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スイス企業Holcimが提示する最先端の3Dプリント「橋」、一方で囁かれるグリーンウォッシングの疑い
3Dプリント技術がコンクリート製造を合理化する 3Dプリンター建築において、早くから注目を浴びていたのは橋だ。2019にも一度取り上げたことがある。当時はオランダで世界最長のコンクリート3Dプリンター橋が誕生し、大きく話題となっていた。それを製作したのはオランダのデザイナーであるミシェル・ヴァン・デル・クレイとアイントホーフェン工科大学。国家的なプロジェクトとして行われたそれは、当時で世界最長となる全長28mの3Dプリントコンクリート橋を完成させることとなった。 ただ、実はその以前から3Dプリントされたコンクリート橋をめぐって各国が競い合うように建設を行ってきた。実際、同年の1月には上海でもその当時で最長の3Dプリント橋が建設され話題になったばかりだった。なぜ3Dプリント橋が注目を浴びるのか、そこには理由がある。それは橋の建築に欠かせないコンクリートの成形の上で必要なプロセスとコストが、3Dプリンターによって大幅にカットされるからだ。従来、コンクリートの成形のためには、まず金型の製作がなされる必要があった。液体を固めるには何か形を決める型が必要だ。身近な例でいうと、氷を作る時に使用する型などもそうだ。しかし、3Dプリンターによって堆積による成型が可能になったことで、その金型なしでもコンクリートを成型することができるようになった。つまり、単純に考えてもこれまで必要だった金型の作成という手順が省略され、作業工程が半分になったのだ。さらに、金型を経由しないことで、コンクリート構造体により多くの完成自由度がもたらされることになったらしく、今までは金型の特性上、技術的に難しかったような形状のコンクリートも、この方法によって作れることになったのだ。 また、3Dプリント技術によってコンクリート製造時に排出されるCO2量も大幅に削減できることがわかっている。もともと土木建築分野においてコンクリートの製造によるCO2の排出は、全体の4分の1を占めていたなど、問題視されていいた。これが3Dプリント技術を通じたイノベーションによって改善されるということで、エコの時代の価値観にフィットしたのも大きい。こうした背景から、3Dプリントとコンクリートの関係には大きな注目が寄せられていた。とはいえ、大規模な建造物を建てることはそう容易いことではない。そこで3Dプリントコンクリート建築がどんなものなのか試す、ある種の試金石として「橋」に注目が集まったというわけだ。 分解と再組み立てが可能なHolcimの「ストリアトゥス」 さて、では最近の3Dプリント橋の事例はどんなものがあるのだろう。たとえばスイスの企業Holcim Groupは今年、イタリアのベニスで、ロボットアームで印刷した非常に面白い造形の橋を発表して話題となった。その名も「ストリアトゥス」。緑豊かな環境に違和感のない有機的なデザインが特徴的だ。こちらはコンクリートの53個の中空ブロックからなる。つまり、ブロックにしたことで、分解、再組み立て、リサイクルが可能なのだという。 HolcimのCEOであるJanJenisch氏によると、「3Dコンクリート印刷は、美観やパフォーマンスを損なうことなく、材料の最大70%を削減できます」。実に素晴らしい取り組みだ。特に分解が可能であることは大きい。自然災害が多発する今日、より頑丈で、耐久性のある建築というアイディア自体に疑問符がつき始めている。つまり、自然の猛威を前にした時、重要なのは頑丈さよりも柔軟さかもしれない、と考えられ始めているのだ。 たとえば日本は昔、多くの橋が吊り橋であり、それは石橋と比較して脆くもあった。地震大国であり、台風なども多発する日本列島においては、頑丈で壊れにくい橋よりも、もし壊れてもすぐに作り直せるということの方が、理にかなっていたのかもしれない。自然に抗うのではなく、自然に寄り添うこと。あるいは現在、そうした日本的な知恵が3Dプリンティング技術と共に再評価されつつあるということだろうか。いずれにせよ、Holcimの「ストリアトゥス」の試みは、今日の気候変動に対応する、実に興味深いものであることは間違いないだろう。 SDGsとグリーンウォッシング...
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MeaTechが手がける「肉の農園」とは? 牛、鶏、豚、3Dバイオプリントミートの最前線
食肉3Dバイオプリントを牽引するMeaTech 3Dバイオプリントによるオルトミートの製造に関してはこれまで幾度も取り上げてきた。これまで紹介してきたものの多くは牛の赤身肉の培養だった。最近では日本の研究チームがサシの入った牛肉を3Dプリントして話題になっている。 牛肉は「育てるもの」から「モデリングするもの」に!? 「サシ」まで調整可能な日本発の先端3Dプリントミート https://skhonpo.com/blogs/blog/sashibeef しかし、肉といえば牛ばかりではない。筆者が日常で最も食するのは鶏肉だ。そんな中、来年に向けて養鶏樹脂生産を拡大すると発表している企業がある。MeaTechだ。創業からわずか2年のイスラエルのこの会社は、バイオプリンティングミートの技術開発を行い、すでにナスダック取引所の上場企業となっているのだ。 鶏肉、そして豚肉もバイオプリントの対象に MeaTechの展望は大きい。現在の3Dバイオプリント技術を改善し、さらに肉のサプライチェーンを簡素化、これによって消費者に様々な新製品を提供することだ。その上では、当然、肉の種類の拡充が求められる。 創業からわずか2年のMeaTechは、バイオプリンティングミートの技術開発を行い、すでにナスダック取引所の上場企業となっている(画像引用:MeaTech) 今後、養鶏樹脂技術を活用することで、MeaTechは鶏の胸肉などの本物の肉の切り身を生産していく予定だという。鶏肉好きとしては是非味見をしたいところだ。さらにそれだけではない。MeaTechはもう一つのMeat、そう豚肉のバイオプリンティングのための研究開発活動も意欲的に拡大している。豚肉は世界中で最も消費されている肉であり、この開発に成功した暁には、MeaTechの生産事業は飛躍的に成長することだろう。MeaTechの事業開発責任者は、2050年には現在の2倍になると予想される食肉消費需要を満たすためには、今後30年間で、人類のこれまでの歴史で生産された総量よりも多くの食料を育てる必要があると述べている。しかし、当然、通常の生産方法では不可能だ。仮に可能だとしても、地球環境がそれを許さない。そこで求められているのが細胞農業技術なのだ。 あたかも「肉の農園」? 細胞農業技術とは何か 細胞農業技術とはなんだろうか。これは端的にいうと、実験室で細胞を成長させることだ。科学者は動物に害を与えることなく臍帯のサンプルを収集、そこから細胞を採取し、バイオリアクターに入れて増殖させる、そこから細胞株をバイオインクに変換した上で3Dバイオプリンターにロード。これによって細胞が組み立てられ、さらにそれらを成熟させ、組織を形成し、肉の切り身を生み出していく。 ...
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歴史的彫刻の超精巧3Dスキャンデータのコレクションが話題に。「3Dスキャンは文化遺産を世界と共有するための優れた方法です」
自分だけの美術館を3Dプリンターで 「3Dスキャンは、文化遺産を世界と共有するための優れた方法です」そう語るのは、SketchFabの人気作家、ジェフリー・マーシャルだ。彼は美術史に残る重要な彫刻を3Dスキャンし、3Dプリント用にレンダリングした極めて精度の高い彫像のデータを提供している。たとえば、以下のデータをご覧いただきたい。これは古代エジプトで用いられていた葬儀用マスクだ。 Funerary mask by Geoffrey Marchal on Sketchfab SketchFabとは現在とても勢いのある3Dデータ共有サイトだ。最近、あるSketchfabユーザー(@leinadien)が、美術史全体で3D印刷用にレンダリングされた素晴らしい彫像のコレクションを作成し、話題となった。上述のジェフリー・マーシャルもそのコレクションされたデータ作成者の一人だ。 Eirene with Ploutus by Geoffrey Marchal on Sketchfab 「GreatStatues」コレクションのモデルの多くは無料でダウンロードできる。つまり、これは「あなた自身のためのミニ博物館」を今すぐ作ることができることを意味している。すでに800ファボを獲得し、Sketchfab内のちょっとしたバズコンテンツになっているのだ。集められた3Dスキャンデータはいずれも超精巧。中にはダウンロードのために20ドル程度の価格が必要なものもあるが、これだけの精度のミニチュア彫刻を実際に購入しようと思えば、安くてもその6~7倍の値段はするだろう。実際に「Greatstatues」コレクションを覗いてみると、それだけで美術館に足を運んだような気持ちにさせられる。360度、遠近法も自由に鑑賞できるというのは、もしかすると美術館での鑑賞よりも快適かもしれない。何より、これらのデータを自分の家で3D出力できるというのだから胸が躍る。以下に筆者が気になった3Dデータをいくつかピックアップしてみた。是非皆さんも気になったものを出力してみて欲しい。 Fontana dei Quattro Fiumi (Detail)...
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これまでの3Dプリンティングの常識を覆す超高速造形3Dプリンター「LAKE」とは?
「LAKE」はこれまでにない速度で一度に大量の材料を硬化する 現在、ある光造形3Dプリンターがこれまでの3Dプリンティングの常識を覆すと話題になっている。米国ノースウェスタン大学のスピンアウト企業Azul 3D社が開発した「LAKE」だ。 この「LAKE」は、これまでにない速度で一度に大量の材料を硬化させることが可能であるとされている。早速、こちらの動画をご覧いただきたい。 ご覧いただいたように、その速度は目をみはるばかりだ。これはLAKEに搭載された通称HARPと呼ばれる技術のデモ映像だ。なんでもHARPとはLEDライトエンジンを用いて一度に大量の材料を硬化するDLPシステムであり、それによって従来のDLP方式の3Dプリンターよりもはるかに大きな部品を、はるかに高い速度で生産できるのだという。 このHARPという技術が最初に発表された時は従来のDLPの20倍のサイズの部品を100倍の速度で製造できるということが大きく話題となった。それに比較すると、今回、発売が決まったLAKEの能力はやや控えめなようだ。一度に16000万個の別々のピクセルに光を照射することが可能であり、速度は格段に上昇しているが、HARPの本領発揮にはまだ至っていない。おそらくは「さしあたっての第一段階」ということなのだろう。 実際、Azul3Dの創設者であるチャド・マーキンは「LAKEプリンターは3Dプリンティングにとって画期的なものとなるだろう」という言葉に付け加えるように次のように述べている。 「これはほんの始まりに過ぎません」 ちなみに、チャド・マーキンという人物は3Dプリンターの進歩史において非常に重要な人物でもある。マーキンのこれまでについては以下の記事をご参照いただきたい。 デシモンとマーキンの友情〜3Dプリント技術の最先端をめぐり争う二人の天才〜 https://skhonpo.com/blogs/blog/friendship LAKEはAzul3Dが今後数年間に発表する予定の一連の3Dプリンターの最初の一機。予約はすでに始まっており納品は2022年になるとのこと。そして、すでにLAKEの次世代プリンターとして「SEA」のリリースも決まっている。そちらは2022年の第4期に予約を開始する予定だとか。どうやらAzul3Dの3Dプリント革新は始まったばかりのようだ。
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米国が3Dプリントワクチンパッチを開発|mRNAワクチンパッチの商用化研究も進み、免疫応答は最大50倍とも
注射針嫌いでも接種しやすいワクチン 現在、COVID-19のワクチン接種が世界各国で進められている。日本も今では50%以上が2度の接種を終えており、すでに先行接種していた米国の接種率を上回ったことが大きく報道されていた。今回ここではワクチンの効果や今後の運用などについての話をしたいわけではない。その代わり、ワクチン接種に関して、多くの人が感じているだろう、ある思いにフォーカスしてみたい。それは他でもない「注射が嫌だ」という、誰しもが一度は抱いたことがあるあの感情だ。実際、インフルエンザにせよ、コロナにせよ、実はワクチン打ちたいけど注射が嫌すぎて躊躇している、という方も少なからずいると思う。中には先端恐怖症で、細い針先を向けられただけでパニックに陥ってしまう、という方もいるだろう。これは何も日本だけの話ではない。注射針に対する苦手意識は万国共通のものであり、だからこそ長年、ある研究が進められてきた。そう、ワクチンパッチの開発である。そして、まさに2021年9月27日、米国の研究チームが新型コロナウイルスのワクチンパッチを開発したというのだ。 ワクチンパッチとマイクロニードル そもそもワクチンパッチとは何か。その言葉の通り、パッチを皮膚に貼ることによって、皮膚の内側へと吸収されるタイプのワクチンのことだ。もとより、これは経皮吸収治療システムとして、皮膚に貼る薬物投与法として開発されたものだ。内服薬のように消化器官や肝臓などに負担をかけず、注射剤のように針の侵入に伴う痛みがなく薬剤を投与できることから、患者の不安や負担を和らげることができるとされてきた。構造としては、一般にマイクロニードル法という方法が用いられる。長さが数百ミクロンの微細針の表面または内部に薬剤を含有させて皮膚に刺し、薬剤が皮膚中で溶解することにより、薬剤が体内に導入されるという形だ。この技術がワクチンに転用されたのがワクチンパッチである。そして何を隠そう、次いつはこのワクチンパッチの製造にも3Dプリンターが大きく役立てられているのだ。 新型コロナウイルスのワクチンパッチ 先に触れたように、9月27日、米国において新型コロナウイルスのワクチンパッチが開発されたとの報が届いた。 画像:ノースカロライナ大学チャペルヒル校 開発したのは米ノースカロライナ大学とスタンフォード大学の共同研究チーム。研究チームによれば、今回開発されたのは新型コロナやインフルエンザ、さらには肝炎などの様々なワクチンに合わせてカスタマイズできるマイクロニードルパッチ。そのマイクロニードルパッチの製造技術が、外でもない3Dプリント技術なのだ。研究チームが使用したのは、CLIP印刷と呼ばれるテクノロジー。これは迅速なエンジニアリンググレードの部品出力の可能にする独自形式のデジタル光処理3Dプリント技術だ。 画像:ノースカロライナ大学チャペルヒル校 ところで、3Dプリントワクチンにはどのようなメリットがあるのだろう。まず、これによってワクチン注射の場合に必要とされた、膨大な管理コストが低減されることになるという。注射器の場合、注射前に冷蔵庫や冷凍庫からワクチン採取を行う必要があり、訓練を受けた専門家がその管理に当たっていた。しかし、ワクチンパッチの場合は特別な取り扱いを必要とせず、自己管理が可能らしい。そして、もう一つ、経皮吸収治療システムがそうであったように、患者の心身への負担の低減もあげられる。注射嫌いのためにワクチンを忌避していた方にとっては、ワクチンパッチの導入は接種のきっかけになる可能性もある。実際に、針に比べても痛みがないといわれ、さらには自己投与だってできるという。病院や接種会場まで行くのが億劫という方にとっても、これならば郵送などで行える可能性だってあるかもしれない。 注射針に比較して最大50倍の免疫応答 さらにもうひとつ驚くべきことがある。ワクチンパッチの効果だ。なんでもワクチンパッチでのワクチン投与は従来の注射針の投与と比較して最大50倍の免疫応答を引き起こすことができるという。つまり、効果も覿面なのだ。これにより従来のワクチンよりも少ない容量を適用することが可能になるかもしれないとさえ言われている。研究チームいわく「この技術の開発において、私たちは、痛みや不安のない方法で、低用量で、ワクチンのさらに迅速な世界的開発の基盤を築くことを望んでいます」とのこと。現在、研究チームはファイザーやモデルナのようなmRNAワクチンをワクチンチップにするための商用化研究に入っているとのこと。各国でブースター接種の検討が進められている中、追加接種にこの3Dプリントワクチンパッチが使用される日はそう遠くないかもしれない。
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3Dプリント「やきとり」屋さんが実現する? コロンビア大学が開発した成形と加熱を同時に行う3Dフードプリンター
成形と加熱を同時に行う3Dフードプリンター 最近、近年の3Dフードプリンターについて紹介する記事をいくつか書いたところだった。 普通の3Dプリンターにあるキットを接続するだけでフードプリンターに変身!? Cakewalk3Dの斬新な試み https://skhonpo.com/blogs/blog/cake3d 「あ、ちょっと待ってね、今お菓子を出力するから」近未来のティータイムを現実にする東大研究チームの最新技術「magashi」 https://skhonpo.com/blogs/blog/magashi 3Dフードプリンターは、他の3Dプリンターと比較した際、まだ技術的に黎明期の段階にある。すでに様々な挑戦がなされ、それぞれお面白い展開を見せてこそいるものの、現状においては多様なニーズに応えきることができる段階にはない、というのがそれらの記事の要点だった。しかし、この記事を発表して数日、ツイッター上であるツイートが話題になっていた。 鶏肉の印刷とレーザーによる十分な加熱調理を同時に行う3Dプリンターが開発されたよ!オーブン焼きより水分が残ってしっとりと美味しいよ!リプで解説するね!Jonathan David Blutinger et al. "Precision cooking for printed foods via multiwavelength lasers". npj. Sci. Food., 2021;...
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頭部が結合された双子の命を救う画期的な分離手術を3Dプリント技術がサポート
結合双生児の分離手術 かつて日本でも有名だった双子がいる。「ベトちゃんドクちゃん」。そう呼ばれたベトナム生まれの二人の子供たちの下半身は繋がっていた。彼らは結合双生児と呼ばれている。およそ5万〜20万出生あたり1組程度の割合で発生すると言われる、体の一部が結合して生まれてくる双生児のことだ。彼らの存在が話題となったのは80年代。ベトナムには長く続いたベトナム戦争の傷跡がまだ生々しく残されていた頃であり、ベトちゃんドクちゃんもまた、米軍がベトナム戦争時に大量にベトナムに散布した枯葉剤の被害の可能性があるとも言われた。日本でも数多くのメディアで紹介され、様々な支援が二人に寄せられた。ベトちゃんドクちゃんの二人はやがて分離された。きっかけはベトちゃんが意識不明の重体となり、このままだと2人とも死亡してしまう危険があるとされたことだ。この際の手術には日本から医師団が派遣され、ホーチミンにて17時間に及ぶ大手術が行われた。結果、二人は無事に分離され(足は一本ずつ残された)、ベトちゃんは重い脳障害が残り寝たきりの状態が続いたものの、ドクちゃんはその後、社会生活を取り戻し、2006年には結婚も果たしている。 こうした結合双生児たちの存在は、私たちにとって良くも悪しくも大変興味をそそる存在だ。それぞれが単独の個人であるということが前提とされた社会で、彼らは個人と呼ぶにはあまりに単独性がない。一心同体という日本語があるが、彼らはさしずめ二心同体、果たしてその暮らしがどのようなものなのかは、いつだって多くの人々の関心を集めてきた。たとえば、アビゲイルとブリタニーの姉妹もそんな一組。1990年生まれの二人は、米国のテレビ番組『アビーとブリタニー』によって広く知られている。現在、二人は二人で一組として小学校教師と働いており、今に至るまで分離手術は行われていない。カメラに映る二人は実に生き生きとしているが、彼女たちの生は健常者にとって時にファンタジーを掻き立てるものでもあるのだ。 現在、結合双生児の分離手術は極めて難度の高い外科手術のひとつだ。時として手術によって、二人のうちの片方が亡くなってしまうようなこともあり、その施術においては細心を要する。とりわけ頭部が繋がった結合双生児の分離手術は困難だと言われ、前例も世界で20件ほどと少ない。しかし一方で頭部結合の双生児は延命率自体が低く、両親は究極の選択を迫られざるを得ない状況がある。もちろん、結合双生児だからと言って必ずしも分離しなければならないということではない。本人たちがそれを望まないケースも多く、結合された生は一つの生のあり方として捉えられて然るべきだ。ただ、今書いたように、結合しているがゆえのリスクが生じてしまうケースもある。分離手術の技術的向上は、その上でも極めて重要なテーマなのだ。 難易度の高い分離手術を3Dプリンターがサポート そんな中、イスラエルのソロカ大学医療センターのチームが国内で初めてとなる頭部結合双生児の分離手術を成功させたという報が届いた。対象となったのは現在1歳の結合性双生児。二人の頭部は頭蓋骨ごと繋がっているため、その手術は難度を極めるものだった。まず医師が手がけたのは二人の頭部の皮膚を成長させることだった。双子の頭皮と頭蓋骨の間の双子の頭の隣接する部分に膨張可能なシリコンバッグを挿入し、それらの上で皮膚を成長させたのだ。十分に皮膚が成長した段階でようやく手術の準備が整う。しかし、この手術は12時間に及ぶ大手術が予定されていた。加えて先例の少ない、極めて高い技術が求められる手術だ。医師たちにかかるプレッシャーも尋常ではなかった。その際に活躍したのが3Dプリンターだった。3Dプリンター企業最大手のストラタシスと医療機器スタートアップの3D4OPが、双子の頭部の3Dモデルと、仮想現実における手術の練習環境を提供したのだ。 Photo/Soroka-University Medical Center. 重要なポイントは二人が血管構造を共有しているところだ。繋がった血管構造を分離することは簡単ではない。医師たちは双子が生まれてからの一年、両親の協力、3Dプリンターによる技術支援を得ながら、手術の準備を進めた。解剖学的組織まで模倣された3Dモデルによって外科医たちは実際の分離がどのように実行されるかをあらかじめ視覚化することができた。血管手術はともすれば赤子たちに壊滅的な結果を引き起こす可能性がある。しかし、事前の練習によって、外科医たちは本番に自信をもって臨むことができた。 Photo/Soroka-University Medical Center. 果たして9月上旬、手術は行われた。結果は成功。赤子はともに意識もあり、神経も無傷のままだ。 これまで後頭部が結合していた赤子たちは、術後、初めて兄弟の顔を見た。9月5日は、二人にとって2つめの誕生日となったのだ。 ...
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3Dプリンターでウイルスを出力する時代に!? 癌細胞を攻撃する改造ヘルペスウイルス
人口ウイルスが癌細胞と戦う 現在、新型コロナウイルスがなおも世界を席巻し続けている。人類はウイルスの脅威をあらためて思い知り、実際にその健康が著しく阻害されてしまっているわけだが、その一方で、今日、ウイルスが人類の健康を大きく改善する可能性が拓かれつつある、と書いたら驚くだろうか。実際、ウイルスは時として「薬」にもなる。たとえば、癌治療の分野において、2021年5月、厚生労働省がある治療薬を承認して話題になった。その治療薬とは第一三共が開発した「デリタクト(テセルパツレブ)」。これは、遺伝子組み換え技術を使用してつくったウイルスを腫瘍に投与することによって癌細胞を攻撃するという仕組みだ。 画像引用:『がんプラス』 こうしたウイルスを用いた癌治療の方法は一般に「癌ウイルス療法」と呼ばれている。癌細胞だけで増えることができるように改変されたウイルスを癌細胞に感染させ、ウイルスが増殖する過程で癌細胞を死滅させるという療法だ。増殖したウイルスはさらに周囲に散らばることで、再び癌細胞に感染し、増殖と破壊を繰り返すことで癌細胞を攻撃していく。正常な細胞では増殖することができないように改変されているため、正常細胞が傷つくことはないとされている。人間にとって脅威となるウイルスを飼いならし、改変を加えることで、悪性細胞と戦う兵隊へと作り変える、なんて聞くと、どこかSF映画のような感じがしなくもない。だが、実際に治験では高い効果をあげているという。構想自体は20年以上前からあったようで、その後、多くの実験が重ねられることで、今年、初の実用化へと舵が取られたというわけだ。 使用されているのは遺伝子組み換え単純ヘルペスウイルスI型G47Δ。東京大学医科学研究所のHPによれば「近い将来悪性神経膠腫の治療の重要な一翼を担う」とされている。 3Dプリンターが出力する腫瘍溶解性ウイルス 実は、この癌ウイルス療法のウイルスの作成にあたって活躍しているのがバイオ3Dプリンターなのだ。もともと、2014年の段階で「癌の治療に有効なウイルス」をDNAの3Dプリンティングで作製する技術を実現できるだろうということは言われていた。当時、CAD製品で知られるAutodesk社が運営していた「生命科学ラボ」はDNAの3Dプリンティングによるウイルスの作製にすでに成功しており、ラボ代表のアンドリュー・ヘッセル氏は「次は、デザインを変更して、癌を抑えるウイルスの作製に着手すればいいだけだ」と息巻いていた。 あれから4年、実際に「癌の治療に有効なウイルス」の3Dプリンティングは行われている。たとえば、ニューヨークの企業HumaneGenomicsは、2021年のはじめに125,000ドルの予算を調達、現在、腫瘍溶解性ウイルスの製造プラットフォームの構築を目指しているという。現在、同社は、骨がん、肝臓がん、小細胞肺がん、および膠芽腫と呼ばれる脳腫瘍の一種を治療することを目指している。これらの癌は現状で優れた治療法がないため、その実用化が強く期待されている。 HumaneGenomics社の腫瘍溶解性ウイルス これまで3Dプリンターはあらゆるものを出力してきたが、ついにウイルスまで出力するとはなんともすごい時代になったものだ。ウイルス史は人類史よりもはるかに長い。地球とは「ウイルスプラネット」であると考える人もいる。ウイルスをただ敵視するのではなく、ウイルスと協働する方法を探るテクノロジーの発展に期待したい。
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人間の細胞サイズの極小物でも造形できる最新3Dプリンターがスイスから登場
極小を切り拓く3Dプリンティング技術 以前、3Dプリンターを用いた極小アートの世界を紹介した。 https://skhonpo.com/blogs/blog/nano3dart たとえば実寸比1/52万というサイズで出力した超極小の「戦艦大和」が大きく話題になったこともあるように、手作業で作り出すことは完全に不可能なこうしたマイクロプリントは、3Dプリンターに今後期待されている特殊技能の一つなのだ。 これが…コレ‼️👀#ナノ3Dプリンタ で印刷した #戦艦大和 ⚓️✨ pic.twitter.com/gxMpwsTHPx — キャステム京都LiQ【公式】Youtube始めました! (@castem_liq) September 25, 2020 そんな中、わずか数マイクロメートルの構造をプリントできる3Dプリンターが、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)で開発されたというニュースが届いた。研究者らが開発したのは、溶融エレクトロライティングという方式を用いた3Dプリンター。この3Dプリンターを用いれば、なんと直径1~10マイクロメートルの構造を造形できるという。これは従来のフィラメント3Dプリンターの限界だった100マイクロメートルよりもはるかに小さいものだ。なんでも極小のナノファイバーなどの製造に使われている溶融エレクトロスピニング法という技術を応用したものとのことだ。 マイクロメートルと聞いてもピンと来ないかもしれない。1マイクロメートルとはつまり0.001ミリメートルのこと。分かりやすいところでは我々の身体を構成するヒト細胞の大きさがそれぞれ直径5〜20マイクロメートルと言われている。あのミジンコですら1.5mm、つまりはミジンコの1/1000サイズのものを造形できるというのだから、これはすごいことだろう。 さらに注目すべきはその速度だ。今回開発された3Dプリンターを用いれば20×20mmの構造を2分ほどで造形できるという。いわく「コーヒーを飲み終わるまでには完了する」とのこと。素材もプラスチックに限らない多くの材料を用いることが可能とのことで、特に生物学分野での使用の可能性が期待されている。 ...
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「あ、ちょっと待ってね、今お菓子を出力するから」近未来のティータイムを現実にする東大研究チームの最新技術「magashi」
平面状の出力物を焼くと…… 前回、3Dフードプリンターについて書いたばかりだが、今回、それに関して新たなニュースが届いた。東京大学が開発したある最新技術についてだ。その名は「magashi: Fabrication of Shape-Changing Edible Structures by Extrusion-Based Printing and Baking」。なんでも3Dプリンターで印刷した平面状の食材を、熱を加える(焼く)ことによって立体物へと変形させる技術らしい。 画像:Material Experience Design | Yasuaki Kakehi Laboratory, The University of Tokyo 写真のサンプルは「もなか」だ。プリントしたのはもなかの皮にあたる。これを焼いたものにあんこを入れれば、ちょっとした茶菓子が出来上がるということだ。通常、3Dフードプリントは積層方式で出力されるものが一般的だ。しかし、今回は平面素材を事後的に変形させるという手法をとることで、通常の積層方式では不可能な立体物の作成が可能になったらしい。 ...
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海藻由来のバイオインクが3Dプリント業界を一新する!? 市販製品も開発中
3Dプリントの原材料をサステナブルに 環境の時代において3Dプリンターはサステナブルな技術として注目を集めている一方、やはりプラスチックへの依存度の高さにおいて、懸念が示されてもいる。もちろんプラスチックそのものが「悪」ではない。問題なのはプラスチック製品の大量生産大量消費のための石油資源の乱費、そして製品の大量廃棄によるプラゴミ問題であり、そうした「無駄」を省く上では3Dプリンターの普及はむしろプラスチックをめぐる環境政治においてポジティブな効果をもたらすことだろう。ただ、一方でプラスチック以外の原材料の開発もまた期待されている。プロセスをより持続可能にしていくことは、3Dプリント技術においても重要な関心事項だ。その中で現在、人気が高まってきているのがバイオインクと呼ばれる生物由来のインクである。これを現在のプラスチック中心の原料の代替品にしていけるのではないかと考える研究者も多く、それは注目に値することだと思う。今最も注目すべきバイオインクは、米国エネルギー省のパシフィックノースウェスト国立研究所の研究チームによって開発されている。このバイオインクは藻類に含まれる化合物を雲母色素と組み合わせることで、作られる。非常にエコな素材であり、またオーガニックでもある。環境意識の高いアーティストやデザイナー、メーカーにとっては、是非ともその普及が待たれるところだろう。 Image courtesy of ACS Omega. なんでも従来の熱可塑性プラスチックとは異なり、これらのバイオインクは熱処理の必要がないという。バイオインクは生分解してしまうため、そこが難点とされてきたが、研究チームはこれを利点とみなした。バイオインクで印刷された出力物は塩化カルシウム溶液で保存が可能であり、そのオブジェクトが不要になれば、廃棄物を残すことなく自然分解することができる。 Image courtesy of ACS Omega. 研究チームによれば、バイオインクは2Dインクとしても使うことができるらしい。フルカラーにも対応しているため、汎用性は高い。顔料にはマイカ顔料が使われている。いずれも鮮やかで、アーティスティックな用途にも応じることができそうだ。また医療用3Dプリンターの素材としてもバイオインクが注目されている。たとえば植皮や傷を覆う創傷被覆材だ。アオサ由来のバイオインクは、生体構造をサポートし、治癒過程に分子レベルで作用するという説もある。傷が傷跡になることを防いでくれるかもしれないのだ。 Image courtesy of ACS Omega. 今後の数年間でこうしたバイオインクが非常に重要な存在になってくる可能性があると専門家は指摘している。まだ研究段階だが、一般向けの商品開発も始まっており、もしそれらが安価でマーケットに登場した場合、3Dプリント界に激震が走ることは間違いない。もちろん本体となるプリンターだって変容を迫られる。まだまだ乱世が続きそうだ。
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普通の3Dプリンターにあるキットを接続するだけでフードプリンターに変身!? Cakewalk3Dの斬新な試み
「3Dプリントを民主化する」 待望されながらもなかなか技術的進展が少ないフード3Dプリント業界。最近では食といえばバイオ3Dプリンターで造形したオルトミートばかりが話題だ。とはいえ、3Dプリントクッキングの技術も少しずつ進んでいってはいる。たとえば、3Dプリンター企業Sculpteoの元ディレクターが設立したプロジェクトCakewalk3D。その名の通り、これはケーキの出力を目的とした3Dプリント技術を提供するプロジェクトだ。 Cakewalk3Dの面白いところは、一般的な3Dプリンターを利用する点にある。市販の多くの一般的な3Dプリンターに直接適合する食品用の押し出し機を提供することで、自宅のプリンターからチョコクリームやメレンゲを印刷してくれるという。食品3Dプリンターは現状で専門性が高く、一般にはほぼ普及していない。その点、Cakewalk3Dはあくまで一般使用目的。プロジェクトの設立動機も「3Dプリントを民主化する」というもので、一般家庭での使用が目指されている。 Kickstarterから始まったこのプロジェクトだが、どうやらすでに接続キットは販売されているらしい。値段も145€と安価。なお、兌換性のある3Dプリンターのリストは以下のリンク先で公開されている(これが全てというわけではなく現状で確認が取れている機種のリストということらしい)。残念ながら構造上、光造形には対応してない。このキットはFDM方式の3Dプリンターに限られているようだ。 https://www.lapatisserienumerique.com/fr/cakewalk-3d/cakewalk-3d-liste-des-imprimantes-3d-compatibles/ さて、実際の使用感としてはどうだろうか。youtube上にキットの組み立てから使用までの流れを紹介している動画があったので見てみたい。 組み立て自体は難しくなさそうだ。そして実際のケーキの印刷に関しては、なるほど、デコレーションには使えそうだ。とはいえ、まださほど複雑なレベルとは言えない。現状ではお遊び感覚でケーキ作りの一部に採用できるかなという感じ。いずれにせよ、プロトタイプ感はある。ただ、一般の3Dプリンターがキットを接続するだけで食品3Dプリンターに早変わりするのは新鮮だった。今後の発展可能性を考えれば、十分に意欲的な試みだと言えそうだ。 3Dフードプリンターはこれからが本番? もちろん、3Dプリント食品はこれだけではない。以前も紹介したことがあるが、2015年には3Dプリントピザの自販機が実際に始まっている。また、現状ではレストラン向けにだがフード3Dプリンターも出回り始めている。ただ、実際に食材を調理するのではなく、複雑な形状を設計するためや、Cakewalk3Dと同様にムース状のものをデコレーションするために用いるのが一般的なようだ。たとえばプロフェッショナル向けのフード3Dプリンターとして知られるFoodiniは、5つの異なるカートリッジを同時に使用して、ゼリーからハンバーグまで、あらゆる材料の処理が可能となっている。価格は4000ドルほどなので、一般人でも手の届く範囲だ。 あるいはPancakeBotのようなパンケーキ専用3Dプリンターなどはあるが、これもまたホットプレート上に直接バッターを押し出すまでであって、ゼロから完成までを成し遂げてくれるわけではない。ただ、形状で遊べるのは、ちょっと楽しいかもしれない。 このように、2021年現在においては、3Dフードプリンターはまだ決して汎用性が高いと言える段階にはない。技術的には黎明期といったところだろう。食材のカットや焼く煮る炒めるなどの工程は、基本的な3Dプリント技術とは相性が悪い。もっともイメージとして近いのは、以前にも消化した明治大学開発のFunctgraphだろうか。 ...
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動物を安楽死から救い出す3Dプリンター|義肢から義甲羅、呼吸装置まで
嘴、甲羅、尻尾、足…、動物の欠損した部位を3Dプリンターが補填する 医療における3Dプリント技術の活用についてはこれまでも様々に報告してきたが、これは獣医学においても同様だ。とりわけ注目すべきは身体に障害を負った動物のための3Dプリント補填物だろう。事故、病気、様々な事情により手足を失ってしまい、適切な動性を失ってしまった動物に対して、これまで多くの場合、安楽死という手法が取られてきた。これは動物整形外科医が世界的に見ても圧倒的に少なく、その他に道がなかったからだ。しかし現在、3Dプリント技術がその状況を変えようとしている。たとえば、クチバシを損傷したワシ。自分ではもはや食事をすることが不可能となっていたワシに3Dプリントされたクチバシを補填するという事例があった。現在、そのワシは再び野生に住んでいるという。もちろん、ワシだけではなく、タカやオオハシなどのクチバシをプリントした実例もある。 あるいは甲羅を失った亀にデスクトップ3Dプリンターで出力した新しい甲羅を付与するようなケース、さらにはワニが3Dシリコンの尾を手にいれるという事例もあった。 しかし、最も一般的なところでは義足だろう。最近ではネブラスカ大学のチームが、調整可能、取り外し可能、毒性がなく、コストのかからない動物の3Dプリント義肢のプロトタイプを発表して話題となった。 画像:ネブラスカ大学 この画像の義足、なんとわずか10ドルで製造できるという。これはオリーブという片足を失った猫のために作られたモデルで、実際にオリーブに装着したところ、まもなく新しい足に順応し、棚から飛び降りたり飛び乗ったりを始めたそうだ。 画像:ネブラスカ大学 もちろん猫ばかりではない。犬や馬、さらには象まで、あらゆる動物用に3Dプリント義肢が製造されている。いまや3Dプリント技術は動物医療に欠かせない存在となっているのだ。 DiveDesignとBionicPetsの挑戦 たとえば3Dプリント義肢の製造で知られるDiveDesignとBioniicPetsは設立以来、25000匹を超える動物を支援してきた。元々、BionicPetsは手作業により義肢を製造していた。工程は非常に時間がかかるものであり、それゆえ需要の全てを満たすことができずにいたらしい。その後、DiveDesignと出会ったことにより3Dプリント技術を導入、それによってわずか4つのステップで構成される新しい義肢製造プロセスを考案したそうだ。 画像提供:BionicPets 現在、DiveDesignとBionicPetsはあらゆる動物の義肢装具を迅速に製造する世界でも最高の企業となった。なんでも最近ではアヒルの義足の製造を引き受けたのだとか。なんにせよ、一匹でも多くの動物が殺処分を免れ、3Dプリント技術の助けを借りて命を全うできるなら素晴らしいことだ。今年の8月にはアメリカはミズーリ州の獣医と学生が、気管切開を受けた馬の呼吸装置を設計、3Dプリントしたというニュースもあった。これにいより馬は呼吸困難から救われ、気道閉塞を回避できたという。このプロジェクトを主導していた獣医は「このプロジェクトは、各動物用のカスタムデバイスが前進する方法であることを示したと思う」と述べている。 ...
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限定予約販売中のElegoo Mars 3を大手メディアが徹底レビュー! その評価のほどは?
大注目の「Elegoo Mars 3」、その真価はいかに? 現在、SK本舗で限定予約販売中のElegoo Marsの新バージョン「Elegoo Mars 3」。 果たして「3」へと進化したことで、どのようなアップデートを遂げたのだろうか。 折しも、3Dプリンターの世界的メディア「ALL 3DP」が「Elegoo Mars 3」のレビュー記事を出していた。果たして、その評価のほどはどうだろうか。まず今回のアップデートについて基本的なところをおさえておこう。「3」では、より広くなった設置スペース、35ミクロンの印刷解像度を可能にする4K LCDスクリーンが搭載されたことで、今まで以上の印刷量で高レベルの出力が可能になったとされている。さらに今回の「3」では初回に限りスライサーソフト「Chitu Box Pro」のサブスクリプションが1年分付属していて、FEPフィルムが3枚も初期装備でついてくるという。それにも関わらず価格は今回も安定の50000円内だ。基本内容だけでも、すでに「買い」感しか感じないのだが、ここからは「ALL3DP」の記事を覗きながら、実際の使用感についてを見ていきたいと思う。 サイズアップしたビルドボリュームと高精細の4Kモニター さて、まずは長所として、サイズアップが挙げられている。143×90×165mmのビルドボリュームは小型のレジン3Dプリンターとしてはかなり大きい。これに4K画面を取り入れたことで、超高解像度印刷が可能になったとしている。ただ、ここで一点、辛口な批評も。解像度は確かに向上しているが、以前の2K解像度のものと比べた時に、その向上の幅は「とても大きい」というわけではないということ。「3」の出力物の方がエッジが確かにはっきりしていることがわかるが、全体のディティールとしては大幅な変化があるとは言えないとしている。さすが大手メディア、忌憚のない言葉が並んでいるが、一方でこの「3」は単なる高解像度以上のものをユーザーに提供しているとも。まず、これまでのMARSの美点は全てそのまま残っているという点。そして、それ自体が20000円程の価値があるChiTuBox Proの1年分のサブスクリプションが付属しているというのは、もはやありえないことだ、と驚愕している。 ...
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牛肉は「育てるもの」から「モデリングするもの」に!? 「サシ」まで調整可能な日本発の先端3Dプリントミート
大阪大学が開発した3Dプリント金太郎飴技術とは? これまでもバイオ3Dプリント技術を用いたオルトミートについては数多く紹介してきた。イスラエルのベンチャーであるRedefine MeatやスペインのNOVA MEATを始め、現在、世界各国で開発がおこなわれているこの技術に関し、日本もまた独自の展開を見せつつある。和牛のアイデンティティといえば、やはり「サシ」だろう。アメリカ牛やオージービーフの弾力に富んだ「ザ・お肉」な感じももちろん魅力的だが、口の中に入れた瞬間にジュワっと肉汁が蕩けだし、噛むことが不要なほどに柔らかな和牛肉のあの甘美な味わいは、やはり他とは変え難いものがある。今回、そんなサシのたっぷり入った霜降り和牛を3Dプリントすることに成功したのは大阪大学だ。使用された技術は「3Dプリント金太郎飴技術」。培養した牛肉の筋繊維、脂肪、血管を繊維組織ファイバーとして細長く作り、和牛肉の組織構造をベースにそれらを束ねて3Dプリントする、というものだ。何より嬉しいのは「サシ」の量を調整できることだろう。霜降り具合には好みもある。A5ランクのブランド牛だとちょっと脂が強くて、という方もいることだろう。そんな方にもちょうどいい霜降り具合にカスタマイズができるのだ。 チームが使用したのは和牛の幹細胞、それによって和牛が持つ複雑な食感を模倣しているとのこと。繊維構造はかなり複雑で42の筋肉、28の脂肪組織、2つの血管から構成されるらしい。写真で見ると、確かにかなりの霜降りっぷり。これは是非とも味わってみたいものだ。 「おふくろの味」から「おふくろの肉」へ ところで、世界中でオルトミートの開発が急がれていることには理由がある。他でもない気候変動だ。数年前までは「大袈裟なんじゃないの?」みたいに思われていた方も多かっただろう気候変動は、現在、誰もが肌で感じるレベルにまで進んでいる。その上で、問題視されているのが牛肉産業に由来する温室効果ガスだ。FAOによれば、世界の温室効果ガスの排出量の中で畜産業が占める割合は14%以上、中でも牛は特に多く排出し産業内の65%を占めている。牛肉は食べたいが、気候変動もシャレにならない。だからこそオルトミートの出番なのだ。もしそれぞれの培養が自動でできるようになれば、いつでもどこでも人工霜降りステーキを楽しめる。それはそれで新たな健康問題も生まれそうだが、それはそれとして。ところで、それらが普及した際に現在のブランド牛たちの位置付けはどうなるだろう? あるいは絶妙な塩梅のオリジナル「霜降りデータ」が次代のブランド牛として売買されるようになるのだろうか? さらには、もはや「おふくろの味」じゃなく「おふくろの肉」みたいに、家庭それぞれに異なる3Dプリントミートが出力されるような日も来るのかもしれない。いずれにせよ、人類と肉食の関係は今大きく変わろうとしている。
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3Dプリンターがパラスポーツを躍進させる!「TOKYO 2020」で加速する人間と技術の融合
進化を続けるパラスポーツ 東京パラリンピック2020がいよいよ始まった。今回はコロナ禍での開催、それも感染が拡大する中での開催ということもあり、その開催の是非については様々な意見、主張が飛び交っている。それらの主張全てに相応の説得力があり、簡単に判断することは難しい。ただ一つ言えることは、開催された限りはできるだけ安全に、そしてこの大会に思いを馳せてきた全ての参加者にとって、今大会が望ましい形で運営されていってほしい、ということだろう。しかし、それにしてもパラリンピックの位置付けはここ十数年で大きく変わったように思う。かつてはまだパラリンピックはオリンピックの付随物という印象があった。オリンピックを楽しんだ後はパラリンピックも楽しもう。あくまでも、メインディッシュはオリンピックでパラリンピックはデザート。そういう風潮があったように記憶している。それがどうだろう。いまやパラリンピックは「パラリンピックもすごいんだ」ではなく「パラリンピックがすごいんだ」と言われるまでになっている。今回のそれぞれの開会式の盛り上がり、パフォーマンスを見ても、正直、筆者などはパラリンピックの開会式の方がより面白いと感じた。競技そのものにおいても、「障害を持っている方もスポーツを頑張っている」というような庇護的な上から目線でまなざそうものなら現実とのギャップに圧倒されるに違いない。競技のレベルは非常に高い。そして、とにもかくにも大迫力なのだ。 パラスポーツが進化を続けてきた背景には、まず第一に競技者たちの不断の鍛錬がある。しかし、それだけではない。その裏にはパラスポーツを支える技術の進歩があった。たとえば陸上競技用の車椅子。こちらは後輪がハの字に変化し、それにより走行中の安定性が高まったことで、競技のスピード感を向上させることになった。素材もアルミからカーボンファイバーへ。トップスピードもかつてとは段違いだ。 あるいは義足もまた進化している。まず車椅子同様に素材がカーボンファイバーになったことで脚、足首の自然な動きが再現されるようになった。さらに弾力が増したことも大きい。日々、向上するバネの力を推進力に、記録もまたグングンと伸びる一方だ。 実際、すでにオリンピック記録をパラアスリートが上回ることもめずらしくはなくなってきている。語弊を恐れずに言えば、それはもはやハンディキャップではなくアドバンテージとさえ言いえるかもしれない。さしずめ、人間と技術が融合したサイボーグの祭典。人間の可能性の拡張という点ではオリンピックさえをも凌ぐエキサイティングな祭典、それが現代のパラリンピックなのだ。 3Dプリンターが障害者のモビリティを向上する さて、ここまでパラスポーツがいかに技術によって支えられてきているかを見てきたが、当然、競技者ではない一般の障害者の方々も、こうした技術の恩恵は受けている。そして、その際には3Dプリンターもまた、重要な役割を果たしているのだ。たとえば、オランダを拠点とする3Dプリント企業Tractus3DがROAM Special Cyclesと共に開発を進めているのが、3Dプリントを使用した障害者用のカスタマイド自転車だ。この2社の提携にはある背景があった。そもそもROAM Special Cyclesは以前から、障害者用のロードバイクを製造してきた。その品質は非常に高く、いずれも車椅子へのアドオンとして設計されている。基本的な仕組みとしてはハンドルバーを利用してホイールにい動力を供給するシステムを採用しており、そのパフォーマンスも非常に高く評価されてきた。 しかし、問題もあった。手の障害を持つ方の場合、通常のハンドルバーを使用できないのだ。たとえば指がない場合は十分な力をハンドルにかけられず、サイクリングすることが難しい。いかにしてこの問題を解決するか、それがROAM...
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「サンアンドレアス」の地図を3Dプリンターで完全再現! その脅威のクオリティに話題騒然
GTAファン必見の超絶精巧な出力品とは? サンアンドレアスという地名を聞いてピンと来る方向けの面白いニュースが届いた。もちろん、サンディエゴのことでもロサンゼルスのことでもない。 サンアンドレアスとは、ある超有名ゲームの舞台となっている架空の都市の名前だ。そのゲームとは「グランドセフトオートV」。世界で1億5000万本以上を売り上げた、言わずと知れたモンスター級の人気ゲームだ。米国ではこの10年間で最も売れたゲームであり、ゲーム史上においても歴代3位の売り上げを誇っている(ちなみに1位はテトリス、2位はマインクラフトだ)。 さて、その面白いニュースとは何か。実はある人物が数百時間を費やして、このサンアンドレアスのマップ全体を3Dプリントしたのだ。 壮大なオープンワールドを完璧に再現 「え、ゲームのマップを3Dプリント? それだけ?」と思ったかた、見くびってはいけない。実際にプレイしたことがある方ならご存知のように、このサンアンドレアスは超広大なのだ。 実寸換算だと81平方km。オープンワールドゲームのマップの広さランキングでは現状5位に留まっているものの、その細かさと複雑さを加味すれば、実質的には現状で最も再現が困難なマップと言っても過言ではない。 今回、この広大なマップの3Dプリントに挑戦したのはプロダクトデザイナーのDom Riccobene氏だ。なんでもコロナ禍で発生した大量の余暇時間を、この仮想世界の再現に費やしたのだという。 ツイッターで発表された動画は、実に見事だ。 Map of San Andreas for #FanArtFriday#GTA5 #GTAOnline...
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Elegooがジャイアント3Dプリンター「JUPITER」を発表! 大型光造形機のマーケットに旋風?
あのElegoo社が6KモノクロLCD搭載の大型プリンターを発表 弊社でも取り扱いのある大人気3DプリンターメーカーであるElegooが新製品を発表した。その名もElegoo JUPITER。どうやらElegoo社では今までで最大サイズの3Dプリンターになるとのことだ。 Elegooと言えば、何より目を引くのはその圧倒的なコスパの高さだ。これまで発表されているMARSやSATURNはいずれも市場の相場かあら比較した際に極めて安く、それにも関わらず安定したクオリティと使い勝手の良さで、3Dプリンターデビュー用のモデルという枠を超えて、幅広い支持を集めている。現行のSATURNは出力サイズが19.2×12×20(cm)だった。これに対しJUPITERは27.7×15.6×30(cm)のビルドエリアとなるそうで、これは同じく弊社でも取り扱いをしているPeopoly Phenomと近いサイズ感になってくる(Phenomの方がまだ大きい)。 Peopoly Phenom さらにこのJUPITERは6KモノクロLCDも搭載、非常に高速に、非常に精巧な印刷が可能とのことだ。SNS上では、すでに感度の高い3Dプリンターファンたちの間で話題騒然のJUPITERが市場にローンンチされるのは9月。実際の発売は来年春から夏頃になると噂されている。当然、同タイプの他のメーカーの3Dプリンターより圧倒的な安さでの展開となる。 Elegoo JUPITER 果たしてジャイアント3Dプリンターのシーンはこの大型惑星をどう受け止めるのか。SK本舗では9月ローンチに予約受付を開始するが争奪戦となりそうだ。
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世界的メディアが選んだ「2021年に最高の大型・光造形3Dプリンター」
業界随一の3Dプリントメディアが選んだ最高の大型・光造形3Dプリンターとは? 世界最大の3Dプリントメディア「ALL3DP」が「2021年に最高の大型・光造形3Dプリンター」という記事を発表した。いつも徹底した批評精神をもって素晴らしいセレクションをしてくれる「ALL3DP」だが、「大型の光造形」という括りでのセレクションは初めてかもしれない。果たして、トップメディアが選んだ2021年度の最も優れた大型の光造形3Dプリンターはどれなのか。SK本舗で取り扱っている機種は選ばれているのだろうか。おそるおそる記事を覗いてみると、冒頭から早速、3つの評価軸ごとの最優秀3Dプリンターが紹介されていた。そして驚いた。なんとその3つともSK本舗が取り扱ってきた3Dプリンターだったのだ。早速、見てみよう。 価格部門ではElegoo SATURNが選出! まず価格部門。ここで選ばれているのはElegoo社のSATURNだ。 弊社ではすでに任期商品であるこのSATURNが、低価格部門でのベストに選ばれている。ALL3DPも、このビッグサイズ、加えて4K解像度で、この低価格であることを強調している。使いやすさ、汎用性、便利な機能など、レビュアー的にも「お気に入り」であるようだ。SK本舗では現在セール価格の¥54,999! このサイズ、この性能で、このお値段は、ちょっと異常です。 Elegoo SATURNの商品ページはこちら→https://skhonpo.com/collections/elegoo-3dprinter/products/elegoo-saturn 大型のトップに選ばれたのはAnycubic Photon Mono X つづいて「Top BIG」部門。これは大型全体の中でバランス的に最も優れている光造形3Dプリンターを選ぶ部門だ。ここで選ばれているのは、Anycubic Photon Mono Xだ。 すでに世界中のメディアから大絶賛されていいるAnycubic...
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古代生物は垂直に泳いでいた!? 3Dプリント技術が明らかにした絶滅種の生態
3Dプリンターで化石動物を精巧再現 3Dプリンターの用途は様々だが、近年、自然科学の世界で注目されているのが、化石データに基づいた3Dプリンターによる絶滅種動物の再現だ。これは何も精巧なフィギュアを制作し、博物館に展示するためではない。最先端の3Dスキャン技術によって得られた3Dデータを3Dプリント技術で正確に再現することで、その知られざる生態を明らかにすることだ。今回届いたのは、アンモナイトなどの古代種の研究を行うAMMlabの最新研究の成果である。研究チームのデヴィッド・ピーターマンとキャスリーン・リッターブッシュが3Dプリント再現に用いたのは古代の頭足類だった。頭足類とはタコやイカ、オウムガイなどの頭、胴、腕をもつ軟体動物種のこと。今回はオルソコヌスアンモナイトというイカのような形のアンモナイトの化石が3Dプリントで再現された。 画像引用:AMMlab もちろん、外側の形状のみではない。数学的シミュレーションに基づき、軟体組織と身体内の空隙もリアルに再現。これによって古代動物がいかなる動態を持っていたのかが分析できるのだ。 最も効率的な移動方法は「垂直移動」だった 果たして、水中に3Dプリントアンモナイトを投入してみたところ、左右の動きが効力を生み出すことが判明、つまり彼らが移動するための最も効率的な方法は垂直移動であることが分かった。 画像引用:AMMlab 「おそらく実際のオルソコヌスは自分では自分の方向を変えられなかった可能性があります」とピーターマンは語る。あるいは別研究においてはトルチコンアンモナイトの化石から3Dプリント再現が行われたのだが、ピーターマンによれば、「トルチコーンは回転の達人でした」とのこと。これもまた実際に出力してみたことで分かったことだ。 画像引用:AMMlab いくらシミュレーション技術が発達したとしても、やはり実際に物質化することで得られる情報量はいまだに多いということだろうか。ピーターマンはこうした実験が「古代の生態系に対する私たちの理解を変える」と語っている。3Dプリント技術によって明らかにされる生物の秘密。あるいは世紀の大発見として生物史を覆すような発見も今後出てくるかもしれない。引き続き注視していきたいと思う。
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