大学生チームが3Dプリントして製造したロボットが低重力の小惑星探査を可能にする
低重力対応の探査ロボット「Space Hopper」
今後の宇宙開発において重要なことは無人探査技術の発達だ。
宇宙探査と聞くと有人宇宙飛行ばかりに注目が集まりがちだが、実際に有人探査が可能な地球以外の星は現時点において月に限定されている。これまでにも有人火星探査が何度も計画されてきたが、現時点においてはまだ実現していない。オバマ元大統領が2030年代半ばを目標にした有人火星探査を発表しているが、それも不透明さを多く残している。
すると、やはり重要になってくるのが無人探査技術である。その際、人間に代わって別の惑星を探査してくれるのはロボットだ。
実は最近、最先端の3Dプリント技術を用いたあるロボットが開発された。この低重力用に設計された新しいロボットが、将来の小惑星探査の鍵となると言われている。
このロボットの名前は「Space Hopper」。3本足を持つホッピングロボットであり、開発者たちはこれを太陽系の未知の領域を探査することができる革新的なモビリティプラットフォームであるとしている。
開発にあたったのはなんとまだ大学の学部生のチームらしい。今回の開発においては、炭素強化コンポーネントを3Dプリントすることでロボット設計の最適化が図られている。この学部生研究チームはそれぞれ様々な工学分野を専攻したメンバーからなり、中でも繊維複合技術に関してはチューリッヒ拠点の企業「Scheure Swiss」のサポートを得ながら、安定性と軽量性を兼ね備えた部品を3Dプリントしたとのことだ。
宇宙探査においては超えなければならないハードルが様々あるが、まず何より考慮すべきは重力の問題だろう。地球の4割程度の重力の火星や1.5割程度の重力の月ならばまだいいが、その他の小惑星の重力はもっと低い。とてもじゃないが人間がその上を歩き回ったりするというのは困難である。
そうした低重力惑星を探査するためには新しいソリューションが必要であり、今回開発された「Space Hopper」にその可能性があるというわけだ。こうした小惑星を探索するために設計された「Space Hopper」の動きを制御するのは人工知能で、3本の足を巧みに動かしながらジャンプによって向きを変えて進行ができるようになっている。このメカニズムが低重力での運動を可能にするという。
研究チームによれば、そのために必要なボディの支持構造を製造する上では積層造形技術が理想的であり、また費用対効果も優れているという。最も課題だったのは、ロボットの総重量を最小限に抑えるためにも、脚をできるだけ薄壁にすること、その上で飛び跳ねる衝撃に耐えうる強度を担保することだったそうだ。
開発期間はわずか8ヶ月。まさに若い才能が新たな可能性を切り拓いたのだ。
小惑星は、地球を含む内惑星を形成した過程で残された断片であり、太陽系の形成や地球に暮らす我々の存在にまつわる根源的な問いを明らかにする可能性を秘めた存在である。あるいは、もう一つの探査の目的として、長期間の宇宙ミッション中にエネルギーを補給するための小惑星資源を抽出する方法を発見するというものもある。
今のところ、第一のハードルは、ロボットが長距離を飛び回り、所定の地点に着陸し、空中で姿勢を制御し、科学的なデータを運ぶことができること、かつ着陸に失敗した後に立ち上がることができることを証明することだという。果たして、うまくいくのだろうか。
いずれにせよ、3Dプリント技術が宇宙空間の謎を解く役に立つかもしれない、というのは胸が躍る話じゃないだろうか。