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3Dプリンターが使えないと就職できない時代に?──技術革命によって変わりゆく仕事の現場
3Dプリンターが仕事選びの幅を決める 今後、3Dプリンターを操作できるということが、それに就くための条件となってくるような職業が増えていくことは、おそらく間違いない。3Dプリント技術は多岐に渡っており、衣食住に関連する様々な分野でプレゼンスを高め続けている。そうすれば当然、その技術が一般的に求められるようになっていく。これは時代の必然というものだろう。 数十年後には料理をハンドメイドで行うことは、一部のマニアックな高級寿司店のみになっている可能性がある。はたまた、建造物を力仕事で作るといったようなことにしても、あえて汗水垂らして「ものつくり」を行いたいと望むDIY好きの趣味人だけの「遊び」となっている可能性もある。 自動運転技術の発達によって「運転手」の仕事がなくなる、あるいは今までとは異なる形に変わっていくかもしれないという話を聞いたことがあると思うが、それは決して誰にとっても他人事ではないのだ。3Dプリント技術の進展によって影響を全く受けない業界など、おそらく存在しないからである。 たとえば、医療の世界も同様だ。移植用の臓器などに関して、バイオ3Dプリント技術の研究が積み重ねられているということは、これまでもお伝えしてきた通りである。ただし今後、特に大きな影響を受けることになるのは薬剤師だろう。「医療の個別化」が進む昨今、患者それぞれにパーソナライズされた薬剤タブレットの開発が日進月歩で進んでおり、薬剤師が仕事をしていく上では今後3Dプリンターの操作技術が必須となってくる可能性が極めて高いのだ。 患者に必要な複数の有効成分を組み合わせた3Dプリンターで出力する錠剤「ポリピル」 大量の薬を一日に何度も服用することは、精神的にも苦痛であり、患者の体力を奪うことでもある。個別化された3Dプリント丸薬は複数の薬を一粒の錠剤へと個別にまとめることを可能にし、それが服用の煩わしさの解消に繋がることは間違いない。そして、そうであれば、調剤の現場において3Dプリンターが用いられることになるのも、必然的な流れだ。もちろん、この場合、3Dプリンターを扱うのは調剤師である、というわけだ。 新しい技術を前にした時に人が取りがちな3つの態度 これはほんの一例だが、今後はあらゆる職種において、このような形で3Dプリント技術が求められるようになる。筆者の感覚では、これは一時期のプログラミング技術の比ではない。むしろPCのキーボードのタイピングに相当するような普遍的な技術として3Dプリンターの取り扱い技術が浸透していくのではないだろうか。 最近ではVR空間でモデリングを行うVRモデリングなども浸透し始めている 新しい技術を前にした時に人がとる態度は大体3パターンしかない。 率先して受け入れ学び作り手にまわるか、受け入れつつもあくまでも消費者にとどまり続けるか、徹底して拒絶し続けるか。 いずれの態度を選択したとしても正解/不正解ということはないだろう。...
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出力速度は従来型の数百倍!? 世界初のボリュメトリクス3Dプリンター「Xube」
ボリュメトリクス3Dプリンターとは何か 2020年12月、あるニュースに業界が激震した。ドイツのベルリンを拠点とするxolo社が、世界初となる市販型のボリュメトリクス3Dプリンター「The xube」を発表したのだ。この「The xube」、そして「The xube」に搭載されることとなる「xolography」と名付けられた技術が、今後の3Dプリンターの世界を大きく更新する可能性があるとして、科学誌『Nature』などを介して話題になっている。 そもそも、ボリュメトリクス3Dプリンターとはなんだろうか。その答えはシンプルで、従来の3Dプリンターとは造形方式が異なる。光造形(SLA)や熱溶解積層(FDM)といったこれまでの方式に対し、ボリュメトリクス3Dプリンターにおいてはボリュメトリック積層造形(通称VAM)と呼ばれる方式が採用されているのだ。 やや専門的な話にはなってしまうが、この方式は、容器に入った液体前駆体の中で、光を用いて物体を素早く固化させる方法であるという。今回、ブランデンブルク応用科学大学の物理学者マーティン・レゲリーらは、最大で25µmの特徴解像度と55mm3/sの固化速度で3D固体物体の印刷を可能にする改良型VAM技術を開発し、『Nature』( 2020年12月24/31日号)でその成果を報告した。この技術は、異なる波長の2本の光ビームを交差させて物体全体を固化させる。そのことから、交差を意味する「x」とギリシャ語で「全体」を意味する「holos」を組み合わせて「xolography」と名付けられたのだという。 小さなものなら数秒で造形可能に さて、この「xolography」、そしてVAMの何がすごいのかといえば、何よりもまず、その造形速度だと言われている。いわく、この方式であれば高解像度3D印刷がわずか数秒で可能になる そうなのだ。報告によれば従来の3Dプリンターが90mmのオブジェクトを出力するのに約90分ほどかかるのに対し、xubeにおいては数秒から長くても5分で出力可能だと言う。そして、これまで速度とトレードオフの関係にあった出力精度においても、従来の方式を大幅に上回る と目されているのだからすごい。 ...
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カリフォルニアで世界初の3Dプリント住宅のコミュニティ建設へ──ネット・ゼロ・エネルギーの先端住宅は世界を救うか
世界初となる3Dプリント住宅コミュニティ 3Dプリント住宅のトピックが相次いでいる。SKメディアでもつい先日、先端的な住宅3Dプリント技術「Sphere」の開発と発展に取り組む日本企業セレンディクスパートナーズを取材したばかりだ。詳しくは記事に譲るが、同社は球体型3Dプリント住宅を30坪300万円で発売することを目標にプロジェクトを進めている。今日の国際的な経済状況、地球環境、人口動向などを考えた時、その実現は「理想」ではなく「必要」事項だとも言える。是非、日本が世界をリードして欲しいところだ。 住宅マーケットに価格破壊を引き起こす日本発の最先端3Dプリント住宅「Sphere」とは? セレンディクスパートナーズCOO・飯田國大さんインタビュー あるいはその以前にも南米において低所得者向けの仮説住宅の3Dプリント建設に取り組むNEW STORYの活動を紹介したことがある。さらに昨今では、340平方メートルの住宅を24時間で3Dプリントし、実際にすでにその住宅の販売を開始しているという米国のマイティビルディングを紹介した。 3Dプリンターで340平方メートルの家をたった24時間で出力――建築業界を革新する最先端技術 このように、ここ数年で急速に発展を遂げている3Dプリント住宅業界なのだが、今回はこの分野に関連して、3月に届いたばかりの最新の情報をお届けしたい。なんでもアメリカ・カリフォルニア州において、世界初となる3Dプリント住宅コミュニティの建設が発表されたらしいのだ。 砂漠地帯に建設されるネット・ゼロ・エネルギーの住宅 カリフォルニアの砂漠リゾート地帯であるランチェロミラージュに3Dプリント住宅コミュニティの建設を発表したのは持続可能な建築を目指すパラリグループと、先ほども少し紹介した先進的な3Dプリント建築を行う企業マイティビルディングだ。 今回、この2社はカリフォルニアに5エーカー(1エーカーが4096.9㎡)の土地を購入する計画を立てている。そこに環境に優しいネット・ゼロ・エネルギー(※)の、15軒の住宅からなるコミュニティを発展させていこうというのが第一段階である。 ※ネット・ゼロ・エネルギーとは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指すもの。省エネでエネルギー消費を減らし、創エネによって使うぶんのエネルギーを作ることで最終的に収支をゼロとする。 開発費は1500万ドル、実現すれば世界初の3Dプリント住宅のコミュニティが誕生することとなる。 Mighty Buildings/EYRC Architects...
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カスタマイズしたゲームのキャラが3Dプリント可能に!? 人気ゲーム『フォーオナー』が開始した画期的サービス
商機はプレイヤーとキャラクターの「絆」 「たかがゲーム」と言われた時代はもはや昔。今日、ゲーム世界は現実のリアリティと同等の、あるいはそれ以上の存在感を持って、私たちの日常の一部となっている。 とりわけゲームのオンライン化が一般化した今日においては、一つのゲーム空間への滞在時間が長く、また没入度も高いため、使っているキャラクターとの精神的な繋がりもまた強固なものとなっている。 こうしたプレイヤーとキャラクターの絆に着目し、そこに潜在的なビジネスチャンスを見出したのがゲーム業界の大手Ubisoftとヨルダンと米国を拠点とする企業MixedDimensionsだ。このMixedDimensionsは兼ねてより、ゲーム内に映し出されるキャラクターをそのまま3Dプリント可能にする技術の開発に取り組んできた。今回、その技術がいよいよ実装されることとなったのだ。 自由にカスタマイズしたキャラを安価でフィギュア化 もちろん、3Dマークアップを3Dプリント可能にすることには困難さもある。まず、3Dプリンターでは色の表現が難しいということ。これはしかし、近年のフルカラー3Dプリンターの進化によって解決されることとなった。 MixedDimensionsが使用しているのは日本のMimakiの最新のフルカラー3Dプリンターで、これによってユーザーを満足させるクオリティを実現するに足る高精細なカラーリングが可能となった。 Mimakiの3DUJ-553 このサービスでは、ゲームファンは、好きなキャラに好きな装備、好きなポーズをとらせたフィギュアを注文することができる。価格帯は25ドル~100ドルの幅であるとされ、オーダーメイドフィギュアとしては非常に安価だ。まさに画期的な取り組みであるが、今回はまずUbisoftの『フォーオナー』というゲームにおいて行われるという。 Ubisoftのシニアクリエイティブディレクターのジーン・ガヴィン氏によると、「フォーオナーでお気に入りのカスタマイズされたキャラをフィギュア化するということは、私たちが当初より持っていたビジョンでした。これは素晴らしい経験になるに違いありません」とのこと。 フィギュアはUbisoftから直接注文でき、プレイヤーはヒーローの種類を選択した上、鎧と武器を選択、さらにポーズやベース、サイズを選択できるそうだ。 Ubisoft https://merch.ubisoft.com/ ...
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スキンケアを革新する「MaskiD」がまもなく市販開始か──美容業界も3Dプリンター時代へ
スキンケアを革新する3Dプリント技術 これまで様々な分野における3Dプリンターの活躍を紹介してきたが、今回ご紹介するニュースはこれまであまり触れてこなかったジャンルに関わる。それは他でもない美容業界、中でもスキンケア業界における3Dプリンターの話だ。 女性ならずとも最近は男性でも美容に関心の強い方は多い。株式会社プラネットによる統計調査によると、現在、何らかのスキンケアをしている男性は全年齢で見た時に40.5%、20代~30代に関しては50%を上回る 。中でも、どういったケアをしているかという質問に対して、最も多かった回答(62.3%)が「肌の保湿」だ。 画像引用:株式会社プラネット 画像引用:株式会社プラネット 肌の保湿ケアの上で最もポピュラーなアイテムと言えば、化粧水や乳液、ボディクリームなどだろう。ここら辺は最も手がかからず、お風呂上がりなどにさっと塗ることもできるため、スキンケア初級者にも取り入れやすい。ただ、どうせケアするなら、時にはもう一歩踏み込んだケアをしてみてはどうだろうか。その際に使用するのがフェイスシートマスクである。 そして、このフェイスシートマスクに関して、3Dプリント技術を駆使した革命的なアイテムが生まれようとしているらしいのだ。 あなたの顔に最適化したフェイスシートマスク「MaskiD」 先日、米国のスキンケアのトップブランドであるニュートロジーナ社は、待望されていたある商品のベータ版を発表した。同社がここ数年開発を続けてきたカスタムシートマスク「MaskiD」だ。 発端は2019年の1月、ラスベガスで開催されたCESでの同社の発表にさかのぼる。その席においてニュートロジーナが発表したのは、スマートフォンの3Dカメラによるセルフィー撮影画像を用いた、それぞれの顧客の顔にパーソナライズされたフェイスシートマスクの開発だった。...
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シロアリの糞が3Dプリンターの材料に!? ドイツの研究機関が開発した持続可能な新素材
食べ残した木くずと糞で3Dプリント 21世紀は「環境の世紀」とも呼ばれている。特に2010年代後半以降は「気候変動」がにわかに切迫した問題として人々の関心を集めており、持続可能な開発目標を意味する「SDGs」などの言葉もここ数年でかなり浸透した。 そんな中、3Dプリンターのプリント材料に関しても、より持続可能な材料の開発が進められている。たとえば、先日、ドイツの連邦材料研究試験研究所が、シロアリやキクイムシなど、木材を食べる昆虫の糞や食べ残しの木の粒子を素材とする3Dプリント原料を開発した ことを発表し、話題となっている。 今回、研究者はシロアリの糞を利用して、200μmの寸法精度で立方体構造を3Dプリントすることに成功した。(画像引用:BAM) 研究者いわく、このユニークな循環型の原材料は、すでにポリマー添加物を一切使用せずにバインダージェット式の3Dプリンターに用いることができるという。出力物の強度こそまだ低いものの寸法の精度は高く、将来的には環境負荷の低く、かつ3Dプリントにも最適の理想的な材料となる と見込まれている。 そもそも、3Dプリント技術は従来の製造方法よりも環境負荷が低いということは語られてきた。しかし、そうとはいえ、製造には材料がかかり、弊社でも扱っているレジンを始めとする樹脂は石油由来でもあることから、一方では代替案が常に模索されてきた。もちろん、樹脂だから必ずしも悪いという話ではなく、より環境負荷の低い材料はないかと研究が進められてきたということだ。 その点、シロアリやキクイムシなどの糞や食べ残しという天然原料を用いることは次世代の3Dプリンティングの希望ともなりうる。あるいはユーザーが自宅で材料を自作することも可能になるため、費用面においても持続可能なソリューションとなる可能性があると言われているのだ。 昆虫の消化システムを利用して均一な粉末を精製 ところで、この新素材の面白い点は、昆虫の消化システムを利用しているところだろう。以前、弊社記事でも紹介したように、バインダージェット式とは粉末を利用した3Dプリント方式のことだが、金属を始め、様々な材料を用いることができる一方、それらの材料を適切な粒子径の粉末に精製することは、依然として困難であり、少なくとも個人が行うことはできないとされていたのだ。 しかし、シロアリやキクイムシなどは、不均一な木材をコンパクトなセルロースとリグニンの混合物に変換し、それ以上の処理をしなくても3Dプリントに適した粉末に変換してくれることが今回の研究で判明した。以前なら、木材を原料とした材料では、印刷するためにポリマー添加剤を使用したり、他の結合相を使用したりする必要があったのだが、シロアリの作り出す木くずや糞はそのような必要がなく、そのままでも独特の加工のしやすさを実現しているらしいのだ。 実際、研究者は小規模農場でシロアリなどを飼育し、6ヶ月に渡り餌を与え続け、その糞を集め続けたところ、それらの糞は、すべてほぼ同じ大きさで、かつ流動性にも優れており、均一な層を作るのに最適であることがわかったという。 3Dプリントされた立方体構造は、充填密度が低いのが現場における特徴だ。(画像引用:BAM) ただ冒頭でも触れたように、現状では強度に難があるとのことで、すぐに使用可能なオブジェクトをプリントするためには、まだ適していない らしい。研究者によれば後処理による補強は必要だが、木材ベースのフィリグリー構造を作る上で最適な原材料となる可能性があるとのことだ。これは特に住宅の3Dプリントにおいて大いに役立つ可能性がある。 おそらくは今後、こうした事例に加え、様々な材料の開発が進むことが予想される。もちろん現在、弊社は自信を持って高品質のレジンを製造販売しているわけだが、技術の進歩には敏感に対応し、様々な観点からよりよい商品を提供していきたいと思っている。
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ジュエリー業界を刷新する3Dプリンター|“悟り”をイメージした光るアクセサリーが「美しい」と話題に
多様化する3Dプリントアクセサリー 以前にも紹介したように3Dプリンターはアクセサリーやジュエリー制作においても大いにプレゼンスを高めている。たとえば、3Dプリントファッション界のZOZOTOWNを目指す「SEPTEM」では、3Dプリンターだからこそ可能となった複雑な形状のエッジィで独創的なアクセサリーが取り揃えられており、サイトを覗くだけでもとても楽しい気分にさせてくれる。 「SEPTEM」 https://septem4fashion.com/ 今後、ますますの多様化が期待されるところだが、そんな中、英国より3Dプリンターを用いた先鋭的デザインのアクセサリーが登場したとのニュースが届いた。 そのアクセサリー制作に用いられたのは、英国を拠点とする3Dプリンティングの新興企業であるSatoriが昨年10月に発表したばかりのST1600 Masked Stereolithographyという3Dプリンター。こちら、デスクトップ型のMSLA(Masked Stereolithography)プラットフォームで、主に歯科業界やその他の産業市場でのアプリケーションに適していると言われている。 ST1600 Masked Stereolithography このST1600に目をつけたのがファッションデザイナーのガニット・ ゴールドスタインだ。彼女はロンドンを拠点に3Dファッションとスマートテキスタイルの開発を行うデザイナーで、3Dスキャンを取り入れた斬新な3Dテキスタイルを工芸品とテクノロジーの交差点にて制作する次代のクリエイター。そのゴールドスタインが、ST1600を用い、Satori社との全面コラボレーションのもと、今までにはなかった先進的なデザインのネックレスのコレクションを生産したのである。 ガニット・ ゴールドスタイン https://ganitgoldstein.com/about LEDネオンカラーに輝く3Dプリントジュエリー ...
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クリックだけでドローンを出力? 複雑な機械をまるっと3Dプリントする「Laser Factory」が爆誕
複雑な構造の機械を「完成」した状態で出力!? 3Dプリンターはこれまでに様々なものを出力してきた。特に工業分野においては、自動車をはじめ様々な精密機械の製造プロセスに、いまや3Dプリンターはなくてはならない存在となっている。 ただ、そうとはいえ、3Dプリンターにはまだ課題がある。3Dプリンターは電子機器のパーツを出力することはできても、それらを最終的な完成品へと至らせるためには、結局、その後自らの手で組み立てる必要があるのだ。 シンプルな構造の模型品などであればいざ知れず、精密機器などに関してはこの組み立てにも専門的な知識と技術を要する。すると結局、いかに「ものつくり革命」と言ってみても、そうした複雑な構造を有する対象に関していえば、既製の完成品を購入するほかなくなってしまうのだ。 しかし、その3Dプリンターの限界がついに破られようとしている。2021年2月、アメリカはMITの研究チームが、複雑な構造の機械を完成した状態で出力する、夢のような3Dプリントマシンを開発、公開したのだ。 レーザーファクトリーは次世代の「ものつくり」マシンとなるか 2月8日、MITのコンピューター科学・人工知能研究所が公開した最新のマシンは、その名をレーザーファクトリー(Laser Factory)という。一体、このレーザーファクトリーとはいかなるマシンなのか。百聞は一見にしかず。まずは以下の動画をご覧いただきたい。 お分かりだろうか。このレーザーファクトリーにおいては、ユーザーの指示に従って、構造品の造形だけでなく部品の組み立ても行うことができるのだ。システムは、ソフトウェアツールキットと、ハードウェアプラットフォームの二つの部分からなり、ユーザーは1つのステップでそれらを同期的に動作させることで、たとえばドローンのような機械を出力することができる。 映像では出力と同時にドローンが飛び立っていく様子を確認できたはずだ。出力までの流れとしては、まずユーザーがパーツライブラリから部品を選択して配置することでデバイスを設計、そしてPCB上の電子部品間の電気の流れを可能にする回路トレース上に描画、その後、2Dエディタを使って、バッテリーやプロペラを追加したり、電気的接続を形成するためにそれらを配線したり、ドローンの形状を設定するための周囲の描画を行ったりしていくことで、ドローンの形状を完成させていく。 開発チームによれば、このレーザーファクトリーとは「3Dプリンターやレーザーカッターのような広く利用可能な製造プラットフォームを活用することで、これらの機能を統合し、機能的なデバイスを1つのシステムで製造するためのパイプラインを自動化した初めてのシステム」であり、今回公開された情報は5月に開催されるACM Conference on Human Factors in Computing Systemsの予告編的な位置付けであるとのこと。 要するに、レーザーファクトリーとは、これまでそれぞれバラバラに進化していた3Dプリント技術を統合させ、より広範囲の3D形状を作成することを目指したシステムであるというわけだ。...
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住宅マーケットに価格破壊を引き起こす日本発の最先端3Dプリント住宅「Sphere」とは? セレンディクスパートナーズCOO・飯田國大さんインタビュー
住宅建築業界に「価格破壊」をもたらす 先日、公開した記事「3Dプリンターで340平方メートルの家をたった24時間で出力――建築業界を革新する最先端技術」でも紹介したように、現在、世界では様々な3Dプリント住宅の建築が試みられている。背景には環境問題や貧困問題もあり、世界中の人々に安心して暮らせる住居をあまねく提供するためにも、3Dプリント住宅建築技術の開発と発展が望まれているのだ。 しかし、日本はこの分野において、これまでに目立った動きがなかった。そんな中、日本初となる3Dプリント住宅建築プロジェクトを立ち上げたのが、無人で家を建設できることができる3Dプリンター技術「Sphere」を提供するスタートアップ「セレンディクスパートナーズ」だ。 この「Sphere」とは自然災害に強い球体型の家を3Dプリンターで24時間以内に創ることができるサービスで、同社はこの技術の開発と普及によって、住宅建築業界に「価格破壊」をもたらそうとしているという。「30坪300万円」。それが同社が掲げる次代の住宅の価格帯だ。 セレンディクスパートナーズのCOO・飯田國大さんに「Sphere」プロジェクトの展望を聞いた。 球形ドーム状の住宅イメージ(提供:セレンディクスパートナーズ) 現在の住宅建築が抱えている4つの課題 —セレンディクスパートナーズさんは日本初の3Dプリント住宅建築プロジェクトに取り組まれており、現在の住宅建築業界において「価格破壊」を起こすことで、住宅を自動車くらいの感覚で買い換えられる社会を作ることを目指されていると聞きました。その上で24時間で建築可能な世界最先端の家「Sphere」を発表しています。まずはセレンディクスパートナーズさんの成り立ちとこれまでの取り組みについてを教えてください。 飯田 実は弊社のCEOの小間は、セレンディクスパートナーズを立ち上げる前は、京都大学発EVベンチャーGLMの創業者として世界最先端のEV車(電気自動車)を創っていました。その後、GLMをEXITし、次は世界最先端の家を創ろうと立ち上げたのがセレンディクスパートナーズです。 2019年1月に小間と私との間で「世界最先端の家」の開発に関するMOUを締結しました。同年の12月には福岡県のベンチャーマーケットで初めてのプレゼンも行なっています。 「Sphere プロトタイプデザイン」(提供:セレンディクスパートナーズ) —セレンディクスパートナーズさんは日本で初となる3Dプリント住宅建築をつくるプロジェクトを手がけられていますが、このタイミングで3Dプリント住宅建築に取り組もうと思われたのはなぜなんでしょうか? 飯田 その背景には私たちが現在の住宅建築が抱えていると考えている4つの課題があります。 まず一つ目の課題は「30年の住宅ローンを本当に払い続けられるだろのだろうか?」という問題です。住宅ローンの支払いは過去20年で平均的な完済年齢が5歳も上がり73歳と高齢化しています。これはつまり、現在日本の住宅ローンというのは60歳の定年からの13年後に完済されるのが一般的な形となっているということです。これは社会人となって以降の人生のほとんどの期間において住宅ローンの返済を続けていくということです。果たして、これが健康的な状態と言えるのか疑問があります。 二つ目の課題は「家の物流費と人件費が更なる上昇を始めている」という問題です。住宅建築のコストの半分は物流費です。カナダやヨーロッパから木材を船で運び、さらに港から加工場へ運び、そして施工現場には職人が平均3ヶ月間通います。大工の減少も深刻で日本建設業連合会によると、建設作業員の35%を55歳以上が占める一方、29歳以下は11%にとどまるそうです。このままいけば高齢化で人手不足が進み、建築コストの大幅な上昇が見込まれてしまいます。その時、今日のような形の住宅建築はあまりに高価なものとなってしまう可能性があるんです。...
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ビル・ゲイツとジェフ・ベゾスが3Dプリント人工肉時代の到来を宣告「すべての富裕国は100%合成牛肉産業へとシフトすべきだ!」
2021年はオルトミート元年になるか SK本舗メディアでこれまで幾度も人工代替肉(オルトミート)のバイオ3Dプリントについてを取り上げてきた。その「本当の肉と区別がつかない」ほどの精度については、世界から驚きと賞賛の声が多くあがっており、あとはその普及を待つばかりと言われてきたが、どうやらこの2021年は、このバイオ3Dプリント人工肉にとって、記念すべき一年となりそうである。 以前、取り上げたように、この業界を牽引しているのはイスラエルのスタートアップ企業「Redefine Meat」(以下、RM)だ。このRMが2021年の資金調達ラウンドにおいて、2900万ドルの調達に成功したことを発表したのである。主要な投資家には、Redefine Meatの初期からの支援者でもあるCPT Capital、グアテマラを拠点とするLosa Group、オランダのPrime Venturesの創設者で金融コンサルタントのSake Bosch、シンガポールのK3 Venturesなど、注目すべき国際的な新規投資家が名を連ねている。 今回の資金調達によって、RMは産業用代替食肉(オルトミート)3Dプリンターの大規模生産施設の2021年後半における完成を目指している。この完成が意味するものは他でもない、ついに3Dプリント人工肉が大量生産段階に入るということだ。 RMはヨーロッパでの製品の発売を皮切りに、次はアジアと米国市場への展開を計画しているようだが、しかし、果たして本当に、オルトミートは今後一般化していくのだろうか。実際、その需要はどれくらいあるのだろうか。今、オルトミートへと資金が集まっていく背景には、いくつかの理由がある。 ビル・ゲイツとジェフ・ベゾスがオルトミート時代を宣告 まず、オルトミートが注目度を高めている第一の理由は、国際的な食肉産業の持続可能性への関心の高まりだ。世界の人口増加に伴う食糧需要の増加は、あと数十年で完全に食肉ロジスティイクスを崩壊させると言われている。 ...
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3Dプリンターで340平方メートルの家をたった24時間で出力──建築業界を革新する最先端技術
「家」を3Dプリンターで作るのが当たり前の時代に 3Dプリンターによる「建築」は、ここ数年、進歩の一途にある。たとえばSK本舗メディアにおいても、2020年1月にはメキシコの貧困農村地帯における、簡易住居の3Dプリントの試みを取り上げた。 メキシコの農村に3Dプリンターの住宅街が誕生!? 人類と住宅の「新しい物語」とは? 詳しくは記事に譲るが、この試みでは様々な事情から適切な住居を持たない人たちに向けて、3Dプリント仮設住宅の建築が取り組まれることになった。手がけたのはカリフォルニアの「ニューストーリー」という非営利団体で、その建築が仮設住宅というには非常に立派なものでもあったことからも大きく話題になった。 (画像引用)New Story さらに驚くべきは仮設住宅の価格である。当時、想定されていた価格はなんと40万円~70万円。まさに3Dプリント建築ゆえの低費用建築だからこその価格であり、今後、様々な住居問題、ひいては貧困問題を解決しうるポテンシャルを示していた。 また同記事では「ニューストーリー」の試みの他に、イタリアにおける地産地消型の3Dプリント住宅「ライスハウス」なども紹介した。 (画像引用)GAIA あるいは、他の記事においては、コロナ禍における中国の隔離病棟の3Dプリントや、土に還るリサイクル可能な素材を用いて3Dプリントされたニューヨーク北部の宿泊施設「Tera」なども、これまで紹介してきている。 中国の湖北省武漢市に隣接する咸寧(かんねい)市の病院で導入された新型コロナウイルスに感染した患者の隔離用3Dプリント病棟 ...
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ボーカロイドはもう古い!? バンドメンバーは3Dプリンターで作った“歌って踊るロボット”
ボスニアの国民的バンドに新メンバー加入 2021年2月、ある動画が大きな話題となった。その動画はボスニア発でどうやらボスニアで人気のロックバンドに新メンバーが加入することを報告するために作られた動画のようである。 バンド名は「Dubioza Kolektiv」。Youtubeでいくつかサウンドを聞くと、ハードロックからファンク、スカ、レゲエ、ラップ、エレクトロニックと幅広いジャンルを取り入れたクロスオーバースタイルのバンドであり、楽曲の視聴回数も数千万ビューと世界的に支持を集めていることが分かる。 さて、このDubioza Kolektivに今回、新メンバーが加入したのだが、そのメンバーが話題となっている。名前は「ロビー・メガバイト」。担当楽器は特にない。強いて言えば主にダンスだろうか。と言っても音楽に合わせてなんとなく揺れている程度である。 楽器を弾かない新メンバーとは随分と風変わりなメンバーであるが、それ以上にロビーには他のミュージシャンにはないある特殊性が備わっている。他でもない、このロビー・メガバイト、人間ではなくロボットなのだ。 「見ての通り、ロボットだ。我々のロボットは普通のものとは違う。食べたり、飲んだり、叫んだり、音楽が好きなんだ」 そう語るのはバンドメンバーでベース担当のVedran Mujagicだ。映像を見ると、確かにロビーは音楽を楽しんでいるように見える。ダンスフロアーでは観客とともに音に乗り、ステージ上ではマイクに向かって歌っているようにも見える。 この動画はリリースされるや瞬く間に話題となり、ニューヨークポストをはじめ、世界のメディアで紹介された。2月には日本語圏でもニュース記事が翻訳され話題となった。すでにロビーは昨年にコロナ禍のパンデミック下におけるオンラインのライブショー「Quarantine Show」に参加し、新メンバーとしてのデビューも果たしているそうだ。 ...
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「3Dプリンターは万能マシーンではない」——ハッカーが語る3Dプリント技術の限界
3Dプリンターを「できないこと」から考える SK本舗ではこれまでに3Dプリンターの最新技術やその可能性について様々な角度から取り上げてきた。日々更新される3Dプリンター関連のニュースを追っていると、あたかも3Dプリンターに不可能なことなど、もはや世界には存在しないのではないだろうかと、そんな気持ちにさえなってくる。 そんな中、先日、ある挑発的なタイトルの記事がリリースされた。掲載元は「HACKADAY」というハッカーのコミュニティメディア。そして問題の記事のタイトルは「3D PRINNTERING: THE THINGS PRINTERS DON,T GO」、要するに「3Dプリンターにはできないこと」というものだ。 3Dプリント技術の凄さに目を奪われがちな昨今だが、確かに3Dプリンターはまだ「万能」とは言えない。公平性を保つ上でも「できないこと」という視点から3Dプリンターを考えてみることも重要だろう。 そこで、ここではその記事「3D PRINNTERING: THE THINGS PRINTERS DON,T GO」の内容を、まず要約的に追ってみることにしたい。 3D Printering: The Things Printers Don’t Do ...
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3Dプリントテクノロジーの40年史・後編──特許終了による3Dプリンターバブル、そして次の「ものつくり」時代へ
廉価版3Dプリンターの時代へ──「RepRap」の登場 さて、こうして3Dプリンターが生み出されたわけだが、当時はまだ3Dプリンターは一部の人しか知らない先端技術の一つだった。一般層が買うにはあまりに高価なものだったし、製造の現場での導入もその進展は遅々としたものだったのだ。 そこには理由があり、まずは3Dモデルを製作するためのCADがまだ十分に普及していなかったこと、そして3Dプリンティング技術自体が、造形品のゆがみなど、多くの問題点を抱えていたことである。 もちろん、3D Systemsとストラタシスの2社、そして日本の電機メーカーをはじめとする各国の企業も開発研究を進め続けてはいた。しかし、それが世間で真に注目され始めるのは、2000年代も半ばになってからのことだった。 まず、最初に話題となったのは、デスクトップ型の3Dプリンターであるオープンソースハードウェア「RepRap」が登場したことだ。これは世界初のオープンソース3Dプリンターであり、イギリスのバース大学の講師エイドリアン・ボーヤーによって作り出された。ネット上の部品を3Dプリンタで作り、組み立てることで材料費350ユーロでFDM方式の3Dプリンターを作ることができるとされ、これはその後に生まれる廉価版3Dプリンターの雛形となっている。 「RepRap」 エイドリアンらはその後すぐに控えていた特許の期限切れをあらかじめ見据えていたのではないか、とも言われている。時は2007年、3D SystemsがFDMの特許を取得してから、すでに20年が経とうとしていた。 特許終了により始まった3Dプリンター戦国時代 3Dプリンター時代の真の夜明け、これは2007年と2009年に、3D SystemsとStratasysが取得した二つの特許が切れたことによって始まる。つまり、光造形方式、熱溶解積層方式、それぞれの3Dプリント技術に対して、あらゆる人々がアクセス可能になったのだ。 ただし、この特許終了によって3Dプリンター時代が訪れたということに関しては、諸見解もある。というのも、3D SystemsとStratasys、あるいは日本の電機メーカー各社は、80年代後半から90年代、さらに現在に至るまで、基本的な出力技術以外の様々な特許を取得しているからだ。そうした細かい技術に関しては逐一、特許使用料が発生するため、07年と09年の特許期間終了をもってして完全な自由化が進んだとは言えない。 しかし少なくともこの特許切れにより、3Dプリンターの製作コストが低下し、数多くのベンチャー企業が独自に廉価な3Dプリンターを開発、市場に参入することになったのは間違いない。そして、こうした自由競争が始まれば当然、機器の低価格化も進み、技術改良の進化速度も上がっていく。 かつては1台1億円以上していた3Dプリンターが、こうして民間に届くところまで降りてきたのだった。 オバマ元大統領が認めたその革新性 こうして3Dプリンターの時代が到来した。2012年は3D Systemsも廉価版3Dプリンター「Cube」を発表。最大手が格安化に踏み切ったことで一気に市場は群雄割拠の時代へと雪崩れ込んでいく。 ...
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3Dプリントテクノロジーの40年史・前編──全ての始まりは小玉秀男の「ラピッドプロトタイピング」だった
3Dプリンター技術の発端は1980年に遡る いまや第四次産業革命の「かなめ」と言われ、一般層にも普及が進んでいる3Dプリンターだが、その歴史は古く、実は1980年代まで遡る。一般的には2010年代以降のテクノロジーという印象があるが、3Dプリンターが最初に考案されたのはもう40年も昔なのだ。 3D Systems社が1987年に発表した光造形3Dプリンター「SLA-1」 そこで今回はあらためて3Dプリンターの歴史を振り返ってみようと思う。「過去に目を閉ざす者は、現在に対しても盲目となる」とはドイツの元首相ヴァイツゼッカーの有名な言葉だが、あるいは歴史を見返してみることで、あらためて見えてくる魅力もあるかもしれない。 3Dプリントテクノロジーがこれまで歩んできた軌跡を、あくまでも駆け足にではあるが、前後編で俯瞰してみよう。 世界最初の3Dプリンターをつくったのは小玉秀男という日本人だった 先にも書いたように、世界最初の3Dプリンターが考案されたのは今から40年前の1980年のことだ。ここで驚くべきは、これを最初に考案した人物は、なんと日本人だったのである。 その名は小玉秀男。名古屋で技術士として働いていた小玉は、新聞印刷の仕組みを3次元製造に応用し、現在の3Dプリンターの元となる光造形技術を使用した付加製造方を開発したのだ。 この小玉の開発の革新的なポイントは、従来の製造機械というものが物を削ることによって製造を行っていたのに対し、物を積み重ねていくことで製造を行う手法を編み出したことだ。これにより、それまでの方法では難しかった複雑なインターフェースも表現することができるようになり、実際、この技術は試作品製作などに導入されることになった。 ただ、この技術は当時「ラピッドプロトタイピング」と呼ばれていて、まだ「3Dプリンター」という名では呼ばれていなかった。小玉の開発した技術が「3Dプリンター」と呼ばれるようになったのは、それから7年後の1987年、アメリカにおいてだった。 ※論文誌に掲載された世界で最初の光造形による立体地図(電子通信学会論文誌/1981) 3D Systemsとストラタシス――業界を席巻し牽引した二大勢力 小玉は自身が開発した光造形技術を特許申請していたのだが、その間に海外へ留学していまったため、なんと留学中に審査請求を行うことができず、特許申請が無効となってしまう。つまり、極めて革新的な技術を発明しておきながら、小玉氏はその特許を取得しないままにしていたのだ。 再びこの光造形技術に光が当たることになったのは1987年、アメリカでチャック・ハルが同じ技術に関して、特許出願を行なったのだ。その名称は「3Dステレオリソグラフィー」、そしてこのタイミングでそれを行うマシンとして「3Dプリンター」という呼称も登場している。 チャック・ハルはこの特許をもとにアメリカはカリフォルニア州に3D...
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シリカナノ粒子によって自由自在な3Dガラスプリントが現実のものに──開発者いわく「この技術は高級時計や香水のボトルなどに使用できる」
3Dガラスプリントが難しい幾つかの理由 3Dプリンターが扱える素材は様々だ。フィラメント、レジンなどのプラスチックを代表に、金属、砂、あるいはバイオ3Dプリンターにおいては有機物なども、現在では造形の素材となる。 そんな中、私たちの暮らしにおいて身近な物質でありながら、これまで3Dプリンターがそれを扱うことを不得手としてきた素材がある。それは他でもない「ガラス」だ。 ガラスの扱いが難しいのは、その融点の高さゆえだと言われている。高温度下においては機械的な特性を維持するのが難しいため、一度に積層できる量が限られ、また焼結後に歪みが生まれてしまうなど、課題が多かったのだ。 実際、これまでにも3Dガラスプリンターは存在しなかったわけではないが、透明度や造形物の精度には問題点も多く、まだ実用的な段階には至っていなかった。 そんな3Dガラスプリントの世界において、まず大きく話題になったのが、2017年にMIT Media Labのネリ・オックスマン教授が率いる研究チームが開発した3Dプリンター「G3DP2」だ。ミラノデザインウィーク2017に同研究チームが制作して展示された、高さ3mの3Dプリントガラス柱「Lexus」は、デザインの複雑さ、正確性、強度、透明性において、大きく話題となった。 この「Lexus」は、しかし、構造はシンプルだ。「G3DP2」は強度のあるガラスを3Dプリントすることできたものの、やはりより複雑な形状のガラスを出力することは難しく、また出力に際してかかる時間と手間は膨大だ。ここには積層型の3Dプリンターによるガラス造形の限界がある。やはり、小さくて細かいガラス作品を3Dプリンターでスムーズに出力することは不可能なのだろうか。 「Lexus」から4年、この難問を乗り越えるかもしれない研究論文が、先日、The Optical Societyジャーナルに発表された。 シリカナノ粒子を使用したレーザー投射型3Dプリンター 論文を発表したのは、フランスのエコール・サントラルに所属する3人の研究者だった。彼らはその論文において、多光子重合に基づく新たに開発された技術を3Dプリンターにおいて使用することで、通常の層ごとの加工に依存することなく精密なガラスオブジェクトをプリントし、将来的にはレーザーベースの複雑な光学系を3 Dプリントすることができるようになる、と論じている。 ...
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驚異の3Dバイオプリンティングの世界——近年の注目ニュースを振り返る
生命を扱う3Dプリンター 様々なジャンルで驚きをもたらしている3Dプリンターだが、中でも未来世界を予感させるような技術革新が相次いでいるのが3Dバイオプリンターである。 バイオとはそもそも「生命」や「生物」などの意味。つまり、3Dバイオプリントとは、生物に類する有機物をプリントする技術のことで、主にその研究開発は生物医学工学の発展に役立てられている。 すでに話題となったところでは人工肉や人工臓器などの3Dバイオプリントがあるが、近年ではますますの技術的進歩を遂げ、様々な成果が発表されている。そこで、ここでは近年でとりわけ注目すべきと筆者が感じた3Dバイオプリント関連ニュースを紹介してみたい。 3Dバイオプリンティングの最前線こそ人類の進歩の最前線。それでは順番に見ていこう。 1.「もう実験動物はいらない?」コロナ研究にも役立てられる3Dバイオプリント身体 ノースカロライナ州にあるウェイクフォレスト再生医療研究所 のアンソニー・アタラ氏は、薬剤の毒性をテストするための新しい多臓器チップを開発している。アタラ氏が発表した2020年2月の論文によると、「チップ上の3 Dボディ」は、市場に参入した後に薬剤を回収するリスクを減らすだけでなく、より迅速で経済的な薬剤開発につながる可能性があるとのこと。 画像引用:WFIRM この「チップ上の3Dボディ」とは、多臓器の身体を単純化したモデルを極小のチップ上に再現したもの。通常、多臓器の3Dプリントは極めて複雑であり、その再現には巨大な設備が必要だが、この技術においては、極小サイズにおいてそれらを再現することで、薬剤の実験コストを大幅に下げ、またペースアップすることができるのだ。 実際、この3DボディはCOVID-19の研究にも使用されており、この3Dボディを用いてCOVID-19ウィルスと戦う薬剤のテストがすでに行われているらしい。重要なことは、この実験が動物モデルを使った実験よりもはるかに役立つ可能性があるということ。それが事実ならば、これ以上、薬剤開発のために動物実験を行う必要がなくなるということだ。 2.「来たる大移住に備えて」ロシアの宇宙飛行士が宇宙空間で軟骨を3Dバイオプリント 現在、3Dバイオプリンティングの最前線にあたる実験は、なんと宇宙空間で行われているようだ。人口爆発や気候変動などを受け、居住コロニーとしての地球に限界がきているという警鐘は数多く鳴らされている。そんな中で実際に検討され始めているのが地球外コロニーの形成である。 その形成が間もなく始まるとすれば、重要なことは宇宙空間における医療問題だ。そのためにも低重力環境における3Dバイオプリンティングの研究が、ロシアのバイオテクノロジー企業3DBioprinting Solutionsによって進められているのだ。 ...
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3Dプリンターが明らかにする生物の進化——3Dプリント技術は未来だけではなく過去をも照らす
3Dプリンターが生物の歴史を覆す? 様々な分野に役立てられている3Dプリント技術が、近年、生物学の分野においても活用されている。 中でも進化生物学などにおいて、太古に存在していたであろう生物の限られた痕跡、たとえば化石などを3Dスキャンし、その骨格を3Dプリントすることによって、あらためて生物の進化の歴史が紐解かれようとしているらしい。 昨年にはオハイオ大学のパトリック・オコーナー教授が率いる研究チームが、白亜紀後期に存在していたとされる長くて深いくちばしを持つ鳥(Falcatakelyと名付けられた)の化石の発見を報告しているのだが、この鳥、Falcatakelyが、現在、鳥類におけるくちばしの進化を紐解く上で、非常に重要な種であると注目されているのだ。 Falcatakely(画像引用:オハイオ大学) 太古の鳥の頭蓋骨を3Dプリントで再構築 オコーナー教授が率いる研究チームが試みているのは、Falcatakelyの解剖学的構造を解明するために、マイクロCTスキャンとデジタルモデリングを用いて、鳥が埋め込まれた岩から個々の骨を仮想的に解剖、さらに3Dプリンティングを用いてFalcatakelyの頭蓋骨を再構築し、他の種との比較を行うことだ。 そもそも、白亜紀の鳥類に関しては化石の発見も少なく、完全な骨が出てくることは少ないため、こうした仮想的な骨格の再現が研究を進める上で、非常に役立つらしい。 実際、3Dプリント頭蓋骨を通じた研究によって、このFalcatakelyが現在生きているいくつかの鳥グループと共通しているものの、その組織は全く異なるものであることが判明している。オコーナー教授によれば、この結果は科学者たちが鳥の進化に関して持っていたこれまでの知識とは符合しないそうで、つまり、これは鳥の進化の歴史を知る上で、なんらかの重要な発見に繋がるかもしれないとのことだ。 画像引用:オハイオ大学 恐竜や原人の研究に役立つ3Dプリント技術 こうしたアプローチは他でも行われており、たとえばオランダではこれまで発見されているトリケラトプスの化石の中で、いまだ発見されていない最後のピースを3Dプリンターを使って補完するということが試みられている。昨年には日本の研究チームもトリケラトプスの脳や神経などを三次元的に復元し大きさを計測することで、トリケラトプスの三半規管が他の動物に比べて発達しておらず、すると機敏に動くことが苦手だったのではないかとする論文を発表して話題となった。 もっと以前では日本の海部陽介の研究チームが、フローレス原人の正確なレプリカを3Dプリンターで出力することで、その脳のサイズを特定したこともある。さらに、そこから脳のサイズが身体の大きさに対して絶対的に重要ではないという、これまでの通説とは異なる研究が進んでいる。...
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もはや薬もオーダーメイドする時代へ!? ——パーソナライズ化する医療と3Dプリント医薬品の現在
3Dプリンターが可能にする医療のパーソナライズ化 3Dプリンターの造形技術は日常で使用する道具や玩具、嗜好品ばかりではなく、私たちの体内に入ってくる食べ物、そして私たちの体を内から治す医薬品にまで及んでいる。今回はそんな3Dプリント医薬品の最前線を少し覗いてみたい。 様々な医薬品の中でも、特に3Dプリンターがその存在感を増しているのは、錠剤タイプの医薬品製造においてだろう。これは単に従来の医薬品製造を3Dプリンターが代替しているという話に止まらない。錠剤3Dプリント技術の発達によって、患者それぞれに最適化した錠剤の製造をスムーズに行うことが可能になろうとしているのだ。 たとえば現在、なんらかの病気の症状がある場合、まずは病院に行き、医師の診断を受け、病状に応じた処方箋を書いてもらうことになる。その後、薬局へと行き、その処方箋を見せることで、必要な薬を複数処方してもらうことができるというのが一般的な流れだ。しかし、最新の3Dプリント技術を用いれば、この患者それぞれに異なる複数の医薬品の有効成分を一つの錠剤にまとめて出力することができ、これが医療のパーソナライズ化を推し進めると言われているのである。 「M3DIMAKER」が出力する「ポリピル」とは? その技術を提供しているのが、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのスピンアウト企業であるFabRx Ltdだ。2020年4月、FabRx Ltdはパーソナライズされた医薬品製造のために開発された初の医薬品用3Dプリンター「M3DIMAKER」の発売を発表した。 この「M3DIMAKER」は、Printletsと呼ばれる3Dプリント錠剤を製造するために設計されており、患者に必要な複数の有効成分を組み合わせた錠剤「ポリピル」をプリントすることができる。要するに、自分のためだけの薬をその都度、作ってくれるというわけだ。 ポリピル これまでのように既成の医薬品に頼る場合、病状、病気の種類によっては処方される医薬品の種類が膨大になってしまうこともある。また、薬にはそれぞれ服用量や服用期間が定められているため、えてして患者にとってその煩雑さは負担になりがちだ。しかし、この「M3DIMAKER」とパーソナライズされた医薬品「ポリピル」があれば、可能な限り、煩雑な服用スケジュールを簡易化することができると言われている。 もちろん、セキュリティも抜かりがない。「M3DIMAKER」は専用のソフトウェアプラットフォームによって制御されており、薬剤師や臨床医が指紋アクセスによって、操作することになる。要するに、アクセス権を持たないユーザーは操作することができない。品質管理に関しても、欠陥品検出のカメラ監視機能などが搭載されているなど、万全が期されている。さらにプリントの速度も優れており、アクセス権者が用量などを調整し出力スイッチを押せば、およそ8分ほどで1ヶ月分の薬剤をプリントすることができる。 この「M3DIMAKER」が普及すれば、自分の症状に特化した薬剤が速やかに、かつ安価で入手できることになるだろう。不要な有効成分は最初から排除できるため、患者にとっての安全性、安心感も高まる。3Dプリンターによって、今、医療は大きく変わろうとしているのである。 ...
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VRモデリングの魅力と難点──近い将来、VRモデリングがスタンダードに?
近い将来、VRモデリングがスタンダードに? 3Dモデルのモデリングに関しては様々な方法、様々なモデリングソフトがある。そんな中、今後もっとも注目のモデリングと言えば、VRモデリングだろう。もちろん、3Dプリンター愛好者にとってもこれは例外ではない。 VRモデリングとは文字通り「VR空間内でモデリング作業を行う」こと。つまり、VRヘッドマウントディスプレイを装着し、自分自身がVR空間に入りながら、そのVR空間にて造形作業を行うという方法のことで、まだ広く普及しているとは言い難いが、おそらく近い将来にはこれが最もスタンンダードな方法になるのではないかとも言われている。 そこで今回はVRモデリングの魅力、その特徴についてを、簡単に紹介してみたいと思う。 VRモデリングの魅力 まず、VRモデリングの魅力とはどういうところだろうか。もちろん、使用者それぞれに色々な意見があると思うが、代表的なところでは以下の4点になる。 ・実在感 ・習得しやすさ ・モデリング速度 ・楽しさ 順番に見ていこう。 ・実在感 VRモデリングで一番期待されていることは「実在感」だろう。上、横、後ろ、斜めとあらゆる角度からオブジェクトを見て、状態を確認することができる。実用面では、パースが画面上で見るよりも実際の目で見た状態に近くなるので、3Dプリントする前にゆがみに気づける、というメリットがある。 ...
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