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目には見えないQRコードをオブジェクトに埋め込む裏技をMITが公開
赤外線カメラで隠れた模様を検出 QRコードを3Dプリントすることは簡単だ。以前、別の記事でも取り上げたことがある。 QRコードを3Dプリントするための5つの手順と注意点 今回はその進化形。目には見えないけど赤外線カメラでは読み取ることが可能なQRコードをオブジェクトに埋め込む技法を紹介したい。 実はこの技法を紹介しているのはMITなのだ。MITによれば、その技法はInfraredTagsと呼ぶらしい。必要なものはFDMプリンターと透過的なフィラメント。一見するとプレーンなオブジェクトに、QRコードやArUcoマーカーなどを埋め込むことで、そのラベルを赤外線カメラで検出できるようにする技法だ。 なんでも適切なツールを使用すれば、そのプロセスは実に簡単らしい。まず研究チームが使用しているフィラメントは、赤外線に反応する3dk.berlinの特殊フィラメントだ。 3dk.berlinhttps://3dk.berlin/en/special/115-pla-filament-ir-black.html このフィラメントは可視スペクトルではほとんど見えないが、赤外線によって約45%が透過されるという。機械可読ラベルは、コードのジオメトリを表すために赤外線フィラメントとエアギャップの組み合わせを使用するか、赤外線フィラメントと通常のフィラメントを使用したマルチマテリアル印刷を行うことにより、印刷オブジェクトの壁に埋め込まれるようだ。 特にマルチマテリアル印刷の方がよりよく機能するというが、いずれにしても赤外線カメラがラベルを検出するのに十分なコントラストでプリントしてくれる。ただ、平均的なスマホのカメラ自体はこれらの埋め込まれたタグを受動的に読み取るのに十分な赤外線感度がない。そのためMITの研究チームは、RaspberryPiNoIRのような赤外線ブロッキングフィルターがなく、かつ簡単に入手できるカメラを使用している。チームが提供しているPDFには、実装のためのより詳細な方法が記載されており、また以下の動画ではそのデモンストレーションを見ることができる。 現状、スマホのカメラでは識別が難しいため、あくまでも実験レベルの遊びにはなってしまうが、これが普及したら様々な応用が可能だろう。外観を損なうことなくオブジェクトに個体識別用のIDを埋め込んだり、あるいは赤外線を通すと浮き上がるロマンチックなメッセージをオブジェクトに忍ばせてみたり。隠れたオシャレと思うと、どこか粋でもある。ご興味ある方はぜひトライしてみて欲しい。
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ANYCUBIC PHOTONの最新「M3」シリーズを世界的3Dプリンターメディアはどう見ているか
ANYCUBIC PHOTON から第三世代となる光造形機「M3」シリーズが登場 あのANYCUBIC PHOTON から第三世代となる「M3」シリーズが登場、いよいよSK本舗でも予約開始となった。前シリーズのPHOTON MONOは世界中から絶賛され、有名レビューサイトでも軒並み高評価を得ていた。さて、今回の「M3」シリーズではいかなるアップデートを果たしているのだろうか。まず、今回の「M3」シリーズは3つのヴァリエーションからなる。M3、M3Plus、M3Maxのトリオで、いずれも光造形方式となっている。実はこのほかに、FDM方式のKOBRAとKOBRA MAXも同時リリースされるのだが、今回はまず「M3」シリーズについて取り上げてみたい。 KOBRA予約販売ページ→ https://skhonpo.com/collections/anycubic/products/anycubic-kobra KOBRA MAX予約販売ページ→ https://skhonpo.com/collections/anycubic/products/anycubic-kobra-max 参照にしたのは世界的3Dプリンターレビューメディアである「ALL3DP」。硬派なレビューサイトである同メディアは、今回リリースとなったANYCUBIC PHOTONの第三世代をどう見ているのだろうか。なお、リリース前の記事のため、実際に使用した上での体験記事ではない。あくまでもスペックや前情報を元にした予測記事であることをお断りしておく。 M3は最もリーズナブルながらハイスペック まず今回最も安価なM3はどうだろうか。 ALL3DPはこのM3を「第2世代のMonoシリーズのベースプリンターであるPhotonMono4Kの準フォローアップ」であるとしている。今回のトリオの中で最もスペックは抑えられているが、それに見合った価格が設定されており、「予算重視、またはエントリーレベルのユーザー向けのプリンター」だと評している。今回、その名前から「4K」の文字は外されているが、M3には4KLCDがある。さらに前作よりビルドボリュームは格段に上がっており、前作の132x 80 x 165 mmに対して、163...
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超音波によって壁や皮膚の反対側にマテリアルを造形する未来の3Dプリント技術「ダイレクトサウンド」方式が特許を取得
壁や皮膚の向こう側にオブジェクトを構築 これまで3Dプリント技術は、樹脂を用いた積層溶解や光造形、あるいは金属粉末、さらにはナノ、バイオ、ボリュメトリクスまで、様々な造形方式を発明してきた。この度、そこに新しい方式が加わった。その名も「ダイレクトサウンド」方式だ。これはカナダのコンコルディア大学の機械・産業・航空宇宙工学科のマイクロナノバイオ統合センターに寄って開発された方法で、集束超音波を用いたこれまでにない新しいプロセスとなっている。研究チームによると「ダイレクトサウンド方式(DSP)」の説明によると、これは材料(硬化剤または異なる混合物と混合されたモノマー)を集束超音波場に晒すことによって造形する方式だという。モノリシック球形集束トランスデューサーによって生成される超音波場は、ビルドチャンバーのシェルを通過した後、ビルド材料に到達するという。その際、音圧の変化を利用して、バブル内にマテリアルを生成するということだ。 画像引用:nature communications この方式の非常に刺激的なところは、リモートプリンティングが可能であるということだろう。つまり、音波を壁や皮膚を通過させて、壁や皮膚の向こう側にオブジェクトを触れずに構築できるのだ。研究チームはこれによって「航空宇宙産業における隠れた部分のエモート修復やオンサイトメンテナンス、および医療アプリケーションにおける体内部分の生体内リモートおよび非侵襲的バイオプリンティング」にこの「ダイレクトサウンド方式(DSP)」を使用できるとしている。注目すべきは「医療アプリケーションにおける体内部分の生体内リモートおよび非侵襲的バイオプリンティング」だろう。これは身体の外にある3Dプリンターを用いて、身体の内部においてマテリアルを構築できる可能性があるということだ。手術なしで定義された構造を局所的に印刷することができるというのは端的に言ってすごい。具体的には、例えば皮膚に材料となる液体を注入することで、皮膚を切り開かずにフェイスリフトを皮膚下に挿入するということが可能となる。これは全く新しいアプローチだ。もちろん、今後様々な使用実験を重ねる必要はあるだろうが、すでにチームは特許も取得している。つまり、何らかの形で商業化する準備があるということだ。今後の展開に注目していきたい。
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ドイツが生んだUMAのような3Dプリントスニーカー|その斬新すぎるデザインが話題に
神話上の怪物の足のようなスニーカー ドイツのデザイナーであり建築家のステファン・ヘンリッヒが、神話上の生き物の足に基づいた独自のデザインの3Dプリントスニーカーを発表した。SLS3DプリンターメーカーのSintratecのSLSS2システムで3Dプリントされることを想定して特別に設計された動物の足のようなスニーカーは、ビッグフットやネス湖の怪物などのいわゆる「UMA(クリプティッド)」の足をイメージしたもののようで、彼らのように野生地を歩く機能性を備えているという。 今回用いられたSLSS2システムは以前、メルセデスベンツグループがバスやトラックの3Dプリント用のスペアパーツの作成に用いたり、機能的な電動バイクを設計したETHチューリッヒの学生チームなどの自動車アプリケーションにおいて使用されてきた。今回、ヘンリッヒはこのS2システムを利用して、靴を個々の着用者の足に合わせてカスタマイズできるような設計を行なっている。 アディティブマニュファクチャリングの設計を専門とするヘンリッヒは、彼の作品が、建築、ナレーション、設計、ロボット工学の分野にあると説明している。彼は以前より数多くの3Dプリントおよびロボット工学の設計プロジェクトを実施してきており、たとえば2021年11月には3Dプリント業界のアワードである「コミュニティアドボケイトオブザイヤー」の最終候補にも選ばれている。 そんな彼の最新のプロジェクトが、SintratecのS23Dプリンターと柔軟なTPE素材を活用した神話的デザインのCryptideスニーカーというわけだ。オープンデザインのソールと、靴下にフィットするアッパーシューズで構成されたこの靴はSintratecのTPEエラストマー素材でプリントされている。ヘインリッヒによれば、ソールなど一部のパーツを硬くしたが、他のパーツは柔軟であり、快適さもかなり重視したとのことだ。 現状で、一般発売されるかどうかは不明だが、すでに待望の声があがっている。今後の発表に注目だ。 3Dプリントスニーカーの最前線 今回のヘインリッヒの作品に限らず、3Dプリント技術はスニーカーデザインに多くの革新をもたらしてる。たとえば、ドイツのスポーツウェア大手Adidasは、3DプリンターメーカーのCarbonと協力して、 3Dプリントされた4DFWDミッドソールの新しいイテレーションをリリースし、CRP Technologyは、3Dプリント機能とWindformSPカーボンファイバー素材を使用して 独自の陸上競技用トラックシューズを作成している。ボストンを拠点とするデジタル製造会社Voxel8が、Hush Puppiesの今後のデザイナーシューズの3Dプリントインソールの計画を発表し、サイクルシューズメーカーのLoreは、カスタマイズ可能なカーボンファイバー3DプリントサイクルシューズのLoreOneの予約注文を開始した。 最近では、ドイツの靴会社Soleboxとファッションデザイナーが協力して、ナイキのトレーナー向けにダウンロード可能なコンテンツを紹介しました。取り外し可能なヒールクリップは、3D印刷され、特別版のNike Blazer Lowsに取り付けられるように設計されており、靴に視覚的な効果をもたらしている。あるいは以前にSK本舗でも取り上げたテック企業Heron Prestonと靴メーカーZellerfeldの提携によって発表されたスニーカー〈HERON01〉が「世界初の完全3Dプリントスニーカー」として大きく話題となったことは記憶に新しい。 おそらく、靴市場を3Dプリントスニーカーが席巻することになる日もそう遠くないだろう。今後の展開に期待したい。
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アメリカのテック系メディアが選ぶ「2022年に最高の光造形3Dプリンター」
2022年に最高の光造形3Dプリンターとは 先日、1996年に創刊された米国のテック系レビューメディア「tom,s HARDWARE」が「2022年に最高の光造形3Dプリンター」という記事を発表した。 同メディアは様々な最先端テックに関して、中立的で公平なレビューを行なっていることで知られており、インターネット導入以降のテクノロジージャーナリズムを90年代より牽引してきた存在の一つである。そのぶん、信用度も高い。 果たして、「tom,s HARDWARE」が今年最も評価する光造形3Dプリンターとはどれなのか。その気になる結果は、SK本舗ユーザーにとっては非常に喜ばしいものになった。今回取り上げられた6機種がいずれもSK本舗取り扱いの機種(あるいは取り扱い実績のある機種)だったのだ。 以下は「tom,s HARDWARE」が選んだ今年最高の光造形3Dプリンターの一覧だ。 1 Elegoo Mars2 Pro 2 Phrozen sonic mini 8K 3 Elegoo Jupiter 4...
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3Dプリントしたオブジェを鏡面仕上げすることは可能か? Alpha Phoenix の挑戦
オブジェクトの表面を鏡のように仕上げる 3Dプリンターで出力したオブジェを鏡面仕上げすることは可能だろうか。「鏡面っぽい」仕上げならば可能だろう。だが、誰が見ても「鏡面」と言い得るくらいに仕上げていくことはなかなか難しい。ここに挑戦したのがAlpha Phoenixという3Dプリント系のYouTubeアカウントだ。まずはその動画をご覧いただきたい。 映像の後半、11分45秒あたりを見てみると、真っ黒だったオブジェクトが見事に鏡面状に仕上がっているのが分かる。果たしてどのような工程を経たのだろうか。 まず、ミラーは光を反射するために、しっかりと平らで滑らかな表面であることが必要になる。そこで彼はまず出力したオブジェクトの表面を紙やすりで削り、次いで2液型エポキシを表面に塗布し、その表面張力によって、滑らかな作業を行うための準備を行っている。エポキシが乾燥したら、今度はいくつかの異なる種類のスプレーを噴射し、銀を表面に堆積させていく必要がある。その際、まず保湿剤を塗布することで、後続の溶液が水滴となることを防いでいる。その後、2つのプルカーサー(前駆体)をスプレーし、それらの反応によって元素の銀を物体の表面に堆積させていく。Alpha Phoenixによれば、この際、エポキシの硬化時間と2つのプルカーサーの比率が重要とのことだ。この工程を経て、オブジェは見事な鏡面状に仕上がっている。 なるほど、こうすれば良いのか…というには、やや難易度は高そうだが、仕上がりの美しさを見るとトライしてみたくなる。興味がある方は是非とも上の動画を参照しながら挑戦してみてほしいところだが、映像内で使用しているアセトンなどは可燃性も高く、眼への刺激性や中枢神経への刺激もあるとのことで、取り扱いにはゴーグルや手袋、また換気ができる環境などの厳重な注意が必要だ。お子様がいる家庭内での使用はもちろん厳禁。興味のある方は使用上の注意などをよく確認した上で安全な環境にてご使用いただきたい。
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家庭用3DプリンターでTシャツをカスタムデザインする裏技とは?
3DプリンターでオリジナルTシャツは作れるか? 今回は3Dプリンターを使ってTシャツをカスタムデザインする方法について紹介したい。まず、3DプリンターによってTシャツにカスタムプリントを施すことは可能なのか? という問いがある。答えはYESだ。ただ、Tシャツそのものは無地のものを別途用意してほしい。現在、衣類の3Dプリント技術も進んできているとはいえ、今回は一般の家庭用3Dプリンターの使用を想定している。あくまでもデザインの方の話をしたい。さて、ここでは二つの方法を紹介する。一つは薄く3DプリントしたオブジェをアイロンによってTシャツ記事に付着させる方法、もう一つはTシャツ生地に直接プリントする方法だ。 非常に薄くプリントしたフィラメントをアイロンでプリントする方法では、数回の洗濯を経ても剥離することのない程度の安定性が限界だが、Tシャツの生地に直接プリントする場合は、より永続的な結果が得られると言われている。では二つの方法を見ていきたい。 1.アイロンを使う方法まず、アイロンを使う場合はあらゆる種類のプリンタで行うことができる。ベーキングペーパーをバインダークリップでプリントベッドに固定し、スティック糊を塗ってプリントを貼り付けるだけだ。 厚さは1層から2層がちょうどいい。これをTシャツのプリント面を下にして置き、最高温度に設定したアイロンをかけることで生地に転写することができる。かなり簡単な上、見栄えも悪くない。しかし、先に触れたように、耐久性は若干悪い。 2.直接プリントする方法もう一つは柔軟なフィラメントを使用して生地に直接プリントする方法だ。こちらはより永続的な効果を得られるものの、プロセスはやや複雑となる。下部掲載の動画に従って3DプリンターはまずPrusaの3Dプリンターを想定しておく。何より、こちらの方法ではまずPrusaプリンター用の隆起したベッドアダプターを3Dプリントする必要がある。さらに印刷設定もかなりいじる必要があり、その上でTシャツをアダプターの上にセットして出力を行う。 1つ目の方法に比べるとかなりの手間だが、それによって印刷されたデザインはシャープであり、何度洗濯しても緩むことはない。手間と耐久性がここではトレードオフの関係にあるようだ細かい方法については以下の動画が参考になる。前半では一つ目の方法、後半では二つ目の方法が解説されている。英語による解説になるが、要領は掴めるのではないだろうか。 いずれにしても、無地のTシャツを自宅で気軽にカスタムデザインできるというのは嬉しい。ただ、動画にもあるように、失敗してTシャツを破損することもある。皆さんも実験感覚でお好みのデザインの3Dプリントを試してみてはいかがだろうか。
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見た目、食感、味、栄養素まで再現した3Dプリントサーモンが登場
Plantishの積層造形フィッシュフィレ シーフード3Dプリントの世界が今大きく盛り上がりつつある。以前、この記事欄でもRevo Foodsによる3Dプリントサーモンを紹介したことがあるが、今回は昨年に設立されたオルトシーフードスタートアップであるPlantishの取り組みを紹介したい。 オルトミートに続くか? 3Dプリント「シーフード」に注目が集まる理由 https://skhonpo.com/blogs/blog/3dseafood Plantishは、現在、ホールカットフィッシュフィレを低コストで大規模に製造する積層造形技術を開発している。PlantishのCEOは「今こそ魚の時代です」と語っている。その上で現在、オルトシーフード産業の課題の一つは、丸ごとの魚の味、食感、口当たり、構造を再現することであると指摘している。従来の魚の70%以上が、丸ごとの魚または切り身のいずれかとして、丸ごとの形で世界的に消費されているため、オルトシーフードもその形に成形する必要がある。これまでPlantishは、動物の筋肉の複雑なテクスチャーを複製するために植物タンパク質に依存してきた。これによってサーモンをリアルな切り身として造形し、サーモンを食べる体験をリアルなものにしているのだ。食肉が環境に与える影響については、現在、多くの警鐘が鳴らされている。一方でシーフードはどうだろうか。一説には現在のようなペースで魚の乱獲を続けた場合、世界は2048年までにシーフードを使い果たすだろうと言われている。一方で現在の世界のシーフードの半分は養殖によって補われている。すると、水産養殖を拡張すれば必要なシーフード量を満たすことができるという見解もあるが、養殖技術の中には環境副作用が報告されているものもある。こうした背景から、Plantishはオルトシーフードによって海を救うことを目指しているのだ。 すでに今年の1月に100%植物ベースのホールカットサーモンフィレの試食会が行われた。食感や味だけではなく外見もまた本物と変わらないまでに作り込まれており、なおかつ栄養素もまた実際のサーモンに近似した値に調整され、たんぱく質やビタミンBが豊富に含まれているているという。 その超微細層から構成される積層造形技術については現在特許出願中のようだ。目指しているのは、「あなたにとってより安全で地球にとってよりよい」形へとサーモンをアップグレードすること。もちろん「美味しさ」はそのままに。 今後ターゲットにしていくのは、500億ドルを占めるといわれるサーモン市場、そして外食産業への対応だ。CEOは「今後2年以内に高級レストランにPlantishのオルトサーモンが取り入れられることを期待している」と述べており、実際その準備はできている。日本もまた鮭を常食する文化がある。果たして、オルトサーモンの焼き鮭定食をカジュアルに食べれる日は来るのだろうか。続報を待ちたい。
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Blenderの3.0がすごいと話題に|アップデートの内容と評価に迫る
2000年の2.0へのバージョン更新以来の重要なアップデート 2021年末、人気モデリングソフトのBlenderのバージョンが3.0にアップデートされた。今回のアップデートはBlenderにとって、およそ22年前の2000年に行った2.0へのバージョン更新以来の重要なアップデートだという。 Blender サイト → https://www.blender.org/ 実際すでにBlender3.0はかなり好評の様子。ここでは今回のアップデートでBlenderがどう変化したのかを眺めてみたい。 そもそもBlenderとは? まずBlenderについておさらいを。Blenderは現在もっとも有名な無料の3DCG系ソフトのひとつだ。オープンソースながらも、ハイクオリティな機能で知られる。3DCGは様々なタイプが作成可能となっており、リアルに近い人間の3DCGからアニメチックな3DCGなど多種多様なタイプを作成することができる。またBlenderは無料ソフトであるため、先発での利用者が多く、解説サイトや初心者用のチュートリアル動画が数多く出回っているのも嬉しいポイントだ。では早速、今回のアップデート内容に迫ってみよう。 Blender 3.0の主なアップデート内容 ・ワークフローまず、今回大きくアップデートされたのは速度とワークフローだ。たとえば大きなメッシュで作業する際のラグが大幅に削減され、この作業のスピードが2~3倍アップされた。また、リンクライブラリを含むファイルのロードにかかる時間も短縮された。・AMDグラフィックカードAMDグラフィックカードに関しても追加サポートが施された。3.1のアップデートではLinux及びAppleでのAMDのサポートも計画しているとのことで一般的なワークフローが大幅に改善されている。・ナイフツールモデリングに関しては今回ナイフツールが改善されたことでモデリングエクスペリエンスが大幅に向上している。分かりやすいところではカットする方向を軸としてスナップするのが簡単になり、また以前のカットを元に戻すことができるようになった。 ・アセットブラウザ今回最も評価されているアップデートは、新しく導入されたエディターであるアセットブラウザだ。このアセットブラウザを使用すると独自の元のモデルをアセットのライブラリに保存することができるようになる。それによって、シーンに何度でもドラッグアンドドロップできるようになった。またマテリアルライブを作成したり、同じオブジェクトの様々なポーズも保存が可能になった。この最新機能はユーザーからの評価が最も高い。 ・ジオメトリノードもう一つ、ジオメトリノードを使用される方にとって嬉しいアップデートもある。今回のアップデートでは約100の新しいノードが追加され、また全体として非常に高速化した。またノードのグループ化を簡便化するために、操作も更新されている。この点に関しては以下の記事が詳しいので是非参考にしてほしい。「Blender 3.0」で直感的に!新しい「ジオメトリノード」を使ってみよう!https://forest.watch.impress.co.jp/docs/serial/blenderwthing/1374987.html・スカルプティング実は今回のアップデートではスカルプティングに関するアップデートがない。これは2.9のアップデート時に、多重解像度スカルプティングやサブディビジョンレベル間での変更機能など大幅なアップデートを行なっていたためだ。 ・レンダリングこれまでも大きな更新のたびに、レンダリングパフォーマンスは少しずつ向上してきたが、今回も例外ではなく、今まで以上に高速になっている。いわく「2~8倍高速」ということで、ここに関してはユーザーからの反応も上々だ。・その他その他、UVツールやリギング、VR機能などでも微々たるアップデートが施された。また2Dアニメーション制作に関しても、ペンシルのストローク速度などのいくつかのポイントにおいてアップデートがあったが、これは3Dモデリングにはあまり関係がないのでここでは触れない。 まとめ ...
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あのエプソンが満を辞して3Dプリンター市場に参入|強度と精度を兼ね備えた産業用マシンを発表
エプソンが強度と精度を兼ね備えた産業用3Dプリンターを発表 日本が誇る2Dプリンター大手のエプソンが満を辞して3Dプリンター市場に参入した。長野県に本拠を置くセイコーエプソンは、これまでカメラや時計、プリンター、プロジェクター、パソコンなどなど様々な電子機器において比類なきプレゼンスを示してきた。特に2Dインクジェットプリンターに関しては業界の代名詞的な企業でもあり、「カラリオ」シリーズなど様々な人気シリーズを展開してきた。しかし、意外にも実はこれまでエプソンは3Dプリンター市場には参入していなかった。それが今回、満を辞して参入したのだ。今のところ発表されているのは産業用3Dプリンター1機のみだが、今後どうなるかは分からない。 エプソンの産業用3Dプリンター これまで日本のキャノン、コニカミノルタ、Mimaki、リコー、ゼロックス、ニコンなどの有名な電子機器メーカーはこぞって3Dプリンター市場に参入してきた。そんな中、エプソンがいまだ参入していなかったということを意外に思う方も多いだろう。実はエプソンは2015年には大量生産のための3Dプリント技術を開発する計画を発表していた。つまり、今回の産業用3Dプリンターの発表はおよそ7年越しの計画だったということだ。今回、エプソンが開発したのは材料押出方式の3Dプリンターだ。樹脂や金属のペレット材、環境配慮型のバイオマスペレット材の他、様々な汎用材料を使用することができるという。また材料の射出量を精密に制御し、かつ造形面の温度も細かく管理することで、精度と強度が両立した高性能なマシンになっているという。今後、一部部品の量産に活用しつつ、製品に改善を加えて、商品化を目指していくという。果たして3Dプリンター業界においてエプソンがどのような展開を見せていくことになるのか。注目だ。
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Thingiveseの3Dデータをディズニーが不正使用? 問い直されている3Dデータの権利
インフラストラクチャーとしての3Dデータ配布サイト 一般人の間に3Dプリンターが浸透し、ものつくりが活発化していく上で、3Dデータ配布(販売)サイトは欠かすことができないインフラストラクチャーだ。あらためて説明すると3Dデータ配布(販売)サイトとは、誰かがモデリングした3Dプリント用の3Dデータを無料で配布、あるいはモデラーが設定した価格によって販売を行なっているサイトのことだ。現在、世界的に有名なのはThingiverseやMyMiniFactoryなどがある。それぞれのサイトに得意分野があり、また無料データに特化しているサイトから有料データを中心としているサイトまで、体裁も様々だ。弊社メディアでも以前、まとめ記事を作成したことがある。3Dプリンター用無料データ配布サイトおすすめ9選https://skhonpo.com/blogs/blog/osusume9こうしたサイトは3Dプリンターに関わる人々の集合的な知識を拡張し、技術を磨き上げていく上で、非常に大きな役割を果たしている。あるいはモデリングに慣れていない3Dプリンター初心者にとっては、まず出力の楽しみを味わう上で、3Dデータ配布サイトはなくてはならない存在だとさえ言える。しかし一方で、3Dデータ配布サイトにはいくつか問題がある。たとえば知的財産権の問題だ。実際、今Thingiversにアップロードされたある3Dデータを中心にある事件が発生しているという。発端となったのはAndrew Martinという作家が作成し、Thingiverseにアップしたある3Dデータだった。 あのディズニーがThingiverseの3Dデータを盗用? 下の作品はAndrew Martinがディズニーランドにあるアトラクション「魅惑のチキルーム」にインスパイアされて制作した作品らしい。「魅惑のチキルーム」とは、オーディオアニマトロニクスで動く鳥や花、ポリネシアやタヒチなどの南洋文化の雰囲気をもつ木彫りの人形たちがエスニックな音楽に合わせて歌うショー形式のアトラクションで、東京ディズニーランドをはじめ世界のディズニーランドで展開されている。 https://www.thingiverse.com/thing:3778083 すると、この作品に対してディズニーがなんらかの訴えを起こしているのか、というと、違う。実は今回訴えているのはこの作品を制作したAndrew Martinで、訴えられているのがディズニーなのだ。どういうことか。Andrew Martinによる訴えの内容を見て見ると、なんでもディズニーが彼の作った3DファイルをThingiverseからダウンロードし、彼のデザインをコピーして使用しているらしい。その真相については分からないが、これはなんとも厄介な話だ。まず第三者がディズニーの「魅惑のチキルーム」にインスパイアされた作品を制作する自由についてだが、これは「インスパイア」の範囲内、つまり模倣ではなく影響と呼べる範囲内であれば、問題にあたらない。一方、ディズニーが彼の制作した作品をダウンロードして出力し、それをグッズとして販売した場合。これは確かに問題があるように思う。現在、Andrew Martinは自身のTikTokアカウントから、ディズニーが販売している作品と自身の作品とを比較しながら「Why did Disney steal my work?」と訴えている。今後これが法廷闘争となった場合の結果は分からないが、同様の事件が今後発生した場合の重要な判例にもなるため、注目度は高い。 いずれにしても、その3Dデータを誰がいつ作成し、どんな目的で共有し、それらの3Dデータは第三者にどう利用されるべきなのかということを今後しっかりと確立していく必要はあるだろう。特にデータはコピーが簡単なために繊細さが求められる。 中にはNFTの技術などを応用しつつ(※)、データの移動履歴、帰属、権利などを透明化していくブロックチェーンソリューションの必要性を説いている人もいる。一方でそうした透明化が、リミックスやサンプリング、コラージュなど、既存のデータを用いたクリエイティビティを抑圧してしまうことを懸念する声もある。 ...
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アメリカでは1年間でサッカーグラウンド約710万個分の森が山火事によって消失している|野火を早期発見して山を救うための3Dプリントデバイス
温暖化で急増する山火事 気候変動は様々なところに影響をもたらしている。有名なところでは北極の氷や永久凍土の溶解だが、それだけにとどまらない。たとえば近年の山火事の増加もまた気候変動を主な原因としているのだ。アメリカでは2021年だけで58985件の山火事が起きている。それによって焼失したエリアは710万エーカー以上。日本ではエーカーという単位にはあまり馴染みがないが、1エーカーが大体サッカーグラウンドひとつぶんだと言われている。つまり、昨年のたった1年間でサッカーグラウンド710万個分の土地が燃えたという計算になる。その規模は年々増しており、すでに2022年の最初の2ヶ月で過去10年間の山火事のエーカー数の平均を上回っているらしい。これはちょっと普通じゃないだろう。 もちろん、山火事対策もまた進んでいる。新しいテクノロジーは山火事を抑制したり、その火の拡大を防ごうと日々技術開発を進めているが、その上で何よりも重要なことがある。そう、山火事の早期発見だ。 山火事を早期発見するためのシステム 実は現在、野火の早期発見のために非営利の教育プロバイダーであるNew Collar Netwaorkの3Dプリント技術者チームが、マイクロアコースティックマイクのメーカーであるKnowled Corporationとの技術を使用して開発したあるシステムが、国際ハードウェア助成金のコンペにおいて入賞し助成金を賞与されたという。そのシステムとは、3Dプリントされたケースに収められた山の音声監視対応センサーだ。なんでもこのセンサーは機械学習を使用して森の自然音と森で起こる野火の音とを区別し、野火の音を感知次第、当局に山火事の可能性を警告するらしい。さらに、同システムはその信号をフィールドカメラなどの他のデバイスに中継することで、森林局の消防士たちに山火事の即自認識を提供できるということだ。 画像引用/New Collar Netwaork 設置場所は木の幹であり、簡単に取り付けられるようストラップ付きのデバイスケースが3Dプリントで作られた。あるいは金属表面でも役立つ磁石を備えたケースなども3Dプリントすることができるという。センサーの電源としては、開発チームは太陽光発電を考えているようだ。このような早期発見システムは、山火事による森林の焼失エリアを抑えるのみならず、近隣のコミュニティが安全に避難する猶予を作り出すことができる。また山火事の起こっているエリアをより詳細に特定することで、消防士の活動をスムーズにし、消火時間を短縮することも期待されている。ところで、日本は山が多いにも関わらず、山火事は比較的少ない。平均的には1年間に約1200件ほど、焼損面積も約700ヘクタール(1730エーカー)くらいに収まっている。少ない理由は日本の高い湿度だとされているが、もちろんそれでも山火事を少しでも抑えれるに越したことはない。また、気候変動によって日本の気候環境が変化していく可能性もある。備えあれば憂いなし。日本の森林にも是非とも導入して欲しい。
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Fordが車内アクセサリーの3Dプリント用CADファイルを公開|ユーザーの美意識がものをいう「センスの時代」が自動車業界に到来
Fordが車内アクセサリーのCADファイルを公開 大手自動車メーカーのFordが、3Dプリントで自作できる車内アクセサリーの提供を開始した。これはもともとFordの新型モデルであるハイブリッド・ピックアップトラック「Maverick」の発表の際に示唆された話だったのだが、Newsweek誌によると、Fordは「Maverick」のセンターコンソールの後方に備わっているFord Integrated Tether System(FITS)スロットと、シート下の収納ボックスに対応するアクセサリーのCADファイルを先日、実際に公開したようだ。このCADファイルによって、カーオーナーは自分好みにカスタマイズしたカップホルダーやスマートフォンホルダーなどを3Dプリンターによって自作できるようになったわけだが、実はこのFordの動きに対しては「遅い」という声もある。なんでも「Maverick」が発表されてから現在までの間に、すでに3Dプリンター愛好家たちがFITSに合わせたアクセサリーを自作しており、公式のCADファイルの発表はそうした動きに比較するとだいぶ遅れているということなのだ。もちろん、公式のデータがあれば、それだけアクセサリーの作成は簡単になるわけで、今後は一層活発に愛好家たちのオリジナルアクセサリー作成が活発化するだろうと見込まれている。これは是非とも他メーカーにも追随して欲しい流れだ。 3Dプリンターによって「センスの時代」が到来する? Fordのデザインマネージャーのスコット・アンダーソン氏はNewsweekに、今回のCADファイルの公開が同社のユーザーに対する態度のかなり大幅な変化を意味すると語っている。これはつまり、企業がコントロールする既成の製品をより多くの人に買ってもらう段階から、ユーザー自身によるカスタマイズに開かれたオープンソースのスタイルへと、Fordが転換していくことを意味するものだろう。現状ではCADファイルの公開は車内のアクセサリーなどに限定されてはいるが、今後はより多くのパーツについて、この流れが及んでいくことになるかもしれない。もちろんFordのような大手がその方向に舵を切った場合、自動車業界全体のフェイズが更新されていくことになる。そうすると、問われてくるのはユーザーのセンスだ。これまではある既成のモデルを選択することこそがユーザーの美意識の発現であったと言えるが、今後はそうではなくなっていく。つまりFordを所有することのみならず、Fordをどのようにカスタムするかが、ユーザーの審美眼を表す指標になっていくというわけだ。おそらく、これは自動車業界に止まらない。3Dプリンターの普及によって世界はやがて「センスの時代」へと突入していくだろうと筆者は睨んでいる。私たちも今のうちに「既製品」に慣れ親しむあまりに鈍ってしまった創造的感性を磨いておいた方がいいかもしれない。
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スマホを一発で3Dプリント出力することは可能なのか? 世界的3Dプリンターメディアの思考実験
3Dプリンターはスマホを出力できるのか 3Dプリント技術はこれまで様々なものを出力し、その3Dプリント可能領域を拡張させてきた。しかし、現状でスマートフォンのような高度な電子機器を3Dプリントすることは実現していない。果たして今後、どの程度、それは可能になっていくのだろうか?実は先日、3Dプリントの国際的メディア「3DPRINTING.com」で、まさにその可能性が検証されていた。ここでその記事の内容を追ってみたい。まず、3Dプリンターで高度な電子機器を出力するという上で考えうる方法は二つあるという。一つは、スマートフォンの大部分のパーツを3Dプリントし、同時にそれらのオブジェクトをデバイス上に配置していくマシンを用意するとうもの。そしてもう一つは、ある一つの3Dプリンターの中に様々な原材料を自在に処理し、それに応じた出力物をプリントする機能を内在させ、完全なデバイスとして出力するというものだ。当然、実現可能性が高いのはひとつめの案だ。これを記事では「箱の中の工場」とたとえている。すでにある様々な方式の3Dプリンターを駆使すれば、スマートフォンを構成する様々な部品の大部分を個別に出力しうるということは容易に想像できる。いくつかの外部部品とそれらを別のシステムによってデバイス上に配置していくというわけだ。この方法に関して、MITのすでにあるプロジェクトがその可能性を非常によく示しているという。これはMultiFabと呼ばれる技術で、、LEDやレンズなどの機能部品の周りにインクジェット3Dプリントを行うというものだ。iPhone製造3Dプリンターを実現する場合、こうした外部部品を認識して回避するという機能が欠かせない・ ただ、MulitiFabにはそれら配置のためのマシンが統合されたものではないという不足点もあるが、これを補うような試みをBotFactoryが行なっているという。BotFactoryは、はんだペーストを配置し、プリント回路基板(PCB)を製造するための電子部品のピックアンドプレースを実行できるシステムを開発しており、現在、米空軍の精密機械の製造に役立てられている。 一発操作でスマホを出すために必要な条件 さて、ではもう一つの案はどうだろうか。こちらの案の場合、スマートフォンの全ての要素を3Dプリンター自体で作り出す必要があり、そのハードルはかなり高いものとなると記事はいう。その上であくまでも思考実験としてその実現のためのプロセスが探られている。 現在のスマートフォンのタッチスクリーンは、通常、有機発光ダイオードディスプレイと、絶縁体として機能するガラス基板、酸化インジウムスズや銀などの透明な導電性材料のコーティングで構成されている。これを3Dプリントすることは果たして可能なのか。実はすでに様々なLEDスクリーンを3Dプリントするための研究が数多く行われているという。たとえばミネソタ大学ではカスタマイズされた3Dプリンターを使用し、柔軟な64ビットLEDディスプレイの製造に成功している。 またガラス基板に関しては3Dプリントガラスは丈夫なため実行可能だとされている。実際、ソーダライムやホウケイ酸塩など、3Dプリントガラスの出力にはいくつかのアプローチが存在する。電子インクもまた、すでに複数の企業が導電性材料、特に銀インクを3Dプリントする方法を提供しているという。それどころか、たとえばOptomec社のAerosolJetシステムは主要なスマートフォンメーカーが導電性トレースを部品へと3Dプリントするためにすでに使用されているらしい。そうなると残っているのはトランジスタやコンデンサなど、そのほかの要素を追加することだけであり、これもまた実現可能性は決して低くない。続いてチップの製造について。ここには少し問題がある。先に見たようにPCBの製造自体はすでに3Dプリンターで行うことが可能だが、1ミクロン未満の分解能を必要とする集積回路の製造に対応できる3Dプリンターは現状ないという。ここは今後の技術的進歩を待たねばならないところだろう。ただ、一般に実現が難しいと目されているコンデンサやトランジスタなどについては、すでに試されて、ある程度の成功が収められているという。2015年にはすでに、カリフォルニア大学バークレー校の研究者が、共振周波数が0.53 GHzの粗いインダクターコンデンサー共振タンク回路と、インダクターコンデンサータンクとワイヤレスパッシブセンサーが埋 め込まれたスマートボトルキャップを3Dプリントすることに成功している。あるいはスウェーデンの2つの機関、リンショーピング大学とスウェーデン研究所は、2次元スクリーン印刷プロセスを使用して、1,000を超える有機電気化学トランジスタをプラスチック基板に印刷し、さまざまなICを作成しているようだ。つまり、現状で完全な3Dプリントは困難とはいえ、すでにその道筋は見えつつあるということだろう。スマートフォンといえば、様々なセンサーが配置されていることも重要なポイントになってくる。これらのセンサーに関しては、すでに3Dプリント作成された例が多数あり、問題はない。またフォンである以上、当然必要となるスピーカーとマイクに関しても同様であり、これら比較的単純なコンポーネントは現状の技術力で十分に3Dプリント可能だとされている。バッテリーもまた3Dプリント成功例は数多くあるらしい。一方、意外にも難点としてあげられてるのがメタルケースだ。ケースそのものをプリントすることは金属3Dプリンターがあればもちろん可能だ。しかし、機能にまつわる多くのパーツをその金属のシェルに統合し、金属を後処理するというプロセスは簡単ではないという。金属3Dプリンターは一般的に炉内での猖獗を必要とする。これはパーツ全体に行われるある意味で「野蛮」な後処理技術であり、精密なスマートフォンの製造には適していない。記事ではその代替案としてジュール熱を動力源とする方法に可能性を見出している。インクジェットまたはエアロゾルジェットヘッドによって電子機器を作成したら、金属蒸着ヘッドが金属ワイヤを介して電気をサージし、部品の周囲の所定の位置に金属を蒸着するという方法だ。もちろん、これはまだ仮説に過ぎず、今後、検証されていく必要があるだろう。 技術的には実現可能……しかし さて、ここまでの話を総括し、記事ではスマートフォン全体を一回のビルド操作で3Dプリントすることは、そう遠くない将来にもっともらしいものとなるだろうと結論づけている。課題としてはより微小なアトム構成テクノロジーの導入、より複雑なプリンターとロボットの組立てラインの確立だ。すでにスマートフォンの製造には3Dプリント技術が欠かせなくなっている。そう思うと、じゃあいつ3Dプリントスマートフォンが誕生するのかと気を急がせてしまうが、記事はそこについてかなり冷静だ。というのも、現在、世界中で個々の部品が大量生産されており、労働力の安い工場でそれらを組み合わせるという製造方法が、経営判断上、理にかなったものとなってしまっているのだと記事は分析している。もちろん3Dプリント技術は、細かい部品の製造にますます使用されていくことになるが、スマートフォンをまるっと3Dプリントするというシナリオのビジネスケースは「ありえそうにない」とのこと。そう、ある技術が実装されるためには、技術の進歩だけではなく、ビジネスや政治の力学が多重に重なり合う必要があるのだ。大人の都合はいつだって複雑ということか。
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片手だけで操作可能なPS5の改造コントローラーが話題に|3Dプリンターを使ったMODの世界
ゲーム中のあのお悩みを解決する注目MOD コロナ禍になって世界が揺れ動いていく中、逆に大きな盛り上がりを見せた業界もある。ゲーム業界だ。緊急事態宣言やマンボウが推進され、遊びに行きたくても行けない中、せめてもなんか気晴らしをしたいと人がゲームに熱中するというのは、ある意味、当然の流れだったかもしれない。今回はそんなゲームにまつわる面白いニュースを紹介する。ゲーム機を使用する上で、欠かせないものといえば、テレビやモニター、ゲーム本体、ゲームソフト(現在はDL形式の方が一般的かもしれないが)、そしてゲームコントローラーだ。このゲームコントローラーに関して、こんなことを思ったことがある方は少なくないのではないだろうか。「ああ、片手でコントローラー操作できたら、ながらでゲームできるのになあ」筆者は思ったことがある。たとえばお菓子を食べながらゲームをしたい場合だ。長時間ゲームをしていれば、当然お腹が空いてくる。しかし、ゲームに夢中になっている最中は、その両手の自由はコントローラーに拘束されている。なんとかお菓子の袋を開けたはいいものの、結局、手をつけられず何時間も過ぎていき、フレッシュだったポテチがすっかりしなびてしまった。皆さんにはこんな経験ないだろうか。果たして、その人物が筆者と同じような経験をしていたかは分からないが、実は今、ある人物が3Dプリンターを使って改造したPlayStation5用のコントローラーが話題を集めている。その改造コントローラーがなんと、片手で操作できるコントローラーだというのだ。さて、まずは話題の動画をご覧いただきたい。 いかがだっただろうか。投稿者はAkakiという人物。どうやら左利きらしく、改造コントローラーもそれに合わせて左手のみで操作できるように改造されている。この左利きバージョンでは、通常、右手で操作するシンボルボタンと右のトリガーボタンは左手で操作できるように設計されており、さらに右のジョイスティックに関してはコントローラー全体を足やテーブルなどの任意の対象に押し込むことで使用することができるようになっている。 動画を見る限り、通常プレイに関しては滞りなく片手で行えているように見える。細やかかつ迅速な操作が必要な場面において、どれくらい対応が可能なのかはまだ未知数だが、慣れと鍛錬によって、かなりの程度まで片手プレイでも対応できるのではないだろうか。 この改造コントローラー、今後のブラッシュアップ次第では、ゲームしながらお菓子を食べること以外にも様々な形での活躍が考えられるだろう。なんらかの障害によって片手しか使用できない方に向けたコントローラーとして機能するかもしれないし、あるいは高みを目指すゲーマーの中からは二つの手それぞれで個別のコントローラーを操作するというような猛者も現れるかもしれない。それにしてもAkaki、よくぞこんなことを考えたものだ。まずはその宛先不明な情熱に拍手を送りたい。もし興味があるという方はAkakiの動画を参考に、自身でもコントローラーを改造してみるのもありかもしれない。Akaki以上の片手用コントローラーを制作できた暁には是非ともご報告いただきたい。
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3Dプリンターは本当に環境に優しい? 鍵となるのは「再生可能素材」か
再生可能素材の最前線 3Dプリンターと環境問題については、様々な議論が交わされている。とりわけサステナビリティに関しては、従来の製造方法を超える大きな長期的な可能性があるとされている。ただ、課題がないわけでもない。3Dプリンターが廃棄物や資源の無駄遣いを減らすことになるのは、それがオンデマンド生産を可能にし、生産量を必要に応じて正確に計画することができるからだ。とはいえ、3Dプリンターを使ってこれまで以上に多くのものが製造、消費するようになったとしたら、これは意味がない。また物がやがて廃棄されるという点を踏まえるなら、使用素材の再生可能性も重要なポイントとなる。その上で、現在、注目されているのは、再生可能なフィラメントの開発だ。この流れはすでに数年前からある。生分解性材料、つまり自然に帰せば自ずと分解される材料の開発は、ポリ乳酸、通称PLAという形で様々に行われてきた。 パスタ製造の廃棄物でつくられた生分解性フィラメント たとえば有名なのはコーンスターチから作られたプラスチック代替品だ。ポーランドのスタートアップであるGREENFILL3Dは、ヨーロッパ最大の食品生産企業の一つであるMASPEXと行なった共同プロジェクトで、PLAや小麦ふすま、あるいはその他の生分解性成分から作られたフィラメントを使用して箱入りパスタのディスプレイを製造するというデモンストレーションを行なっている。 PLAがどれくらい環境に優しいかをめぐってはまだ議論の余地があり、その生産過程で大量の化石燃料を必要とする作物から作られているという点などは、慎重に検討されていかねばならない。しかし、GREENFILL3Dはすでに商品化されているパスタの製造過程において生じた廃棄物を積極的に使用している。確かにこの方法ならば、PLAを使用する量を今まで以上に低く抑えることができる。 その仕組みはこんな感じだ。まずMASPEXがGREENFILL3Dに廃棄された小麦ふすま材料を供給する。生の小麦ふすまはふるいにかけられ、乾燥させられる。その後、PLAを含む他の材料と組み合わされ、細いフィラメントワイヤに加工される。最後に、GREENFILL3Dは、Ender 3Dプリンターを使用して、小麦ふすまで構成される再生可能なフィラメントを素材に、小麦ふすまパスタのディスプレイスタンドをはじめとするさまざまなアイテムを出力していく。 環境問題への対策は複雑だ。あれを減らせばこれが増え、これを減らせばあれが増える。結局のところ環境問題を改善することのない堂々巡りがマーケティング都合で様々に展開されているというのが偽らざる現状でもある。しかし、そんな中でも環境への負担を微減させる技術が、少しずつ着実に生まれ始めている。もちろん3Dプリンティングがその中心的な役割を果たすテクノロジーであることは今も変わらない。
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見る角度によって絵柄が変わる! MITが開発した3Dプリント「レンチキュラー」
MITが3Dレンチキュラープリント技術を開発 レンチキュラーという技術をご存知だろうか。端的にいうと、かまぼこ状のレンズを用いて、見る角度によって絵柄が変化したり、3Dのような立体感が得られたりする印刷物を出力する技術だ。 いわゆる3Dポスターなどはこのレンチキュラー印刷によって作られている。見るたび、見る場所に応じて色味がガラっと変わって感じられるようなあの光学的な錯視効果はどこか魔法のようだ。子供の頃、レンチキュラー仕様の下敷きを使っていた同級生をとても羨ましく思っていたことを覚えている。実は昨年10月、マサチューセッツ工科大学のコンピューター科学人工知能研究所が、レンチキュラーを3Dプリントする方法を設計、これを発表した。さらに研究者たちはこのプロジェクトで開発された技術をオンラインでオープンアクセスで利用できるようにしたという。 マサチューセッツ工科大学のコンピューター科学人工知能研究所の論文http://groups.csail.mit.edu/hcie/files/research-projects/lenticular-objects/lenticular-objects-paper.pdf 実際に映像を見てみれば分かると思うが、やはりレンチキュラーは実に面白い。研究チームはすでに2年にわたってこのプロジェクトに取り組んできたという。使用したマシンはストラタシス社のPolyJet。クリアレンズとカラーパターンの両方を十分な解像度で曲面に3Dプリントすることでレンチキュラー特有の光学的効果が生み出された。最大の難関はレンズの研磨などの後処理だったという。 研究チームはこの技術の実証として4種のオブジェクトを出力している。ケトルベルと呼ばれるトレーニング器具(適切な姿勢で持っていると表示される絵が変わる)、ランプシェード(人がベッドに横たわった姿勢から見ると「おやすみなさい」と表示される)、スニーカー(履いている人だけにフロントのメッセージが見える)、イヤフォンケース(様々な彩りを放つ)だ。 あるいは専門家筋はこの技術を軍事部門におけるカモフラージュ技術に使用されるとも指摘している。アニメ化、映画化された人気漫画『攻殻機動隊』でおなじみのいわゆる「光学迷彩」だ。 いずれにせよ、レンチキュラーの3Dプリントが一般化すれば、3Dプリンティングの幅、想像力の可能性はまたグッと広がる。果たして、今後どのような3Dプリントレンチキュラーが生み出されていくのか、楽しみだ。
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Healshapeの「3Dプリント乳房」は乳がん患者を救うか?|バイオ3Dプリント技術によって飛躍する再生医療
乳房切除手術を受けた女性に乳腺再建の機会を バイオ3Dプリント技術を用いた再生医療の発展が著しい。とりわけ最近話題となったのが、3Dバイオプリント乳房の出力だ。研究しているのはフランスの再生医療会社Healshape。現在、Healshapeは患者自身の細胞を使用して乳腺再建用の3Dバイオプリント豊胸手術の生産を拡大するために680万ドルの資金調達を準備している。現在は前臨床段階にあり、15人の患者のサンプルで今後2年以内に臨床試験を開始することを望んでいるようだ。 画像引用:Healshape Healshapeが使用している技術はリヨン大学の超分子化学・生化学研究所が3D皮膚モデルを製造する企業であるLabSkins Creationsとともに開発された技術で、患者から採取された細胞を再組織することによって乳房の形を造形していく。使用されるインクは天然の吸収性ヒドロゲルを使用したバイオプロテーゼでありこれはHealshapeが2020年に開発したものだ。このバイオプリントされたインプラントは基本的に患者の解剖学的構造に基づくもので、生物学的インクから作られているためその組成は人間の組織の組成に近い。そのため、プロテーゼが配置されると、脂肪の移動によって患者自身の細胞がインプラントにコロニーを形成し、脂肪組織の自然な成長とバイオプロテーゼの完全な吸収が可能になるという。Healshapeによれば、移植後、数ヶ月以内に身体は平常な状態を取り戻すことができるようだ。 画像引用:Healshape Healshapeが想定しているのは、何らかの疾病により乳房切除手術を受けた女性に、乳腺を再建する機会を提供することだ。実際、今日では乳がんと診断された女性のほぼ半数が乳房を切除するための外科処置を受けている。もちろん、命を守ることが最優先ではあるが、乳房を失ったことにより精神的なダメージを受け取る方も少なくない。今回の技術では痕跡も残さずに6〜9ヶ月内に乳房を回復することができる。HealshapeのCEOは「女性が自分のイメージを受け入れ、再び自分の体に満足するために(この技術が)役立つことを願っている」と述べており、この技術が医療の現場になるべく早く導入されることを目指しているようだ。
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東京⇆サンフランシスコが6時間以内! 超音速ジェット機を3Dプリントするスーパーファクトリーがノースカロライナに開設
超音速ジェット機「オーバーチュア」 コロナ禍以降、値上がりを続けている輸送費は物流と人流に大きな影響を与えている。いまやどこに国も自国以外の製造物に頼って暮らしているグローバル社会においては、物流、人流のコスト上昇は極めて大きな問題だ。 そんな中、米国で国際的な物流、人流を担うことになるジェット機の工場が新たに開設されることが決まった。場所はノースカロライナ州のピエモンとトライアド国際空港、製造されるのは超音速ジェットとして知られるブーム・オーバーチュア社の「オーバーチュア」だ。 同機は最大88名の乗客を乗せ、マッハ1.7で飛行することで知られる。これはサンフランシスコと東京を6時間以内で結ぶことができる速度だ。すでに昨年、米国ユナイテッド航空が15機のオーバーチュアを発注し、話題となった。2030年までには実際にオーバーチュアに旅行客を乗せた飛行を開始する予定だという。空の旅は超音速の時代へと突入しつつあるのだ。 オーバーチュアの製造には3Dプリンターが多用 実はこのオーバーチュア、部品の多くが3Dプリントで作られていることでも話題となった。StratasysのFDMマシンや、VELO3Dの金属3Dプリンターなどで出力した部品が、マシンの重要なパーツとして多く使用されているという。もちろん、今回開設されるスーパーファクトリーにおいても3Dプリンターが多用されることは間違いない。 さらにこのオーバーチュアは燃料面においても革新的な取り組みを行おうとしている。ブーム・オーバーチュア社のCEOは航空機はすべて「持続可能な航空燃料を動力源とし、100%の純ゼロカーボン目標を達成する」と主張しており、超音速ジェットが環境面にも配慮したマシンであることを強調している。だが、まだ現段階においては燃料開発は中途段階にあり、今後の展開に注目が集まっている。 いずれにしても、物がより速く届き、目的地により速く到着することができるということは、シンプルに快適ではある。来たる超音速の時代を歓迎したい。
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キャサリン妃やエマ・ワトソンも愛用する木製バッグブランド「ROCIO」が業界を刷新する3Dプリントバッグを発明
セレブ御用達のブランド「ROCIO」の新展開 斬新なデザインが目立つ3Dプリントファッションの世界に新しいニュースが届いた。エコファッションブランドとして知られ、キャサリン妃やエマ・ワトソン、スーザン・サランドンやケイト・アプトンなども愛用していることで知られるROCIOと、スコットランド国立製造研究所の共同研究によって、3Dプリントされたシグネチャーハンドバッグが開発されたのだ。もとよりROCIOのハンドバッグはアカシアの木を原材料とし、およそ19段階のプロセスを経て個別に彫刻されている。エコロジーをテーマとする同ブランドは同時に長らくよりサステナブルで環境に優しい製造方法を模索もしてきた。 画像引用:ROCIO そんなROCIOが従来のどの製造形態よりも持続可能であると言われている3Dプリンターにたどり着いたのは半ば必然だった。3Dプリンターを用いれば、カスタマイズの可能性を増やし、製造プロセスの無駄を減らし、なおかつ従来の製造方法では実現できなかった複雑な構造体を作成できるようになる。独創的なバッグをエコロジカルに製造する上でこれ以上ない方法なのだ。さてROCIOの職人技とスコットランド国立製造研究所の専門知識を組み合わせる形となった今回のコラボレーションの結晶がこちらだ。 画像引用:ROCIO これはROCIOならでは木製バッグと同様の構造を持つハンドバッグの3Dプリントタイプだ。従来のROCIOのシルエットの美学を維持しつつ、製造面での無駄を大幅に削減することが実現された。さらに、今回は3Dプリントされた構造体を元にROCIOにとって初めての革製ハンドバッグが作られることになった。「私たちはこの結果に本当に驚いています」そう語るのはROCIOのクリエイティブディレクターであるハミッシュ・メンジーズだ。「制作された作品は芸術作品であり、このユニークな革製ハンドバッグのコンセプトは、構造化されたアートの形で卓越した美しさをもたらし、デザインの限界を押し上げると信じています」さらにメンジーズは語る。「私たちにとって、3D印刷されたプロトタイプの使用を検討することは、長期的にはより多くのコスト、時間、および材料効率をもたらします。このテクノロジーを使用することで、業界の将来の能力を解き放ち、受け入れながら、より持続可能性な取り組みを行っていく未来に一歩近づきました」なんでもこの3Dプリントバッグは早くも今年の3月のパリファッションウィークにてデビューする予定らしい。果たして世界のファッショニスタたちはROCIOが提示するこの新しい「スタイル」をどう受け止めるのか。3Dプリントファッションの夜明けは近そうだ。
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