ケニアで1週間に1軒のペースで3Dプリント住宅を建設中|加熱する技術競争とその展望
アフリカで深刻化する住宅不足
兼ねてより叫ばれてきたアフリカにおける住宅不足。一方でアフリカではいまだ人口が増加傾向にあり、ある推定ではいずれ30億人分の住宅が不足することになるとも言われている。
そうした状況を改善するための様々な対策の一つに、スイスのセメント会社のホルシムによる3Dプリント集合住宅の建設予定があった。これは以前に本欄でも取り上げている。2021年末の段階で、ホルシムはケニアにおいておよそ52棟からなる集合住宅の建設計画を立てていた。
2021年にホルシムがケニアに建設した3Dプリント住宅
実は、昨年末よりこの計画は実行に移されている。3Dプリントを手がけたのはホルシムのジョイントベンチャーである14Trees。使用しているのはデンマークの建設企業COBODの建設用3Dプリンターだ。
14TreesとCOBODは以前にもマラウイにおいて世界初のコンクリート3Dプリント学校を建設している。また、世界最大の3Dプリント住宅コミュニティのモデルなども発表してきた。このチームが現在、1週間に1軒のペースでケニアに3Dプリント住宅を建設しているのだ。
この速度は注目に値する。実は昨年末より、アメリカはテキサス州で、これまで最大規模の3Dプリント住宅コミュニティの建設が進められてきた。手がけているのはオースティンを本拠とするICON。予定では100戸の住宅を建設する予定であり、現状3ヶ月で9戸の住宅を出力し終えているのだが、一方で14Treesは10週間で10戸を出力している。
これが世界最速と言えるかどうかはまだ分からないが、いずれにせよ重要なことは、現在、3Dプリント住宅建設業界における技術競争が加熱しているということだ。この競争の加熱は、遅かれ早かれ、プリンターあたりのコストの低下につながるだろうと言われている。現状、プリント機器のコストが3Dコンクリートプリンティング市場の成長障壁になっているということを踏まえれば、このコスト低下は3Dプリント住宅のさらなる普及を後押しすることになるだろう。
住宅が不足しているのはアフリカだけではない。米国でも住宅不足は深刻化している。特に問題なのは低所得者向けの住宅が足りていないということだ。3Dプリント住宅は従来建設の住宅と比較してかなり安価で提供されている。3Dプリント住宅建設の拡充は時代の急務と言って差し支えないだろう。
また今後は気候変動により世界規模で災害が増加していく可能性もあり、災害対策を兼ね備えた設計も求められている。その点、日本には多災害国家として積み重ねてきた耐震設計をはじめとしたノウハウがある。是非ともそうした技術を3Dプリント建築にも落とし込み、世界をリードしていってほしいところだ。