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スマホを一発で3Dプリント出力することは可能なのか? 世界的3Dプリンターメディアの思考実験
3Dプリンターはスマホを出力できるのか 3Dプリント技術はこれまで様々なものを出力し、その3Dプリント可能領域を拡張させてきた。しかし、現状でスマートフォンのような高度な電子機器を3Dプリントすることは実現していない。果たして今後、どの程度、それは可能になっていくのだろうか?実は先日、3Dプリントの国際的メディア「3DPRINTING.com」で、まさにその可能性が検証されていた。ここでその記事の内容を追ってみたい。まず、3Dプリンターで高度な電子機器を出力するという上で考えうる方法は二つあるという。一つは、スマートフォンの大部分のパーツを3Dプリントし、同時にそれらのオブジェクトをデバイス上に配置していくマシンを用意するとうもの。そしてもう一つは、ある一つの3Dプリンターの中に様々な原材料を自在に処理し、それに応じた出力物をプリントする機能を内在させ、完全なデバイスとして出力するというものだ。当然、実現可能性が高いのはひとつめの案だ。これを記事では「箱の中の工場」とたとえている。すでにある様々な方式の3Dプリンターを駆使すれば、スマートフォンを構成する様々な部品の大部分を個別に出力しうるということは容易に想像できる。いくつかの外部部品とそれらを別のシステムによってデバイス上に配置していくというわけだ。この方法に関して、MITのすでにあるプロジェクトがその可能性を非常によく示しているという。これはMultiFabと呼ばれる技術で、、LEDやレンズなどの機能部品の周りにインクジェット3Dプリントを行うというものだ。iPhone製造3Dプリンターを実現する場合、こうした外部部品を認識して回避するという機能が欠かせない・ ただ、MulitiFabにはそれら配置のためのマシンが統合されたものではないという不足点もあるが、これを補うような試みをBotFactoryが行なっているという。BotFactoryは、はんだペーストを配置し、プリント回路基板(PCB)を製造するための電子部品のピックアンドプレースを実行できるシステムを開発しており、現在、米空軍の精密機械の製造に役立てられている。 一発操作でスマホを出すために必要な条件 さて、ではもう一つの案はどうだろうか。こちらの案の場合、スマートフォンの全ての要素を3Dプリンター自体で作り出す必要があり、そのハードルはかなり高いものとなると記事はいう。その上であくまでも思考実験としてその実現のためのプロセスが探られている。 現在のスマートフォンのタッチスクリーンは、通常、有機発光ダイオードディスプレイと、絶縁体として機能するガラス基板、酸化インジウムスズや銀などの透明な導電性材料のコーティングで構成されている。これを3Dプリントすることは果たして可能なのか。実はすでに様々なLEDスクリーンを3Dプリントするための研究が数多く行われているという。たとえばミネソタ大学ではカスタマイズされた3Dプリンターを使用し、柔軟な64ビットLEDディスプレイの製造に成功している。 またガラス基板に関しては3Dプリントガラスは丈夫なため実行可能だとされている。実際、ソーダライムやホウケイ酸塩など、3Dプリントガラスの出力にはいくつかのアプローチが存在する。電子インクもまた、すでに複数の企業が導電性材料、特に銀インクを3Dプリントする方法を提供しているという。それどころか、たとえばOptomec社のAerosolJetシステムは主要なスマートフォンメーカーが導電性トレースを部品へと3Dプリントするためにすでに使用されているらしい。そうなると残っているのはトランジスタやコンデンサなど、そのほかの要素を追加することだけであり、これもまた実現可能性は決して低くない。続いてチップの製造について。ここには少し問題がある。先に見たようにPCBの製造自体はすでに3Dプリンターで行うことが可能だが、1ミクロン未満の分解能を必要とする集積回路の製造に対応できる3Dプリンターは現状ないという。ここは今後の技術的進歩を待たねばならないところだろう。ただ、一般に実現が難しいと目されているコンデンサやトランジスタなどについては、すでに試されて、ある程度の成功が収められているという。2015年にはすでに、カリフォルニア大学バークレー校の研究者が、共振周波数が0.53 GHzの粗いインダクターコンデンサー共振タンク回路と、インダクターコンデンサータンクとワイヤレスパッシブセンサーが埋 め込まれたスマートボトルキャップを3Dプリントすることに成功している。あるいはスウェーデンの2つの機関、リンショーピング大学とスウェーデン研究所は、2次元スクリーン印刷プロセスを使用して、1,000を超える有機電気化学トランジスタをプラスチック基板に印刷し、さまざまなICを作成しているようだ。つまり、現状で完全な3Dプリントは困難とはいえ、すでにその道筋は見えつつあるということだろう。スマートフォンといえば、様々なセンサーが配置されていることも重要なポイントになってくる。これらのセンサーに関しては、すでに3Dプリント作成された例が多数あり、問題はない。またフォンである以上、当然必要となるスピーカーとマイクに関しても同様であり、これら比較的単純なコンポーネントは現状の技術力で十分に3Dプリント可能だとされている。バッテリーもまた3Dプリント成功例は数多くあるらしい。一方、意外にも難点としてあげられてるのがメタルケースだ。ケースそのものをプリントすることは金属3Dプリンターがあればもちろん可能だ。しかし、機能にまつわる多くのパーツをその金属のシェルに統合し、金属を後処理するというプロセスは簡単ではないという。金属3Dプリンターは一般的に炉内での猖獗を必要とする。これはパーツ全体に行われるある意味で「野蛮」な後処理技術であり、精密なスマートフォンの製造には適していない。記事ではその代替案としてジュール熱を動力源とする方法に可能性を見出している。インクジェットまたはエアロゾルジェットヘッドによって電子機器を作成したら、金属蒸着ヘッドが金属ワイヤを介して電気をサージし、部品の周囲の所定の位置に金属を蒸着するという方法だ。もちろん、これはまだ仮説に過ぎず、今後、検証されていく必要があるだろう。 技術的には実現可能……しかし さて、ここまでの話を総括し、記事ではスマートフォン全体を一回のビルド操作で3Dプリントすることは、そう遠くない将来にもっともらしいものとなるだろうと結論づけている。課題としてはより微小なアトム構成テクノロジーの導入、より複雑なプリンターとロボットの組立てラインの確立だ。すでにスマートフォンの製造には3Dプリント技術が欠かせなくなっている。そう思うと、じゃあいつ3Dプリントスマートフォンが誕生するのかと気を急がせてしまうが、記事はそこについてかなり冷静だ。というのも、現在、世界中で個々の部品が大量生産されており、労働力の安い工場でそれらを組み合わせるという製造方法が、経営判断上、理にかなったものとなってしまっているのだと記事は分析している。もちろん3Dプリント技術は、細かい部品の製造にますます使用されていくことになるが、スマートフォンをまるっと3Dプリントするというシナリオのビジネスケースは「ありえそうにない」とのこと。そう、ある技術が実装されるためには、技術の進歩だけではなく、ビジネスや政治の力学が多重に重なり合う必要があるのだ。大人の都合はいつだって複雑ということか。
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片手だけで操作可能なPS5の改造コントローラーが話題に|3Dプリンターを使ったMODの世界
ゲーム中のあのお悩みを解決する注目MOD コロナ禍になって世界が揺れ動いていく中、逆に大きな盛り上がりを見せた業界もある。ゲーム業界だ。緊急事態宣言やマンボウが推進され、遊びに行きたくても行けない中、せめてもなんか気晴らしをしたいと人がゲームに熱中するというのは、ある意味、当然の流れだったかもしれない。今回はそんなゲームにまつわる面白いニュースを紹介する。ゲーム機を使用する上で、欠かせないものといえば、テレビやモニター、ゲーム本体、ゲームソフト(現在はDL形式の方が一般的かもしれないが)、そしてゲームコントローラーだ。このゲームコントローラーに関して、こんなことを思ったことがある方は少なくないのではないだろうか。「ああ、片手でコントローラー操作できたら、ながらでゲームできるのになあ」筆者は思ったことがある。たとえばお菓子を食べながらゲームをしたい場合だ。長時間ゲームをしていれば、当然お腹が空いてくる。しかし、ゲームに夢中になっている最中は、その両手の自由はコントローラーに拘束されている。なんとかお菓子の袋を開けたはいいものの、結局、手をつけられず何時間も過ぎていき、フレッシュだったポテチがすっかりしなびてしまった。皆さんにはこんな経験ないだろうか。果たして、その人物が筆者と同じような経験をしていたかは分からないが、実は今、ある人物が3Dプリンターを使って改造したPlayStation5用のコントローラーが話題を集めている。その改造コントローラーがなんと、片手で操作できるコントローラーだというのだ。さて、まずは話題の動画をご覧いただきたい。 いかがだっただろうか。投稿者はAkakiという人物。どうやら左利きらしく、改造コントローラーもそれに合わせて左手のみで操作できるように改造されている。この左利きバージョンでは、通常、右手で操作するシンボルボタンと右のトリガーボタンは左手で操作できるように設計されており、さらに右のジョイスティックに関してはコントローラー全体を足やテーブルなどの任意の対象に押し込むことで使用することができるようになっている。 動画を見る限り、通常プレイに関しては滞りなく片手で行えているように見える。細やかかつ迅速な操作が必要な場面において、どれくらい対応が可能なのかはまだ未知数だが、慣れと鍛錬によって、かなりの程度まで片手プレイでも対応できるのではないだろうか。 この改造コントローラー、今後のブラッシュアップ次第では、ゲームしながらお菓子を食べること以外にも様々な形での活躍が考えられるだろう。なんらかの障害によって片手しか使用できない方に向けたコントローラーとして機能するかもしれないし、あるいは高みを目指すゲーマーの中からは二つの手それぞれで個別のコントローラーを操作するというような猛者も現れるかもしれない。それにしてもAkaki、よくぞこんなことを考えたものだ。まずはその宛先不明な情熱に拍手を送りたい。もし興味があるという方はAkakiの動画を参考に、自身でもコントローラーを改造してみるのもありかもしれない。Akaki以上の片手用コントローラーを制作できた暁には是非ともご報告いただきたい。
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3Dプリンターは本当に環境に優しい? 鍵となるのは「再生可能素材」か
再生可能素材の最前線 3Dプリンターと環境問題については、様々な議論が交わされている。とりわけサステナビリティに関しては、従来の製造方法を超える大きな長期的な可能性があるとされている。ただ、課題がないわけでもない。3Dプリンターが廃棄物や資源の無駄遣いを減らすことになるのは、それがオンデマンド生産を可能にし、生産量を必要に応じて正確に計画することができるからだ。とはいえ、3Dプリンターを使ってこれまで以上に多くのものが製造、消費するようになったとしたら、これは意味がない。また物がやがて廃棄されるという点を踏まえるなら、使用素材の再生可能性も重要なポイントとなる。その上で、現在、注目されているのは、再生可能なフィラメントの開発だ。この流れはすでに数年前からある。生分解性材料、つまり自然に帰せば自ずと分解される材料の開発は、ポリ乳酸、通称PLAという形で様々に行われてきた。 パスタ製造の廃棄物でつくられた生分解性フィラメント たとえば有名なのはコーンスターチから作られたプラスチック代替品だ。ポーランドのスタートアップであるGREENFILL3Dは、ヨーロッパ最大の食品生産企業の一つであるMASPEXと行なった共同プロジェクトで、PLAや小麦ふすま、あるいはその他の生分解性成分から作られたフィラメントを使用して箱入りパスタのディスプレイを製造するというデモンストレーションを行なっている。 PLAがどれくらい環境に優しいかをめぐってはまだ議論の余地があり、その生産過程で大量の化石燃料を必要とする作物から作られているという点などは、慎重に検討されていかねばならない。しかし、GREENFILL3Dはすでに商品化されているパスタの製造過程において生じた廃棄物を積極的に使用している。確かにこの方法ならば、PLAを使用する量を今まで以上に低く抑えることができる。 その仕組みはこんな感じだ。まずMASPEXがGREENFILL3Dに廃棄された小麦ふすま材料を供給する。生の小麦ふすまはふるいにかけられ、乾燥させられる。その後、PLAを含む他の材料と組み合わされ、細いフィラメントワイヤに加工される。最後に、GREENFILL3Dは、Ender 3Dプリンターを使用して、小麦ふすまで構成される再生可能なフィラメントを素材に、小麦ふすまパスタのディスプレイスタンドをはじめとするさまざまなアイテムを出力していく。 環境問題への対策は複雑だ。あれを減らせばこれが増え、これを減らせばあれが増える。結局のところ環境問題を改善することのない堂々巡りがマーケティング都合で様々に展開されているというのが偽らざる現状でもある。しかし、そんな中でも環境への負担を微減させる技術が、少しずつ着実に生まれ始めている。もちろん3Dプリンティングがその中心的な役割を果たすテクノロジーであることは今も変わらない。
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見る角度によって絵柄が変わる! MITが開発した3Dプリント「レンチキュラー」
MITが3Dレンチキュラープリント技術を開発 レンチキュラーという技術をご存知だろうか。端的にいうと、かまぼこ状のレンズを用いて、見る角度によって絵柄が変化したり、3Dのような立体感が得られたりする印刷物を出力する技術だ。 いわゆる3Dポスターなどはこのレンチキュラー印刷によって作られている。見るたび、見る場所に応じて色味がガラっと変わって感じられるようなあの光学的な錯視効果はどこか魔法のようだ。子供の頃、レンチキュラー仕様の下敷きを使っていた同級生をとても羨ましく思っていたことを覚えている。実は昨年10月、マサチューセッツ工科大学のコンピューター科学人工知能研究所が、レンチキュラーを3Dプリントする方法を設計、これを発表した。さらに研究者たちはこのプロジェクトで開発された技術をオンラインでオープンアクセスで利用できるようにしたという。 マサチューセッツ工科大学のコンピューター科学人工知能研究所の論文http://groups.csail.mit.edu/hcie/files/research-projects/lenticular-objects/lenticular-objects-paper.pdf 実際に映像を見てみれば分かると思うが、やはりレンチキュラーは実に面白い。研究チームはすでに2年にわたってこのプロジェクトに取り組んできたという。使用したマシンはストラタシス社のPolyJet。クリアレンズとカラーパターンの両方を十分な解像度で曲面に3Dプリントすることでレンチキュラー特有の光学的効果が生み出された。最大の難関はレンズの研磨などの後処理だったという。 研究チームはこの技術の実証として4種のオブジェクトを出力している。ケトルベルと呼ばれるトレーニング器具(適切な姿勢で持っていると表示される絵が変わる)、ランプシェード(人がベッドに横たわった姿勢から見ると「おやすみなさい」と表示される)、スニーカー(履いている人だけにフロントのメッセージが見える)、イヤフォンケース(様々な彩りを放つ)だ。 あるいは専門家筋はこの技術を軍事部門におけるカモフラージュ技術に使用されるとも指摘している。アニメ化、映画化された人気漫画『攻殻機動隊』でおなじみのいわゆる「光学迷彩」だ。 いずれにせよ、レンチキュラーの3Dプリントが一般化すれば、3Dプリンティングの幅、想像力の可能性はまたグッと広がる。果たして、今後どのような3Dプリントレンチキュラーが生み出されていくのか、楽しみだ。
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Healshapeの「3Dプリント乳房」は乳がん患者を救うか?|バイオ3Dプリント技術によって飛躍する再生医療
乳房切除手術を受けた女性に乳腺再建の機会を バイオ3Dプリント技術を用いた再生医療の発展が著しい。とりわけ最近話題となったのが、3Dバイオプリント乳房の出力だ。研究しているのはフランスの再生医療会社Healshape。現在、Healshapeは患者自身の細胞を使用して乳腺再建用の3Dバイオプリント豊胸手術の生産を拡大するために680万ドルの資金調達を準備している。現在は前臨床段階にあり、15人の患者のサンプルで今後2年以内に臨床試験を開始することを望んでいるようだ。 画像引用:Healshape Healshapeが使用している技術はリヨン大学の超分子化学・生化学研究所が3D皮膚モデルを製造する企業であるLabSkins Creationsとともに開発された技術で、患者から採取された細胞を再組織することによって乳房の形を造形していく。使用されるインクは天然の吸収性ヒドロゲルを使用したバイオプロテーゼでありこれはHealshapeが2020年に開発したものだ。このバイオプリントされたインプラントは基本的に患者の解剖学的構造に基づくもので、生物学的インクから作られているためその組成は人間の組織の組成に近い。そのため、プロテーゼが配置されると、脂肪の移動によって患者自身の細胞がインプラントにコロニーを形成し、脂肪組織の自然な成長とバイオプロテーゼの完全な吸収が可能になるという。Healshapeによれば、移植後、数ヶ月以内に身体は平常な状態を取り戻すことができるようだ。 画像引用:Healshape Healshapeが想定しているのは、何らかの疾病により乳房切除手術を受けた女性に、乳腺を再建する機会を提供することだ。実際、今日では乳がんと診断された女性のほぼ半数が乳房を切除するための外科処置を受けている。もちろん、命を守ることが最優先ではあるが、乳房を失ったことにより精神的なダメージを受け取る方も少なくない。今回の技術では痕跡も残さずに6〜9ヶ月内に乳房を回復することができる。HealshapeのCEOは「女性が自分のイメージを受け入れ、再び自分の体に満足するために(この技術が)役立つことを願っている」と述べており、この技術が医療の現場になるべく早く導入されることを目指しているようだ。
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東京⇆サンフランシスコが6時間以内! 超音速ジェット機を3Dプリントするスーパーファクトリーがノースカロライナに開設
超音速ジェット機「オーバーチュア」 コロナ禍以降、値上がりを続けている輸送費は物流と人流に大きな影響を与えている。いまやどこに国も自国以外の製造物に頼って暮らしているグローバル社会においては、物流、人流のコスト上昇は極めて大きな問題だ。 そんな中、米国で国際的な物流、人流を担うことになるジェット機の工場が新たに開設されることが決まった。場所はノースカロライナ州のピエモンとトライアド国際空港、製造されるのは超音速ジェットとして知られるブーム・オーバーチュア社の「オーバーチュア」だ。 同機は最大88名の乗客を乗せ、マッハ1.7で飛行することで知られる。これはサンフランシスコと東京を6時間以内で結ぶことができる速度だ。すでに昨年、米国ユナイテッド航空が15機のオーバーチュアを発注し、話題となった。2030年までには実際にオーバーチュアに旅行客を乗せた飛行を開始する予定だという。空の旅は超音速の時代へと突入しつつあるのだ。 オーバーチュアの製造には3Dプリンターが多用 実はこのオーバーチュア、部品の多くが3Dプリントで作られていることでも話題となった。StratasysのFDMマシンや、VELO3Dの金属3Dプリンターなどで出力した部品が、マシンの重要なパーツとして多く使用されているという。もちろん、今回開設されるスーパーファクトリーにおいても3Dプリンターが多用されることは間違いない。 さらにこのオーバーチュアは燃料面においても革新的な取り組みを行おうとしている。ブーム・オーバーチュア社のCEOは航空機はすべて「持続可能な航空燃料を動力源とし、100%の純ゼロカーボン目標を達成する」と主張しており、超音速ジェットが環境面にも配慮したマシンであることを強調している。だが、まだ現段階においては燃料開発は中途段階にあり、今後の展開に注目が集まっている。 いずれにしても、物がより速く届き、目的地により速く到着することができるということは、シンプルに快適ではある。来たる超音速の時代を歓迎したい。
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キャサリン妃やエマ・ワトソンも愛用する木製バッグブランド「ROCIO」が業界を刷新する3Dプリントバッグを発明
セレブ御用達のブランド「ROCIO」の新展開 斬新なデザインが目立つ3Dプリントファッションの世界に新しいニュースが届いた。エコファッションブランドとして知られ、キャサリン妃やエマ・ワトソン、スーザン・サランドンやケイト・アプトンなども愛用していることで知られるROCIOと、スコットランド国立製造研究所の共同研究によって、3Dプリントされたシグネチャーハンドバッグが開発されたのだ。もとよりROCIOのハンドバッグはアカシアの木を原材料とし、およそ19段階のプロセスを経て個別に彫刻されている。エコロジーをテーマとする同ブランドは同時に長らくよりサステナブルで環境に優しい製造方法を模索もしてきた。 画像引用:ROCIO そんなROCIOが従来のどの製造形態よりも持続可能であると言われている3Dプリンターにたどり着いたのは半ば必然だった。3Dプリンターを用いれば、カスタマイズの可能性を増やし、製造プロセスの無駄を減らし、なおかつ従来の製造方法では実現できなかった複雑な構造体を作成できるようになる。独創的なバッグをエコロジカルに製造する上でこれ以上ない方法なのだ。さてROCIOの職人技とスコットランド国立製造研究所の専門知識を組み合わせる形となった今回のコラボレーションの結晶がこちらだ。 画像引用:ROCIO これはROCIOならでは木製バッグと同様の構造を持つハンドバッグの3Dプリントタイプだ。従来のROCIOのシルエットの美学を維持しつつ、製造面での無駄を大幅に削減することが実現された。さらに、今回は3Dプリントされた構造体を元にROCIOにとって初めての革製ハンドバッグが作られることになった。「私たちはこの結果に本当に驚いています」そう語るのはROCIOのクリエイティブディレクターであるハミッシュ・メンジーズだ。「制作された作品は芸術作品であり、このユニークな革製ハンドバッグのコンセプトは、構造化されたアートの形で卓越した美しさをもたらし、デザインの限界を押し上げると信じています」さらにメンジーズは語る。「私たちにとって、3D印刷されたプロトタイプの使用を検討することは、長期的にはより多くのコスト、時間、および材料効率をもたらします。このテクノロジーを使用することで、業界の将来の能力を解き放ち、受け入れながら、より持続可能性な取り組みを行っていく未来に一歩近づきました」なんでもこの3Dプリントバッグは早くも今年の3月のパリファッションウィークにてデビューする予定らしい。果たして世界のファッショニスタたちはROCIOが提示するこの新しい「スタイル」をどう受け止めるのか。3Dプリントファッションの夜明けは近そうだ。
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動物福祉と3Dプリンター|ジレンマを超えてより豊かな世界へ
ヒューマニズムの歴史の行く先 ヒューマニズムは人類が発明したものの中で最も大きな発明品の一つだろう。現在の我々に当たり前のように備わっている「人権」という理念もまた長い歴史の中で育まれてきたヒューマニズムの叡智に基づくものだ。もし、この「人権」がなければ、あらゆる権力の横暴に対して我々はたちまち無力になってしまう。理不尽な命令に対して我々が正義を持って反抗することができるということもまた、ヒューマニズムを背景にもつ「人権」が憲法上で保証されているからに他ならない。 人権の起源とも言われる12世紀「マグナ・カルタ」の写本 20世紀の歴史はこのヒューマニズムという思想が世界中に拡散した1世紀だったと言えるだろう。民主主義に基づかない独裁権力による圧政、奴隷労働や人種差別、子供差別やジェンダー差別など、世界が西洋によって近代化されていく中で発生した様々な不公正や不正義が、ヒューマニズムの名の下に少しずつ是正されていった。 閣僚たちと奴隷解放宣言の草稿を作るリンカーン大統領 やがて20世紀後半になると、ヒューマニズムの批判的精神はヒューマニズムそのものへも向けられていくことになる。ヒューマニズムを旗印に他国へと干渉し、その国の文化を簒奪するような先進国の振る舞いに対して、ヒューマニズムの視点から過去のヒューマニズムへと批判が加えられていくことになったのだ。そして近年、拡張したヒューマニズムはついにヒューマンの垣根さえも超えて、不公正の是正に乗り出そうとしている。そう、アニマルライツ(動物の権利)の回復だ。 動物の権利の思想的根拠として参照される『動物の解放』の著者ピーター・シンガー 人類はみな平等であり、生まれながらにして幸福を追求し、それを実現する権利を所有している。これこそがヒューマニズムが世界に広く知らしめた考えである。では、人間以外の動物はどうなのだろうか。彼らはその権利を所有していないのだろうか。それはヒューマニズムの歴史プロセスにおいて起こるべくして起こった当然の疑問だった。こうして、20世紀後半頃より動物の権利獲得を目指す運動が主に西欧を中心に広がっていくことになったのだ。もちろん、アニマルライツを求める人々の中にも様々な立場がある。動物も人間も等しく生きている以上、全く同等の、かつ同様の権利が認められるべきだとする観点のもと、一切の畜産や屠殺、狩猟や肉食、動物園やペット飼育を否定するという立場。あるいは、これまでの長きに渡る肉食の歴史を踏まえて、食用としての畜産や屠殺、狩猟は認めつつも、そのあり方を少しでも動物にとって苦痛の少ない形にしていくことを目指すという動物福祉的な立場。昨今では動物に法的人格を与え、裁判の原告となる権利を認める事例なども出てきており(実は動物のみならず川が裁判の原告になった事例もある)、アニマルライツは世界的にも極めて高い関心を集めている。かつて小説家のジョージ・オーウェルが『動物農場』に描いたような世界が、今まさに起こりつつあるということなのだ。 一方、こうしたアニマルライツを求める運動に対して批判的な意見を持つ人も少なくない。たとえば、市民的権利には市民的義務が伴うものであり、動物はその義務を果たすことができないというような意見や、人間のつくった尺度によって動物の幸不幸を判断したり、人間が作りだした「権利」という概念を動物に押し付けたりしていくような態度こそが傲慢であるというような意見などがそうだ。最もよく見られるのは、動物に権利があるなら植物にも権利があるはずだ、という主張だろう。つまり、際限なく権利の概念を拡張し続けていけば、やがては野菜を食べることすらできなくなるのではないか、という指摘だ。あるいは日本においては世界の捕鯨反対運動に対する批判的な意見も多く見られる。捕鯨やイルカ漁は日本のローカルな文化の中に根差した伝統狩猟であり、そうした伝統的な文化を現代の価値観で安易に潰すべきではないという主張だ。この問題は度々世界でも取り上げられ、複数の視座からドキュメンタリー映画化も撮られている。特に鯨は哺乳類の中でも知能が高く、まだその巨大な体軀の持つ神秘的な性格から、動物愛護運動のメルクマールとなりやすいのだ。 推進派、反対派、どの立場の意見もきちんと追っていくと相応の理があるように感じられるが、そのぶん、この議論は落としどころの設定が難しい。近年では環境問題への関心の高まりから、平行線だった議論にやや波風が立っているとはいえ、この種のテーマはそれぞれの人生の根幹にある哲学の部分での対立を引き起こしてしまうため、社会全体のコンセンサスを得るということが達成しづらいのだ。いずれにしても、筆者のような特別アニマルライツの運動と関わりを持たない人間にとってみても、先ほど紹介したアニマルライツの後者のような立場、つまり可能な範囲で動物が苦しむような機会は減らしたほうがいいという動物福祉的な考え方については、否定する余地がないように感じている。それこそペットを飼っている人なら、自分のペットと同種の動物が苦しむ姿を見るのは、人間が苦しむ姿を見るのと同様に心が痛くなるというもの。普段、食用にしている肉にしても、虐待的に飼育された動物の肉よりも、丁寧に飼育された動物の肉を食べたいと思ってしまうのが人情というものだろう(それはそれで都合の良い考えなのかもしれないが)。 ↓ ショッキングな内容を含むため閲覧ご注意ください。...
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欧州に議論を巻き起こしている3Dプリント安楽死ポッド「サルコ」|命の基準を判断するのはAIか
3Dプリンターが「安らかな死」を出力する 現在、欧州である「乗り物」が話題になっているのをご存知だろうか。その流線型の美しいフォルムはどことなくスポーツカーを連想させる。しかし、この「乗り物」は決して走ったりはしない。まして友達と楽しくドライブに行くために使うだなんてことは到底できない。この乗り物に乗り込んだが最後、ほとんどの確率でその人が再び地に足をつけることはない。行く先はただ一つ、そう、死後の世界だ。その乗り物は通称「安楽死ポッド」と呼ばれている。要するに自死カプセルだ。正式名称はサルコ。同装置を開発したのは「死ぬ権利」推進団体エグジット・インターナショナルで、現在、自殺幇助が法的に認められているスイスにおいて実用化が期待されているところらしい。 安楽死ポッド「サルコ」 このサルコに乗るとどうなるのだろうか。いわく、このポッドは内側からのみ操作が可能であるという。乗り込んだユーザーの操作によってポッド内は低酸素状態となり、やがてユーザーは意識を失う。最終的には死に至る窒素ガスが放出され、ユーザーの生は終わりを迎えるという仕組みだ。同時代の別の国で、このようなポッドの販売が現実に開発されているということに対して、日本人としては驚きを禁じ得ない。だが、スイスでは以前から死ぬ権利が尊重されていた。たとえば2020年の1年間だけでも、スイスでは権利団体による幇助の元に1300人が自死している。これはサルコによるものではなく、医師が処方した薬液を患者本人が体内に取り込むことで行われたものだ。果たして、こうした自死と、その幇助をめぐっては、さまざまな道義的、哲学的な見解があることだろう。死を自ら選ぶなんて、さらにその死を手助けするなんて言語道断だ、と考える人もいるかもしれない。あるいは死が避けるべきネガティブなものでしかないのだとすれば、生物はみなネガティブな運命を背負った存在ということになるのであり、この生を肯定的に生きるために自死の選択は尊重されるべきだろう、と考える人もいることだろう。別にここで答えを出す必要はない。ただ、事実としてスイスではすでに死は権利として認められているというだけだ。 さて、このサルコ、実は3Dプリンターによって作られたものだという。作成者はフィリップ・ニッチケ、デザイナーはアレクサンダー・バニンクという人物で、バニングは現在、このサルコの3Dデータと設計図を50歳以上の希望者に対して提供する計画を考えているという。これはヨーロッパではスイス以外のほとんどの国で自殺幇助が認められておらず、マシンを直接提供したり、マシンを共に製造したりした場合、法に問われてしまうからだ。果たして、サルコクロは世界にどのように受け入れられ、用いられるのだろうか。なんでも作成者のフィリップ・ニッチケは、サルコにアクセスするためのテストをAIによって行うことを考えているらしい。その人物が死ぬ準備ができているかどうか、命の判断を行うのはもう人間の仕事ではないのかもしれない。
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あのイーブイに9つ目の進化形が誕生!? 3Dプリントフィギュア界でにわかに注目を集めるハイブリッドフィギュア
ポケモンの人気キャラが思いもよらぬ姿に イーブイは他の第1世代のポケモンの中でも人気の高いユニークなモンスターだ。小さな茶色のキツネのような風貌は愛玩動物のようにキュートだが、ゲームフリークが注目するのは他のポケットモンスターのどれよりも多く、8つの異なる可能な進化を持っていることだ。さて、実は最近、イーブイに新たな進化のバリヴァリエーションが加わった。残念ながらそれは公式にではない。しかし、その新たな進化形イーブイが、今、世界のゲームファンの中でひそかに話題になっているのだ。 Twitter上で活躍するコスプレアーティスト@JohnnyJunkers は、今月の5日、「ついに、ロックタイプのイーブイの進化が」というタイトルの写真を投稿した。もちろん、これはポケモンファンが予想していたものとは異なるものだ。一見して「イーブイ?」と目を見開かずにはいられない。なんせ、あの可愛いイーブイの最新の進化形は、ハリウッド俳優でプロレスラーのドウェイン「ザロック」ジョンソンの強面な顔をイーブイの体に融合させたものを3Dプリントした彫刻だったからだ。 Finally, a rock type Eevee evolution. pic.twitter.com/gErHdmUAWS — ⚔Junkers@Cosplay: Megaman LGNDS⚒ (@JohnnyJunkers) January 5, 2022 デザインはいたってシンプル。イーブイの小さな体からロックの頭が出ている。この彫刻には、ロックの人間の耳にイーブイの耳を加えて、合計4つの耳がある。端的に言ってちょっとヤバい。しかし、このちょっとヤバいイーブイはすでに19.4万いいねを集めるバズ画像となっている。ツイッターユーザーからの反応も上々で、みな一様にこの変わり果てたイーブイの姿を賞賛している。ポケモンファンは懐が広い。あるいはロックのファンが大らかなのか。 ...
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たった6分でハンバーガーを3Dプリントするマシンがついに実装|外食産業に混乱をもたらすロボットシェフシステムとは?
3Dフードプリント業界に激震を走らせた「ロボットシェフシステム」 3Dフードプリント技術が大幅に飛躍しようとしている。これまで3Dフードプリンターの可能性は様々に語られてきた。ボタン一つで好きな食べ物が自動的にプリントされるようになるかもしれない未来をめぐって、半ば夢想的な語りが多くなされてきたのだ。たとえば、こんな物語だ。レストランに入店したあなたは、テーブルのモニターを操作し、好きな食べ物を選択する。するとテーブルに備え付けられた小型の機械が瞬時に動き出し、瞬く間に注文した料理をプリントしてくれる。もちろん、ステーキからお寿司まで、メニューのバリエーションも完璧だ。しかし、なかなかどうして、3Dフードプリント技術の進歩は思ったように進んでこなかった。ペースト状にした食材を成型し、ムースのような食事を提供することはできても、複雑な料理を出力するとなると様々な技術的障壁があり、実現できずにいたのだ。それが変わりつつある。その遥かな夢の鍵を掴んだのは、イスラエルの3Dプリント食品会社SavorEatだ。なんでも最近SavorEatは「ロボットシェフシステム」なる新しいマシンを発表したという。そして、すでにその「ロボットシェフシステム」はイスラエルのハンバーガーチェーンBBBのいくつかの店舗に導入されているというのだ。 画像引用:SavorEat 料理の脱人間化に混乱する外食産業 まず、この「ロボットシェフシステム」とはどのようなものだろうか。このマシンは、ジャガイモ、ひよこ豆、えんどう豆などのたんぱく質の混合物が入ったカートリッジを使用して、ヴィーガンにも優しいベジタブルハンバーガー(のハンバーグ部分)をたった6分で出力してくれるというものだ。さらに、お客さんは自身の好みや健康状態に合わせて、脂肪分やたんぱく質のレベルを選択し、ハンバーガーをカスタマイズできるという。 以下は実際のBBBの体験動画。登場する3Dプリントハンバーガーは見た目も味も従来のバーガーと比べてなんら遜色がなさそうだ。 「これは革命的なことだ。決して忘れることができない体験を生み出すだろう」そう語るのはBBBのCEOであるAhuva Turgemanだ。それもそのはず、この「ロボットシェフシステム」は先に書いた夢をすでに小さく実現しているのだ。つまり、もはやBBBにおいては少なくともハンバーグ部分を作るシェフがいらないということになる。店員はあくまでもハンバーガーのラッピング、商品の受け渡しを行うウェイターとしての役割、そして店内を清潔に保つ清掃員としての役割を持つに過ぎない。 画像引用:SavorEat この技術的革新は、今まで3Dプリント技術を採用してきた様々な産業を襲った変化以上の変化を食品産業にもたらす可能性があると言われている。「ロボットシェフシステム」がさらに進歩を続け、様々なレストランに普及していった時、今までレストランで人間が行なっていた仕事の大部分はロボットによって取って代わられることになる。たとえばアメリカでは全人口の3分の1以上が外食産業で働いていることを考えると、これは労働市場を根底から覆す大事変とさえなりかねない。実際、すでにSavorEatは米国市場のために植物ベースの豚肉を使った朝食用ソーセージを3Dプリントによって提供する準備を始めているという。この「ロボットシェフシステム」を取り上げた世界大手3Dプリントメディアである「3DPRINT.COM」の記事には次のように書かれている。“テクノロジーの準備がほぼ整った今、必要となるのは、人口の大部分が3D印刷された食品を受け入れることと、自動化されデジタル生産された食品が大規模に採用された場合に最終的に置き換わる膨大な数の労働者を補償/再訓練する方法に関する計画です”日本の場合、外国産業従事者数は464万人、これは全従業者の7%に当たる数だ。いつの時代も大きな技術的革新は労働市場に混乱をもたらす。果たして、今回はどうなるだろうか。
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あの世界的経済誌が3Dプリント技術の今後を分析|あらゆる社会的ニーズを3Dプリンターが満たしていく
「3Dプリンター元年」からまもなく10年 2022年は3Dプリンターの可能性を世界に知らしめたベストセラー書籍『MAKERS』(クリス・アンダーソン著)の出版からちょうど10年目の節目に当たる。 『MAKERS』(クリス・アンダーソン著/NHK出版) 『MAKERS』が出版された翌年の2013年にはオバマ元米国大統領が一般教書演説にて「3Dプリンターがアメリカの製造業を変える」と宣言し、テレビやメディアでも3Dプリンターが大きく取り上げられるようになった。大手家電量販店で3Dプリンターの実機が置かれるようになったのもこの頃だ。そうした状況を受けて「3Dプリンター元年」なんて言葉も生まれた。その後の3Dプリンター業界の発展と普及については、これまでも本欄で様々に取り上げてきたところだ。活用の幅は日増しに拡張しており、また技術の精度も向上の一途を辿っている。 とはいえ、全てが順風満帆かと言えばそんなこともない。一方ではさらなる発展のために越えていかなければならない課題や障壁も見えてきており、10年前に夢想していたほどには3Dプリント業界は発展していないと感じている人もいることだろう。 確かに、一般人で3Dプリンターを自宅に常備している人はまだ割合的に多くない。社会生活そのものを一新すると言われた3Dプリンター革命はいまだ局所的な段階にあり、真の特異点には達していないというのが大筋の見立てだ。まだ道半ば、今後に期待がかかる。 3Dプリントテクノロジーの40年史──全ての始まりは小玉秀男の「ラピッドプロトタイピング」だった では、次の10年で3Dプリント業界はどこまで発展していくのだろうか。2020年代以降の3Dプリントテクノロジーの可能性について、先日、世界的な経済誌である『Forbes』が非常に面白い記事をポストしていた。今、世界で注目すべき先端技術を牽引するフォーブステクノロジーカウンシルのメンバーたちが今後3Dプリントテクノロジーによって満たされていくであろう社会的ニーズについて語ったというのだ。ここで少しその記事を覗いてみよう。 10 Exciting Applications Of 3D Printing That Could Revolutionize Industry And Society(Forbes) ...
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IKEAの最新3Dプリント装飾品がモードでカッコいい|自社製品の用途をAM技術で拡張する北欧の最前線
IKEAの新たなるライン「FLAMTRÄD」 新年、特にこれからの2月、3月というシーズンは新生活に向けての準備が始まるシーズンでもある。引っ越し予定がある方はもちろん、新しい一年を心機一転して過ごしていく上で、居住環境のリニューアルを計画されているという方も少なくないだろう。スウェーデン発の家具大手IKEAは、今日、日本においても全国に12店舗を構え「北欧式のおしゃれな家具や生活雑貨を手頃な値段で買えるお店」として親しまれている。2020年には渋谷に、2021年には新宿にも店舗を出店し、その存在感を高まるばかりだ。 そんなIKEAが最新商品ライン「FLAMTRÄD」を発表した。このラインでは3Dプリンターによって製造されたオンデマンドの室内装飾品をリリース、すでに発売が開始されている。これまでも3Dプリントアイテムを様々に提供してきたIKEAだが、今季はSLS方式の3Dプリンターを用い、人間の顔や手などをモチーフとした格子デザインのアイテムを出力した。 カラーリングは黒と白の展開、モードな雰囲気が空間をスタイリッシュに装飾してくれそうだ。専門筋によると今回のFLAMTRÄDのリリースは、IKEAが3Dプリント商品の価格を十分に低くして大量生産する方法を見つけたことを表している可能性があるという。今回の価格帯は4000円から6500円。IKEAの他の商品ラインナップと比較すると決して安くはないが、アートとしての装飾性を考えればリーズナブルだろう。 ところで、DIY愛好家たちの間において、IKEAの家具は3Dプリントされた部品でハッキング、つまりはカスタマイズするのに非常に適していると言われている。IKEA自身もこうしたDIYを奨励していて、自社のスピーカーを3Dプリンターを用いてハックするためのコンテストを主催していたりもする。中でもThisAblesという取り組みでは、IKEA製品を特別なニーズに基づいて使用するための3Dモデルを開発、提供している。たとえば引き出し用のハンドル、ストローを安定させる器具、ゲームコントローラー用のアダプターなどなど。販売された商品を最終形と考えず、それらに潜在している可能性を探求していく姿勢は、まさに今後の製造企業が見習うべきところだろう。 今後、家具雑貨業界では3Dプリンターがますます存在感を高めていくことは間違いない。今度、IKEAに行った際は、どれが3Dプリンターで作られたものかを探すような視線で店内を回ってみても面白いかもしれない。
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日本の神社仏閣を3Dプリンターが救う|高校生が作った本物そっくりの仏像
神社やお寺を悩ます盗難被害 日本の正月には神社仏閣が欠かせない。無宗教と言われる日本人だが、実際のところ、その生活には仏教と日本神道のしきたりが染み付いている。確かにキリスト教やイスラム教のような明確な教義に基づいて生きているわけではないが、皆当たり前のように寺や神社に行くし、そこに崇高さや神聖さを感じ取っている。お墓参りや法事だってそうだ。お坊さんのお経を聞きながら仏前に手を合わせることは、もはや私たちの暮らしの一部をなしている。特に年越しと正月は、大晦日の除夜の鐘から、元旦の初詣に至るまで、日本人が最もその暮らしに内在化された信仰をあらわにする時期でもある。今年はコロナ禍も収まり気味であったことから、各地の神社が多くの参詣客で賑わい、正月らしい正月となったようだ。歴史を振り返れば、大変な時期にこそ人々は神社仏閣を参ってきたとも言える。そう思うと、今こそ神社仏閣がその役目を果たす時期なのかもしれない。 ところで、実は近年、神社仏閣において仏像や神像の盗難被害が相次いでいるのをご存知だろうか。被害の中心となっているのは、その文化財的価値を知られることなく、各地の集落に暮らす人々が心の拠り所として守り伝えてきた、身近に祀られる仏像など。なんとも悲しい話だが、実際にその被害が全国各地の集落に及んでしまっている。 そうした盗難事件が発生する背景には、現在インターネットのオークションなどにおいて、仏像や神像が日本の古美術品として出回っており、世界においても人気ジャンルとなっているという状況があるという。こうしたオークションでの転売を目的として、転売を目的として仏像を盗みとる窃盗犯が数多く出現しているのだ。またもう一つ、地域の高齢化と過疎化という問題もある。現在、全国で寺院の無住化が進んでいる。それに伴い、管理の担い手が不足し、結果的に犯罪を抑止する目が行き届かなくなってしまっているのだ。地方の小さな暮らしに密着している存在だからこそのセキュリティ不足、それによって生じる盗難被害。なんでも日本の伝統的な信仰を毀損するこうした問題に、今、3Dプリンターを駆使して向き合っている若者たちがいるというのだ。 高校生らが3Dプリントした「お身代わり仏像」 地元の仏像を盗難から守る。そうした意図の下に立ち上がったのは和歌山県の高校生と大学生だ。朝日新聞によれば、なんでも彼らは和歌山県海南市の大崎観音堂に祀られている釈迦像のレプリカを「お身代わり仏像」として3Dプリンターによって昨年12月に作ったというのだ。実はこの「お身代わり仏像」、すでに30体目になるという。地域の仏像とそっくりのレプリカを製造することで、特に盗難のリスクが高い場所に置かれている仏像と交換、ありうべきリスクから守ろうというわけだ。ここには同時に仏像盗難による住民たちの精神的な被害を回避するという目的もあるという。 地域にとってシンボルともなっている仏像がレプリカで良いのだろうか、という疑問に関し、朝日新聞の取材に対して、本物の仏像の保管に当たる和歌山県立博物館の主任学芸員は「作った生徒が自ら地域住民に『奉納』することが大事」と話しているようだ。たしかに3Dプリンターで作っているとはいえ、地域の信仰を守るために製造され、奉納された仏像ならば、それは間違いなく「本物」と言える。今後、実際に人々と触れ合っていくことで、霊験を獲得していくに違いない。そもそも和歌山県でこの活動がスタートしたのは2012年。なんでも2010年からの1年間で少なくとも172体の仏像が盗まれていたそうで、こうした被害を未然に防ぐ上で、博物館が中心となりレプリカの制作がスタートした。 2017年に制作されたお身代わり仏像(左が実物で右が複製) 現在、すでに15ヶ所で29体のレプリカへの置き換えが完了している(本物は博物館で保管)。今回の仏像は県立和歌山工業高校産業デザイン科の生徒らによって2020年頃から制作が始められた。まずは本物の仏像の造形を3Dスキャンし、得られた3Dデータを統合し、微修正した後に、3Dプリンターで出力したという。今後こうした取り組みが全国に広がっていくことでもたらされるものは、盗難被害の減少のみではないだろう。地域と若者とが伝統的な信仰とテクノロジーを介して繋がっていくことで、世代間の断絶も架け橋されるだろうし、ひいては地域そのものがアップデートされていくきっかけにもなるはずだ。何より3Dプリンター活用の可能性として、これは実に素晴らしい方法だと言えるだろう。ところで、確かに仏像や神像の窃盗犯たちは卑劣な犯罪者ではあるのだが、一方で日本の仏教にはそうした「悪人」こそが救済の対象であるという考えもある。たとえば浄土真宗の開祖である親鸞はそれを「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」という言葉で表しているし、江戸末期に上田秋成がまとめた「春雨物語」には、若き日に博打に狂い、借金のために父母を殺害し、その後盗賊にまでなったものの改心し、年老いてある寺の高僧となった“はんかい”という人物の物語が記されていたりする。仏の御心は広く、そして深いのだ。
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3Dプリンターによって118年の時を経て再現されたピカソの幻の傑作
失われた幻の傑作 アートに全く興味ないという人でもパブロ・ピカソの名前を聞いたことがないという人はいないだろう。言わずと知られた天才画家。おそらく一般的にはキュビズムと呼ばれる、あたかもポリゴン状の人物を描いたような独特な作風で知られている。最も有名な作品はドイツ空軍によるスペインのゲルニカ地方への爆撃の悲惨さを描いた『ゲルニカ』という作品だろう。キュビズムの手法を用いて描かれたこの作品は、そのダイナミックな迫力によって当時の人々を圧倒し、今もなお歴史に残る名画として語り継がれている。 パブロ・ピカソ『ゲルニカ』 しかし、ピカソはずっとキュビズムの作品ばかりを描いていたわけではない。たとえばピカソには「青の時代」と呼ばれる、主に青色を主体とした作品を描いていた時代があった。もちろん、当時はまだキュビズムは生まれていない。しかし、ピカソファンにとっては、実はキュビズム時代以上にこの青の時代の作品群は高く評価されていたりもする。 パブロ・ピカソ『二十歳の自画像』 ピカソの青の時代の代表的な作品の一つに『盲人の食卓』という作品がある。盲人が孤独に食事を取る姿を悲壮的な濃いブルーを基調に描いたこの作品は、どこか神秘的でもある。1世紀以上にわたり人々を魅了してきた紛うことなき名作である。 パブロ・ピカソ『盲人の食卓』 しかし、実はこの絵が最初から視覚障害者の肖像画として描かれたものではなかったかもしれないということが、2010年、X線を使用した検査によって明らかになった。このキャンバスを透視すると、『盲人の食卓』の奥にある女性の姿が描かれていることが分かったのだ。果たして、それはどんな作品なのか。幻の絵画の発見から11年、ついにその作品は現代に再現されることになる。その際に鍵となったのが3Dプリンターだった。 ピカソの専門家も唸る驚異の再現度 隠された幻の絵画を再現したのはロンドン大学ユニバーシティカレッジの二人の技術博士候補が設立した人工知能アート集団〈OxiaPalus〉だ。使用したテクノロジーは、分光イメージング、AI、3Dプリントの組み合わせだ。OxiaPalusのメンバーは、作品の見た目や感触、トーンをオリジナル作品に近づけるために、数十点のピカソの絵画を分析し、ピカソのスタイルを学習するためのAIアルゴリズムを開発。そうして学習を繰り返した後、アートワークをキャンバスに3Dプリントすることによって生み出されたのが幻の作品『The Lonesome Crouching Nude』だ。 パブロ・ピカソ『The Lonesome Crouching Nude』 ...
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QRコードを3Dプリントするための5つの手順と注意点
QRコードを3Dプリントして立体的に 世界的3Dプリンターメディアである「ALL3DP」がまたしても非常に面白い記事をまとめていた。題して「QRコードを3Dプリントする方法」。いわくQRコードの3Dプリントは、印刷されたコードをきちんと認識スキャンできるようにするためにも、一定以上の精度が求められ、ややプリントのプロセスにおいて注意すべき点があるのだそうだ。https://all3dp.com/2/3d-print-qr-code-tutorial/果たして、どのような点に注意すべきなのか。ALL3DPの当該記事を参照しつつ、QRコードの3Dプリント手順をまとめてみよう。 手順1・QRコードの生成 まず何よりQRコードを生成しなければいけない。ただ、ここに関しては特に技術は必要ない。ネット上のQRコードジェネレーターを使用して、QRコードによって飛ばしたいURLや画像、テキストなど必要な情報を入力するだけだ。ただ、その際にコードをSVG形式でエクスポートしておくと後々、コードの品質を損なうことなく拡大、縮小ができるため、3Dモデルに変換する上では理想的だそうだ。しかし、SVG形式でエクスポートしたコードをCADにインポートしようとすると、ファイルに問題が発生する場合もあるという。別のやり方としては、ジェネレーターの段階では別の画像形式でエクスポートしておいて、CADにインポートする前にSVG変換をかけるという手もあるようだ(たとえばJPGやPNGでエクスポートして、その後にコンバーターなどを用いてSVGに変換する)。 手順2・QRコードを3Dデータに変換する さて、3Dプリントするためには、通常なら2DのQRコードをまずは3Dデータへと変換しなければならない。2Dデータを3Dデータに変換できるCADは様々あるが、ALL3DPは「Tinkercad」の使用をお勧めしている。流れとしては、まずQRコード画像をTinkercadにインポート。すると自動的に3Dモデルに変換される。そのインポートの際に注意すべき点はコードの長さと幅の寸法だ。それぞれが同じであり、かつ小さすぎないことを確認しておいたほうがいい。小さすぎると読み取れない場合があるからだ。もちろん、他のCADプログラムでも大丈夫。ただ、SVG形式と兌換性があるかは確認しておく必要がある。その上でファイルをスケッチとしてインポートし、押し出しツールを使用してモデルに高さを加えるのがいいだろう。 手順3・背景をつくって配置する さて、ベースとなった3Dモデルができたら背景を加えなければいけない。この作業には「対比」と「接続」という意味がある。まず「対比」は、背景を押し出されたQRコードと異なる色で印刷、またはペイントすることで、デバイスにコードをスキャンしやすくしておくという意義がある。もう一つの「接続」は、背景にコードを接続しておくことで、分離したコードの位置がずれないようにするという意義がある。作業は単純、QRコードの全体よりもわずかに長い幅の正方形のベースを作成するだけだ。高さは1~2mmを越える必要は特にない。このベースの中央に位置合わせツールを使ってQRコードの3Dモデルを配置したら、基本的なQRコードの3Dモデルは完成だ。 手順4・スライサーにインポートして印刷方法を設定する 完成した3DモデルをCADからSTLなどのファイル形式にエクスポートしたら、スライサーにインポートして、印刷方法を設定しよう。冒頭にも書いたように、きちんとデバイスに読みとってもらう上では一定の精度が必要だ。ALL3DPによればEステップ、ノズル、ホットエンドなどが適切に調整され、正しく機能していることを確認する必要がある。また精度のためには印刷速度を下げた方が安心だろう。外壁の数も多めに設定し、あるいはインフィルも100%に設定した方が安定感が高い。もちろん、使っている機種の造形方式や個性もあるため、ご自身の感覚に頼るのも大事だ。重要なのはQRコードがはっきりと読み取れる造形にしておくこと。ここを外さなければ基本的には問題ない。 手順5・印刷したQRコードをカラーリングする さて、出力したら印刷物にペイントでカラーリングしよう。これは先ほどの「対比」、よりコードを読み取りやすくする上で重要な作業だ。その際、同系色を選ばない方がいい。背景の色とコードの色がくっきり分かれていた方が、読み取りはスムーズになる。また、背景に暗めの色、コードに明るめの色を配置した方が、スキャンしやすいだろう。ただQRコードは細かいため、背景へのカラーリングは事後的には難しい。そこで、背景はあらかじめ暗い色のフィラメント、レジンなどを使用しておき、出力後、浮き出たコードの表面をスポンジなどを使って均一にカラーリングするのがいいだろう。 まとめ 以上、ALL3DPの記事を参照しつつ、QRコードの3Dプリントの仕方をまとめてみた。お店などをやられている方は店頭に3DQRコードが置かれていたりすれば、ちょっと気が利いていて面白い。あるいはアクセサリーにしておいて、首からぶら下げておく、なんていうのもユーモアがある使い方だ。年末年始のお休み中、3Dプリンターでなんか作りたいなあとぼんやり思案中の方は、ぜひこの機会に3DプリントQRコードを作ってみて欲しい。 〈関連動画〉
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クリスマスに出力したい無料3Dデータ8選|ツリー、オーナメント、プレゼントボックスまで
年末の大イベントをどうデコレーションする? 師走、激動だった2021年もまもなく終わろうとしている。今年は2020年より継続するコロナ禍に加え、東京でのオリンピックパラリンピックの開催、内閣総理大臣の交代など、様々なことがあった。また、あの911から20年、311から10年という節目の年でもある。3Dプリント業界においてもまた多くの展開があった一年だ。しかし、まだ完全に年越しムードになるには早い。12月と言えば、本邦最大のイベントが残っている。そう、クリスマスだ。すでにクリスマスに向けて準備が万端という人は、この記事は来年に向けたものになる。ここで紹介するのはクリスマスをより彩り豊かに飾り立てるためにおすすめの3Dデータたちだ。クリスマスツリーのオーナメントから、クリスマスプレゼントまで、以下ではこの時期にこそ出力してみたい3Dデータを紹介してみようと思う。是非とも参考にしていただきたい。 1.クリスマスツリーランプ クリスマスの主役といえば、クリスマスツリーだ。今年はコロナ禍における物流が妨げられたことで人口樹木のクリスマスツリーが高額化していると聞く。ならば3Dプリンターで出力するまで。 こちらはランプベース付きのクリスマスツリー型オブジェ。大小複数出力することで、よりクリスマス気分を高めてくれる。使用する電球はLEDがお勧めとのこと。https://www.thingiverse.com/thing:1913982 2.リアルなクリスマスツリー ランプもいいけど、もっとツリーっぽさが欲しいという方もいるだろう。やはりモミの木を連想させるあの緑こそが、クリスマスの気分を高めてくれる。 こちらは枝や葉まで再現したクリスマスツリーのオブジェだ。枝の数はお好みで調整できる。メインのクリスマスツリーをお持ちの方はサブの装飾用ツリーとしていかがだろうか。https://www.thingiverse.com/thing:38016 3.クリスマスツリー用スター すでにクリスマスツリーをお持ちの方は、それを装飾するオーナメントが必要だろう。中でも最も大事なのはツリーの頂点に飾られるスターだ。 こちらはピクセルアートのような形状のクリスマスツリー用スターとなっている。市販されているスターとは違い、どこかユーモアもあって面白い。家のツリーに飾り立てておけば「このスターなに?」となること間違い無いだろう。https://www.thingiverse.com/thing:194864 4.鹿のオブジェ 部屋をクリスマス仕様にデコレートしたい、という方にお勧めなのが鹿のオブジェだ。雪山を連想させるし、何より可愛らしい。 こちらはシンプルな形状の鹿をかたどった3Dデータ。この時期なら金色や銀色に塗装することでグッと雰囲気が出る。もちろん、赤や緑のクリスマスカラーもおすすめ。https://www.thingiverse.com/thing:571949 ...
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3Dプリント業界で働く女性の割合はたった13%|ジェンダーバランスの不均衡が業界の拡張可能性を阻む
3Dプリント業界の偏ったジェンダーバランス 年々勢いを増している3Dプリント業界だが、実はある問題も抱えている。昨今、世界が強い関心を寄せているあの問題、そうジェンダーバランスだ。最新テクノロジーを扱う業界ということもあり、アディティブ・マニュファクチャリングの世界を支える企業、経営者には男性が圧倒的に多い。これは日本に関わらず世界的な状況としてそうなのだ。現状で3Dプリント業界における女性の割合は13%、経営者に関しては11%にとどまっている。かなり偏っていると感じざるを得ないが、これでもここ数年で格段に状況は改善したようだ。以前は統計化するのも憚られるほど、業界には女性が少なかったらしい。そうした状況に2014年に立ち上がったのがWomen in 3D Printing、略してWi3DPだ。2014年にノラ・トゥーレのブログ上での呼びかけをきっかけに始動したこの組織は、その後、着実に規模を拡大し、現在は36カ国と80の地方支部を持つ23,000人の巨大組織となっている。 Wi3DPの創設者であるノラ・トゥーレ(画像引用:https://womenin3dprinting.com/) 一体どのような組織なのだろうか。公式HPに掲載された組織としての理念は以下の通りだ。「Wi3DPは、アディティブマニュファクチャリングスペースを形作る女性のストーリーを共有したいという創業者の願いから、2014年に始まりました。3Dプリント業界でキャリアを始める前は、私たちのほとんどのメンバーは、他の分野において情熱を注ぎ、趣味や仕事に励んできました。アディティブマニュファクチャリングは製造ツールであるため、業界の垣根を超えて使用することが目的とされています。それこそが、この業界が多様なバックボーンの労働力を歓迎することでより豊かになっていくべきであると私たちが信じる理由です。実際、3Dプリント業界の女性は この業界を非常に豊かで興味深いものにしています。業界が今まで以上に多様な背景を受け入れること、それが私たちの目指すべきことです。」 確かに3Dプリンティングの用途は本来とても幅広い。可能性としてはほぼ無限大と言っていいくらいのレベルだ。ただ、その可能性に気づくためには、様々な潜在的需要をキャッチしなければならない。その上で業界がある特定の層の人間に偏っている現状は、そうした潜在的な可能性を見落としやすい状況にあるとも言え、これは業界にとって大きな損失でもある。女性を始め、社会におけるマイノリティ層が業界に参入することは、3Dプリント技術の活用の幅、技術革新のペースアップのためにも欠かせないことなのだ。 これまでWi3DPはノラ・トゥーレの指導のもと、実際に業界内での女性の活躍を大いに促してきた。数値としては依然として男性偏重であるものの、その啓蒙活動は次世代にわたって大きな効果を生み出すはずだ。ジェンダー不平等の改善や多様性の確保は、単にポリティカルコレクトネスの観点からのみならず、全体の利益という観点からも真剣に取り組まれるべきことであり、Wi3DPは現在、その大きなかなめとなっているのだ。 7年目を迎えたWi3DPの新たなる体制 ところで、このWi3DPが今、大きな転換点を迎えつつある。これまでWi3DPの社長を務めてきたのは創設者でもあるノラ・トゥーレだったのだが、この度、社長の交代が発表されたのだ。新社長はクリスティン・マルヘリン。もちろん女性だ。クリスティン・マルヘリンは、2001年に米国の武器産業大手であるノースロップ・グラマンでプロセスエンジニアとして働き始め、その後、戦略的マーケティングマネージャーとなった功績を持ち、自身でもコンサルタント会社を経営する敏腕実業家でもある。これまでWi3DPでは米国オレゴン州ポートランドの支部大使を務めてきており、グループ内での豊富な経験を持っている。 Wi3DPの新社長であるクリスティン・マルヘリン(画像引用:https://womenin3dprinting.com/) 果たして新体制となったWi3DPは今後どのような展開を見せるのだろうか。当面は以前からの流れを引き継いでいく見込みだが、本人はこれまでのプロジェクトを「さらに発展させていく」と強い意欲を覗かせている。そんな中、日本はどうなのかと言えば、もちろんWi3DPの支部は日本にもある。ただ現状では東京支部だけの様子。人口規模を考えると、これは正直、心許ない。 ジェンダー平等に関して日本はまだまだ乗り遅れているが、これを単に文化の独自性の問題だと捉えてしまっては、みすみすブルーオーシャンを手放すようなもの。女性目線での3Dプリント技術の活用は新たなゴールドラッシュを生み出す可能性さえあり、日本の3Dプリント業界においても女性の活躍の幅を広げていくことは綺麗事を超えた急務なのである。SK本舗としても、3Dプリント業界がジェンダーの垣根を超えてますます盛り上がっていくことを、心から願っている。
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渋谷を乱舞する3Dプリント獅子|3Dプリンターが伝統芸能を更新する
渋谷のストリートを跳梁する現代的「獅子」 今年の7月にある舞台が話題となっていた。舞台のタイトルは「獅子と仁人 渋谷の舞」、そのキャッチコピーはこちらだ。“3Dプリントからうまれた現代獅子に生命をふきこむのは沖縄獅子の舞手たち。ダイナミックで愛らしい演舞に呼応するストリートダンス。デジタル時代の現代芸能が渋谷の最先端で躍動する。” 同舞台は世界にひろく伝わる獅子舞をもとに舞台芸術のあらたな表現、そして鑑賞体験の創造に挑むプロジェクトで、主催していたのは株式会社イッカクだ。東急株式会社および東急不動産株式会社ほかの協力のもと、2021年7月17日~7月18日の2日間に、渋谷駅周辺施設4箇所での街頭パフォーマンスを開催した。会場となったのは渋谷ヒカリエのヒカリエデッキ、渋谷フクラス、渋谷ストリームそして渋谷キャスト。金銀2頭、大迫力の現代獅子が各エリアを練り歩いて、ストリートダンサーとともに町全体を横断、パフォーマンスが披露された。 何より、注目を浴びたのは鉱石をモチーフとしたという獅子頭のデザインだ。3Dプリンティングによって形成され、伝統的でありながら近未来的な雰囲気を感じさせる仕上がりとなっている。元々は2020年に沖縄で初公演がオンライン上で行われ、その後、渋谷では初めての人前での披露となった。プリミティブに躍動する人間の身体と、最先端テクノロジーを用いた先鋭的なデザイン、伝統と革新、野性と理性とが矛盾なく共存する素晴らしい演目だ。すでに終わってしまっているのが惜しいばかり、是非とも再演が期待される。実は3Dプリント技術によるこうした伝統の再解釈は様々に行われている。たとえば11月に開催されていた、名古屋の歴史や文化遺産に着目し、堀川沿いで繰り広げられるイベント「ストリーミング・ヘリテージ」では、アーティストの市原えつこが観音崇拝を再解釈した作品《デジタルシャーマン・プロジェクトー現代の観音プロトタイプ》を発表した。これは故人の顔を3Dプリントした仮面をつけたロボット上に故人が死後49日間のみ出現するというプログラムだ。 昨日は名古屋台地と熱田台地のへりあたりで開催されるアートのイベント「ストリーミング・ヘリテージ|台地と海のあいだ」のプレスツアーに伺いました。市原えつこさんの《デジタルシャーマン・プロジェクトー現代の観音プロトタイプ》すごかった。裏メニューを見せてもらいました。 pic.twitter.com/Bfvb6UMQHR — 浦島もよ (@monoprixgourmet) November 12, 2021 いずれにせよ、こうした取り組みが活性化していくことは、あらためて伝統的な芸能に人々が関心を集めていく上で、非常に効果的だろう。たとえば3Dプリントなまはげ、3Dプリントねぶたなど、職人技術とテクノロジーの融合が起こりそうな場は色々ある。今後の展開が楽しみだ。
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月面にアートギャラリーが登場? 2022年、3Dプリントアートが宇宙に飛び立つ
太陽系初となる地球外のアートギャラリー 日本でも各地にあるアートギャラリー。とりわけ都市部には無数と言っていいほどたくさんのギャラリーが存在し、日々、古典美術や現代美術、あるいはグラフィックデザインや民芸などの様々なジャンルの展示が行われている。もちろん、世界の都市も同じ状況であり、その数なんと約19,000。どうやらアートギャラリーは人間社会に欠かすことのできない、とても重要な存在であるようだ。実は現在、思いもよらぬ場所に新たなギャラリーの立ち上げが準備されている。なんでもその場所は電車でも飛行機でも船でも行けない場所なのだという。では、何に乗ったらそこに行けるのか。正解は宇宙船。そう、アートギャラリーの新たな新天地となるのは、他でもない月面なのだ。 このプロジェクトを手掛けているのはその名もずばりムーンギャラリー財団。同財団は現在、地球で唯一の自然衛星である月に2025年を目標にアートギャラリーを立ち上げる計画を進めている。そのための第一段階として、世界中のアーティストから集められた100の作品が、来年、地球を飛び立つという。今回は国際宇宙ステーションを目的地とした飛行だが、2025年に月面に恒久的なホームベースを確立次第、そこに常設される予定だ。 果たしてそれらの展示を誰が見るのだろうか。正直、そこはよく分からない。宇宙人? あるいはそれ以外の何か? いずれにせよ、宇宙におけるアートの可能性を切り開く、先進的な取り組みだと言えるだろう。 画像:MOON GALLERY 宇宙を駆ける3Dプリントアート さて、来年に宇宙へ向かって放たれるアート作品とはどのようなものだろうか。今回集められた100の作品はいずれも1cm×1cm内の小作品となっている。それらが10cm×10cmのグリッドプレートに収められ、月着陸船の外部パネル上に接続されるとのことだ。 画像:MOON GALLERY すでに87点の作品が集められており、作品のサイズが小さいことから、3Dプリントアートも数多く含まれている。以下のリンクから作品一覧を見ることができるが、コンパクトながらどれも意匠の凝らされた面白い作品ばかりだ。http://www.moongallery.eu/grid/とりわけ注目すべきはシンガポールの南洋理工大学の積層造形専門家たちのチームが建築家でありデザイナーのラクシュミ・モハンバブが制作した《構造と反射》という作品。こちらは3Dプリンターを使って出力された立方体状の作品で、各面に異なるシンボルが示されている。 画像:シンガポール南洋理工大学 なんでも、これらのシンボルはいずれも宇宙の秘密に関わるものとのことで、制作者たちは文化交流の範囲を地球から宇宙へと拡張することをイメージしたという。果たして作品を通じた宇宙とのコンタクトは実現するのだろうか?先日、元ZOZO社長の前澤友作さんが宇宙旅行へ旅立ち、「宇宙なう」とツイートして話題になったばかりだが、いまだ膨大な費用がかかるとはいえ、宇宙旅行が現実のものになりつつあることは、紛れもない事実でもある。あるいはいずれ、ヴェネツィアビエンナーレのような芸術祭が月面で開催されるようなこともあるのかもしれない。アーティストの皆さん、制作準備はできていますでしょうか? ...
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