世界で最も高い3Dプリンターとは?|超高価格帯3Dプリンターの現在
3Dプリンターの低価格化の一方で
かつて3Dプリンターといえばハイエンドな先端機器であり、個人にはとてもじゃないが手が届かない高価なものだった。それが変わったのは2010年代だ。黎明期の3Dプリント関連技術に関する重要な特許のいくつかが期間満了となったことで、個人でも購入可能な低価格3Dプリンターが市場に登場し始めたのだ。
SK本舗が取り扱っているのも、そうした低価格3Dプリンターの一群だ。特にここ数年、低価格3Dプリンターの機能は向上の一途をたどっており、それに比例するように一般の個人の方でも3Dプリンターを使用すると方が増えてきている。
それゆえ、最近では3Dプリンターに関して「いかに低価格で高品質か」という点ばかりが注目されやすい。もちろん、それは非常に大事なポイントなのだが、一方で現在ももちろんながらハイエンドな高価格3Dプリンターも開発されている。いわゆる企業向け、工業向けの3Dプリンターなどの中にはそれこそ目が飛び出るような価格の3Dプリンターも多い。
ここで気になる疑問がある。では現在、世界で最も高価な3Dプリンターとはどのようなもので、どれくらいのお値段なのだろうか。
3Dプリンターの種類はあまりにも多く、また価格の変動もあるため、どれか一つのプリンターを取り上げ、これが最も高い3Dプリンターだと言い切ることは難しい。ただ現在、最も高価格帯の3Dプリンター群としては、現在の為替レートの円換算で「7000万円以上」が一つの基準になるかもしれない(もちろん億越えする3Dプリンターも存在する)。ここでは試しにこの価格帯に入る3Dプリンターを「超高価格帯3Dプリンター」と呼んでみることにしよう。
7000万円以上の超高価格帯3Dプリンター
では、ここでいう「超高価格帯3Dプリンター」とはどんな3Dプリンターたちなのだろうか。超高価帯プリンターは通常、独自のテクノロジー、高度なオートメーション、そして大容量であることなど、いくつかの要素を備えている。中にはマシンの上部に到達するために階段が用意されているような巨大規模なものも少なくない。たとえば超高価格3Dプリンターのひとつ「ブラックバッファロー」などは、モジュール式の建築3Dプリンターであり、最大3階建てのプロジェクトに使用可能だといい、その容貌は3Dプリンターというよりまるでコンサートの舞台装置かのように見える。
ブラックバッファロー
あるいは中国を拠点とするEPlus3Dの3Dプリンターもすごい。同社は中国の厳しい製造業向けに大規模な金属3Dプリンターを製造しており、同社の最もハイエンドなマシン「EP-M450H」などは、航空宇宙、自動車、電子機器、工具で使用され、重工業用の金型などの巨大な部品だけでなく、大量生産された部品も製造している。ビルドボリュームは、456 x 456 x 1,080 mm。さまざまな材料で1時間あたり55cm³の速度で99.9%の密度の金属部品を製造できるという。
EP-M450H
もちろんビルドボリュームが小さめの超高価格帯3Dプリンターも存在する。オーストリアを拠点とするUpNanoが開発した「NanoOne Bio」などは、一見すると10万円以内の家庭用3Dプリンターと見た目はほとんど変わらない。しかし、同社は2光子3Dプリンターと、メソスケールとマイクロスケールの両方で生細胞を含む3D構造の直接印刷を可能にするヒドロゲルベースのバイオインク「X Hydrobio INXU200」を開発しており、「NanoOne Bio」は、同社のNanoOneシリーズのレーザー駆動プリンターをベースに設計された、超最先端バイオ3Dプリンターなのだ。UpNanoによれば、「X Hydrobio INXU200」と「NanoOneBio」の組み合わせは、産業界と学界の両方で生物医学の研究開発に新しい可能性を開き、製薬会社や研究機関が人体の自然な成長条件を模倣する細胞モデルを設計できるようにするのだそうだ。
NanoOneBio
超高価格帯3Dプリンターとしては他にもOptomec社のハイブリッド金属3Dプリンターである「LENS 860」や、イスラエルのXJet社のセラミック3Dプリンター「Carmel1400C」、ドイツのSLMSolutions社の「工業生産における革命」とまで言われた金属3Dプリンター「NXG XII 600」など様々ある。
LENS 860
Carmel1400C
NXG XII 600
いずれも、その正確な価格は一般公開されていないが、それらが超高価格帯3Dプリンターであることは間違いない。そもそも普通には販売さえされていないものもある。世界にはすごい3Dプリンターもあるのだなあと遠目で眺めつつ、私たちとしてはやはり低価格で高性能な3Dプリンターを追い続けていきたいところだ。