100年の歴史を持つ駅舎を3Dプリンターで改修|細かな装飾もスキャンして再現
複雑な伝統技術を3Dスキャンして修復
ここ数年、3Dプリント住宅に関する話題が多い。世界各国で競い合うように3Dプリント住宅建設が試みられ、大規模なプロジェクトがいくつも進行している。
その一方であまり注目を浴びていない分野がある。修復工事における3Dプリント技術の活用だ。実はすでに建物の細部を復元する上で、3Dプリント技術は大いに活用されている。ただ、そのようなプロジェクトは通常、あまり脚光を浴びていない。
そんな中、あのフォード社が手がけている修復プロジェクトが注目を浴びている。修復対象はアメリカ・ミシガン州のミシガンセントラル駅だ。100年の歴史を持つこの駅舎が、現在、起業家、新興企業、フォードのモビリティチームが、都市交通ソリューションを作り出すためのハブとして機能するように改修されようとしているのだ。
フォード社はこれまでもヘンリーフォードアメリカンイノベーション博物館の復元を始め、3Dプリント技術を多く活用してきた。今回の改修工事においてもまた3Dプリント技術が重要な役割を果たすことになる。特にミシガンセントラル駅には装飾的な柵やタイルが多く用いられており、それらを精巧に復元する上では、3Dプリント技術が最適だというわけだ。
細やかな装飾の施されたミシガンセントラル駅の装飾
チームはまず、現状のミシガンセントラル駅を構成しているピースを3Dスキャンし、それらをCADファイルとして調整したデータをフォードの先端製造センターで3Dプリントした。今回フォードが意識したのは、ミシガンセントラル駅をいわゆる近代的な建造物に改修するのではなく、100年の歴史が持つ雰囲気を崩さず、改修の入らない部分と入る部分とのギャップに違和感が生じないような改修を行うことだった。
駅の3Dスキャンにはおよそ数ヶ月を要したという。一方、3Dプリントは3週間で完了した。フォードの研究と高度なエンジニアリングによるこのプロジェクトは、今後、大きな可能性を持ったモデルとなるとみられている。各国には様々な建築があり、そこには素晴らしい技術の数々の痕跡がある。それらの職人技をコピーすることはたやすくない。通常であれば法外な費用と時間がかかってしまうだろう。現状では、3Dプリントと3Dスキャンが、費用対効果の高い方法でこれらを復刻する唯一の方法だろう。
もちろん日本においても例外ではない。精巧な寺社建築の装飾などの改修に、今後3Dスキャン技術と3Dプリント技術がが用いられていくケースはどんどん増えていくだろう。職人技術を繋ぐのはもはや人ではなくテクノロジーなのかもしれない。