3Dプリント月面基地「LINA」のデザインをNASAが発表|SF映画のような未来的デザインが話題に
世界初の3Dプリント月面基地「LINA」とは
NASA のフィールドセンターの一つである宇宙建築テクノロジー企業 AI SpaceFactory が、ケネディ宇宙センターのエンジニアらと共同で開発した、世界初の3Dプリント月面基地「LINA(Lunar Infrastructure Asset)」のデザインを発表、その未来的なフォルムが話題となっている。
そもそも3Dプリント月面基地「LINA」とは、NASAの共同研究発表プロジェクトとして、月面に安全な避難所型構造物を建設することを可能にする技術の開発に焦点を当てた「Relevant Environment Additive Construction Technology」プロジェクトのひとつとして始まったものだ。今後 AI SpaceFactoryとケネディ宇宙センターは、「LINA」を具現化するための技術と材料開発を発展させていく予定だという。
ちなみにこのプロジェクトの背景にあるのは「アルテミス計画」と呼ばれる計画だ。これは今後10年以内に月の南極に宇宙飛行士を送り込むためのプロジェクトであり、「LINA」もまたそのための施設として研究されている。実際の施工においては自律型ロボットを使用する予定で、月の南極部にあるシャックルトンクレーター付近に建設を予定しているという。
さて、この斬新なデザインの基地を実際に構築するために、今回AI SpaceFactory は-170°から70°Cの温度範囲で真空中でも動作するように設計された宇宙仕様の3Dプリントシステムを開発した。素材には、NASAによって合成された、月のレゴリス(表土)とポリマーバインダーから調合した材料が使用される予定とのことだ。また、今回の「LINA」では、地球から運び入れるポリマーの質量を最小限に抑えるため、厚いシェルから薄いシェルまで様々な形状を検討し、荷重が分散されるように設計された、放物線状の断面を採用したという。
「LINA」は共同の中庭を有する3つの独立したユニットから構成されている。各ユニットの面積は75平方メートル、中央のステージングエリアは90平方メートルで、3Dプリントされたシェルは8メートル×9.4メートル、高さ5メートルの空間となる。人がその中で生活する上で十分な広さだろう。
「LINA」に電力を供給するのは大規模な太陽光発電機能。さらに「LINA」は、少なくとも50年の寿命を持つよう設計されており、宇宙探査車や通信機器、居住モジュールなども収納することができる。
いずれにしても、月面探査の拠点が3Dプリンターによって建設されようとしているというのは、なんとも胸が躍る話である。今後の展開にも注目し続けていきたい。