熱や光で造形する時代は終わる? 超音波3Dプリンターの可能性
音波が起こすキャビテーションで造形
3Dプリントを熱や光で行う時代はやがて終わるかもしれないと言われている。
ではその時、何が立体物を造形することになるのか。今もっとも注目されているのは超音波だ。
超音波を用いた3Dプリントは、すでにこれまで多く研究が行われてきた。まだ一般化されてこそいないが、それも時間の問題だとも言われている。実際、2022年4月に『Nature』誌に掲載されたある論文が現在注目を集めている。
論文を執筆したのはカナダのコンコルディア大学の研究者だ。彼は超音波で活性化される音響化学反応を使用した3Dプリンターを提案している。
これは音波がキャビテーション(液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象)を引き起こすことで、液体ポリマーを固体にするというアイディアだ。その際に必要なものは集束超音波ビームである。
現在、実験的に超音波3Dプリントされたオブジェを見てみると、お世辞にも綺麗なエッジとは言えない。はっきり言って見栄えは悪い。しかし、この方法の優れた点は、障壁物を透過して、その内側に物質を作り出すことができる点だ。これは特に医療の分野で注目されている。つまり、誰かの関節にポリマーを注入し、そこに超音波ビームを当てることで侵襲性をほぼ伴うことなく、体内の構造を3Dプリントできるようになるかもしれないのだ。
もちろん、簡単な技術ではない。しかし、以下の動画にもあるように、すでに超音波造形は実現している。あとは今後、造形の精度をどれくらい高めていけるかだろう。