ミスユニバースのシンガポール代表の3Dプリントドレスが美しすぎる|モチーフとなったのはハイブリッド蘭
ミスユニバースはただの「美女」コンテストではない
世界一の「ミス」を決める大会ミスユニバース。2023年1月、その第71回がアメリカはニューオーリンズで開催された。
各国を代表する「ミス」たちに求められるのは単なる容貌の美しさばかりではない。特に容姿で人を判断することが「ルッキズム」として批判される近年においては、容姿以外の要素、たとえば知性・感性・人間性・誠実さ・自信などの内面的な要素の重要さが審査においてますます増してきている。
とはいえ、内面を視覚的に判断することはなかなか難しい。それは審査員にとってもおそらく同様で、やはり視覚的な存在感は「ミス」選定の上で重要な基準となる。
またこれは国際的な大会でもあるため、各国の代表はそれぞれの出身国の文化も背負って競うことになり、いわゆる一般的な個人間の競争とも異なるおもむきがある。そのことが特に顕著に感じられるのが、彼女たちが纏っている衣装だ。
今回の大会でもそれぞれの代表の衣装の艶やかさには目を見張らされた。いずれも各国独自のエッセンスを保ちながらも普遍性のあるコンテンポラリーなデザインの衣装となっている。それらは彼女たち自身の表現というより、今日の国家を象徴する表現という側面が強い。
つまり、ミスユニバースとは、単なる美女コンテストなどでは決してなく、それぞれの国が自国の今日の文化や美意識を表現する、ある種の万博のようなコンテストなのだ。
シンガポールの国花を表現した3Dプリントドレス
さて、そんな百花繚乱の第71回ミスユニバースでひときわ目を引いたのが、シンガポール代表であるカリッサ・ヤップさんと彼女が着用していた衣装だった。
その姿はまるで植物の妖精だ。なんでも蘭の花をイメージしたという、この繊細かつ豪奢なドレスは、3Dプリンターによって造形されたらしい。もちろんカリッサさんそのものの美しさも圧倒的なのだが、その美しさを存分に引き立てながら、アジアの富裕国シンガポールの有する先端技術と表現力をもしっかりと示した、非常に優れたデザインとなっている。
この蘭の花はヴァンダ・ミス・ジョアキムと呼ばれる種で、シンガポールの国花に指定されているハイブリッド蘭だ。背の高い茎と細長い葉、そして精錬ながらも妖艶さを感じさせるピンク色の花。それが様々な種を掛け合わせたハイブリッド種であるという点もまた、多民族社会として知られるシンガポールを象徴しているのだろう。
ヴァンダ・ミス・ジョアキム
およそ4ヶ月以上にわたって制作されたというこのドレス今回のドレスには200個以上の3Dプリント格子ピースがあしらわれた。上部の白い蘭の造形だけでも2ヶ月かかったといい、3Dプリントで出力したものを手作業で丁寧に組み立てて作ったという。造形の白に対しドレスの生地は赤。この赤と白という配色もシンガポールのナショナルカラーにちなんでいるという。
結果的に今年のミスは米国代表のロボニー・ガブリエルさんに決まったが、本当に参加者全員が素晴らしく、また美しかった。もちろん日本代表の坂本麻里ベレンさんと彼女が着用していた千羽鶴モチーフのドレスも素敵だった。
さて来年はどんなミス、どんなドレスが登場するのだろうか。SK本舗としては、一層美しく洗練された3Dプリントドレスの登場を期待している。