
障害を抱えた友達が困っている時に3Dプリンターを使って出来ること
3Dプリンターが日常の些細な「SOS」を解決する
いまや様々な産業で役立てられ、技術革新を起こし続けている3Dプリンターだが、3Dプリンターが活躍するのは必ずしもそうした大きな場面ばかりではない。日常の些細な場においても工夫ひとつで3Dプリンターが大いに役立つことはある。
たとえば、STEM for ALL賞を受賞したアメリカ・テネシー州のアダライン・ハムリンの3Dプリンターの活用の仕方は非常に心温まるものだった。
ハムリンは15歳の学生だ。彼の創作は学校生活の中である場面に遭遇したことをきっかけに始まった。
ハムリンが遭遇した場面、それは同じ学校の障害を抱えた生徒が食堂を歩いている時、ランチトレイの中身を落としてしまっている場面だった。その光景を目にしたハムリンは考えた。
「僕に何かできることはないだろうか」。
こうしてハムリンの実験が始まった。どうすれば身体に障害のある人でもランチトレイを安定して使えるようになるだろうか。
結論から言えばハムリンのアイディアは実にシンプルなものだった。トレイに付属させるアタッチメントを制作することにしたのだ。プレートやカップなど、トレイに収まる全てのものに合うようなストッパーを形成し、それをトレイに接着。そうすることで、ランチトレイから物が落ちるのを防ぐことにしたのだ。
15歳のアダライン・ハムリンと学友
ハムリンはこのアタッチメントを3Dプリンターで造形、出力した。技術的には極めて簡単な技術だ。3Dプリンターに少し触れたことがある人にとってはわけもないものだろう。しかし、この些細なアイディアはすぐさま評判となり、他の学校にも波及することになった。かくしてハムリンはIT技術、ロボット技術の教育に関するアワードであるSTEM for ALL賞を受賞するに至ったのだ。
もちろん、技術の革新はとても重要なことだろう。しかし、それ以上に重要なことは、その技術をどのように使うかという点である。ハムリンは3Dプリント技術の初歩的な技術を使用して、これまで誰もきちんと気づくことができずにいた小さな「SOS」に向き合い、応えたのだ。これはまさにテクノロジーの理想的な形ではないだろうか。
皆様も是非、日常に潜む小さな「SOS」をあらためて目を凝らし、探してみて欲しい。あなたがすでに持っている技術で救える人は、きっとあなたが思っているより多くいるはずだから。