの最前線を7つのトピックに絞ってご紹介します! 1. スケッチから3Dモデルを自動生成! 「紙に描いたアイデア、すぐに立体にできたらいいのに」──そんな願いをAIが叶えます。手描きのスケッチや設計図をAIが読み取り、3Dデータを自動で生成してくれるんです。これにより、CADの専門知識がなくても、アイデアをすぐにカタチにできるようになってきています。まさに、デザインの民主化! 2. モデル設計をAIが最適化してくれる AIは「重さを軽くしたい」「強度を上げたい」などの条件をもとに、最適な形状を自動生成してくれます。これは「ジェネレイティブデザイン」と呼ばれる手法で、人間の想像を超えた効率的な形が次々と提案されています。材料コストや開発時間の削減にもつながる、まさに一石三鳥の技術です。 3. STLファイルのエラーを自動でチェック&修正 3Dプリントの失敗原因で多いのが「STLファイルの不備」。パッと見では分からない細かいミスが、印刷エラーにつながります。そんなとき、AIがファイルを自動でスキャンし、エラーを検出・修正してくれるツールも登場しています。他人からもらったファイルや複雑なモデルでも、安心して使えるようになります。 4. サポート材と内部構造を最適化 AIは「どこにサポート材が必要か」「中をどう埋めたらいいか」も判断してくれます。必要最小限のサポートで後処理がラクになり、材料のムダも削減。さらに、使い方に応じて内部構造を変えることも可能で、強さ・しなやかさ・軽さなどを自由に調整できます。 5. 印刷前に「失敗しそう」なポイントを予測 AIが印刷前に熱変形、素材の収縮、ノズルの衝突などをシミュレーションで事前チェック。問題が起きそうな箇所をあらかじめ教えてくれるので、長時間かかるプリントでも安心です。失敗してから気づくのではなく、始める前にミスを防げるのがAIの強みですね。 6. 印刷中のトラブルもリアルタイムで検出! 造形中に起きがちな「反り」「つまり」「定着失敗」なども、カメラとAIでリアルタイムに監視。問題が発生するとアラートを出したり、プリントを自動で一時停止したりできます。複数台のプリンターを遠隔管理している人にとっては、無駄な失敗を減らせる強力な味方になります。 7. プリンターの健康状態を“予知”する 3Dプリンターも、使い続けるうちに部品が劣化します。ベルトの緩み、ノズルの汚れ、モーターの異常などは、意外と気づきにくいもの。でもAIなら、センサーで集めたデータを分析して、「そろそろメンテナンスが必要かも」と事前に教えてくれるんです。突発的なダウンを防げるので、連続稼働の現場では特にありがたいですね。 AIと3Dプリントの未来は、もう始まっている 3Dプリンターの普及は「誰でも作れる時代」の到来と言われています。そして、その裏側ではAIが静かに、でも確実に革命を起こしているんです。スピードも、精度も、効率も、全部AIでレベルアップしていくことは間違いありません。 3Dプリンターにすでに関わっている方も、これから始めたいという方も、AIを味方にすれば、きっと新しい発見があります! ものつくりの民主化のネクストステージはまもなくです!
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世界初!8歳の少年に3Dプリントのチタン製大腿骨を移植——ベトナム発、挑戦の物語
がんと闘う8歳の少年の脚を守るために、世界で初めて完全3Dプリントのチタン製大腿骨(だいたいこつ)が移植されました。この画期的な手術を行ったのは、ベトナム・ハノイにあるVinmec Times City 国際病院。少年の脚を残すことができただけでなく、子ども向けの骨肉腫(こつにくしゅ)治療に新しい希望の道を切り開いたとして、世界中の医療関係者の注目を集めています。 子どもの未来に合わせて設計された、大腿骨 通常、大腿骨の全置換手術では既製品のインプラントが使われることが多いのですが、特に成長期にある子どもには合わないことが多く、何度も再手術が必要になるケースもあります。 そこで今回使われたのが、完全オーダーメイドの3Dプリント大腿骨。しかもその設計・製造は、すべてベトナム国内で行われたというから驚きです。設計を担当したVinUni(ヴィン大学)の3D医療ラボでは、少年の骨の形や将来的な成長も細かく分析。将来の変化にも対応できるモジュール式の設計で、これまでにない柔軟性を実現しました。 “断脚”を拒んだ母の強い想いが動かした医療チーム この挑戦のきっかけは、少年のお母さんの強い願いでした。がん治療後、医師たちは断脚(脚を切断)を提案しましたが、母は「息子の未来を奪いたくない」と断固として拒否。医療チームはその思いに応え、誰も挑戦したことのない新しい道を選ぶ決断をしました。 手術は2段階で実施。2024年1月に腫瘍を除去し仮の人工骨を入れて治療を進め、2025年5月に本番の手術で3Dプリントされた大腿骨を移植。少年の体調と成長、そして精密な設計の完成を待った上での慎重なステップでした。 東南アジアから、世界へ。進化する地域医療の力 この手術は単なる成功例にとどまりません。「高性能な医療機器は欧米製」という常識に挑んだ、地域主導の医療イノベーションの象徴でもあります。 3Dプリント技術を活用することで、海外メーカーに頼らず、早く・安く・患者にぴったり合った医療機器を作れる。しかも、地元の医師・技術者・研究者が一体となって進めたプロジェクトだからこそ、ここまで実現できたのです。 ベトナムはもちろん、東南アジア全体が、世界水準の「精密医療」を自国で実現する力をつけ始めていることを、この手術ははっきりと示しています。 あきらめなかった親子の想いが新しい医療を生み出す もちろん、3Dプリントや最先端医療の話としても十分に興味深いですが、この物語の核にあるのは「あきらめなかった親子の想い」かもしれません。 「手術が成功する保証はなかった。でも、可能性が少しでもあるなら挑戦したかった」——そんな想いが、医療チームに火をつけ、技術者を動かし、国の医療体制に新たな一歩を踏み出させました。 今、少年は自分の脚で、自分のためだけに設計され、成長に合わせて伸びる、未来を見据えた大腿骨と共に、再び歩いています。 写真:Vinmec Healthcare System
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AI × 3Dプリントで靴を「誰でも作れる」時代へ──Syntilayが切り拓く次世代フットウェアの可能性
ファッション業界の中でも、近年とくに注目されているのが「フットウェア(靴)」における3Dプリンティング技術の進化です。これまでは大量生産が前提だった靴づくりに、カスタマイズやオンデマンド生産、さらにはAIを活用した新しい創造の形が加わりつつあります。 そんな中、フロリダを拠点に活動するスタートアップ「Syntilay(シンティレイ)」が登場しました。同社は、これまで靴づくりにアクセスできなかったクリエイターたちに、その可能性を開放しようとしています。AIと3Dプリント技術を融合し、誰もがオリジナルの靴をデザイン・制作・販売できる新しいプラットフォームを構築しているのです。 靴づくりは「一部の人のもの」ではなくなる これまで、靴を自分で作るというのは、資金や工場、専門知識がなければ不可能に近いものでした。YouTuberやインフルエンサーであっても、大手ブランドと契約を結ばなければ、自分のシューズラインを出すことは難しかったのです。 Syntilayは、そうした制約を取り払いました。同社のプラットフォームでは、デザイナーやブランドがわずか3カ月で靴を企画・制作・販売できる仕組みを提供しています。従来のフットウェア業界では、新しい靴を市場に出すのに約18カ月かかると言われているため、これはまさに“異次元のスピード”です。 AIがデザインを、3Dプリンターが現実化する Syntilayの最大の武器は、AIによるデザイン支援と、Zellerfeld社との提携による3Dプリント製造です。 まず、靴のデザインは手描きから始まるのではなく、AIによるコンセプト生成からスタートします。Vizcomなどのツールを用いて、AIが形状や構造を提案し、それを人間のデザイナーがブラッシュアップしていくというハイブリッドな体制がとられています。 また、シューズの模様やテクスチャー、内部構造にもジェネレーティブAIが活用されており、約70%の工程はAI主導で進められています。これにより、従来の「大量生産・画一的なデザイン」では生まれなかった、まったく新しいシューズのスタイルが次々と登場しています。 そのデータを元に、TPU素材を使ったフル3Dプリントが行われます。Zellerfeldは、あのNikeの初のフル3Dプリントスニーカーも手がけた企業であり、プリント精度と耐久性に定評があります。 Syntilay 「型」がないから、すべてが自由に 従来の靴づくりでは、サイズごとに異なる金型(6号、7号、8号…)を作る必要がありました。これは膨大なコストと時間を要し、大量生産でなければ割に合わない構造でした。 しかしSyntilayのシステムでは、その「型」が不要。3Dプリントによって、注文が入ったサイズ・カラーだけをオンデマンドで出力できるため、在庫を持つ必要もありません。これにより、失敗や在庫ロスのリスクを極限まで削減することが可能となっています。 内部構造も工夫されており、三角構造を持つインナーグリッドは、履き心地と出力効率を両立。これもAIと3Dプリントの融合だからこそ実現したデザインです。 Syntilay 「靴を作る」という行為の民主化 Syntilayが目指しているのは、靴の開発や製造に必要だった資金・知識・人脈といったハードルをなくし、「誰でも靴を作れる」未来を実現することです。販売面でも、完成した靴はSyntilayのオンラインプラットフォームを通じて世界中に販売可能で、クリエイター自身がファンに向けて自由に発信できる仕組みが整っています。 将来的には、人気モデルは従来の大量生産体制でも製造し、3Dプリントはカスタマイズやテスト、初期リリースに特化させるというハイブリッドモデルも視野に入れています。 3Dプリントの未来と、その先にあるSyntilayのビジョン Syntilayが描く未来像は明確です。今後10年で、3Dプリントによるシューズ製造コストは、伝統的な製造方法と同等かそれ以下にまで下がると見ています。生産拠点も分散型に展開できるため、世界中どこでも、必要な地域にだけプリンターを置けばよいという新しいグローバルモデルが生まれるのです。 その中でSyntilayは、AIが設計し、3Dプリンターで実現される次世代フットウェアのリーダーとして、より多くのブランドやクリエイターとコラボレーションしていく方針です。 デジタルとフィジカルの融合が“ものづくり”を変える AIと3Dプリントは、単なる技術トレンドではなく、物理的なプロダクトの制作プロセスそのものを変える鍵です。Ben Weiss(Syntilay CEO)も語るように、AIによって生み出されたデザインは、これまで人間の発想が届かなかった新しい形や構造をもたらします。そして、それを具現化するのが3Dプリントなのです。 「靴を作るのは、もはや一部の企業や職人の特権ではない」。そんな時代が、確実に近づいています。
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工具不要、3Dプリントだけで組み立て可能!子どもたちのための次世代車いすが誕生
もしも、3Dプリンターだけで、しかも工具やネジを一切使わずに、子ども用の車いすを作れるとしたら? そんな“夢のようなプロジェクト”が、アメリカ・ニューオーリンズを拠点とする非営利団体「MakeGood」によって実現されました。 このたびMakeGoodが発表したのは、世界初となる完全3Dプリント製の子ども用車いす。すでにプロトタイプが完成し、将来的には誰でもダウンロードして、家庭用3Dプリンターで出力・組み立てできる形での提供が予定されています。 2歳から8歳までを対象にした“未来のモビリティ” この車いすは、2〜8歳の子どもを対象にデザインされており、特に運動障害を抱える子どもたちに、早期からの「自立した移動手段」を提供することを目的としています。 開発にあたり使用されたのは、弊社SK本舗でも取り扱い中のBambu Lab社のデスクトップ3Dプリンター「A1」。家庭用ながら高精度かつ高速な出力が可能で、すべての部品がこの1台でプリントされています。 最大の特徴は、工具・ネジ・接着剤が一切不要な点。パーツ同士がパズルのように組み合わさる構造で、直感的に組み立てることができます。組み立てのハードルを下げることで、必要とする家族が世界中どこにいてもアクセスできるようになるというわけです。 Credits: Noam Platt, LinkedIn 子どもの成長や使用シーンに合わせた実用性 素材にはPETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール変性)という耐衝撃性に優れたプラスチックが使われており、屋外使用や日常の衝撃にも安心。フレームからホイール、タイヤ、座面、さらには安全ベルトに至るまですべてが3Dプリントで製作されています。 座面にはラティス(格子)構造が採用されており、通気性と柔軟性を兼ね備え、子どもたちの体に優しくフィット。成長に応じて調整可能なフットレストや、呼吸器などの医療機器を収納できるリアコンパートメント(小物入れ)など、実際の使用を想定した細やかな配慮が詰まっています。 さらにホイールは通常の円形ではなくやや長めの楕円形状。これにより小さな子どもでも回しやすくなっており、「初めての車いす」として理想的な操作性を実現しています。 壊れた際にはモジュール式構造のおかげで、壊れた部分だけを再出力すればOK。全体を買い直す必要がなく、メンテナンス性にも優れています。 デザインの裏にあるコラボレーションと挑戦 このプロジェクトの背景には、MakeGoodのほかにも複数の団体が関わっています。 もともとMakeGoodは、「Toddler Mobility Trainer(TMT)」という幼児向けの木製歩行トレーナーを開発していました。このTMTをより多くの人に届けるために、「Tikkun Olam Makers(TOM)」というグローバルな福祉機器デザインの支援団体と連携し、3Dプリントで再設計するプロジェクトが立ち上がったのです。 さらには、産業デザインを専門とする「LINK PBC」とも協業し、木工製品から3Dプリント製品への移行が実現。工具を必要とする従来の製造方法に縛られず、自由度の高いデザインと生産性の両立が可能になりました。 「誰でも作れる」未来を目指して この車いすは、現時点ではプロトタイプの段階ではあるものの、将来的にはデータをオンラインで無料公開し、誰でも好きな色でプリントして使えるようにする計画です。 MakeGoodの創設者Noam Platt氏によると、現在もフィールドテストやユーザーからのフィードバックを通じて、さらなる改良が進められているとのこと。すでにSNSでは製作過程や試作機の写真・動画が多数シェアされており、世界中の注目が集まっています。...
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あの『アキラ』のバイクが現実に!? DAB Motors×VVTによる近未来3Dプリント電動バイクが話題
1988年に公開された日本の伝説的アニメ映画『アキラ』。その中でも特に強烈な印象を残しているのが、主人公・金田正太郎が乗る赤いバイクです。日本国内外のバイクファン、デザイン業界、そしてSF映画ファンにとって、あのバイクは『アキラ』が描き出した未来の象徴とも言える存在でした。 そんな“金田バイク”にインスピレーションを受けて誕生した現実の電動バイクが、いま世界中で注目を集めています。手がけたのはフランス発のモーターサイクルメーカー「DAB Motors」と、コロンビア出身の人気アーティストJ Balvin、そしてデザイナーのMattias Gollinが率いる「Vita Veloce Team(VVT)」です。 彼らが共同制作したのは、3Dプリントによるボディワークを搭載した、まさに“近未来的”とも言えるオリジナル電動バイク。その第一号機はJ Balvin自身の誕生日イベントで初公開され、大きな話題となりました。 「アキラ」のバイクを現代のテクノロジーで再現 このバイク最大の特徴は、やはりそのデザインです。真っ赤なボディに大きなタイヤを包み込むようなカウル、流線型のフォルム…。まさにあの“金田バイク”を現代の技術で再構築したかのようなスタイリングとなっています。 画像引用:DAB Motors and Vita Veloce Team しかも、ただ見た目を真似たわけではありません。デザインのプロセスにはAIツールと伝統的な職人技の両方が活用され、スケッチや3Dモデリング、そして3Dプリントによる外装製作など、様々な技術が組み合わされています。 また、ボディには手作業でマット仕上げの深い赤色が塗られ、あえて細かな傷や擦れを残すことで、“使い込まれた未来のマシン”のようなリアリティを演出しています。このディテールが、まるでアニメの中からそのまま飛び出してきたような説得力を生み出しているんです。 音や光で“乗る楽しさ”を演出 視覚的なインパクトだけでなく、乗り心地にもこだわりが詰まっています。ホイールカバーとリムの間には吸音素材が仕込まれており、走行時には低音の振動が体に伝わるような設計に。これは静かな電動バイクにありがちな「味気なさ」を解消し、まるで鼓動のようなエンジンの存在感を演出しています。 さらに、ボディ内部に埋め込まれたLEDライトが、夜間走行時には車体下部に紫がかった青いグローを放つという演出も。これは単なるギミックではなく、未来的なスタイルと視認性の両立を図るものとなっています。正直、とてもカッコいいです。 画像引用:DAB Motors and Vita Veloce Team 限定販売も決定!“買えるアキラバイク”に このバイク、最初はJ...
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スイスの山奥に突如現れた「白い塔」――住民11人の村に3Dプリントのランドマークが誕生!
人口わずか11人。 スイス・ミュレーニュスという小さな山間の村に、高さ30メートルの“真っ白な塔”が建ちました。 その名もTor Alva(トール・アルヴァ)。見た目はまるで異世界建築、でも中身はれっきとした最先端の3Dコンクリートプリント技術でできています。 村を救う!?未来の建築がポツンとスイスの村に この塔がつくられたのは、村の再生を目的としたプロジェクトの一環。設計と技術開発を担ったのは、スイスの名門ETHチューリッヒ工科大学と、文化団体Origen財団の共同チームです。 「この村に文化と人の流れを取り戻したい」――そんな想いのもと、5年限定の“文化的ランドマーク”として2025年5月にオープン。5月23日からは毎日ガイド付きツアーが開催され、7月からは塔内でのパフォーマンス公演も予定されているとのことです。 32本の柱が支える、まるで生き物のような建築 この塔、ただのモニュメントではありません。32本の彫刻のような白いコンクリート柱が支える4階建ての構造で、上に行くにつれて枝分かれするように細くなり、軽やかさを増すという独特のデザイン。 Credit:ethz この有機的な形状を手がけたのは、建築家ミヒャエル・ハンスマイヤー氏とETH教授のベンヤミン・ディレンブルガー氏。アルゴリズムを駆使して、装飾性と構造性を同時に生成する設計手法を取り入れた、まさに計算された美しさです。 「3Dプリントの柱」で荷重を支えるという革命 実はこの塔、単に「表面が3Dプリントされている」だけではありません。なんと、柱そのものが構造体(荷重支持部材)として機能しているのです。 これができたのは、ETHのロバート・フラット教授が開発した特殊なコンクリートミックスと、“成長する補強”という新しい工法のおかげ。 ロボット1号がコンクリートを積層 ロボット2号が20cmごとにリング状の補強材を挿入 という、2ロボット連携による印刷+補強の同時作業が行われています。 これにより、一般的な鉄筋コンクリートに匹敵する安全性が確保され、スイス国内の建築基準もクリアしたとのこと。 Credit:ethz 製造から輸送まで、大学キャンパスで始まったチャレンジ 塔の柱の製造には5ヶ月を要し、作業はETHチューリッヒのHönggerbergキャンパス内で行われました。 完成した部材はスイス・ザヴォニンで組み立てられ、標高約1,500メートルの山間地ミュレーニュスまで運搬されたというのだから、そのスケールの大きさにも驚かされます。 科学と文化のコラボが生んだ「次の建築」 ETHの学長ジョエル・メソ氏はこのプロジェクトを「科学と産業の協働の象徴」と語り、Origen財団の創設者ジョヴァンニ・ネッツァー氏も「技術を超えて建築業界に刺激を与える存在になった」と絶賛。 スイス政府のギー・パルムラン連邦参事も、「かつてヨーロッパ各地に広まったグラウビュンデン州の菓子職人たちの文化的遺産を思い起こさせる」として、歴史×革新の融合を高く評価しています。 ただの“未来的な塔”を超えて トール・アルヴァは、その奇抜な見た目や技術力だけでなく、 限界集落の復活に貢献 持続可能な観光と文化交流を創出 建築の未来を提示するモデル...
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指がなくてもまたタイピングができる!3Dプリント製の「自分仕様」補助ツールがスゴい
「キーボードが打ちづらい。でも、もう一度ちゃんと文字を打ちたい。」 そんな思いに応えたのが、デザイナーのロエイ・ワイマンさんによる3Dプリント製のタイピング補助ツール。このツールは、指を2本失ったテック系プロフェッショナル、ヨニさんのために作られたそうです。 指が足りない。でも「打てる」って素晴らしい ヨニさんは仕事柄、タイピングは欠かせないスキル。でも、事故によって2本の指を切断してしまったことで、打ち間違いやスピード低下に苦しんでいました。 そんな彼のために、ワイマンさんは何度も試作を重ねながら“本人に最適な”補助ツールを開発。それは「誰にでも使える汎用品」ではなく、その人の手にフィットする完全カスタムメイドの設計です。 結果として完成したのは、指の代わりになるブレース(固定器具)や延長デバイス。まるで“もう一本の指”が生えたかのように、自然にキーボードを操作できるようになったそうです。 作り方も“自由度高め”。SLSでもFDMでもOK! この補助ツール、もともとはSLS方式(粉末焼結型)3Dプリンターとナイロン素材を想定してデザインされています。が、うれしいことに一般的なFDM方式の3DプリンターとPETGフィラメントでも造形可能。 つまり、「家庭用3Dプリンターでも十分に再現できる」ってこと。高価な設備がなくても、アイデアさえあれば生活を変えるものが作れる。これこそ3Dプリントの魅力ですね。 さらに快適に使うには?シリコンキャストでグリップ力UP さらに一歩進んでグリップ感をアップしたい場合は、シリコンキャスト(型取り・流し込み)を使ってパーツの表面を加工するのがおすすめとのこと。 これによって、長時間のタイピングでも滑りにくく、手の疲れも軽減。もちろん、シリコンキャストの方法もネット上に資料が豊富なので、DIYが初めてでもトライできるようになっています。 作りたい人はどうぞ!無料で設計データも公開中 このプロジェクトの素敵なところは、「設計データを無料で公開している」ところ。Instructables(インストラクタブルズ)というDIYレシピ共有サイトで、誰でもこの補助ツールを自作できるようになっているんです。 「市販の製品には頼れないけど、自分でなんとかしたい」そんな人たちにとって、これはまさにテクノロジーと優しさの融合といえるでしょう。 「自分にしか使えない」が最高の設計かもしれない 今回のタイピング補助ツールは、特定のひとりのために作られたプロダクトです。でも、それがどれだけ多くの人に勇気を与えるかは計り知れません。 指がないからタイピングできない 市販のツールが合わない 自分の手にぴったりくるものが欲しい そう感じていた人にとって、誰かが誰かのために考えたカスタムデザインは、ものすごく大きな希望になるのです。 そして、それを実現しているのが、たった1台の3Dプリンターとアイデアとちょっとの工夫だなんて、すごくワクワクしませんか? 皆さんもぜひ、身近な「不便」や「困ったな」から、新たな3Dプリントアイディアを探してみてください。 【お役立ち記事】2025年に3Dプリンターを買うならこれ!https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/2025osusumeおすすめのスライサーソフト6選|スライサーソフトの基本も解説!https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/2022soft?_pos=12&_sid=8d1033306&_ss=r3Dモデリングの基礎知識と初心者がつまずきやすいポイントhttps://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/moderingkisozen?_pos=7&_sid=b0e55afc3&_ss=r3Dデータを無料でゲットするならここ!|おなじみサイトからこれから伸びそうなサイトまで紹介https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dmuryodata2022 【FDM方式VS光造形方式】 違いや選び方|初心者にも分かりやすく解説 https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dbegin 【通販はこちらから】 3Dプリンターの通販ページ...
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高校生がやってのけた!市販ドローンの1/5の価格で作れるVTOL型ドローンがスゴい
「え、これ本当に高校生の作品なの?」3Dプリンターで本体パーツを自作し、プログラムからはんだ付けまで全部ひとりでこなした、超ハイレベルなVTOL(垂直離着陸)型ドローンが話題になっています。 開発したのは、アメリカの高校生、クーパー・テイラーさん(17歳)。驚くべきはその価格。なんと、市販の同クラスのドローンが数千ドル(数十万円)するのに対して、クーパーさんのモデルはその約1/5のコストで実現されているとのこと! 3Dプリント × 自作ドローンの完成度が高すぎる! クーパーさんはこれまでに6つのプロトタイプを制作。 3Dプリントでパーツを出力し、回路設計・はんだ付け、ソフトウェアのプログラミングまで全部自分でこなしているというから驚きです。 今回のVTOLドローンは、チルトローター構造(飛行中に不要なモーターを休ませる効率的な設計)を採用し、飛行時のエネルギー効率を大幅に改善。しかもフルモジュール式で、翼や尾翼を自由に交換・拡張できるという、まさに「使えるDIYドローン」に仕上がっています。 どこがスゴい? 価格差に驚き、性能にも驚き! 市販のVTOLドローンって、性能がいい分どうしても価格が跳ね上がりがち。普通に数千ドル=日本円で数十万円はザラです。 でも、クーパーさんのモデルは、その価格の1/5。3Dプリンターを活用した自作ならではの低コスト&高カスタマイズ性を実現していて、「この値段でここまで飛ぶの?」と業界人もびっくりの完成度です。 飛行時間もガチ、スペックもガチ 最新のプロトタイプは、 重さ:約2.7kg(約6ポンド) 翼長:約120cm(約4フィート) 飛行時間(実測):約15分 理論上の最大飛行時間:105分(時速72kmで巡航) というスペック。もちろん実験ベースではあるものの、軽量・長時間・高機動の三拍子が揃った性能にはプロのロボティクス研究者も太鼓判を押すレベル。 賞もガンガン取ってます このプロジェクトにより、クーパーさんはすでに複数の賞を受賞。 アメリカ国防総省主催のジュニア科学シンポジウム:奨学金8,000ドル(約120万円) Regeneron国際科学技術フェア:アメリカ海軍より奨学金15,000ドル(約225万円) 高校生ながら、すでに次世代ドローン開発の期待株として評価されています。 「誰もが手にできるドローン」を目指して クーパーさんがこのドローンで目指しているのは、「研究者や災害救助の現場、あるいは日常の課題解決に使えるようなツールを、もっと身近な価格で提供したい」という想い。 価格の壁を取り払い、実用性もカスタマイズ性も両立したDIYドローンの可能性を切り拓くプロジェクトは、いままさに第7世代のプロトタイプへと進化中。さらに小型で、分解すればバックパックに入るサイズを目指しているとのことです。 ちなみにクーパーさん、今年の夏はMIT(マサチューセッツ工科大学)の自律システム研究所で新たなドローンプロジェクトに取り組むそうです。いや、どこまで行くの、この高校生…。 「市販の1/5で作れます」は未来の当たり前かも? DIYや3Dプリントというと「趣味レベル」というイメージが根強いですが、クーパーさんのプロジェクトを見ると、アイデアと工夫次第で“市販製品の壁”は超えられることを証明しています。...
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Gaussian Splatsとは何か – メッシュに代わる新しい3Dスキャン手法
Gaussian Splats(ガウシアン・スプラッツ)は、最新の3Dスキャン・再構成手法の一つ。 従来のフォトグラメトリ(写真測量法)が多数の写真からポリゴンメッシュ+テクスチャを生成するのに対し、Gaussian Splatsではシーンを「点」とその周囲に広がるガウス分布のボリューム(スプラット)の集合で表現します。各点(スプラット)は位置座標だけでなくサイズ(スケール)や形状(異方性の広がり)、色、透明度、向き(法線方向)といったパラメータを持ちます。 簡単に言えば、シーン中の点群一つ一つをぼんやりと広がる半透明の「しみ」のような粒で表し、それらを重ね合わせることで写真のようにリアルな3Dシーンを再現する手法です。この方法は光の反射や透明感、境界のぼやけなど従来のメッシュでは表現しづらい視覚効果も自然に表現できる点が特徴です。 ここではそのGaussian Splatsについて、できる限り詳しく解説してみたいと思います。 点群データと色の3D表現方式 Gaussian Splatsのデータは、一種のカラー付き点群ですが通常の点群とは異なります。 通常の点群スキャンでは各点は位置と色情報のみを持ちます。対してGaussian Splatsでは、各点に半径(スプラットの広がり)や形状(楕円体の軸方向への伸縮)、色と透明度による密度などが割り当てられた「ガウシアン関数」(3次元ガウス分布)として扱われます。 例えばある点が赤い球状のガウス分布として空間に存在すると、その点は中心が濃く周辺ほど薄い赤い半透明の球体として表現され、複数のスプラットが重なり合うことで物体表面の色や濃淡が滑らかに再現されます。これにより滑らかな境界や半透明の素材、光沢の反射なども、点群の集合として自然に表現できるのです。 Gaussian Splatsはニューラルレンダリング(NeRF)の発展系として登場した技術で、数枚~数十枚の写真から点群と各点のガウシアンパラメータを機械学習で最適化して得ます。生成されたデータは座標と色の大量の点集合ですが、各点が持つガウス分布のおかげで、単なる点の集まり以上に連続的でフォトリアルな3D表現となります。実際、スマートフォン向けアプリ(PolycamやLuma、Scaniverseなど)がこの技術を搭載し始めており、写真から直接Gaussian Splats形式の3Dモデルを生成・閲覧できるようになっています。 フォトグラメトリとの違い – 「見た目」を重視したデータ フォトグラメトリは重なり合わない三角形のメッシュを作り、その表面に写真に由来するテクスチャを貼り付けて3Dモデルを構築します。これは形状の正確さに優れますが、一方で透明な素材や光の反射、微妙な陰影の表現は苦手でした。 Gaussian Splatsはこの弱点を補うアプローチと言えます。メッシュではなく無数の半透明点でシーンを表すため、視点による光の透過や反射の変化をそのままデータに含めることができます。結果として、鏡面やガラスのようにメッシュではモデル化が難しい要素もリアルに再現できるのです。 もう一つの大きな違いはデータ量とレンダリング速度です。Gaussian Splatsのデータは基本的に点群+パラメータの集合で、メッシュに比べ軽量かつリアルタイム描画に適しています。例えば大規模なシーンでも、モバイル端末上で高速に表示可能であることが報告されています。 一方で、Gaussian Splatsはあくまで「見た目重視」の表現であり、得られた点群データから直接きれいなポリゴンモデルを起こすことは簡単ではありません。そこで次に、この点群+ガウス分布データをどのように3Dプリント可能な形に変換したかを見てみましょう。 Gaussian Splatsデータをポリゴンモデルに変換する方法 3Dプリント系YouTuberとして知られるWyatt Roy氏は、Gaussian...
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印刷後の「次、誰?」問題を自動で解決!学生チームが開発した画期的3Dプリンター連続運転システム
3Dプリンターを使ったことがある方なら、こんな経験があるかもしれません。「プリントは終わったけど、次のジョブが始められない……」——そう、造形物の取り外しと新しいジョブのセットアップにかかる時間は、意外にも3Dプリント作業の中で最も“地味に面倒”な工程なのです。 しかしその悩みを、アメリカのバージニア工科大学(Virginia Tech)にあるVT CROの学生エンジニアチームが一気に解決しました。 完全自動!「プレート自動交換システム」の実力 彼らが開発したのは、3Dプリンターのビルドプレート(造形台)を自動で交換するシステム。プリントが完了すると、完成品を回収し、新しいプレートをセットして次のジョブを即スタート。なんと、通常5〜6時間かかる切り替え作業が、わずか5〜10分に短縮されるというから驚きです。 これは、3Dプリント現場における“ボトルネック”を解消する革新的な仕組みと言えます。 機械×ソフトのいいとこ取り設計 このシステムの中身は、機械系とソフトウェアのいいとこ取りのハイブリッド。機構部分は機械工学チームが担当し、プレートのスライドや格納を自動で行うメカニズムを設計。ソフトウェア側では、ウェブベースのプリント待機キューや、Oracleサーバーによる管理システムが稼働。しかも、BambooやOrcaといったスライサーソフトとの連携や、Discord通知による完了報告までついています。 つまり、寝ている間に何枚もプリントが終わり、朝起きると「おはようございます。3件完了してますよ」とDiscordが教えてくれる——そんな未来が、もう現実になっているのです。 コストはたったの約30万円!DIY向けデータも公開予定 このシステム、さぞかし高価かと思いきや、開発費用はおよそ3,000ドル(約30〜40万円)。チームは**「手が届く価格と再現性」にこだわったと語っており、なんと設計データや組み立て手順も公開予定**。個人のメイカーやホビイストにとっては、非常にありがたい取り組みです。 文系・理系の垣根を越えて生まれた「完全製品」 このプロジェクトがさらにユニークなのは、学際的チームでの開発が行われた点です。参加したのは、コンピューターサイエンス、電気工学、機械工学、航空宇宙工学など、分野の異なる学生たち。それぞれの専門性を持ち寄り、ソフトだけでも、機械だけでもない、“完全な製品”としての完成度を実現しました。 “次の一手”を自動で打つ未来へ 3Dプリンターを24時間フル稼働させたい、でも人の手がネックになっている——そんな現場にとって、今回の開発はまさに「夢の助手」となるかもしれません。学生発のこのアイデアが、これからのデジタルファブリケーションにどんな変革をもたらすのか、目が離せません。 Source:https://news.vt.edu/videos/k/2025/05/1_sqih9t9l.html
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世界最速340km/h超!中国の学生が3Dプリントのマイクロドローンでギネス記録を更新
「空を切り裂く音が聞こえた——」そんなドラマのような瞬間が、中国・広東省の恵州市で現実になりました。 2024年3月23日、中国香港中文大学(深圳)の学生・Xu Yang(シュウ・ヤン)さんが開発したマイクロドローンが、時速340.78km(211.75mph)という驚異的な速度で飛行し、ギネス世界記録を更新しました。しかも、この機体の重さはたったの247グラム。かつての非公式記録219km/hを大きく上回る快挙です。 趣味から世界記録へ——若きエンジニアの挑戦 Xuさんはもともと模型航空機が趣味の学生。今回の記録更新に至るまで、地道な試行錯誤を重ねてきました。実は、昨年11月には試作機がクラッシュするという苦い経験も。それでも諦めず、パフォーマンスを突き詰めた結果、ついに世界の頂点に立ちました。 3Dプリント×カーボンファイバー=空飛ぶ工芸品 記録を打ち立てた機体「Prowess(プロウィス)」には、Xuさん自らが設計した高速用プロペラを含む、3Dプリントによる特注パーツが多数搭載されています。ボディは厚さわずか0.4mmの超薄型シェルに、軽量カーボンファイバー製フレームを採用。まさに、スピードを追求するためだけに生まれた、空飛ぶ工芸品です。 Image Credit: SCMP 市販品のプロペラでは速度の要求に応えられず、自ら設計・製造に踏み切ったというXuさん。妥協のない姿勢に、技術者魂を感じます。 世界が注目する「250g以下」の壁 ギネスが定める「250g未満クアッドコプター」のカテゴリは、軽量ながら高性能を求められる極限の世界。今回の記録に対し、同カテゴリの別クラスで記録を持つスイスのエンジニア、Samuele Gobbi氏も「重量制限まで加えてこの速度はすごい」と賛辞を送っています。 秘密は「温度管理」と「チームスピリット」 記録挑戦時には、バッテリーを約40度まで加熱するという裏技(?)も使用。これはパフォーマンスを最大限引き出すための工夫で、プロ並みの知見が伺えます。 またXuさんは、「この挑戦は自分ひとりの成果ではない」と語り、同じような夢を持つ未来の挑戦者たちと知識や経験を共有していきたいとしています。スピード競技でありながら、どこか温かい人間味も感じられるコメントです。 限界は、まだ遠くにある 記録達成後も、Xuさんの手は止まりません。今後はモーターやプロペラのさらなる最適化を進め、より高速な飛行を目指すとのこと。「極限のスピードを追い求める旅に、終わりはない」。その言葉通り、この記録はあくまで通過点かもしれません。 ——空のF1ともいえるマイクロドローンの世界で、ひとりの若きエンジニアが示したのは、「速さ」と「熱さ」の両立でした。 Source: scmp.com
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アートと音、そしてサステナビリティの融合—3Dプリントで生まれた音響アート《Parhelion》
インテリアデザインの世界にも、テクノロジーの波は着実に押し寄せています。なかでも近年注目されているのが、3Dプリンティングの活用です。これにより、デザイナーは既存の枠にとらわれることなく、形や質感、色彩の実験を行えるようになりました。そして、その進化系ともいえる作品が、オランダのアーティスト、メイ・エンゲルギール(Mae Engelgeer)によって誕生しました。 その名も《Parhelion(パーヘリオン)》、一見するとアートピース、実はれっきとした音響壁面材(アコースティック・ミュラル)です。 「パーヘリオン」とは何か?名前に込められた自然現象 作品名の「Parhelion(幻日)」は、大気中の光の屈折によって太陽の両脇に虹色の光点が現れるという自然現象を指します。どこか神秘的で、ちょっとロマンチックな現象ですね。 このインスピレーションは、作品の表面にも存分に表れています。グラデーションがかかった層構造や、色彩の選定には、まさにこの幻日のイメージが反映されているのです。 アートと機能が手を取り合う、3Dプリンティングの力 このユニークな作品は、オランダのデジタル製造企業「Aectual(アクチュアル)」とのコラボレーションによって実現されました。Aectual独自の押出(エクストルージョン)方式の3Dプリント技術を用いることで、製造中に色を混ぜ合わせることが可能となり、ひとつとして同じものが存在しない、唯一無二の作品が生まれます。 オランダのアーティスト、メイ・エンゲルギール(Mae Engelgeer) デザイナーであるエンゲルギールが厳選したカラーパレットは3種類。「ALPHA」はやさしい砂のようなベージュトーン、「DELTA」は深みのある紫、「OMEGA」は鮮やかで力強いブルーです。これらのパネルの背面には、再生PET素材のアコースティックフェルトが組み合わされており、見た目だけでなく音響性能にも優れています。 サイズ展開も計算づく:空間を選ばない設計 Parhelionは、直径150cmの大型バージョンと、75cmのコンパクトバージョンの2サイズ展開。前者は壁面の主役に、後者は複数枚を組み合わせてレイアウトの自由度を楽しむのにぴったりです。ホテルやオフィス、自宅のリビングなど、どんな空間でもインテリアのアクセントになりつつ、耳にも優しい。美しくて、しかも実用的。ちょっと得した気分になりますね。 美しさの裏にある、地球へのやさしさ このプロジェクトがもうひとつ注目すべきポイントは、そのサステナブルな設計思想です。Parhelionは植物由来の再生プラスチックを使用し、背面フェルトも再生PET製。見た目の美しさや機能性だけでなく、地球環境への配慮もしっかりと組み込まれています。 五感を刺激する、未来のインテリア エンゲルギールとAectualのコラボレーションによって誕生したParhelionは、アートと音響、そしてサステナビリティが調和する、新しいインテリアの形です。視覚、聴覚、そして空間全体の雰囲気をまるごと包み込むような、全方位型の体験。これからの時代、インテリアに求められるのは「見た目」だけではない——そんなことをそっと教えてくれる作品です。
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生きた体の中で3Dプリント!? カリフォルニア工科大学が“音で作る”新技術を開発
「3Dプリント」といえば、ものづくりや試作などのイメージが強いかもしれません。でも今、その技術が生きた体の中でも使えるようになるかもしれないのです。 カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究チームが開発したのは、DISP(ディスプ)=“深部組織イン・ビボ音響プリンティング”という、超音波を使った全く新しい3Dプリント技術。なんとマウスの体内で、がん治療用のポリマーを直接プリントすることにも成功しています。 超音波で「体の中の特定ポイントだけ」プリント! これまでの体内プリント技術は、赤外線を使っていたのですが、どうしても深い場所までは届きにくいという弱点がありました。DISPでは、その代わりに「超音波」を使います。 具体的には、以下のような流れでプリントが行われます: バイオインクを体内に注射(特殊な成分入り) 超音波を当てると、狙った場所の温度が5℃ほど上昇 温度変化に反応してリポソーム(ナノサイズの袋)が開き、中の架橋剤を放出 それがトリガーとなって、その場でポリマーが形成される しかも、バクテリア由来の“ガスベシクル”を使うことで、プリント位置が外からもしっかり可視化できるとのこと。「見ながら正確にプリントできる」というわけです。 画像引用/カリフォルニア工科大学 どんなことに使えるの? DISP技術は、以下のようなさまざまな応用が期待されています。 ドラッグデリバリー用のカプセル(薬を狙った場所だけに放出) 体内の傷をふさぐ接着ポリマー 生体信号をモニターできるハイドロゲル マウスの実験では、膀胱にある腫瘍近くに抗がん剤「ドキソルビシン」を含んだポリマーを直接プリント。結果は、ただ薬を注射しただけの場合よりも、腫瘍細胞の死滅が大幅に増加したそうです。 つまり、「薬をピンポイントで届けて、その場で固める」という、医療の理想がいよいよ現実になりつつあるんです。 将来的には心臓の中でもプリント可能に? 研究チームは今後、より大きな動物モデルでの試験を予定しており、人間への応用も視野に入れているとのこと。 しかも、今後はAI(人工知能)との連携も構想中。「動く臓器、たとえば心臓の中でも、AIのサポートで自動的に精密プリントできるようにしたい」と、チームのリーダーであるガオ教授は語っています。 この画期的な研究成果は、科学誌『Science』に掲載され、アメリカ国立衛生研究所(NIH)やがん協会などからの支援を受けて行われました。 「体の中で3Dプリント」は、もうSFじゃない。 これまで想像の中にしかなかったような「生きている体の中で物を作る」技術が、現実になりつつあります。 がん治療、再生医療、臓器修復――。未来の医療が、DISPのような技術によって大きく変わっていくのかもしれません。
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「3Dプリントのミス」が、まさかの新技術に?韓国・漢陽大学が“ヤモリ足”構造を活用!
3Dプリントの「失敗」が、未来のロボット開発に役立つかもしれません。そんなユニークな研究を行ったのが、韓国・漢陽(ハニャン)大学の研究チームです。 彼らが注目したのは、DLP方式(デジタル・ライト・プロセッシング)という光を使って樹脂を固める3Dプリント手法。この方式では時として「オーバーキュア(硬化しすぎ)」という現象が問題になります。これは、想定より深くまで光が届いてしまい、意図しない部分まで固まってしまうという“失敗例”です。 ですが今回、あえてこの“ミス”を逆手に取り、ヤモリの足のような微細構造を作り出すことに成功しました。 なぜヤモリの足なの? ヤモリって、天井を逆さまに歩いたり、ツルツルのガラスにもぴたっとくっついたりしますよね。あれは、「セット毛(setae)」という細かい毛が足の裏にびっしり生えていて、その1本1本がさらに細かく枝分かれして「マイクロスパチュラ(小さなヘラ状の構造)」になっているからなんです。 この構造のおかげで、押し付けるとくっつき、少しひねるとスルッと外れるという、不思議な粘着性が生まれています。 DLPの「欠陥」を、ヤモリ足構造に応用! 漢陽大学の研究チームは、DLP方式で起きるオーバーキュアをうまくコントロールすることで、斜めに傾いた極小の突起=異方性(いほうせい)構造を作り出しました。この傾きが、まさにヤモリの足の構造にそっくりなんです。 光の当て方や印刷の向きを細かく調整することで、シンプルな設計データからでも、しっかり傾いた構造体が作れるようになったとのこと。 さらに、ダブルモールドと呼ばれる成形法を使って、柔らかくて貼り付きやすい表面に変換。ヤモリの足みたいに、「そっと押しつければくっつき、軽くひねれば外れる」構造を実現しました。 Explanation of the process for obtaining and testing anisotropic structures (photo credits: Kim, S., Kim, J., Seo, S. et al.)....
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