STEM業界で活躍する120人の女性を象った3Dプリント彫像がスミソニアンで展示
女性史月間にあわせて制作された120人の女性彫像
3Dプリントでアート作品を制作することは、いまや決して珍しいことではなくなっている。
鑑賞者が気づいていないだけで、あの作品にもこの作品にも実は3Dプリンターが使用されている、ということなどざらにあり、わざわざ「3Dプリントアート」と銘打つ必要すらないというのが現状だろう。
とはいえ、やはり「あっと驚く」ような3Dプリント作品もある。
たとえば、今年の3月、スミソニアン博物館において展示された「女性彫像の最大のコレクション」などは、やはり3Dプリンターならではのスケール感に満ちた作品だった。
同作は今年の女性史月間(歴史上の出来事、あるいは現代社会の出来事に対して女性が行った貢献に焦点を当てると定められた月間のこと)に合わせて制作発表されたもので、STEM(科学、技術、工学、数学)分野で先駆的な働きを行なった歴史上の120人の女性の彫像を3Dプリント造形したものだ。目的は、現代の若い女性にSTEM分野でのキャリアを検討してもらうというもの。あらゆる業界における男女平等が推進される現在においても、STEM分野においてはいまだ男性がマジョリティを占めている。そうした状況を変革しようという、スミソニアンらしい意欲的な試みだ。
プロジェクト名は#IfThenSheCan – The Exhibit’というハッシュタグで示された。主導したのはLydaHillPhilanthropies。その創設者であるLydaHillによれば、「人が大きな夢を見て、そこに到達し、より高く飛躍するように促すものとは何ですか? #IfThenSheCan – The Exhibit'は、若い女の子の夢を刺激し、科学への関心をサポートすることを目的として作成した大きなアイデアでした」とのこと。またLydaは「私たちはスミソニアンに、これらの彫像を私たちの国の首都の非常に多くの人々が利用できるようにしてくれたことに深く感謝しています」とも述べている。
STEM業界で活躍する次代の女性たち
3月の初めから行われた展示では、3D印刷された彫像が、芸術産業ビル、スミソニアン城、さらに隣接したイーニッドA.ハウプトガーデンに、およそ1ヶ月にわたって展示されたようだ。3D印刷された各彫像には、訪問者がスキャンして、モデルとなった女性の個人的な話について詳しく知ることができる固有のQRコードも付与されたという。間違いなく、そこから多くの若い女性たちが学びを得たに違いない。モデルとなった女性たちは皆、サメのタグ付け、癌の治療、YouTubeプラットフォームの構築からロボットの振り付け、地球外生命体の探索などなど、様々な形でSTEM分野で活躍した人物たちだ。
たとえば、そのモデルの一人であるエイミー・エリオット博士は、3Dプリントの戦略的アプリケーションについてコンサルティングを行っている。現在、彼女はオークリッジ国立研究所(ORNL)の製造デモンストレーション施設(MDF)で働いているそうだが、本展示に合わせて会場を訪れている様子が映像に収めらている。
その他のモデルも皆素晴らしい功績の持ち主ばかりだ。コーネル大学の学部生であるカリナ・ポポヴィッチは、パンデミックの初期にMakers for COVID-19を設立し、医療従事者向けに82,000個以上の個人用保護具を3Dプリントした功績が評価された。ジェシカ・エスキベルは、物理学の博士号を取得した米国でわずか150人の黒人女性の1人だ。
国立地理学の探検家で野生生物の生態学者で、野生生物や絶滅危惧種を絶滅から救うために取り組んでいることを評価されモデルに選ばれたレイ・ウィン・グラントは、自身の彫像が今回の展示に含まれたことについて次のように語っている。
「名誉の深さは衝撃的です。考えうる最善の方法で得られる最も深い名誉だと言えます。それはお金や名声を超えています」
そしてもう一つ、この素晴らしい3Dプリントアートのプロジェクトを手掛けたのもまた女性であることを忘れてはならないだろう。