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金属3Dプリントを刷新する「ナノ粒子ジェッティング(NPJ)」とは?
急成長を続ける金属AM業界のゲームチェンジャー 金属の3Dプリントは、近年急激に成長しており、あるレポートによると、世界の金属3Dプリント市場規模は 2023年に推定49億ドルに達し、2030年まで22.85%の割合で成長し続けていくだろうと予想されている。多くの注目すべき企業がある中で、現在、その躍進が期待されている企業の一つにイスラエルのXJetがある。XJetは画期的な材料噴射技術「ナノ粒子ジェッティング(NPJ)」を開発した企業として知られており、高品質の最終用途部品の金属およびセラミックによる3Dプリントの限界を押し広げている。NPJの特徴はビルドトレイ上に噴射される金属またはセラミックの固体ナノ粒子を含むインクを使用する点にある。粉末は使用せず水溶性のサポート材料を使用することから廃棄物がほとんど発生せず、環境にもより優しく、また使用面でも安全性が高いと言われている。そして、NPJによる出力は、特に表面粗さと完成部品の特性の点で、より高品質になることも確認されている。 NPJのAMソリューション(画像/XJet) その精巧さゆえ、XJetのNPJは主にハイファッションアクセサリーや、高級時計、スマートウォッチといったウェアラブルな製品の製造に用いられている。複雑な表面部品を非常に高い品質で出力する上でNPJは抜群の力を発揮するのだ。 (画像/XJet) 一般的にファッション性の高いアクセサリーなどの装身具はデザインに対する高い要求を満たすためにも伝統的な製造手法によって製作される場合が多い。しかし、そうした伝統的手法は製造に多くの時間を要する。また、従来の技術の中にはそのプロセスに環境汚染が伴われる場合もある。NPJは、そうした手作業によるプロセスのコストを削減しつつ、さらにクオリティを損なうことのない製造テクノロジーとして注目されている。NPJによって達成される表面仕上げと解像度の高さは、高級品市場にとって極めて重要であり、他のAMテクノロジーが提供できるものよりも明らかに一歩進んでいる。XJet社は自社の技術が時計からジュエリーに到るまであらゆるものに変革をもたらすことを期待しているという。さらに、XJetのNPJはセラミック分野においても注目されている。セラミック部品は生体適合性が高いため、特に医療分野での使用に適しており、その点、XJetが医療用途向けに提供しているXJet Carmel 1400C積層造形システムは、大手セラミックメーカーからも大きく期待されている。果たしてNPJは金属3Dプリント業界の真のゲームチェンジャーになりうるのだろうか。今後の展開から目が離せない。
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3Dプリントされたクモの巣がパンデミックを未然に防ぐ?
クモの巣に溜まった「朝露」がアラートとして機能する 長く続いたパンデミックも一応の収束を見せ、社会が落ち着きを取り戻した感のある昨今。しかし、今回分かったことはウイルスという存在はどこからともなくやってきて、気付いた時には世界中に拡散されてしまっているという人間社会の本質的な脆弱さだ。こうしたパンデミックを防ぐ、あるいはウイルスに対する対応を迅速化する上で欠かせないのは、なるべく早期に新たなウイルスの存在を発見することにある。実はその対策を実現化していく上で、3Dプリンターが役立とうとしている。バージニア工科大学機械工学部の准教授であるジャンタオ・チェン氏が率いる研究チームが現在開発を試みているのは、3Dプリントされた「クモの巣」だ。雨が降った日の翌朝、朝日に照らされたクモの巣に朝露が輝く様子には、なんとも言えぬ美しさがある。研究チームが着目したのは、まさにこの「露」だった。チェン氏によれば、水滴はその独特の形状と特性により、周囲の空気から粒子を補足することができるという。その粒子の中には粉塵や細菌、そしてウイルスも含まれている。研究チームはこれらの水滴に付着した粒子をレーザーによって識別、データを収集することで、早期のウイルス検出が可能であることに着目した。 クモの糸を帯電させて効果的に水滴を捕捉 しかし、環境上の個々の水滴をスキャンすることは非現実的だ。そこで注目されたのが「クモの巣」だった。クモの巣は構造上、複数の水滴を自然に保持することができる。その上で重要となるのは、より多くの粒子を水滴に引き寄せること。チェン氏の研究チームは、3Dプリントされたクモの巣に電極を使用して帯電させることで、より多くの粒子をクモの巣に引き寄せることに成功した。天然素材と合成素材を組み合わせて3Dプリントされた偽の「クモの巣」は、柔軟性と耐久性を兼ね備えている。さらに、その中に含まれた特殊な液体は紫外線によって硬化し、「クモの巣」がその形状を保持して、小さな水滴を捕捉することを助けている。これらの技術開発の念頭にあるのは、WHOが「疾病X」と呼ぶ、有効な対策が存在しない未知の病原体だ。これは今後、国際的に重大な伝染病の流行が、いまだ知られていない病原体によって引き起こされるかもしれないという危機意識からつくりだされた用語である。要するに、我々は未知のウイルスの存在に常に十分な注意を払い続けている必要があるということだろう。果たして3Dプリントされた「クモの巣」は未来の脅威を絡め取ることができるのか。小説にもあるように、我々の運命は一筋のクモの糸に掛かっているのかもしれない。
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3Dプリンターについて学ぶ授業で将来のオペレーター教育へ
3Dプリンターに関する知識&技術を教えます。 SK本舗では3Dプリンターをプログラミングに次ぐ新しい教育の要と捉え、未来を担う学生たちの興味や得意分野を広げる機械の模索や、柔軟な発想・イマジネーションから3Dプリンター分野の発展に貢献したいという思いがありました。そして現在、学校法人滋慶コミュニケーションアート デザイン&テクノロジー専門学校京都校・東京校にてロボットエンジニア・AI専攻コースでの授業をメインに『3Dプリンター造形表現と技工』の教鞭を取らせていただいております。光造形の機種をメインに最新3Dプリンターの知識共有や造形方式の長所と短所、活用事例などを踏まえながら、より円滑で正しい造形知識や造形材料、仕組み自体についての正しく安全な知識普及に努めております。 講義内容について 3Dプリンターとは 3Dプリンターの種類 3Dプリンターの原理 造型材料について 造型用データについて 出力用途の多様性 安全設置講習 出力に伴う適切なパラメータとは 出力後の後処理について 3Dスキャナーについて ....etc 学校法人滋慶コミュニケーションアート 京都デザイン&テクノロジー専門学校授業風景 学校法人滋慶コミュニケーションアート 東京デザイン&テクノロジー専門学校授業風景
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あるYouTuberが開発した回転式3Dプリンターとは?
家庭用3Dプリンターを改造して編み出した革新的な出力方法 最近、ある動画が話題になっている。動画主はソフトウェアエンジニアでありYouTuberのハンフリー氏。話題の動画においてハンフリー氏は自身で改造した「回転式3Dプリンター」を公開しており、その画期的な性能が3Dプリンターユーザーのあいだで話題を呼んでいるのだ。ハンフリー氏が改造に使用したのは弊社でも取り扱いがあるCreality社のCR-10。氏はCR-10に「シンプルな改造」を施し、回転式3Dプリンターを開発、それによってバネやギア、ネジなどを出力してみせている。以下がその動画だ。 その「シンプルな改造」とはプリンターに回転するロッドを装着するというもの。この回転するロッド上に3Dプリントが行われることで、動画のように筒状のオブジェが造形されるというわけだ。 実に画期的。しかし、このような回転式3Dプリンターのアイディアはこれまで別の形でも試されたことがあり、また回転構造を有するバイオ3Dプリンターもすでに存在はしている。しかし、それらはいずれもハイエンドな機器を用いたもの。その点、ハンフリー氏は一般家庭で使用される廉価な3Dプリンターを用いて、このアイディアを実行している。これはすなわち、理論上、他の3Dプリンターにも適用できるということだ。果たして、このアイディアが今後どう発展していくことになるのか。各メーカーの動きが気になるところだ。
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美しすぎる金属3Dプリントのアート作品「Les Armeuses」
まるでレースのように精密な金属製の装飾 いまや航空技術、自動車産業、医療産業などにおいて欠かせない技術となっている金属粉末のレーザー3Dプリンティング。一般的には機械部品や工業パーツなどの出力に用いられている印象の強いこの技術を用いて、最近、ある驚きのオブジェクトが出力された。フランスの地方現代芸術基金であるFRACオーヴェルニュコレクションの展示会場において発表されたそのオブジェは「Les Armeuses」と名付けられた美しい金属製の首輪だ。 画像/AddUp 制作したのはアーティストのアニエス・ジェフリー。彼女が2021年から2023年にかけてオーヴェルニュでのアーーティストレジデンスを経て制作したこの精巧な首輪のデザインは19世紀のファッションからインスパイアされたものだという。今回出力された一連の金属彫刻は、今後、4つのエディションで生産される予定だという。アニエス・ジェフリーはしかし、この作品を単に美しい女性のための装飾品として制作したわけではない。かつてレース生地だった装飾品を金属でリメイクした背景にあるのは女性ジェンダーが歴史的に被ってきた抑圧や拘束への批判的意識だ。美は人々を魅惑するがまた一方で抑圧もする。現代美術らしいアイロニーの込められた作品なのだ。 画像/AddUp 今回、アニエスと技術提携したのはフランスのクレルモンフェランに拠点を置くAddUpというスタートアップ。同社は レーザーパウダーベッドフュージョン(LPBF)や指向性エネルギー蒸着(DED)などの高度な3Dプリンティングテクノロジーを提供している。その高い技術は作品を見れば一目瞭然。風を纏うような柔らかなシルエット、精密な織り模様は、とても金属オブジェクトには見えない。今後、この技術がどのような形で活用されていくのか楽しみだ。 画像/AddUp
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感情表現豊かなディズニーの3Dプリント自足歩行ロボットが登場
あのディズニーが本気を出してつくった最先端ロボット いかにテクノロジーが発達しても、テクノロジーだけでは世界は変わらない。そこにはそのテクノロジーを魅力的に使いこなす想像力が欠かせないのだ。先日、20世紀以降の世界の想像力を刺激し続けてきたDisneyが、デトロイトで開催された「高知能ロボットとシステムのための国際会議(IROS)」であるものを発表した。それは3Dプリンティングを使用してつくられた子供サイズの二足歩行ロボットだ。 Disney Researchによる3Dプリント部品を備えたロボット あたかもSF映画から飛び出しきたかのようなユニークな存在感を持つこのロボットは、数日後には会議場からディズニーランドに移動、カリフォルニアディズニーランドのアトラクション施設内を徘徊、ファンたちの心を魅了した。ほとんどの部品を3Dプリンターで出力したというこのロボットは、ディズニーが近年に特許を取得した二足歩行ロボットのための様式化された歩行設計技術を用いたものであり、ただ歩くだけではなく、大股歩きをしてみたり、つま先立ちで忍び足をしてみたりと、感情表現も豊かだ。これはロボットがより人格的な存在になって人間社会に溶け込んでいくだろう未来を示唆したものだろう。チューリッヒのDisney ResearchのアソシエイトラボディレクターであるMoritz Bächer氏が率いるイノベーションチームは、最新のロボット製造におけるモジュラーハードウェア、学習ソフトウェア、3Dプリンティングの組み合わせが持つ可能性を強調している。コンセプトの立案から実用的なプロトタイプの完成まで1年未満で完成したこのロボットの頭部は、周囲を見回すことから傾けるまで、さまざまな動作が可能であり、動的バランスを考慮して設計された自由度の脚を備えている。 今後、これらのロボットがどのように運用されることになるかは分からないが、遠くない未来において、ディズニーランド内を大量の「かわいらしい」ロボットたちが練り歩いているというビジョンは、それほど非現実的でもない。世界のDisneyの次なる魔法は3Dプリント技術とともにありそうだ。 ヘッダー写真/ウォルト・ディズニー・イマジニアリングより引用
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DreamGaussianは1枚の画像からたった数分で3Dモデルを生成する|鍵となるのは3D空間における新たな描画方法「3Dガウススプラッティング」
3Dデータ生成にかかる時間が従来のおよそ7分の1に? 昨年からリリースラッシュとなっている「画像から3Dモデルを生成するツール」。どこか「雨後の筍」という慣用句さえ脳裏をちらつく昨今の状況だが、しかしこれは単なる流行現象ではない、一つの大きなムーブメントとなりつつある。そして何より驚くべきは技術的進歩の速度だ。3Dモデル化の精度、速度の向上は目覚ましく、数ヶ月前の情報が古くさく感じられてしまうほど。今はその進歩の一歩一歩をリアルタイムで堪能するのが良いのかもしれない。いまSNS上で大きく話題となっている「DreamGaussian」もまた驚きの性能を携えている。このアプリは1枚の画像を超高速で3Dモデルに変換するというもので、いわくその速度は従来の速度のおよそ10倍とのこと。ここでいう従来の速度とは主に「NeRF」を使用した場合の速度のことだ。 引用・ DreamGaussian NeRFと言えば本ブログ欄でも何度も取り上げてきたニューラルネットワークを使用した画像生成技術である。Luma AIを始めとする様々なアプリやツールに用いられており、その生成スピードや再現度の高さにおいて注目を集めてきた。しかし、以下の動画によれば同等の品質の3Dモデルを生成する上において、DreamGaussianは2分以内で完了しているのに対し、NeRFでは15分ほどかかってしまっていることがわかる。 引用・ DreamGaussian これは確かに速い。さらにDreamGaussianにおいてはテキストからの3Dモデル変換も可能であり、シンプルなキーワードならばかなり正確なデータが得られることが分かっている。 引用・ DreamGaussian 3D空間における新たな描画方法「3Dガウススプラッティング」 なんでも、この高速度と精巧さの鍵となっているのは「3Dガウスプラッティング」と「メッシュテクスチャの精緻化」であるという。 3Dガウススプラッティングとは、今年にアメリカで開催された国際的なCG学会・展示会「SIGGRAPH」にて発表された3D空間における新たな描画方法のこと。ポリゴンは一切使用せずガウスと呼ばれる色情報を重ね塗りしていくことを特徴とし、言うなればモデルがどのようなジオメトリを有しているかではなく、それがカメラからどのように見えるかというポイントに特化した方法となっている。それによって今までにない高速描画を実現している。 引用・ DreamGaussian DreamGaussianではこの最先端の手法が取り入れられ、さらにメッシュの精緻化を図ることで、今までにない形の3Dモデル生成が可能になっているのだ。 気になるDreamGaussianの使い勝手 ...
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テキストから人物の3Dアニメーションモデルを生成するアプリ〈Masterpiece X〉がリリース
誰でも簡単に3Dモデルを生成可能 昨年頃よりリリースが相次いでいる3Dモデルの自動生成アプリ。なかでも最も注目なのがテキストから3Dモデルを生成するAI技術だろう。誰もがテキストを打ち込めば3Dモデルを生成してアニメーション化することができる。そんな夢のような技術がすでに登場しているのだ。ここに紹介するのは先日リリースされたばかりの最新アプリ〈Masterpiece X -Generate〉である。まずはそのリリースされたトレイラー動画を見ていただきたい。 いかがだろうか。動画ではオブジェクトのタイプを選択した上で、その特徴をテキストで記すだけで、3Dアニメーションモデルが生成されている。モーションもAIによって生成されたものを割り当てることができるようで、人間のみならず、動物や異生物、植物や岩や建築物など世界全体を生成できるようになっている。 画像引用/https://www.youtube.com/watch?v=O1TlGOmSQ4M&t=61s Masterpieceシリーズの作成元であるMasterpiece Studioは、同社のAIへのアプローチは、「直感的な最先端の3Dツールを作成する」という使命に基づいたものであり、「より多くの人々が3Dデータの作成を開始できるようにし、力を与える」ものになると述べている。実際、このアプリはブラウザーだけでなくスマートフォンでも動作するとのことで、高価なラップトップを持っていない一般のユーザーにも開かれている。まさにエポックメイキングな最先端アプリ。その反響も大きそうだ。 開発者いわく「これは新しい種類の3Dの遊び場」 とはいえ正直なところ、Masterpiece X -Generateの現在のクオリティは、これまで3Dデータを普通に作成してきた玄人ユーザーにとっては物足りないと感じられる部分があるだろう。生成されたデータは人間が作成したデータほどのクオリティには達しておらず、依然として事後処理の必要性が残る。おそらく、同社にとって最大の目的はこれまで3Dアプリを使用したことがない人々が 3Dアニメーションのプロセス、その世界を構築することに興味を持ってもらうことにある。プレスリリースには「これは新しい種類の3Dの遊び場だ」とも記載されており、その上では十分なパフォーマンスを発揮することが期待される。もちろん玄人ユーザーにとっても使い道がないわけでは決してない。アイデアを検討する上でのプロトタイプ作成としては非常に有用だ。生成されたデータはBlender、Unity、Unreal Engineで動作するため、3D空間上でモーションを確認することもできる。現段階ではクリエイターと競合するものではなく、あくまでも副操縦士として機能するということだろう。 画像引用/https://www.youtube.com/watch?v=O1TlGOmSQ4M&t=61s ただし、技術の進歩は速い。クリエイター顔負けの3Dモデルをテキスト一つで生成できるようになってしまう日もそう遠くはないかもしれない。 〈Masterpiece X -Generate〉https://app.masterpiecex.com/...
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3Dプリントした亀の甲羅がサバクガメを絶滅から救う
3Dプリント技術によって捕食者に危害を加えることなく絶滅危惧種を保護 現在、地球上に絶滅危惧種と指定された生物は約3700種以上も存在する。長い地球の歴史を考えれば、種の滅亡や新種の誕生はこれまでなんども繰り返されてきたことであり、絶滅そのものを否定する必要はない。とはいえ、現在は人間の活動の影響によってこれまでにない速度で生態系バランスが変化してしまっているという状況である。こうした生態系バランスの変化は当然、人間の暮らしにも影響を及ぼす。仮にそれが直接的には生活と関係がなさそうな種の絶滅だとしてもも、まわりめぐって様々な結果をもたらしたという事例には枚挙にいとまがない。だからこそ現在、様々な形で絶滅危惧種の保護活動が行われているのだが、その活動においても3Dプリンターが一役買っている。今回紹介するのは米国のモハーベ砂漠に生息する絶滅危惧種サバクガメの保護活動だ。 画像引用/https://www.youtube.com/watch?v=a60-tToFA8U このサバクガメの保護活動を主導しているのは、スタートアップ企業のHardshell Labs。同社はデザイナーのFrank Guercioとの協力により、3Dプリンターを使ってこのサバクガメの精巧なダミーを出力した。その目的は、サバクガメの子を捕食するカラスを追い払うためだ。 画像引用/https://www.youtube.com/watch?v=a60-tToFA8U この精巧なダミーサバクガメの甲羅の内部には仕掛けがあり、カラスのクチバシに突かれると人工的なブドウの香りを放出するようになっている。なんでもカラスはこのブドウの香りが苦手らしく、この香りを嗅ぐと飛び去るのだそうだ。 画像引用/https://www.youtube.com/watch?v=a60-tToFA8U なるほど、これは名案だろう。カラスを傷つけることなくさらにサバクガメを守ることができる。サバクガメがブドウの香りを放つことを学習したカラスは、もうサバクガメを襲うことはない。もちろんその上ではダミーのサバクガメが本物のサバクガメと瓜二つである必要があるが、現在の3Dプリンティング技術は甲羅の複雑な形状を再現するだけの性能がある。 画像引用/https://www.youtube.com/watch?v=a60-tToFA8U この方法は今後、様々な種の保護に役立てられる可能性があるという。捕食者に危害を加えることなく、絶滅危惧種を保護するための鍵は3Dプリント技術にあるようだ。
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ベビーパウダーを使った裏技で3Dプリントしたオブジェクトの表面が鏡のようにツヤツヤに?
3Dプリントコミュニティで話題のある「裏技」に迫る 今、3Dプリンターユーザーの間で話題になっているある「裏技」をご存知だろうか。なんでも、その裏技を使えば3Dプリンターで出力したオブジェクトの表面をツヤッツヤで滑らかにすることができるのだとか。これは是非とも知りたいところだ。さて、その裏技の内容とは、「3Dプリンターで出力したオブジェクトの表面にUVレジンとベビーパウダーを混ぜたものを塗布する」というもののようだ。3Dプリントコミュニティの間でじわじわと噂が広まっていたこの方法に関して、先日、3Dプリント系YouTuberのDaveRigが、実際にその裏技を実践した様子を収めた動画をアップしていた。 動画をご覧になるとわかるように、この裏技は特にオブジェクトの大きくて平らな表面に適したもののようだ。動画において彼はまずBambu Lab FDMプリンタを使用して、厚さ3mm層からなる半球状のドームを印刷している。そして、その表面にレジンとベビーパウダーの混合物を塗布しUV光下で硬化。このプロセスを繰り返した結果、確かにオブジェクトの表面が鏡のように艶やかになっている。 画像/https://www.youtube.com/watch?v=KVf0mbBCygQ&t=231s DaveRigによれば、この混合物はUVレジンを2としたらベビーパウダーを1とする分量で構成されているようだ。それにより、レジンがより良く広がり、コートを非常に薄く均一に塗布できるようになるという。さらに、下塗り、ニス塗り、研磨を行うと、表面はさらに洗練される。 画像/https://www.youtube.com/watch?v=KVf0mbBCygQ&t=231s この裏技を使いこなせば、高価な工業用塗料を使わずとも費用対効果の高いツヤツヤの表面を手にすることができるかもしれない。これは試す価値ありではないだろうか。ただ、詰まりを避けるためには複雑な細部に注意を払う必要があるとのこと。くれぐれも作業は慎重に行われたし。
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3Dプリンターで再現した「顔」によって未解決事件の犯人を逮捕
身元不明の被害者の顔を3Dプリンターで再現 様々なことに役立てられてきている3Dプリンターだが、実は「未解決事件の解決」にも役立てられている。実際、米国ではかなり以前から3Dプリント技術が捜査に使用されており、2016年にはオハイオ州で起こったある殺人事件がそれによって解決されたと話題になった。その事件においてまず問題となったのは発見された遺体の身元だった。発見時、すでに遺体は白骨化しており、それゆえ身元の特定が困難だったのだ。そこで3Dプリンターが役立てられた。白骨化した遺体から生前の遺体の顔を3Dプリント復元したのだ。しかし、もともと情報はほんの僅かしかなく、かつ曖昧だった。遺体は女性であり、年齢は25歳〜50歳、身長は5〜6フィート。その他の唯一の手がかりは遺体と一緒に見つかったピンクの縞模様のパンツだけだった。そこで捜査当局はオハイオ州立大学に協力を要請、3Dプリンターを使って女性の頭蓋骨モデルの作成を始めることになった・まず行なったのは残された頭蓋骨のCTスキャン。そこで得られた正確なデータをもとに3Dプリンターで頭蓋骨を出力。その頭蓋骨に粘土を使って顔の筋肉を埋めていき、眼窩には眼球が埋め込まれた。こうして作られた顔を公開した結果、被害者の身元が特定され、最終的には彼女を殺害した犯人が刑務所に入れられることになった。 画像:https://www.youtube.com/watch?v=zq24jOmNCQQ&t=115s これを契機に研究が進み、現在はアニメーションを利用してさらにスムーズに被害者特定のための3Dプリンティングが行われるようになったという。特にスキャニングに関しては現在なら頭蓋骨の写真をiPhoneで撮影するだけでもかなりのレベルの再現が可能になっている。 画像:https://www.youtube.com/watch?v=zq24jOmNCQQ&t=115s 画像:https://www.youtube.com/watch?v=zq24jOmNCQQ&t=115s 犯罪事件の時効撤廃が議論されている今日、長いあいだ未解決のまま放置されてしまった迷宮入り事件の犯人が3Dプリンターによって明らかにされるようなことも、案外ありえるかもしれない。
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世界は日本の3Dプリント業界をどう評価している?
日本が3Dプリント分野でプレゼンスを発揮するかどうかは◯◯に掛かっている 世界的な3Dプリントメディア「3DPRINT.COM」の新しい記事が注目を集めている。記事のタイトルは「日本の3Dプリンティングの歴史」。要は3Dプリント分野における日本企業のこれまでを概観しているわけである。有料記事のため詳しい内容を紹介することは控えておくが、全体のトーンのみを紹介すれば、必ずしもポジティブとは言い切れない内容になっている。とはいえ悲観しているかと言えばそうではない。今後、日本がこの分野で世界的に大きなプレゼンスを発揮するかいなかは現在どう動くかに掛かっている、というのがおおまかな考察の内容だ。確かに、世界各国が3Dプリント技術を推し進めている中で、日本は現状で必ずしも大きく目立てているとは言えないかもしれない。研究開発分野では注目すべき成果を挙げているものの、一方の日本の3Dプリンターメーカーの活躍は限定的なものにとどまっている。そもそも、3Dプリント技術の大元を開発したのは日本人だった(特許こそ取ることはできなかったが)。本来、日本は3Dプリント先進国として世界をリードしていくべき国なのだ。もちろん、各企業がそのための努力していることはいうまでもない。これ以上を望む場合、より多くの日本人が3Dプリント技術に関心を持ち、その発展を支持していく必要があるだろう。その点、弊社ブログ欄の読者の皆さんに関しては、すでに3Dプリント技術への関心を強く持っている方々ばかりと想像する。そのため皆さんに期待することがあるとすれば、周囲の人たちにも3Dプリントの魅力を宣伝してほしいということくらいだろうか。今以上にこの分野に対する関心が集まれば今以上にこの分野へとお金が流れるようになる。ひいては開発研究を含む業界そのものが活性化するというわけだ。本欄の様々な記事をお読みいただければ分かるように3Dプリント技術が今後の世界でますます重要性と必要性を増していくことは間違いない。その際、3Dプリント分野で日本がどのような位置を占めているかということは、国全体の経済に関わる大きな要素となってくる。もちろん、弊社は各国の様々なメーカーの3Dプリンターを、その性能、価格などの様々な観点からフェアに評価し、よりよき商品を取り揃えていく所存であり、自国メーカーだからと言って贔屓するようなことはせず、ユーザーの方々にとって最もメリットの大きい商品取引を第一にし続けるということは変わらない。その上でなお、日本がいずれ3Dプリント大国と呼ばれるようになってくれる日を夢見ている。さて、今回は世界における日本の3Dプリント業界の現状と今後についての話だったが、最後にいくつか、日本企業に関するニュースを紹介したい。先日、日本のNAGASEグループのInterfacial Consultants LLCが、アメリカはシカゴに本拠を置くM. Holland Companyの3Dプリンティンググループの買収を発表したのだ。これは業界においても大きく注目を集めており、この買収によって北米やその他の地域の3Dプリンティング分野におけるNAGASEの存在感をより高めることになるだろうと言われている。NAGASEグループと言えば江戸時代に創業された日本を代表する大商社の一つ。果たして今回の買収がどのように発展し、どのように世界の3Dプリント市場にインパクトをもたらすことになるのか、楽しみである。あるいは、「3DPRINT.COM」は最近、日本のNTTデータXAMテクノロジーについても記事を出しており、その3Dプリント分野における功績を高く評価している。特にJAXAの航空宇宙研究への技術協力や日本の自動車メーカーとの提携において同社の働きは数多くのイノベーションを推進しているとし、その活躍の幅は今後世界的に拡大する可能性があるだろうと示唆している。そう、ポテンシャルは十分にあるのだ。いずれにしても鍵となるのは先数年の動き。さらなる活躍と発展を期待したい。
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スペイン人アーティストが3Dプリントした球体関節人形が「美しい」と話題に
アーティストが球体関節人形の3Dデータを公開 今、ある人形が話題になっている。その人形の名前は「ロボティカ」。制作したのはスペイン人アーティストのソニア・ベルドゥだ。 (画像引用)Thingiverse ロボティカはいわゆる球体関節人形。身体の各部位に可動性があり、自在にポーズを取らせることができる。写真を見れば分かるように、その出来栄えは見事なものだ。もとより彫刻家であるソニアはこのロボティカを3Dプリンターで作成したといい、そのデータをThingiverseで共有した。約30個ほどのピースからなるロボティカをソニアはPLAで出力しており、データをダウンロードした人向けにピースの接続方法を動画でガイダンスしている。 (画像引用)Thingiverse これは是非とも出力してみたい。写真のロボティカはソニアが塗装したものだが、それぞれが独自のセンスで塗装することで、また新たな魅力が発見できそうだ。 ちなみに、ソニアは自身で出力できない人のために、すでに組み立て、ペイントも施されたロボティカの販売も彼女のサイトで行っている。サイト上には彼女の他の人形作品も並んでいるがどれもロボティカに負けじと魅力的な人形ばかりだ。 球体関節人形と言えば、世界的に最も有名なのはハンス・ベルメールだろう。日本では主に耽美やゴスの文脈で評価されてきた作家だが、そのフェティッシュな世界観は映画『イノセンス』でもオマージュ的に参照されている。あるいは日本では四谷シモン氏なども有名だ。氏の球体関節人形はいずれも不思議な魅力をたずさえている。生で見てみたいという方は箱根のカフェ「ユトリロ」に常時展示されているので足を運んでみると良いかもしれない。 『ザ・ドール ハンス・ベルメール人形写真集』 (パン・エキゾチカ) いずれにせよポイントは、球体関節人形というジャンルがこれまで特別に人を魅了してきたということ。そして、その球体関節人形が現在は3Dプリンターで制作されるようになっているということだ。ちなみにYouTube上には以下のような動画もある。 皆さんも是非、オリジナル球体関節人形作りにトライしてみてほしい。
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エネルギー危機を3Dプリンターが救う? クレムソン大学がプロトン導電性セラミック燃料電池の3Dプリントに成功
化石燃料依存から脱却するためには 行楽の秋、長く続いた猛暑もようやく落ち着き始め、遠方へのレジャーや観光を計画されているという方も少なくないだろう。ただ、その上では気になることもある。燃料費の高騰だ。普段から車に乗られる方ならつとにご存知の通り、現在ガソリン価格は非常な高騰ぶりを示している。原因とされているのはコロナ禍からの反動だ。経済活動が回復する中で、現在、原油の需要が世界的に高まっている。また円安の影響も大きい。原油の決済はドルで行われるため、円安になればなるほど原油価格は相対的に上がる。また、原油価格の上昇にあわせてドルを調達する量も増えるため、さらに円安が進行するという悪循環も起こっている。こうもガソリン価格が高騰すると、いやでもエネルギー問題についてを考えざるを得なくなってくるというものだ。今回のガソリン価格の問題には上記したような背景があるとはいえ、元をたどれば、化石燃料依存型の暮らしに問題がある。そうした暮らしを見直す上で必要なこと、それは代替エネルギーの開発である。 すべての発電デバイスを超える発電効率75%を誇るPCFCとは? 様々な代替エネルギーが考案されている中で近年徐々に注目を集めているのがプロトン導電性セラミック燃料電池(PCFC)と呼ばれる電池だ。PCFCとは、セラミック電解質膜とそれを挟み込む空気極と燃料極の3層構造を有する、空気中の酸素と水素等の燃料を利用して発電する電池のこと。理論的には従来のすべての発電デバイスを超える発電効率75%を実現できる可能性を有していると言われ、期待されている。エネルギー危機に一筋の光を差す、まさに夢のような電池、なのだが、一方でそれを実現するのは非常に難しいとも言われており、実験室レベルを超えて現実世界での導入は困難とされてきた。その状況が変わりつつある。クレムソン大学先端材料研究所 (AMRL) のチームが、PCFCを管状の形状に 3Dプリントすることでこの問題を解決、その成果をACS Energy Lettersに発表した。 約5年以内に商用化も見込めると研究チーム 研究者チームは今回、燃料電池に必要なアノード、カソード、電解質の 3 つの層すべてを 3D プリントした。博士研究員で責任著者の Jianhua “Joshua” Tong 教授によると、これはこれまでに行われたことがなかったそうだ。研究チームは、燃料に水素を使用して 3D プリントした PCFC の 1...
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深すぎる!3Dプリントラジコンの世界|完全自作で最高時速66km
高級ラジコンが欲しいけど手が届かない…ならば自分でつくってしまおう! 3Dプリンターによるラジコンつくりが盛り上がっている。まず日本でも話題になったのは、今年の春先に“こうのとりDIY”さんがYouTubeとニコニコ動画に投稿した『3Dプリンターでパワフルなラジコンを作りたい! UCRプロジェクトpart1』という動画だ。 動画によれば、なんでもこうのとりさんはUnlimited Desert Racerという大型ラジコンに興味を持ったものの、その高価さに気後れして購入に踏み切れず、それでは自作で同じようなラジコンをつくってしまおうと思い立ったとのこと。その上でこだわったのはギアを含めて可能な限り3Dプリントするということ。様々な工夫を重ねて、晴れて完成したのがオリジナルラジコン「Unlimited Cyber Racer」だ。 画像引用/こうのとりDIY 動画には走行テストの様子も収められているが、見事な走りっぷりである。使用したフィラメントや、3Dプリントした部品一覧なども紹介されており、非常に勉強になる。 画像引用/こうのとりDIY とはいえ、まだまだ改良すべき点もあるようで、今後もこのプロジェクトを継続していくとのこと。次回動画が実に待ち遠しい。もちろん、3Dプリンターでラジコン作りを行なっているのはこうのとりさんだけではない。たとえば最近にも3Dプリンター系YouTuberのJinan氏が、オリジナル3Dプリントラジコンの作り方を動画で公開していた。 動画でJinan氏が作っているのは、低重心の後輪駆動設計のラジコンだ。2つの大型5.2Ahバッテリーがシャーシの低い位置に設置されており、コーナリング時の車の安定性を担保している。また独自のサスペンションセットアップも開発し、路上の凹凸に対する対応力も強化している。最高速度を保つためにも、Jinan氏は高度な数学的アプローチも行なっている。もちろん幾度も失敗を重ねたようだが、その失敗から新たな学びを得て、設計を改善していった結果、自作されたラジコンの速度は時速66kmに達するまでに。これは競技用ラジコンとしても高い水準にある。これぞDIY精神というものだろう。あるいは変わり種としては、自作で3Dプリント戦車をつくってしまう人も。 要するに自分のやる気とアイディアと工夫次第ということだろう。皆さんも是非とも秋の夜長にオリジナル3Dプリントラジコンつくりに挑戦してみてはいかがだろうか。 ...
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ユスケル・テミズの魅惑的なストップモーションアニメ世界|3Dプリンターをクリエイティブに使いこなす
3Dプリンターをストップモーションアニメに活用 3Dプリンターを使ったクリエイションの可能性は無限大だ。すでにこれまで多くの人が様々な形で3Dプリンターをものつくりに活かしてきた。実際、アートの世界においても3Dプリンターの活用は一般化している。一般向けに3Dプリンターが販売されるようになって10年。この新しいテクノロジーは確実にクリエイションの現場に浸透し、ものつくりの在り方を変え続けている。そんな中、今回注目したいのは、ユスケル・テミズという人物。科学者である彼が余ったフィラメントを用いて制作しているのは「ストップモーションアニメ」だ。テミズがYouTube上で公開している、その作品と制作風景が、現在、大きく話題となっている。 (引用)Yuksel Temiz そもそもストップモーションアニメとは、コマ撮りした立体物の写真を並列に再生することで、あたかも立体物が動いているかのように錯視させるアニメーションのことだ。とはいえ、実はあらゆる映像、あらゆるアニメーションもまた原理的には同じ構造を有している。それらと異なる点があるとすれば、ストップモーションアニメにおいては立体物をコマごとに手動で動かし、かつ造形を(必要とあれば舞台装置そのものを)変化させる必要があるということ。つまり、とりわけ「手間がかかる」という点だ。その性質上、ストップモーションアニメの中で最も知られているのは「クレイアニメ」と呼ばれる粘土を用いたストップモーションだ。コマごとに立体物の形状を変化させる上で、粘土の可塑性は非常に頼もしい。あるいは粘土以外でも、ストップモーションアニメでは切り絵や砂、関節を持った人形など、造形や動作を変化させやすい素材がこれまで用いられてきた。最近、ストップモーション関連で話題になったところで言えばホラー映画の巨匠アリ・アスター監督も絶賛したチリの映像作家たちによるクレイアニメ『オオカミの家』だろう。カラー粘土を巧みに使って表現された独特の恐怖世界。まだ未見の方は現在公開中なので是非とも劇場で体感してみてほしい。 3Dプリント技術がストップモーションアニメを変革する? さて、話を戻そう。テミズが試みたのは、そんなストップモーションアニメの制作に3Dプリンターを用いることだった。そうすることには多くの利点がある。先ほども書いたようにストップモーションアニメの撮影においてはコマごとに立体物を変形させていく必要があり、それゆえそれに適した粘土などの素材が多く用いられてきたのだった。その点、プラスチックは硬質だ。プラスチックのオブジェをコマごとに変化させるためには、そもそもいちから型取りをし直す必要がある。これは時間がかかって仕方がない。しかし、3Dプリンターを用いれば、一つの3Dデータを微妙に変更し、それを出力するだけで事足りる。オブジェのサイズが小さければ、出力にかかる時間もさして長くはない。あるいは一つの造形物に可動関節を設けておくことで、立体物に動きをもたらすことだってできる。こうして作られたのが以下の映像だ。 いかがだっただろうか。実はテミズが3Dプリンターを用いたアニメーションを制作した理由は、彼の幼い息子のためだった。自分と子供の関心を結びつけ、遊びをよりクリエイティブにすること。父と息子が3Dプリンタを使って協力してストップモーションアニメを創作する、というのは実に微笑ましい。あるいはそうした目的のためだけではなく、3Dプリンターの活用がストップモーションアニメの世界を更新する可能性もあるだろう。テミズのアニメにおけるプラスチックの質感はクレイアニメの粘土とはまた異なるものだ。興味と根気のある方は、是非とも自作の3Dプリントストップモーションアニメ創作にトライしてみてはいかがだろうか。
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圧倒的な熱耐性と機械的強度を誇るスーパーエンプラとは?|カスタム次第では一般向けFDM3Dプリンターでも使用可能?
スーパーエンプラとは何か? 3Dプリント市場において数年前から話題になっている言葉のひとつに「スーパーエンプラ」というものがある。スーパーエンプラとはスーパーエンジニアリングプラスチックの略称であり、エンジニアリングプラスチック (エンプラ) の中でも特に優れた耐熱性を持つプラスチックのことだ。一般的なプラスチックは熱に弱く、高温環境下での使用や摩擦熱などが発生する可能性のある部品のプリントには向いていない。また紫外線にも弱いため、屋外で長時間にわたって日光に晒してしまうと劣化してしまう場合がある。スーパーエンプラはこうしたプラスチックの弱点を克服する新素材として登場した。特にその耐熱性、耐久性の高さから工業部門において注目されており、金属部品の代替になることが期待されている。自動車のエンジン周辺の部品、あるいはバルブやポンプといった、これまでは金属でつくられることが一般的だった部品をスーパーエンプラで置き換えることが行われ始めている。一般に150度以上の高温でも長時間使用可能であり機械的強度が高いことがスーパーエンプラの「スーパー」たる特徴として知られている。 3Dプリンターでスーパーエンプラを使用するには? 現在、スーパーエンプラに該当する素材にはいくつか種類がある。最も代表的な素材は、続使用温度250℃で、高温でも高い機械強度を維持することが可能であり、また耐薬品性、耐熱水性、耐摩耗性にも優れていることで知られているポリエーテルエーテルケトン、通称「PEEK」だろう。その他、「URTEM」という商品名で知られ、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、航空機部品、加熱調理用品などに主に用いられているポエーテルイミド(PEI)や、医療用、食品用など高い安全性を求められる分野をはじめ、電子・電気用途、水栓弁・ポンプ・フィルターなどでも活用されているポリフェニサルホン(PPSU)なども知られている。以前はこれらのスーパーエンプラ素材を用いる場合は切削機などが必要だったが現在では3DプリンターでもこのPEEKを印刷できるようになった。とはいえ、一般的な3Dプリンターでは温度設定がかなり違うため、PEEKをはじめとするスーパーエンプラを扱うことはできない。ただ最近ではスーパーエンプラの造形に適した高温ノズルを搭載したFDM方式の3Dプリンターも出始めている。たとえば上海に拠点を置くグローバル企業「INTAMSYS」社のFUNMATシリーズだ。FUNMATはスーパーエンプラの使用を前提としたFDM方式(材料押出、熱溶解積層法)の3Dプリンターであり、スーパーエンプラの安定した造形はもちろん、今まで熱収縮の歪みなどで造形が難しかった、大型エンプラなども安定して造形できるという。 「INTAMSYS」社のFUNMAT あるいは、3DプリントYouTuberである「ND-3D」は、一般の3Dプリンターをカスタムすることで、PEEKを印刷することにトライし、実際に成功可している。 なんでも改造費用は200ポンド未満とのこと(3万円程度!)。是非とも真似してみたいところだが、ハロゲンランプの制御が鍵であることまでは明かされているものの、ビルドの詳細は公開されていない。 ただ、すでにそうしたカスタムが成功しているということは、一般向け3DプリンターでPEEKをはじめとするスーパーエンプラを出力できる日が来ることもそう遠くはないということだ。これまでのフィラメントやレジンよりもはるかに耐熱性に優れ、またそのほかの性質においても圧倒的な強度を誇るスーパーエンプラが、3Dプリンターによるものつくりの幅を広げてくれることは間違いない。今後の展開に期待大だ。
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マルハニチロがバイオシーフード企業との提携を発表|3Dプリント水産物は食糧危機を救うか
過去30年でおよそ65%も減少している日本の漁獲量 今年の夏も例外的な猛暑日が続いた。数年前まではあくまでも机上の推論に感じられていた「気候変動」は、現在、誰もが体感レベルで感じている喫緊の問題となっている。気候が変動することによる問題は様々ある。だが、私たち人類にとってまず懸念されることは、体感気温の変化以上に、食糧危機の到来だろう。およそあらゆる農作物が気候変化の影響をダイレクトに被ることはいうまでもない。しかし、農作物のみならず、気候変化の影響を強く被るのが水産資源だ。現在のリサーチによれば、熱帯海域における潜在的漁獲量は、2050年までに最大40%減少すると言われている。これは海音の上昇にともなうサンゴ礁の白化現象とも関係しており、熱帯海域における生態系はすでに大きく変化し始めている。一方で北大西洋、北太平洋などの高緯度海域では、一部の魚種の生息域が拡大していることもわかっており、必ずしも全ての漁獲量が低下しているわけではないとはいえ、少なくとも日本の漁業者にとっては厳しい状況が続くことが懸念されている。日本人にとって馴染み深いところではサンマ不漁だ。このサンマ不漁の原因にも地球温暖化があると言われており(IPCCの報告)、あるいは気候変動によって逆に生息量が増えた魚種によって養殖漁場が荒らされるなどの被害も相次いでいる。四方を海に囲まれた日本にとって水産物は主要な食糧の一つであり、また日本の食文化の豊かさを支えてきたものも、多様で新鮮なシーフードであった。このまま気候変動が続けば、私たちは現在のような気楽さでは魚が食べられなくなってしまうかもしれない。こうした状況において、私たちにできること、それはまず気候変動の速度を緩めるための取り組みを行うことだろう。ただ、大きな視点に立った時、気候変動を止めるということはほぼ不可能だとも言われている。すると、私たちはこの生態系の変化に伴う食糧危機対して、ただ抗うだけではなく食文化そのものを適応させていく必要もあるということになる。すでにそうした取り組みは行われている。そして、そのための鍵の一つとなっているのが、フード3Dプリンターだ。 日本のマルハニチロがシーフード3Dプリンティングに本格参入 先日、日本最大の水産会社であるマルハニチロが、ある重要な決定を行った。日本および潜在的に他の市場で細胞培養魚介類の開発と商品化を目的として、シンガポールに拠点を置くUmami Bioworks (旧名Umami Meats ) との戦略的投資および協力パートナーシップを発表したのだ。 ©️Umami Bioworks Umami Bioworksは牛や豚が先行していた3Dプリントミートの業界で、シーフードの3Dプリントを手掛ける企業として知られており、その取り組みに関しては、以前にも記事で紹介したことがある。今回のマルハニチロとの提携は、日本の水産会社が水産物生産のための細胞農業を専門とする外国企業と提携する初めてのことであり、オルトシーフード全体を一般に普及させていく上での布石となるだろうとも言われている。 ワンコインで「うな重」が食べられる日は近い?|Umami MeatsとSteakholderが開発する3Dプリント「ウナギ」 https://skhonpo.com/blogs/blog/3dunagi?_pos=1&_sid=a12472ddb&_ss=r マルハニチロは今回、国内外の養殖水産物生産の開発と商業化を目的とした提携の一環として、Umamiの細胞培養開発・製造プラットフォームへのアクセスをその提携の主要な目的としている。そこには日本および世界における養殖水産物の商業化への道を加速するための、マルハニチロによる戦略的投資と包括的な研究協力が含まれている。 ©️Umami Bioworks 「Umami Bioworks は独自の技術により細胞培養水産製品のプロトタイプ開発に成功しました。細胞培養魚介類の認知度を高めるため、展示会や試食会などの活動も積極的に行っている。細胞農業は新興産業であり、マルハニチロにとって新たな市場の創出に向けて取り組む上で、技術の確立と同様に消費者の理解を促進することが極めて重要です」(マルハニチロ)現在、日本の水産物自給率は55%。その漁獲量は過去30年でおよそ65%も減少している。これは日本人の水産物消費量を考えると非常に由々しき数字だ。農林水産省によれば日本の個人あたりの魚介類消費量は世界のトップ5に入理、水産物市場としての規模も世界第三位。それにも関わらず、漁獲量が現象の一途を辿っているというのは、非常にバランスが悪い。マルハニチロ、Umami共に、特に焦点を当てているのは絶滅の危機に瀕している魚の養殖だ。Umamiの技術は、汚染された海洋を回避して、漁業を行わずに魚介類を「栽培」するシステムを開発している。これは気候変動下において安定したシーフード供給を行う上で、今後さらに注目を集めていくことになるはずだ。「愛される食品製造の世界的リーダーであるマルハニチロとの独創的なパートナーシップは、環境への影響を最小限に抑えながら、増加する世界人口に食料を供給するという課題に取り組むという私たちの使命を達成するための極めて重要な一歩です」そうUmamiのCEOであるパーシャッド氏は語る。私たちがこの先も海の幸を堪能することができるかどうかが、こうした一連の技術にかかっているということは、よもや疑いえないことなのだ。 ...
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奇抜すぎるデザインの3Dプリントおもちゃが話題に|ポテトフェイスのクセになる魅力
3Dプリント技術に創造性を刺激されたアーティストが3年をかけて制作したおもちゃとは? 3Dプリントは必ずしも実用性にばかり資する技術ではない。それはなにより、ものつくりの楽しさをあらためて私たちに教えてくれるものである。だからこそ、3Dプリンターは早くからアートの世界でも多く用いられてきた。普段からものつくりに親しんでいる彼らにとって、その技術の誕生は大いに持ち前のクリエイティビティを刺激するものであっただろう。最近もまたアーティストとメーカーのコラボによる面白い3Dプリントプロダクトが登場した。その名は「ポテトフェイス」。この奇抜なデザインのおもちゃはリリース情報が公開されるなり話題となり、入手が待ち遠しいという声が飛び交っている。 (画像引用)ジム・マッケンジー このポテトフェイス、元ネタとなっているのは1950年代にアメリカで発売され、以来、世界中の子供たちを魅了してきた人気キャラクター「Mr.ポテトヘッド」を元ネタとしている。今回、制作を手がけたのはストップモーションアニメ作品で知られるアーティストのジム・マッケンジーと、AM企業であるSNLクリエイティブ。制作期間はおよそ3年と、制作者の思い入れも相当に強いアイテムとなっている。 ご覧のようにそのデザインはかなり奇抜で、言ってしまえば「悪趣味」さに満ちている。ただ、その悪趣味さが不快さを生まず、なんともいえない愛くるしさを生んでるんだから、さすがはマッケンジーというところだろうか。この顔は福笑いのように交換可能となっており、所有者は16個のパーツを自在に組み替えることで自分だけのポテトフェイスにデザインすることができるようになっている。今回はマスターパターンが3Dプリンターによって製造された。 (画像引用)ジム・マッケンジー なんでも2023年12月にはマッケンジーが製作したこの「ポテトフェイス」をモチーフとした短編映画が公開されるとのこと。日本で観られるようになるかは分からないが、もし可能なら是非とも観てみたい。なおポテトフェイスはマッケンジーのサイトから購入できる。全世界に発送されるとのことなので日本からでも購入可能だ(12月第1週発送予定とのこと)。お値段は300ドル(プレセール価格)とおもちゃにしてはやや高価だが、それだけの価値がある一品に仕上がっている。ご興味ある方は下記リンクへ。マッケンジーの作品は他のものもとても魅力的なので是非とも覗いてみて欲しい。 【ジム・マッケンジー】https://jimmckenzie.bigcartel.com/product/potato-face-interchangeable-designer-figurine-by-jim-mckenzie-limited-ed-200-pre-order
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3Dプリントされたバイオミックウォールが都市を緑化する?|街を森へと変える新しい技術
地面に余裕がないのなら壁面に緑を増やそう 緑がたくさんある街に住みたい。そう思ってみても、都市においては緑の居場所は限定的だ。道の並木、あるいは公園などには緑があるが、オフィスビルが立ち並ぶエリアにおいてはどうしても緑の気配は薄れてしまう。実は最近、そうした都市の緑化に関わる新しい技術が生まれつつある。その名もバイオミックウォール。これは斬新なセラミック3Dプリンティングとエコロジカルなデザインを組み合わせた最先端のファサードプロトタイプだ。 . (Image Credit: JanContala / designboom) この水耕栽培が可能な全く新しい壁面は、進化し続ける環境景観に動的に対応するために、ceraLABとexarch.hochabuの協力のもと、インスブルック大学の修士課程プログラムの一環として開発されたものだという。目指しているのは、空気の質を改善し、都市の気候を調整し、騒音を軽減するために、密集した都市空間の緑化に貢献することと、そしてそこをさまざまな動植物の生息地とすることだ。開発されたプロトタイプは、生態学の文脈における建築の限界に挑戦するものである。都市に緑が少ないのは、まず端的にスペースが少ないから。土地には余すところなく建物が立ち並び、道路には人や自動車がひしめいている。しかし、これまで無視されてきたデッドスペースも存在する。そう、建築の壁面である。そこでインスブルック大学の設計チームが取り組んだのは、3Dプリンティングを活用し、従来の工法では達成できなかった、植物が着生可能な複雑で有機的な形状の壁面の形成だ。その研究はバイオミックウォールの美しい多孔質表面として結実した。 . (Image Credit: JanContala / designboom) 写真をご覧いただければ分かるように、バイオミックウォールにおいてはセラミックと植物が複雑に絡まりあって共存している。下地となっているのは金属製の基礎構造。それゆえ一段ごとの組み立てが可能となっていて、増設もしやすい。もちろん、こちらはまだ普及していない。しかし、こうした新技術の登場は都市か田舎かという単純な二項対立に待ったをかけるだろう。あるいはこうした試みが広がっていった先には、森のように緑豊かで生物多様性に溢れる都市空間も誕生するかもしれない。世界中で異常気象が生じている今だからこそ、目の前の暮らしの空間から、まずは見直していきたいものだ。 . (Image Credit: JanContala / designboom) ...
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