ニコンがドイツの大手金属3Dプリンターメーカーを買収|デジタルマニュファクチャリング業界に旋風
ドイツの名門企業SLMソリューションズを日本のニコンが買収
日本のニコンが金属3Dプリントに本気となった。
実はすでに数年前より、ニコンは国産の金属3Dプリンターメーカーとして頭角を現していた。
きっかけとなったのは2019年に発表された金属3Dプリンター「Lasermeister 100Aシリーズ」だろう。「CAD設計する設計者がオフィスの自席の横においても稼働」できるように製造されたというこのシリーズは、粉体を材料に扱うレーザー加工装置である金属3Dプリンターをオフィスに設置できるレベルで作りこんだという点で極めて画期的だった。
Lasermeister 100Aシリーズ
そのニコンが先日、ある発表をした。1863年にドイツで創業し、現在は金属3Dプリンターメーカーとして知られる名門企業であるSLMソリューションズ社を買収したのだ。
SLMソリューションズ社はこれまで金属3Dプリント業界の最先端を走ってきた。昨年には同社の金属3Dプリンター「NXG Xll 600」2台がカリフォルニアの大手ロケット会社に売却して話題となった。「NXG Xll 600」は、1kWのレーザーを12台搭載した金属3Dプリンター。レーザー1基の同社従来機の20倍の高速造形が可能であると言われ、造形スピードは1000cc/hとパウダーベッド方式の金属3Dプリンターとしては突出している能力を持つマシンだ。
NXG Xll 600
つまり、同社はこの業界のトップ企業の一つということ。そのSLMソリューションズを日本のニコンが買収したというのだ。
まだまだ続くニコンのAM業界進出
さらに、ニコンはSLMソリューションズ買収発表の2週間後、テキサスに本拠を置くHybrid Manufacturing Technologiesへの投資と、ユタ州に本社を置きアンテナやその他の無線周波数 (RF) コンポーネント用の金属AMアプリケーションを設計する企業Optisysの株式購入を発表している。いずれもニコンの「本気」を窺わせる動きだ。
「グローバルな大量生産の革命につながると確信している」
今回の一連の買収と投資に関して、ニコンのCEOである馬立俊和氏はそのように語っているようだ。すでに2021年にはニコンは南カリフォルニアに拠点を置くAM企業Morf3Dも買収している。つまりニコンは現在少なくともアメリカの3州とドイツにデジタルマニュファクチャリングビジネスの足場を築いたということになる。
おそらく、これはニコンが描いている青写真の一部に過ぎないはずだ。今後、同社がどんな展開を見せていくのか目が離せない。