NASAが月や火星のレゴリス(砂)から充電式バッテリーを3Dプリント
月や火星で採取できる原料を用いたバッテリー製造
現在、宇宙開発においても3Dプリント技術は欠かせない技術となっている。
中でも注目すべきは、月や火星におけるバッテリー製造だ。これまで宇宙開発においてはリチウム電池が主なエネルギー源となっていた。しかし、リチウムは月や火星では取ることができず、地球資源に頼らざるを得ない。今後、月や火星で長期間活動していくためには、月や火星で採取できる原料を用いたバッテリー製造が欠かせないのだ。
その上で注目されているのが、月や火星のレゴリスだ。レゴリスとは要するに地層の上層に堆積した砂のこと。月や火星の表層にはリチウムがわずかしか存在しない。一方でレゴリスにはナトリウムが豊富に含まれている。このレゴリスが含有するナトリウムによって、充電式バッテリーを3Dプリントする研究がNASAによって進められているのだ。
画像:JR Hernandez / UTEP
NASAは月や火星の資源を使用して水、燃料、その他の物資を生産し、掘削する能力を発揮できるようにする持続可能なインフラストラクチャを導入することを決意している。この研究もその一環ということだろう。
研究チームによれば、複合バッテリーコンポーネントの印刷を可能にする高解像度マルチマテリアルプリンターの開発と最適化が、月面と火星の表面で調達可能な材料から完全なバッテリー製造を可能にするために重要であることが示されている。
現地で入手可能な資源を利用した宇宙開発
ちなみに、これは一般にISRUと呼ばれている。ISRUとは《in situ resource utilization》の略で、現地で入手可能な資源を利用すること。特に将来の宇宙開発において、必要な資材をすべて地球から運ぶにはコストがかかるため、建材やエネルギー、人間の活動に不可欠な酸素や水などの資源をできる限り現地で調達することを指している。
このようにして製造されたバッテリーは、小型宇宙船、ポータブル電源デバイス、ロボット、および月と火星の生息地ミッション用の大規模電源システムでのアプリケーションに適したものになると言われている。とりわけ、現在NASAが進めているアルテミスミッションに電力を供給するのに役立つ可能性がある。
アルテミス計画とは今後10年以内に月の南極に宇宙飛行士を送り込むためのプロジェクトのこと。その一環として、NASAは3Dプリント月面基地「LINA」の建設を予定しているということは、以前、別の記事にまとめた通りだ。
3Dプリント月面基地「LINA」のデザインをNASAが発表|SF映画のような未来的デザインが話題に
https://skhonpo.com/blogs/blog/3dlinalina?_pos=1&_sid=c9d2ecef1&_ss=r&fpc=2.1.365.596066bca8c8032d.1688992280000&fpc=1.1.365.603df34d3718608N.1708441832846
なお、研究チームはこれらの技術を用いて、地球上で使用できる形状適合型バッテリーの開発にも力を入れている。たとえば、これらのバッテリーを3Dプリントされたコンクリートの壁に埋め込んで太陽光発電に接続し、発展途上国の災害対応用のコンパクトで自立的な家を作ることなどが目指されている。
3Dプリント技術を用いたバッテリー製造の今後に期待したい。