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超粘度のレジンが使用可能に! 「VLM」と呼ばれる光造形3Dプリントの最新方式
高粘性レジンを造形する粘性リソグラフィー方式 3Dプリントにおける光造形方式といえば、液状のレジン(樹脂)に光やレーザーなどの紫外線を照射することで硬化し、造形を行う方法のことだ。これは現在、熱溶解積層方式と並ぶ3Dプリント技術を代表する造形方式として広く知られている。一般に光造形方式にはSLA方式(ステレオリソグラフィ)とDLP方式(デジタルライトプロセッシング)がある。ごく簡単に説明すると、SLA方式は光やレーザーを点で照射する方式、DLPは光やレーザーを面で照射する方式だ。実は最近、ここに新しい方式「VLM」が登場した。今回はそのVLM(Viscous Lithography Manufacturing/粘性リソグラフィー)と呼ばれる新しい方式を紹介したい。なんでも、この方式を用いれば、今までの50倍の粘性を持つレジンを処理することができるようになるらしい。 BCN3Dが実現する今までにない高い弾力を持った造形物 VLM方式を開発したのは3DプリントソリューションメーカーのBCN3Dテクノロジーだ。バルセロナを拠点とする同社は、ヘンケルアドヒーシブテクノロジーズとのコラボレーションによって、すでに特許取得済みのVLMプロセスのさらなる開発を継続させている。VLM方式の特性は何よりその粘性にある。高い粘性を持ったレジンを使用することによって、今までになかった弾力を持った造形物を3Dプリントすることができるようになったのだ。 この技術においては、透明な転写フィルムの両面に高粘度レジンの薄層をラミネートすることで、BCN3Dが「低粘度制約」と呼ぶものが取り除かれている。それによってレジンに新しい改質剤と成分を追加することが可能になった。VLMのこの独自の特性は、今までには光造形で使うことができなかった高い粘性のレジンを使った造形を可能にする。これらの材料は、緩く架橋されたポリマーネットワークを得るために、高い割合のオリゴマーを含むことができる。これは、機械的応力に耐え、工業用グレードの成形エラストマーのように動作する機械的特性を提供できる構造だという。 これまでもゴムライクレジンのような、弾性に富んだ造形物を出力するためのレジンは存在したが、VLMによってその弾力と伸縮性、強度が飛躍的に向上するということだ。果たして、この技術的革新がどのような可能性を切り開くのか、注目していきたい。
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あの『MAKERS』から10年、バイデン大統領が満を辞して仕掛ける「AMフォワード」プログラムとは?
米国政府が本腰を入れて3Dプリンター業界を支援 「3Dプリンターはものづくりに急激な変化をもたらす可能性がある」これは2013年にバラク・オバマ米国元大統領が一般教書演説において述べた言葉だ。その前年にはテック系メディア「Wired」の元編集長であるクリス・アンダーソンの著書『MAKERS』がベストセラーに。同書では3Dプリンターが次代の技術の主人公として大きく取り上げられ、日本でもNHK出版が翻訳版をリリースし、たくさんの人に読まれた。当時はマスメディアでも3Dプリンターの存在が大きく取り上げられていた。いわゆる3Dプリンターブームの到来だ。もちろん、技術自体は1980年代より存在したが、重要な特許の期限が切れ、一般に技術が解放されたことにより、あの頃、3Dプリント技術が一挙に世界に広まったのだった。あれから間もなく10年が経とうとしている今年、バイデン米国大統領はあらためて米国内の3Dプリント産業の成長をさらに促進することを目的とした「AMフォワードプログラム」を立ち上げた。このプログラムは、米国政府と巨大な多国籍企業が3Dプリントのイニシアチブ、関連中小企業をさまざまな方法でサポートする目的で立てられたものだ。 行われるプログラムは以下の形だ。①より手頃なコストで3D印刷機器を設置するための小規模メーカーへの資金提供②メーカーへの技術支援③3D印刷労働力の構築④業界標準の設定つまり、市場、業界全体を活性化し、大幅に底上げすることが目指されている、ということだ。特に①の資金提供は、中小企業が設備をアップグレードするための貸付プログラムとも一体となっており、これは間違いなく製造業の3Dプリント化を推し進めることになるだろう。それに合わせて3Dプリント技術に関するカリキュラムを作成し、技術を使いこなせる労働力の養成も行おうというのだから、米国政府はどうやら本気で3Dプリント業界を盛り上げていくつもりのようである。なんでも今回の米国政府の方針は、コロナ禍や戦争によるサプライチェーンの危機を背景にしているらしい。物流に依存しすぎない地産地消型の経済を作っていく上で、3Dプリント技術にあらためて注目が集まっているということだろうか。特にここ数年で注目されているのは、医療用3Dプリント技術への投資が増えていることだ。コロナ禍の影響もあり、過去2年間でこの分野は大幅に成長している。現在、医療3Dプリント技術の市場規模は約106億ドルということだが、バイデン大統領はこの分野に重要なサポートを公式に行っており、予測では2030年までに500億ドルに拡大するのではないかとも言われている。およそ5倍と考えるとものすごい数字だ。いずれにせよ、業界はいよいよ新しいステップに踏み出そうとしているのかもしれない。次の10年、3Dプリント技術に果たしてどんな展開が待ち受けているのだろうか。今後も注目していきたい。
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写真から3Dデータを作成する「フォトグラメトリー」の方法と代表的なソフトウェア
フォトグラメトリーとは何か 現実の空間に存在するものを3D空間にデータとして取り込む上で、まず思い浮かぶ代表的な方法に3Dスキャンがある。これは3Dスキャナーという特殊な機器を用いて対象となるオブジェをスキャニングし、3Dデータ化するという技術だ。これは現状で最も簡単な方法だといえるがいくつか問題もある。たとえば巨大な建築物などサイズのあるものをスキャンしようという場合、普通の3Dスキャナーでは基本的に間に合わない。あるいは用途が限定されている人にとっては、そのためにわざわざ3Dスキャナーを購入するということが躊躇われるというケースもあるだろう(なお現在は比較的に安価で高性能な3Dスキャナーも存在する。一般向け3Dスキャナーの購入を検討されている方は以下の記事を参照してほしい)。 2021年に買うべき3Dスキャナーはどれか? お手頃タイプからプロ仕様まで6選 https://skhonpo.com/blogs/blog/3dscan2021?_pos=4&_sid=4060c76b9&_ss=r この場合、別の方法に頼る必要がある。それがフォトグラメトリー(写真測量)だ。フォトグラメトリーとは、写真から3Dモデルを作成する技術のことで、測量士や建築家、エンジニアの方々が地形図などを作成するためによく使用されていることで知られている。もちろん、一般人が3Dプリントのための3Dデータ作成にこの方法を用いることも可能だ。 その際、撮影した写真を3Dデータへと変換する上ではフォトグラメトリー用ソフトウェアを使用することになる。そこでここではフォトグラメトリーによる3Dデータの作り方と、代表的な無料フォトグラメトリー用ソフトウェアを紹介してみたい。 フォトグラメトリーの方法 まずフォトグラメトリーによって3Dデータを作成する場合、対象となるオブジェの数十枚から200枚程度の写真が必要になる。現在では全方位360度に設置したカメラを使い一瞬で撮影を終わらせることができる専用ブースなどもある。どれくらいの精度を期待するか、あるいは対象となるオブジェがどれくらい複雑かによっても掛かる手間は変わってくる。ある程度、簡単な構造のものであれば、写真50枚程度でかなりの精度の3Dデータを作成することができる。その上で、カメラはできるだけ高画質で絞りやシャッタースピードを調整できるカメラの方がいい。ただ、最初はiPhoneやスマホのカメラ機能でも問題ない。撮影は基本的に被写体を囲むように360度ぐるっとまんべんなく撮影する。最終的にはソフトウェアが勝手に合成してくれるため、撮影のコツはとにかく死角を作らないことだろう。写真は多ければ多いほど精緻な3Dデータになる。撮影が終わったら、写真の明るさ調整をする。これは合成された時に明るさにバラつきが出るのを防ぐためだ。ここまで準備できたら、いよいよソフトウェアの出番だ。 代表的な無料フォトグラメトリーソフト フォトグラメトリー用のソフトウェアにはプロが用いる高度なものから、一般人がライトに使用するための簡易的なものまで様々ある。ここでは代表的なソフトウェアの中でも無料で使用できるものを紹介したい。1.3DF Zephyrまず一般的に最も知られているのは3DF Zephyrだろう。3DF Zephyrは有料ソフトだが、無料体験版があるため、初めてフォトグラメトリーに挑戦する人はそちらの無料体験版を使うことができる。使いやすさにも定評があり、またユーザー数が多いため、解説記事などが充実しているという点もプラスポイントだろう。ただ3DF...
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あのイッセイミヤケが3Dプリントフットウェアを発表|日本の「草履」をモチーフに伝統と革新を融合させた名作
日本が誇るあのデザイナーが3Dプリント技術を駆使して制作した和モードなサンダルをリリース 三宅一生が主宰するイッセイミヤケと言えば日本のドメスティックブランドの代表的な存在だ。1973年にパリコレデビューを飾って以来、川久保玲のコム・デ・ギャルソン、山本耀司のYohji Yamamotoらと並んで、1980年代のDCブランドブームを牽引、その後も常にハイファッションシーンの第一線を走り続けてきた。 そんな三宅一生が、1998年より本体であるイッセイミヤケのラインとはまた異なるラインとして取り組んでいるのが「A-POC」というブランドだ。コンセプトは「服づくりのプロセスを変革し、着る人が参加する新しいデザインのあり方」。2021年にはあらためて「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」として新展開も打ち出し、異業種とのコラボレーションなどによる意欲的なアイテムを打ち出している。 今回、取り上げるのはその「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」がこの4月に販売を開始した最新アイテム「TYPE-III Magarimono project」というものだ。 「最新テクノロジーとハンドクラフトを掛け合わせた男女兼用3Dプリントソールサンダル」として発表された本作は、株式会社MAGARIMONOとの共同開発プロジェクトによって制作され、MAGARIMONOが得意とする3Dプリントによるフットウェア技術と、職人の手仕事を掛け合わせたハイブリッドな一品となっている。デザインに関して言えば、さすがの一言。オーソドックスさを残しつつもディテイルには遊び心が溢れている。伝統と革新の調和を目指しつつもデイリーユースにこだわり、あくまでも日常で快適に履くことができるプロダクトとして打ち出されている。 デザインのモチーフとなったのは草履という、紐を編んで履物にするという日本古来の製法の履物。そのともすれば古風になりすぎてしまうモチーフを、オールブラックでデザインすることで、モードな仕上がりに落としている。なお、今回共同開発したMAGARIMONOは2020年に積乱雲をモチーフとしたスニーカー「ORIGINAL」を発表して、日本初の3Dプリントスニーカーとして大いに話題となっていた。 今回はそうした先行作品で培った技術を元に、あのイッセイミヤケとのコラボレーションを果たしたというわけだ。3Dプリントフットウェアに関しては、すでに世界でも様々なアイテムが作り出されているが、デザインの洗練というところで言えば、技術ばかりが先行してしまい物足りなさがあったのも事実。今回の「TYPE-III Magarimono project」はその点、デザイン性においても極めて優れたものとなっている。3Dプリントファンの皆さん、今夏の足元を最高品質の3Dプリントフットウェアで着飾ってみるというのはいかがだろうか。 A-POC...
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10年に1度、世界最大級の園芸国際展示で最先端3Dプリント技術が大活躍
国際的な園芸の祭典で活躍する3Dプリント技術 オランダで10年に一度だけ開催されるフロリアード・エキスポは、世界でも最も有名な園芸の国際展示会の一つだ。2022年はそのエキスポイヤーであり、すでに4月14日からオランダの首都アムステルダムから約30キロほどの距離にあるアルメーレトいう町にておよそ40カ国以上の参加国による展示が始まっている。ここから10月9日までの約半年間、アルメーレは世界中の園芸ファンたちにとって非常に熱い地となる。「Growing Green City」をテーマに掲げた今回のフロリアード・エキスポ2022は、未来の温室やサステナブルなイノベーションにあふれたパビリオン、あるいはアートやカルチャーイベントなど花と園芸に関する最新テクノロジーを巻き込んだ多様な展示が行われており、すでに見所満載だと高い評価を集めている。さて、そんなフロリアード・エキスポ2022の中で、今回、特に注目すべき点が3Dプリント技術の活躍だという。たとえばカタールのパビリオンにおける鳩のような形を3Dプリント建築や、持ち運び可能でサステナブルな3Dプリントワークスペースなど、10年前のエキスポの際には見られなかった新しい可能性が模索されているようだ。注目はやはりカタールの3Dプリント建築だろう、。今回、「都市地区」エリアでカタールが展開したのは、都市の抱える諸問題のソリューションをテーマとする、美しく実用的な3Dプリント建築のプロトタイプの展示だ。 パビリオン内の約2000平方メートルの区画内に建造された4つの塔にはそれぞれのストーリーがあり、中でも「ピジョンタワー(鳩の塔)」と名付けられた建造物は視覚的に美しいだけではなく、実際にそれが都市に生きる鳩の避難所として機能するなど、生態系農業の実現を促進する独自の構造となっており、すでに多くの鳩たちがその塔を使用しているという。 このピジョンタワーを印刷したのは建築会社のBAM。使用したのはSaint-GobainWeberBeamixと呼ばれる工業用3Dプリンターで、これまでに歩道橋や住宅など様々な建造物を3D印刷してきている。画期的な点は鉄筋やコンクリートを用いていない点だろう。タワーは66のパーツから構成され、63トンの重さがあるが、その建設から排出される二酸化炭素は、通常の建設にかかるよりも60%も少なくなっているようだ。もちろん、3Dプリント技術を駆使しているのはカタールパビリオンだけではない。たとえばUAEは約825平方メートルのパビリオン自体を3Dプリントで建設した。これは3Dプリントされたものとしては世界最大のファサードを持つものになるらしく、今回のエキスポの目玉の一つとなっている。また、素材が完全にリサイクル可能なものであるという点も注目すべきだ。 また、エキスポのフレボキャンパスではR-lgloと呼ばれる移動可能な3Dプリントポータブルワークスペースも見ることができる。このワークスペースはあらゆる需要、あらゆる場所に適合する多機能なものとなっており、たとえばイベント会場やガーデンハウス、ビーチハウスなどとしての使用が想定されている。洗練されたデザインも目を引くが、何より素晴らしいのはわずか2週間で製造可能で、2日で組み立てるという簡便性だろう。今後どのように実用されていくのか楽しみだ。 さて、エキスポ全体において、エコロジー、そしてサステナビリティへの意識がかなり高く設定されていることが分かる。それが今の時代の空気であり、関心事であるということだろう。そして、3Dプリント技術に関して言えば中東国家の活躍がめざましい。もちろん日本もパビリオンを出展しており、華道などをモチーフにした日本らしいわびさびのある園芸空間が作られているようだ。 この投稿をInstagramで見る Floriade2022 Japan Exhibits(@floriade2022japan)がシェアした投稿 いずれにせよ、取り上げたものだけではなく見所満載のエキスポである。以下のリンクから公式サイトに飛べるので是非覗いてみてほしい。FLORIADE2022 https://floriade.com/en/
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3Dプリント止血帯を戦場の最前線に届けるボランティアプロジェクト
戦地で傷ついた人を支援する3Dプリント技術 人類の長きに渡る努力にも関わらず、世界平和はいまだ実現したことがない。ご存知のように、現在も世界の各地では戦争が続いている。もちろんロシアとウクライナに限った話ではない。中東で、アフリカで、アジアで、ほぼ毎日のように誰かが戦争によって命を落としている。戦地、あるいは紛争地で苦しんでいる人々に3Dプリント技術はどんな援助を行うことができるだろうか。武器の製造、いや、武器は戦火を広げることには役立っても、戦火を鎮めることには役立たない。今まさに砲撃に怯えている市民にとって、外野にいながらできることというのは極めて限られている。とはいえせめても何かできないだろうか。そういう意志を持って3Dプリンターによって可能な救援方法を模索している人たちもいる。たとえば、[3DPrintingforUkraine]だ。 [3DPrintingforUkraine] https://3dprintingforukraine.com/ 戦地においてなんらかの理由で怪我をしてしまった場合に怪我を治療するための医療キットの一部を、3Dプリントすることならできるかもしれない。そう考えた彼らが現在、取り組んでいるのは、市民が自分自身でも迅速に使用することができる軽量で強力な止血帯の3Dデータ作成とその配布だ。一般に市販されている止血帯は、成形ナイロンバックルとファスナーバンド、およびねじれたときに必要な閉塞力を提供するウィンドラスとして機能する非常に頑丈なプラスチックハンドルなどから構成されている。3Dプリントバージョンの止血帯は、そうした商用ユニットのパーツほど合理化はされていないが、かなりの力に耐えるのに足る強度は担保できているという。すでに一部は戦地に届けられているようで、彼らのサイトを見ると、近日中にこの止血帯の配布を寄付制で大規模に展開する予定であることが示されている。[3DPrintingforUkraine]は、ロシアによるウクライナ侵攻が開始され、まもなく立ち上げられた国際的なボランティアチームだ。医療専門家、エンジニア、学生、そしてこの危機を支援する意欲のあるすべての人々からなり、3Dプリント止血帯の開発、生産を調整し、それらを最前線に直接配布することを当面の目標としている。 ちなみにサイト内にはそのテスト動画も掲載されており、またウクライナ語による使用ガイダンス動画も掲載されている。フォームから申し込めば、止血帯のSTLファイルと印刷手順がメールによって送られ、それを元に出力した部品を所定の収集場所に発送すると、そこで部品が組み立てられ、戦場に届けられるというシステムだ。 同団体はあくまでもウクライナ支援を目的に設立された団体だが、3Dプリンターによって可能な戦場支援の試みとして、こうした動きが様々な形で立ち上がっていくことは望ましいことだ。確かにそれぞれの戦争、それぞれの紛争については、個々人それぞれに様々な考えや意見があるかもしれない。だが、一人でも多くの方の命が救われてほしいと願う気持ちそのものにはイデオロギーは関係ないだろう。3Dプリンターを通じた支援の輪がますます広がっていくことを願うばかりだ。
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中世イタリアの古塔を彩る3Dプリント家具|伝統と革新が完璧に融合したスイート
3Dプリント家具で古塔をモダンに 3Dプリント家具を用いた素晴らしい空間がまた新たに誕生した。舞台はイタリア、古代の漁村ポルトヴェネーレのリグリアン海を見下ろす中世の古塔。今回、その古塔が新たな観光地として改装された。絶好のロケーションで古き良きイタリアの風景を楽しむその空間を彩ったのは、3Dプリントされた家具と装飾だ。 古塔の名前はキャピトラレ・イーストタワー。その最高経営責任者であるアンドレア・ボレンギは今回、1000年前の古塔を修復、リサイクル材料を用いて環境に優しい建築を徹底し、地元住民への貢献を試みた。日本ではちょっとありえない光景、まるで時代が真空パックされたかのような外観は、さすが歴史深いイタリアといったところだろうか。 構想3年、2022年4月にようやく完成したスペースを装う上で、ボリンギは地元の3Dプリント企業であるCaracolとの提携を行なった。剥き出しのレンガに覆われた、古典的な雰囲気だからこそ、逆に最新のテクノロジーが映える。3Dプリンターならではの流線形が際立つ家具たちは、クラシックな内装にモダンなアクセントを加えている。 全ての家具と装飾品は環境に優しい3Dプリント技術を使用し、大理石や金メッキなど貴重な原材料を統合して作られた。今回用いられたのはCaracol独自のAMロボットシステム。6軸のテクノロジーと自由形式のスライスは、規模と複雑さに制限がない。かくして複雑で有機的な家具が製造された。 CaracolのAMロボットシステム もちろん椅子からヘッドボード、壁の備品まであらゆるディティールがオーダーメイドだ。美しい街に相応しい、伝統と革新が完璧に融合した極上のスイート空間。旅行者は海の景色を望むこのユニークなバルコニーに滞在することができる(要予約)。少しずつ海外旅行のハードルが下がりつつある昨今、久しぶりの海外旅行先の候補としてイタリアはいかがだろうか。
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目には見えないQRコードをオブジェクトに埋め込む裏技をMITが公開
赤外線カメラで隠れた模様を検出 QRコードを3Dプリントすることは簡単だ。以前、別の記事でも取り上げたことがある。 QRコードを3Dプリントするための5つの手順と注意点 今回はその進化形。目には見えないけど赤外線カメラでは読み取ることが可能なQRコードをオブジェクトに埋め込む技法を紹介したい。 実はこの技法を紹介しているのはMITなのだ。MITによれば、その技法はInfraredTagsと呼ぶらしい。必要なものはFDMプリンターと透過的なフィラメント。一見するとプレーンなオブジェクトに、QRコードやArUcoマーカーなどを埋め込むことで、そのラベルを赤外線カメラで検出できるようにする技法だ。 なんでも適切なツールを使用すれば、そのプロセスは実に簡単らしい。まず研究チームが使用しているフィラメントは、赤外線に反応する3dk.berlinの特殊フィラメントだ。 3dk.berlinhttps://3dk.berlin/en/special/115-pla-filament-ir-black.html このフィラメントは可視スペクトルではほとんど見えないが、赤外線によって約45%が透過されるという。機械可読ラベルは、コードのジオメトリを表すために赤外線フィラメントとエアギャップの組み合わせを使用するか、赤外線フィラメントと通常のフィラメントを使用したマルチマテリアル印刷を行うことにより、印刷オブジェクトの壁に埋め込まれるようだ。 特にマルチマテリアル印刷の方がよりよく機能するというが、いずれにしても赤外線カメラがラベルを検出するのに十分なコントラストでプリントしてくれる。ただ、平均的なスマホのカメラ自体はこれらの埋め込まれたタグを受動的に読み取るのに十分な赤外線感度がない。そのためMITの研究チームは、RaspberryPiNoIRのような赤外線ブロッキングフィルターがなく、かつ簡単に入手できるカメラを使用している。チームが提供しているPDFには、実装のためのより詳細な方法が記載されており、また以下の動画ではそのデモンストレーションを見ることができる。 現状、スマホのカメラでは識別が難しいため、あくまでも実験レベルの遊びにはなってしまうが、これが普及したら様々な応用が可能だろう。外観を損なうことなくオブジェクトに個体識別用のIDを埋め込んだり、あるいは赤外線を通すと浮き上がるロマンチックなメッセージをオブジェクトに忍ばせてみたり。隠れたオシャレと思うと、どこか粋でもある。ご興味ある方はぜひトライしてみて欲しい。
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ANYCUBIC PHOTONの最新「M3」シリーズを世界的3Dプリンターメディアはどう見ているか
ANYCUBIC PHOTON から第三世代となる光造形機「M3」シリーズが登場 あのANYCUBIC PHOTON から第三世代となる「M3」シリーズが登場、いよいよSK本舗でも予約開始となった。前シリーズのPHOTON MONOは世界中から絶賛され、有名レビューサイトでも軒並み高評価を得ていた。さて、今回の「M3」シリーズではいかなるアップデートを果たしているのだろうか。まず、今回の「M3」シリーズは3つのヴァリエーションからなる。M3、M3Plus、M3Maxのトリオで、いずれも光造形方式となっている。実はこのほかに、FDM方式のKOBRAとKOBRA MAXも同時リリースされるのだが、今回はまず「M3」シリーズについて取り上げてみたい。 KOBRA予約販売ページ→ https://skhonpo.com/collections/anycubic/products/anycubic-kobra KOBRA MAX予約販売ページ→ https://skhonpo.com/collections/anycubic/products/anycubic-kobra-max 参照にしたのは世界的3Dプリンターレビューメディアである「ALL3DP」。硬派なレビューサイトである同メディアは、今回リリースとなったANYCUBIC PHOTONの第三世代をどう見ているのだろうか。なお、リリース前の記事のため、実際に使用した上での体験記事ではない。あくまでもスペックや前情報を元にした予測記事であることをお断りしておく。 M3は最もリーズナブルながらハイスペック まず今回最も安価なM3はどうだろうか。 ALL3DPはこのM3を「第2世代のMonoシリーズのベースプリンターであるPhotonMono4Kの準フォローアップ」であるとしている。今回のトリオの中で最もスペックは抑えられているが、それに見合った価格が設定されており、「予算重視、またはエントリーレベルのユーザー向けのプリンター」だと評している。今回、その名前から「4K」の文字は外されているが、M3には4KLCDがある。さらに前作よりビルドボリュームは格段に上がっており、前作の132x 80 x 165 mmに対して、163...
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超音波によって壁や皮膚の反対側にマテリアルを造形する未来の3Dプリント技術「ダイレクトサウンド」方式が特許を取得
壁や皮膚の向こう側にオブジェクトを構築 これまで3Dプリント技術は、樹脂を用いた積層溶解や光造形、あるいは金属粉末、さらにはナノ、バイオ、ボリュメトリクスまで、様々な造形方式を発明してきた。この度、そこに新しい方式が加わった。その名も「ダイレクトサウンド」方式だ。これはカナダのコンコルディア大学の機械・産業・航空宇宙工学科のマイクロナノバイオ統合センターに寄って開発された方法で、集束超音波を用いたこれまでにない新しいプロセスとなっている。研究チームによると「ダイレクトサウンド方式(DSP)」の説明によると、これは材料(硬化剤または異なる混合物と混合されたモノマー)を集束超音波場に晒すことによって造形する方式だという。モノリシック球形集束トランスデューサーによって生成される超音波場は、ビルドチャンバーのシェルを通過した後、ビルド材料に到達するという。その際、音圧の変化を利用して、バブル内にマテリアルを生成するということだ。 画像引用:nature communications この方式の非常に刺激的なところは、リモートプリンティングが可能であるということだろう。つまり、音波を壁や皮膚を通過させて、壁や皮膚の向こう側にオブジェクトを触れずに構築できるのだ。研究チームはこれによって「航空宇宙産業における隠れた部分のエモート修復やオンサイトメンテナンス、および医療アプリケーションにおける体内部分の生体内リモートおよび非侵襲的バイオプリンティング」にこの「ダイレクトサウンド方式(DSP)」を使用できるとしている。注目すべきは「医療アプリケーションにおける体内部分の生体内リモートおよび非侵襲的バイオプリンティング」だろう。これは身体の外にある3Dプリンターを用いて、身体の内部においてマテリアルを構築できる可能性があるということだ。手術なしで定義された構造を局所的に印刷することができるというのは端的に言ってすごい。具体的には、例えば皮膚に材料となる液体を注入することで、皮膚を切り開かずにフェイスリフトを皮膚下に挿入するということが可能となる。これは全く新しいアプローチだ。もちろん、今後様々な使用実験を重ねる必要はあるだろうが、すでにチームは特許も取得している。つまり、何らかの形で商業化する準備があるということだ。今後の展開に注目していきたい。
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ドイツが生んだUMAのような3Dプリントスニーカー|その斬新すぎるデザインが話題に
神話上の怪物の足のようなスニーカー ドイツのデザイナーであり建築家のステファン・ヘンリッヒが、神話上の生き物の足に基づいた独自のデザインの3Dプリントスニーカーを発表した。SLS3DプリンターメーカーのSintratecのSLSS2システムで3Dプリントされることを想定して特別に設計された動物の足のようなスニーカーは、ビッグフットやネス湖の怪物などのいわゆる「UMA(クリプティッド)」の足をイメージしたもののようで、彼らのように野生地を歩く機能性を備えているという。 今回用いられたSLSS2システムは以前、メルセデスベンツグループがバスやトラックの3Dプリント用のスペアパーツの作成に用いたり、機能的な電動バイクを設計したETHチューリッヒの学生チームなどの自動車アプリケーションにおいて使用されてきた。今回、ヘンリッヒはこのS2システムを利用して、靴を個々の着用者の足に合わせてカスタマイズできるような設計を行なっている。 アディティブマニュファクチャリングの設計を専門とするヘンリッヒは、彼の作品が、建築、ナレーション、設計、ロボット工学の分野にあると説明している。彼は以前より数多くの3Dプリントおよびロボット工学の設計プロジェクトを実施してきており、たとえば2021年11月には3Dプリント業界のアワードである「コミュニティアドボケイトオブザイヤー」の最終候補にも選ばれている。 そんな彼の最新のプロジェクトが、SintratecのS23Dプリンターと柔軟なTPE素材を活用した神話的デザインのCryptideスニーカーというわけだ。オープンデザインのソールと、靴下にフィットするアッパーシューズで構成されたこの靴はSintratecのTPEエラストマー素材でプリントされている。ヘインリッヒによれば、ソールなど一部のパーツを硬くしたが、他のパーツは柔軟であり、快適さもかなり重視したとのことだ。 現状で、一般発売されるかどうかは不明だが、すでに待望の声があがっている。今後の発表に注目だ。 3Dプリントスニーカーの最前線 今回のヘインリッヒの作品に限らず、3Dプリント技術はスニーカーデザインに多くの革新をもたらしてる。たとえば、ドイツのスポーツウェア大手Adidasは、3DプリンターメーカーのCarbonと協力して、 3Dプリントされた4DFWDミッドソールの新しいイテレーションをリリースし、CRP Technologyは、3Dプリント機能とWindformSPカーボンファイバー素材を使用して 独自の陸上競技用トラックシューズを作成している。ボストンを拠点とするデジタル製造会社Voxel8が、Hush Puppiesの今後のデザイナーシューズの3Dプリントインソールの計画を発表し、サイクルシューズメーカーのLoreは、カスタマイズ可能なカーボンファイバー3DプリントサイクルシューズのLoreOneの予約注文を開始した。 最近では、ドイツの靴会社Soleboxとファッションデザイナーが協力して、ナイキのトレーナー向けにダウンロード可能なコンテンツを紹介しました。取り外し可能なヒールクリップは、3D印刷され、特別版のNike Blazer Lowsに取り付けられるように設計されており、靴に視覚的な効果をもたらしている。あるいは以前にSK本舗でも取り上げたテック企業Heron Prestonと靴メーカーZellerfeldの提携によって発表されたスニーカー〈HERON01〉が「世界初の完全3Dプリントスニーカー」として大きく話題となったことは記憶に新しい。 おそらく、靴市場を3Dプリントスニーカーが席巻することになる日もそう遠くないだろう。今後の展開に期待したい。
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アメリカのテック系メディアが選ぶ「2022年に最高の光造形3Dプリンター」
2022年に最高の光造形3Dプリンターとは 先日、1996年に創刊された米国のテック系レビューメディア「tom,s HARDWARE」が「2022年に最高の光造形3Dプリンター」という記事を発表した。 同メディアは様々な最先端テックに関して、中立的で公平なレビューを行なっていることで知られており、インターネット導入以降のテクノロジージャーナリズムを90年代より牽引してきた存在の一つである。そのぶん、信用度も高い。 果たして、「tom,s HARDWARE」が今年最も評価する光造形3Dプリンターとはどれなのか。その気になる結果は、SK本舗ユーザーにとっては非常に喜ばしいものになった。今回取り上げられた6機種がいずれもSK本舗取り扱いの機種(あるいは取り扱い実績のある機種)だったのだ。 以下は「tom,s HARDWARE」が選んだ今年最高の光造形3Dプリンターの一覧だ。 1 Elegoo Mars2 Pro 2 Phrozen sonic mini 8K 3 Elegoo Jupiter 4...
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3Dプリントしたオブジェを鏡面仕上げすることは可能か? Alpha Phoenix の挑戦
オブジェクトの表面を鏡のように仕上げる 3Dプリンターで出力したオブジェを鏡面仕上げすることは可能だろうか。「鏡面っぽい」仕上げならば可能だろう。だが、誰が見ても「鏡面」と言い得るくらいに仕上げていくことはなかなか難しい。ここに挑戦したのがAlpha Phoenixという3Dプリント系のYouTubeアカウントだ。まずはその動画をご覧いただきたい。 映像の後半、11分45秒あたりを見てみると、真っ黒だったオブジェクトが見事に鏡面状に仕上がっているのが分かる。果たしてどのような工程を経たのだろうか。 まず、ミラーは光を反射するために、しっかりと平らで滑らかな表面であることが必要になる。そこで彼はまず出力したオブジェクトの表面を紙やすりで削り、次いで2液型エポキシを表面に塗布し、その表面張力によって、滑らかな作業を行うための準備を行っている。エポキシが乾燥したら、今度はいくつかの異なる種類のスプレーを噴射し、銀を表面に堆積させていく必要がある。その際、まず保湿剤を塗布することで、後続の溶液が水滴となることを防いでいる。その後、2つのプルカーサー(前駆体)をスプレーし、それらの反応によって元素の銀を物体の表面に堆積させていく。Alpha Phoenixによれば、この際、エポキシの硬化時間と2つのプルカーサーの比率が重要とのことだ。この工程を経て、オブジェは見事な鏡面状に仕上がっている。 なるほど、こうすれば良いのか…というには、やや難易度は高そうだが、仕上がりの美しさを見るとトライしてみたくなる。興味がある方は是非とも上の動画を参照しながら挑戦してみてほしいところだが、映像内で使用しているアセトンなどは可燃性も高く、眼への刺激性や中枢神経への刺激もあるとのことで、取り扱いにはゴーグルや手袋、また換気ができる環境などの厳重な注意が必要だ。お子様がいる家庭内での使用はもちろん厳禁。興味のある方は使用上の注意などをよく確認した上で安全な環境にてご使用いただきたい。
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家庭用3DプリンターでTシャツをカスタムデザインする裏技とは?
3DプリンターでオリジナルTシャツは作れるか? 今回は3Dプリンターを使ってTシャツをカスタムデザインする方法について紹介したい。まず、3DプリンターによってTシャツにカスタムプリントを施すことは可能なのか? という問いがある。答えはYESだ。ただ、Tシャツそのものは無地のものを別途用意してほしい。現在、衣類の3Dプリント技術も進んできているとはいえ、今回は一般の家庭用3Dプリンターの使用を想定している。あくまでもデザインの方の話をしたい。さて、ここでは二つの方法を紹介する。一つは薄く3DプリントしたオブジェをアイロンによってTシャツ記事に付着させる方法、もう一つはTシャツ生地に直接プリントする方法だ。 非常に薄くプリントしたフィラメントをアイロンでプリントする方法では、数回の洗濯を経ても剥離することのない程度の安定性が限界だが、Tシャツの生地に直接プリントする場合は、より永続的な結果が得られると言われている。では二つの方法を見ていきたい。 1.アイロンを使う方法まず、アイロンを使う場合はあらゆる種類のプリンタで行うことができる。ベーキングペーパーをバインダークリップでプリントベッドに固定し、スティック糊を塗ってプリントを貼り付けるだけだ。 厚さは1層から2層がちょうどいい。これをTシャツのプリント面を下にして置き、最高温度に設定したアイロンをかけることで生地に転写することができる。かなり簡単な上、見栄えも悪くない。しかし、先に触れたように、耐久性は若干悪い。 2.直接プリントする方法もう一つは柔軟なフィラメントを使用して生地に直接プリントする方法だ。こちらはより永続的な効果を得られるものの、プロセスはやや複雑となる。下部掲載の動画に従って3DプリンターはまずPrusaの3Dプリンターを想定しておく。何より、こちらの方法ではまずPrusaプリンター用の隆起したベッドアダプターを3Dプリントする必要がある。さらに印刷設定もかなりいじる必要があり、その上でTシャツをアダプターの上にセットして出力を行う。 1つ目の方法に比べるとかなりの手間だが、それによって印刷されたデザインはシャープであり、何度洗濯しても緩むことはない。手間と耐久性がここではトレードオフの関係にあるようだ細かい方法については以下の動画が参考になる。前半では一つ目の方法、後半では二つ目の方法が解説されている。英語による解説になるが、要領は掴めるのではないだろうか。 いずれにしても、無地のTシャツを自宅で気軽にカスタムデザインできるというのは嬉しい。ただ、動画にもあるように、失敗してTシャツを破損することもある。皆さんも実験感覚でお好みのデザインの3Dプリントを試してみてはいかがだろうか。
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見た目、食感、味、栄養素まで再現した3Dプリントサーモンが登場
Plantishの積層造形フィッシュフィレ シーフード3Dプリントの世界が今大きく盛り上がりつつある。以前、この記事欄でもRevo Foodsによる3Dプリントサーモンを紹介したことがあるが、今回は昨年に設立されたオルトシーフードスタートアップであるPlantishの取り組みを紹介したい。 オルトミートに続くか? 3Dプリント「シーフード」に注目が集まる理由 https://skhonpo.com/blogs/blog/3dseafood Plantishは、現在、ホールカットフィッシュフィレを低コストで大規模に製造する積層造形技術を開発している。PlantishのCEOは「今こそ魚の時代です」と語っている。その上で現在、オルトシーフード産業の課題の一つは、丸ごとの魚の味、食感、口当たり、構造を再現することであると指摘している。従来の魚の70%以上が、丸ごとの魚または切り身のいずれかとして、丸ごとの形で世界的に消費されているため、オルトシーフードもその形に成形する必要がある。これまでPlantishは、動物の筋肉の複雑なテクスチャーを複製するために植物タンパク質に依存してきた。これによってサーモンをリアルな切り身として造形し、サーモンを食べる体験をリアルなものにしているのだ。食肉が環境に与える影響については、現在、多くの警鐘が鳴らされている。一方でシーフードはどうだろうか。一説には現在のようなペースで魚の乱獲を続けた場合、世界は2048年までにシーフードを使い果たすだろうと言われている。一方で現在の世界のシーフードの半分は養殖によって補われている。すると、水産養殖を拡張すれば必要なシーフード量を満たすことができるという見解もあるが、養殖技術の中には環境副作用が報告されているものもある。こうした背景から、Plantishはオルトシーフードによって海を救うことを目指しているのだ。 すでに今年の1月に100%植物ベースのホールカットサーモンフィレの試食会が行われた。食感や味だけではなく外見もまた本物と変わらないまでに作り込まれており、なおかつ栄養素もまた実際のサーモンに近似した値に調整され、たんぱく質やビタミンBが豊富に含まれているているという。 その超微細層から構成される積層造形技術については現在特許出願中のようだ。目指しているのは、「あなたにとってより安全で地球にとってよりよい」形へとサーモンをアップグレードすること。もちろん「美味しさ」はそのままに。 今後ターゲットにしていくのは、500億ドルを占めるといわれるサーモン市場、そして外食産業への対応だ。CEOは「今後2年以内に高級レストランにPlantishのオルトサーモンが取り入れられることを期待している」と述べており、実際その準備はできている。日本もまた鮭を常食する文化がある。果たして、オルトサーモンの焼き鮭定食をカジュアルに食べれる日は来るのだろうか。続報を待ちたい。
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Blenderの3.0がすごいと話題に|アップデートの内容と評価に迫る
2000年の2.0へのバージョン更新以来の重要なアップデート 2021年末、人気モデリングソフトのBlenderのバージョンが3.0にアップデートされた。今回のアップデートはBlenderにとって、およそ22年前の2000年に行った2.0へのバージョン更新以来の重要なアップデートだという。 Blender サイト → https://www.blender.org/ 実際すでにBlender3.0はかなり好評の様子。ここでは今回のアップデートでBlenderがどう変化したのかを眺めてみたい。 そもそもBlenderとは? まずBlenderについておさらいを。Blenderは現在もっとも有名な無料の3DCG系ソフトのひとつだ。オープンソースながらも、ハイクオリティな機能で知られる。3DCGは様々なタイプが作成可能となっており、リアルに近い人間の3DCGからアニメチックな3DCGなど多種多様なタイプを作成することができる。またBlenderは無料ソフトであるため、先発での利用者が多く、解説サイトや初心者用のチュートリアル動画が数多く出回っているのも嬉しいポイントだ。では早速、今回のアップデート内容に迫ってみよう。 Blender 3.0の主なアップデート内容 ・ワークフローまず、今回大きくアップデートされたのは速度とワークフローだ。たとえば大きなメッシュで作業する際のラグが大幅に削減され、この作業のスピードが2~3倍アップされた。また、リンクライブラリを含むファイルのロードにかかる時間も短縮された。・AMDグラフィックカードAMDグラフィックカードに関しても追加サポートが施された。3.1のアップデートではLinux及びAppleでのAMDのサポートも計画しているとのことで一般的なワークフローが大幅に改善されている。・ナイフツールモデリングに関しては今回ナイフツールが改善されたことでモデリングエクスペリエンスが大幅に向上している。分かりやすいところではカットする方向を軸としてスナップするのが簡単になり、また以前のカットを元に戻すことができるようになった。 ・アセットブラウザ今回最も評価されているアップデートは、新しく導入されたエディターであるアセットブラウザだ。このアセットブラウザを使用すると独自の元のモデルをアセットのライブラリに保存することができるようになる。それによって、シーンに何度でもドラッグアンドドロップできるようになった。またマテリアルライブを作成したり、同じオブジェクトの様々なポーズも保存が可能になった。この最新機能はユーザーからの評価が最も高い。 ・ジオメトリノードもう一つ、ジオメトリノードを使用される方にとって嬉しいアップデートもある。今回のアップデートでは約100の新しいノードが追加され、また全体として非常に高速化した。またノードのグループ化を簡便化するために、操作も更新されている。この点に関しては以下の記事が詳しいので是非参考にしてほしい。「Blender 3.0」で直感的に!新しい「ジオメトリノード」を使ってみよう!https://forest.watch.impress.co.jp/docs/serial/blenderwthing/1374987.html・スカルプティング実は今回のアップデートではスカルプティングに関するアップデートがない。これは2.9のアップデート時に、多重解像度スカルプティングやサブディビジョンレベル間での変更機能など大幅なアップデートを行なっていたためだ。 ・レンダリングこれまでも大きな更新のたびに、レンダリングパフォーマンスは少しずつ向上してきたが、今回も例外ではなく、今まで以上に高速になっている。いわく「2~8倍高速」ということで、ここに関してはユーザーからの反応も上々だ。・その他その他、UVツールやリギング、VR機能などでも微々たるアップデートが施された。また2Dアニメーション制作に関しても、ペンシルのストローク速度などのいくつかのポイントにおいてアップデートがあったが、これは3Dモデリングにはあまり関係がないのでここでは触れない。 まとめ ...
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あのエプソンが満を辞して3Dプリンター市場に参入|強度と精度を兼ね備えた産業用マシンを発表
エプソンが強度と精度を兼ね備えた産業用3Dプリンターを発表 日本が誇る2Dプリンター大手のエプソンが満を辞して3Dプリンター市場に参入した。長野県に本拠を置くセイコーエプソンは、これまでカメラや時計、プリンター、プロジェクター、パソコンなどなど様々な電子機器において比類なきプレゼンスを示してきた。特に2Dインクジェットプリンターに関しては業界の代名詞的な企業でもあり、「カラリオ」シリーズなど様々な人気シリーズを展開してきた。しかし、意外にも実はこれまでエプソンは3Dプリンター市場には参入していなかった。それが今回、満を辞して参入したのだ。今のところ発表されているのは産業用3Dプリンター1機のみだが、今後どうなるかは分からない。 エプソンの産業用3Dプリンター これまで日本のキャノン、コニカミノルタ、Mimaki、リコー、ゼロックス、ニコンなどの有名な電子機器メーカーはこぞって3Dプリンター市場に参入してきた。そんな中、エプソンがいまだ参入していなかったということを意外に思う方も多いだろう。実はエプソンは2015年には大量生産のための3Dプリント技術を開発する計画を発表していた。つまり、今回の産業用3Dプリンターの発表はおよそ7年越しの計画だったということだ。今回、エプソンが開発したのは材料押出方式の3Dプリンターだ。樹脂や金属のペレット材、環境配慮型のバイオマスペレット材の他、様々な汎用材料を使用することができるという。また材料の射出量を精密に制御し、かつ造形面の温度も細かく管理することで、精度と強度が両立した高性能なマシンになっているという。今後、一部部品の量産に活用しつつ、製品に改善を加えて、商品化を目指していくという。果たして3Dプリンター業界においてエプソンがどのような展開を見せていくことになるのか。注目だ。
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Thingiveseの3Dデータをディズニーが不正使用? 問い直されている3Dデータの権利
インフラストラクチャーとしての3Dデータ配布サイト 一般人の間に3Dプリンターが浸透し、ものつくりが活発化していく上で、3Dデータ配布(販売)サイトは欠かすことができないインフラストラクチャーだ。あらためて説明すると3Dデータ配布(販売)サイトとは、誰かがモデリングした3Dプリント用の3Dデータを無料で配布、あるいはモデラーが設定した価格によって販売を行なっているサイトのことだ。現在、世界的に有名なのはThingiverseやMyMiniFactoryなどがある。それぞれのサイトに得意分野があり、また無料データに特化しているサイトから有料データを中心としているサイトまで、体裁も様々だ。弊社メディアでも以前、まとめ記事を作成したことがある。3Dプリンター用無料データ配布サイトおすすめ9選https://skhonpo.com/blogs/blog/osusume9こうしたサイトは3Dプリンターに関わる人々の集合的な知識を拡張し、技術を磨き上げていく上で、非常に大きな役割を果たしている。あるいはモデリングに慣れていない3Dプリンター初心者にとっては、まず出力の楽しみを味わう上で、3Dデータ配布サイトはなくてはならない存在だとさえ言える。しかし一方で、3Dデータ配布サイトにはいくつか問題がある。たとえば知的財産権の問題だ。実際、今Thingiversにアップロードされたある3Dデータを中心にある事件が発生しているという。発端となったのはAndrew Martinという作家が作成し、Thingiverseにアップしたある3Dデータだった。 あのディズニーがThingiverseの3Dデータを盗用? 下の作品はAndrew Martinがディズニーランドにあるアトラクション「魅惑のチキルーム」にインスパイアされて制作した作品らしい。「魅惑のチキルーム」とは、オーディオアニマトロニクスで動く鳥や花、ポリネシアやタヒチなどの南洋文化の雰囲気をもつ木彫りの人形たちがエスニックな音楽に合わせて歌うショー形式のアトラクションで、東京ディズニーランドをはじめ世界のディズニーランドで展開されている。 https://www.thingiverse.com/thing:3778083 すると、この作品に対してディズニーがなんらかの訴えを起こしているのか、というと、違う。実は今回訴えているのはこの作品を制作したAndrew Martinで、訴えられているのがディズニーなのだ。どういうことか。Andrew Martinによる訴えの内容を見て見ると、なんでもディズニーが彼の作った3DファイルをThingiverseからダウンロードし、彼のデザインをコピーして使用しているらしい。その真相については分からないが、これはなんとも厄介な話だ。まず第三者がディズニーの「魅惑のチキルーム」にインスパイアされた作品を制作する自由についてだが、これは「インスパイア」の範囲内、つまり模倣ではなく影響と呼べる範囲内であれば、問題にあたらない。一方、ディズニーが彼の制作した作品をダウンロードして出力し、それをグッズとして販売した場合。これは確かに問題があるように思う。現在、Andrew Martinは自身のTikTokアカウントから、ディズニーが販売している作品と自身の作品とを比較しながら「Why did Disney steal my work?」と訴えている。今後これが法廷闘争となった場合の結果は分からないが、同様の事件が今後発生した場合の重要な判例にもなるため、注目度は高い。 いずれにしても、その3Dデータを誰がいつ作成し、どんな目的で共有し、それらの3Dデータは第三者にどう利用されるべきなのかということを今後しっかりと確立していく必要はあるだろう。特にデータはコピーが簡単なために繊細さが求められる。 中にはNFTの技術などを応用しつつ(※)、データの移動履歴、帰属、権利などを透明化していくブロックチェーンソリューションの必要性を説いている人もいる。一方でそうした透明化が、リミックスやサンプリング、コラージュなど、既存のデータを用いたクリエイティビティを抑圧してしまうことを懸念する声もある。 ...
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アメリカでは1年間でサッカーグラウンド約710万個分の森が山火事によって消失している|野火を早期発見して山を救うための3Dプリントデバイス
温暖化で急増する山火事 気候変動は様々なところに影響をもたらしている。有名なところでは北極の氷や永久凍土の溶解だが、それだけにとどまらない。たとえば近年の山火事の増加もまた気候変動を主な原因としているのだ。アメリカでは2021年だけで58985件の山火事が起きている。それによって焼失したエリアは710万エーカー以上。日本ではエーカーという単位にはあまり馴染みがないが、1エーカーが大体サッカーグラウンドひとつぶんだと言われている。つまり、昨年のたった1年間でサッカーグラウンド710万個分の土地が燃えたという計算になる。その規模は年々増しており、すでに2022年の最初の2ヶ月で過去10年間の山火事のエーカー数の平均を上回っているらしい。これはちょっと普通じゃないだろう。 もちろん、山火事対策もまた進んでいる。新しいテクノロジーは山火事を抑制したり、その火の拡大を防ごうと日々技術開発を進めているが、その上で何よりも重要なことがある。そう、山火事の早期発見だ。 山火事を早期発見するためのシステム 実は現在、野火の早期発見のために非営利の教育プロバイダーであるNew Collar Netwaorkの3Dプリント技術者チームが、マイクロアコースティックマイクのメーカーであるKnowled Corporationとの技術を使用して開発したあるシステムが、国際ハードウェア助成金のコンペにおいて入賞し助成金を賞与されたという。そのシステムとは、3Dプリントされたケースに収められた山の音声監視対応センサーだ。なんでもこのセンサーは機械学習を使用して森の自然音と森で起こる野火の音とを区別し、野火の音を感知次第、当局に山火事の可能性を警告するらしい。さらに、同システムはその信号をフィールドカメラなどの他のデバイスに中継することで、森林局の消防士たちに山火事の即自認識を提供できるということだ。 画像引用/New Collar Netwaork 設置場所は木の幹であり、簡単に取り付けられるようストラップ付きのデバイスケースが3Dプリントで作られた。あるいは金属表面でも役立つ磁石を備えたケースなども3Dプリントすることができるという。センサーの電源としては、開発チームは太陽光発電を考えているようだ。このような早期発見システムは、山火事による森林の焼失エリアを抑えるのみならず、近隣のコミュニティが安全に避難する猶予を作り出すことができる。また山火事の起こっているエリアをより詳細に特定することで、消防士の活動をスムーズにし、消火時間を短縮することも期待されている。ところで、日本は山が多いにも関わらず、山火事は比較的少ない。平均的には1年間に約1200件ほど、焼損面積も約700ヘクタール(1730エーカー)くらいに収まっている。少ない理由は日本の高い湿度だとされているが、もちろんそれでも山火事を少しでも抑えれるに越したことはない。また、気候変動によって日本の気候環境が変化していく可能性もある。備えあれば憂いなし。日本の森林にも是非とも導入して欲しい。
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Fordが車内アクセサリーの3Dプリント用CADファイルを公開|ユーザーの美意識がものをいう「センスの時代」が自動車業界に到来
Fordが車内アクセサリーのCADファイルを公開 大手自動車メーカーのFordが、3Dプリントで自作できる車内アクセサリーの提供を開始した。これはもともとFordの新型モデルであるハイブリッド・ピックアップトラック「Maverick」の発表の際に示唆された話だったのだが、Newsweek誌によると、Fordは「Maverick」のセンターコンソールの後方に備わっているFord Integrated Tether System(FITS)スロットと、シート下の収納ボックスに対応するアクセサリーのCADファイルを先日、実際に公開したようだ。このCADファイルによって、カーオーナーは自分好みにカスタマイズしたカップホルダーやスマートフォンホルダーなどを3Dプリンターによって自作できるようになったわけだが、実はこのFordの動きに対しては「遅い」という声もある。なんでも「Maverick」が発表されてから現在までの間に、すでに3Dプリンター愛好家たちがFITSに合わせたアクセサリーを自作しており、公式のCADファイルの発表はそうした動きに比較するとだいぶ遅れているということなのだ。もちろん、公式のデータがあれば、それだけアクセサリーの作成は簡単になるわけで、今後は一層活発に愛好家たちのオリジナルアクセサリー作成が活発化するだろうと見込まれている。これは是非とも他メーカーにも追随して欲しい流れだ。 3Dプリンターによって「センスの時代」が到来する? Fordのデザインマネージャーのスコット・アンダーソン氏はNewsweekに、今回のCADファイルの公開が同社のユーザーに対する態度のかなり大幅な変化を意味すると語っている。これはつまり、企業がコントロールする既成の製品をより多くの人に買ってもらう段階から、ユーザー自身によるカスタマイズに開かれたオープンソースのスタイルへと、Fordが転換していくことを意味するものだろう。現状ではCADファイルの公開は車内のアクセサリーなどに限定されてはいるが、今後はより多くのパーツについて、この流れが及んでいくことになるかもしれない。もちろんFordのような大手がその方向に舵を切った場合、自動車業界全体のフェイズが更新されていくことになる。そうすると、問われてくるのはユーザーのセンスだ。これまではある既成のモデルを選択することこそがユーザーの美意識の発現であったと言えるが、今後はそうではなくなっていく。つまりFordを所有することのみならず、Fordをどのようにカスタムするかが、ユーザーの審美眼を表す指標になっていくというわけだ。おそらく、これは自動車業界に止まらない。3Dプリンターの普及によって世界はやがて「センスの時代」へと突入していくだろうと筆者は睨んでいる。私たちも今のうちに「既製品」に慣れ親しむあまりに鈍ってしまった創造的感性を磨いておいた方がいいかもしれない。
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