グラファイトペイントを使ってレジン素材の3Dプリントオブジェを電導メッキする凄技
レジンのオブジェをメタリックに仕上げるなら電導メッキ
以前、レジンで3Dプリントしたオブジェクトをメタリックに仕上げる裏技について紹介させていただいた。
レジンで3Dプリントしたオブジェクトをメタリックに仕上げる驚異の裏技とは?
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dmetalicresin?_pos=2&_sid=cde79b180&_ss=r&fpc=1.1.365.603df34d3718608N.1708441832846
その際、鍵となったのは電気メッキだ。詳しくは記事に譲るが、手順としては、
①希望のオブジェクトを3Dプリントする、②丁寧にオブジェクトをサンディングする、③オブジェクトに導電性ラッカーを塗りつける、④オブジェクトに銅線を絡みつける、⑤金属のイオンを含んだメッキ液の中にオブジェクトを入れて電流を加える、
というものだった。
果たして肝心の仕上がりはこちら。
ご覧の通り、かなりの出来である。ツヤ感、光沢ともに、一見すれば本物の金属と見紛うばかりだ。
実はこの方法を紹介してくれていた3Dプリント系YouTuberであるHEN3DRIKが、先日、再びレジンで3Dプリントしたオブジェクトを金属コーティングするための最新テクを紹介していた。そこで今回はその内容を紹介してみたいと思う。
鍵となるのはグラファイトペイント
さて、今回、金属コーティングの鍵となるのはグラファイトペイントだ。
グラファイトペイントとは、高純度鱗片状グラファイトと、これに最も適正のある合成樹脂ワニスを配合した高性能建築仕上げ用塗料のこと。ちなみにこちらの使用にあたっては注意も必要だ。換気が十分に可能な部屋で、かつ可能な限りPPEを着用した上で使用することが推奨されている。
手順は以下の通りだ。
まずレジンで3Dプリントしたオブジェクトを表面が十分に滑らかになるまでサンディングする。その後、オブジェクトにグラファイトを何層かにかけて吹きつけていく。グラファイトは速乾性が高いため、作業はスムーズだ。実際にグラファイトを噴きつけたオブジェクトがこちら。深い黒で均一に仕上がっている。
ただ動画内でも指摘されているようにグラファイトペイントは導電性が悪い。銅の導電性に比べるとその差は歴然、するとメッキには不向きだとするのが自然な考えだ。
しかし、HEN3DRIKはこの問題に対する解決策を編み出す。それは「グラファイト層を研磨すること」だ。
実際に研磨を行うと、電気に対する抵抗値はかなりのレベルで減少していることがわかる。
ただもちろんオブジェクトによっては研磨がかけづらい形状のものもある。その場合の対処策としてHEN3DRIKはクルミの粒を使った研磨を推奨している。これならば細かいところにも入っていくし、回転式タンブラーを使えば自動で研磨を行なってくれる。妙案だ。
グラファイト塗装したオブジェを金属メッキする
さて、グラファイトペイントの導電性を下げることに成功したら、ここからは電気メッキだ。必要なものは、明るい酸性の銅電解液。とりわけHEN3DRIKは市販の光沢剤入りのものを使うことを推奨している。ちなみにニッケル浴を使用した場合、密着性が悪く、すぐに割れてしまう傾向があるらしい。
その他、電気メッキを行う上では安全眼鏡、調整可能な電源、ガルバニックディグリーザー、ワニ口クリップ、手袋、銅アノードなどの保護具も必要だ。
設置は簡単、浴槽の左右に銅の陽極を取り付ける。そして、両方の陽極を電源のプラス極に接続し、オブジェクトを中央に配置する。あとは電流を4時間ほど流すのみだ。
その結果がこちら。なお今回のオブジェは映画「ロード・オブ・ザ・リング」の指輪だ。
なるほど、これは驚くべき輝き。なんでもグラファイトのコーティングは、不純物が少ないのが特徴だという。ちなみにゴールドメッキはこちら。
一見してまさか素材がレジンだとは思わせないこの光沢は魅力的だ。確かに工程は難易度が高めだが、そうであればこそ挑戦しがいがあるというものだろう。
我こそはという方、是非とも挑戦してみてほしい。