ワンコインで「うな重」が食べられる日は近い?|Umami MeatsとSteakholderが開発する3Dプリント「ウナギ」
ウナギは食いたいがお金は惜しい
ウナギが好きだ。しかし、いかんせんウナギは高い。
本来なら牛丼のような手軽さでうな重を頼みたいところだが、現状のウナギ価格を考えるとそうもいかない。さらにウナギの値段はその年の漁獲量にも大幅に左右される。ウナギの量も毎年減っており、いまや各国で絶滅危惧種にさえ区分されている。
実際のところ日本国内でのウナギの値段は過去20年で上がり続けている。総務省の小売物価統計調査によると、うなぎ蒲焼100g(東京23区)の価格は過去20年で536円(2001年)から1200円(2021年)と倍以上になっているそうだ。
とりわけ昨年は従来の2割増しの値段となっていた。ウナギ好きとしてはつらいところである。
このままウナギは値上がりを続け、庶民には手が届かない高級食材としての道をひた走っていくのだろうか。
実はそんな暗澹たる未来を回避するための技術が開発されている。バイオ3Dプリントウナギだ。
Umami MeatsとSteakholderがウナギのバイオ3Dプリントを実現
ウナギの身をバイオ3Dプリントする技術を開発したのは2020年に設立したシンガポールの企業Umami Meatsだ。同社の技術は、魚から細胞株を取り出し、独自に増殖させた上で筋肉や脂肪に変え、シーフードへと3Dプリント成形するというもの。とりわけ同社は日本人好みのシーフードに目を向けており、手がけているのは、ニホンウナギ、キハダマグロ、タイの3種だ。
現状ではまだそれらの3Dプリントシーフードは商品化されていない。しかし、先日、ディープテック食品会社Steakholder Foods (STKH) がシンガポール・イスラエル産業研究開発財団(SIIRD)からの100万ドルの助成金を獲得した。どうやらSTKHはUmami Meatsとの協力のもと、3Dプリントウナギの製品化を実現させる気らしいのだ。
Steakholderは、新しく開発された3Dバイオプリンティング技術とバイオインクを使用して、最近仮特許出願のために提出された調理済みの魚のフレーク状の食感を模倣することを約束している。プロジェクトの最初のプロトタイプでとなるのはハイブリッドのハタ製品。これは、2023年の第1四半期に完成する予定とのことだ。
このハタのプロトタイプがうまくいけば、次に待っているのは3Dプリントウナギの製品化だろうか。果たしてあのフワフワの食感をどの程度再現することができるのか、今のところ未知数ではあるが、もし本物のウナギと遜色のないバイオウナギが市場に流通しだすとすれば、牛丼価格でうな重を食べれる日が現実にやってくるかもしれない。もちろん、それはウナギの絶滅回避にもつながることだろう。
世界中のウナギ好き、そしてウナギたちのためにも、一刻も早い製品化を願うばかりだ。