動物を安楽死から救い出す3Dプリンター|義肢から義甲羅、呼吸装置まで
嘴、甲羅、尻尾、足…、動物の欠損した部位を3Dプリンターが補填する
医療における3Dプリント技術の活用についてはこれまでも様々に報告してきたが、これは獣医学においても同様だ。
とりわけ注目すべきは身体に障害を負った動物のための3Dプリント補填物だろう。
事故、病気、様々な事情により手足を失ってしまい、適切な動性を失ってしまった動物に対して、これまで多くの場合、安楽死という手法が取られてきた。これは動物整形外科医が世界的に見ても圧倒的に少なく、その他に道がなかったからだ。
しかし現在、3Dプリント技術がその状況を変えようとしている。
たとえば、クチバシを損傷したワシ。自分ではもはや食事をすることが不可能となっていたワシに3Dプリントされたクチバシを補填するという事例があった。現在、そのワシは再び野生に住んでいるという。もちろん、ワシだけではなく、タカやオオハシなどのクチバシをプリントした実例もある。
あるいは甲羅を失った亀にデスクトップ3Dプリンターで出力した新しい甲羅を付与するようなケース、さらにはワニが3Dシリコンの尾を手にいれるという事例もあった。
しかし、最も一般的なところでは義足だろう。最近ではネブラスカ大学のチームが、調整可能、取り外し可能、毒性がなく、コストのかからない動物の3Dプリント義肢のプロトタイプを発表して話題となった。
画像:ネブラスカ大学
この画像の義足、なんとわずか10ドルで製造できるという。これはオリーブという片足を失った猫のために作られたモデルで、実際にオリーブに装着したところ、まもなく新しい足に順応し、棚から飛び降りたり飛び乗ったりを始めたそうだ。
画像:ネブラスカ大学
もちろん猫ばかりではない。犬や馬、さらには象まで、あらゆる動物用に3Dプリント義肢が製造されている。いまや3Dプリント技術は動物医療に欠かせない存在となっているのだ。
DiveDesignとBionicPetsの挑戦
たとえば3Dプリント義肢の製造で知られるDiveDesignとBioniicPetsは設立以来、25000匹を超える動物を支援してきた。
元々、BionicPetsは手作業により義肢を製造していた。工程は非常に時間がかかるものであり、それゆえ需要の全てを満たすことができずにいたらしい。その後、DiveDesignと出会ったことにより3Dプリント技術を導入、それによってわずか4つのステップで構成される新しい義肢製造プロセスを考案したそうだ。
画像提供:BionicPets
現在、DiveDesignとBionicPetsはあらゆる動物の義肢装具を迅速に製造する世界でも最高の企業となった。なんでも最近ではアヒルの義足の製造を引き受けたのだとか。なんにせよ、一匹でも多くの動物が殺処分を免れ、3Dプリント技術の助けを借りて命を全うできるなら素晴らしいことだ。
今年の8月にはアメリカはミズーリ州の獣医と学生が、気管切開を受けた馬の呼吸装置を設計、3Dプリントしたというニュースもあった。これにいより馬は呼吸困難から救われ、気道閉塞を回避できたという。このプロジェクトを主導していた獣医は「このプロジェクトは、各動物用のカスタムデバイスが前進する方法であることを示したと思う」と述べている。
動物医療と3Dプリンターの蜜月はまだ始まったばかり、今後の進展に期待するばかりだ。