牛肉は「育てるもの」から「モデリングするもの」に!? 「サシ」まで調整可能な日本発の先端3Dプリントミート
大阪大学が開発した3Dプリント金太郎飴技術とは?
これまでもバイオ3Dプリント技術を用いたオルトミートについては数多く紹介してきた。
イスラエルのベンチャーであるRedefine MeatやスペインのNOVA MEATを始め、現在、世界各国で開発がおこなわれているこの技術に関し、日本もまた独自の展開を見せつつある。
和牛のアイデンティティといえば、やはり「サシ」だろう。アメリカ牛やオージービーフの弾力に富んだ「ザ・お肉」な感じももちろん魅力的だが、口の中に入れた瞬間にジュワっと肉汁が蕩けだし、噛むことが不要なほどに柔らかな和牛肉のあの甘美な味わいは、やはり他とは変え難いものがある。
今回、そんなサシのたっぷり入った霜降り和牛を3Dプリントすることに成功したのは大阪大学だ。
使用された技術は「3Dプリント金太郎飴技術」。培養した牛肉の筋繊維、脂肪、血管を繊維組織ファイバーとして細長く作り、和牛肉の組織構造をベースにそれらを束ねて3Dプリントする、というものだ。
何より嬉しいのは「サシ」の量を調整できることだろう。霜降り具合には好みもある。A5ランクのブランド牛だとちょっと脂が強くて、という方もいることだろう。そんな方にもちょうどいい霜降り具合にカスタマイズができるのだ。
チームが使用したのは和牛の幹細胞、それによって和牛が持つ複雑な食感を模倣しているとのこと。繊維構造はかなり複雑で42の筋肉、28の脂肪組織、2つの血管から構成されるらしい。写真で見ると、確かにかなりの霜降りっぷり。これは是非とも味わってみたいものだ。
「おふくろの味」から「おふくろの肉」へ
ところで、世界中でオルトミートの開発が急がれていることには理由がある。他でもない気候変動だ。
数年前までは「大袈裟なんじゃないの?」みたいに思われていた方も多かっただろう気候変動は、現在、誰もが肌で感じるレベルにまで進んでいる。その上で、問題視されているのが牛肉産業に由来する温室効果ガスだ。FAOによれば、世界の温室効果ガスの排出量の中で畜産業が占める割合は14%以上、中でも牛は特に多く排出し産業内の65%を占めている。
牛肉は食べたいが、気候変動もシャレにならない。だからこそオルトミートの出番なのだ。
もしそれぞれの培養が自動でできるようになれば、いつでもどこでも人工霜降りステーキを楽しめる。それはそれで新たな健康問題も生まれそうだが、それはそれとして。
ところで、それらが普及した際に現在のブランド牛たちの位置付けはどうなるだろう? あるいは絶妙な塩梅のオリジナル「霜降りデータ」が次代のブランド牛として売買されるようになるのだろうか? さらには、もはや「おふくろの味」じゃなく「おふくろの肉」みたいに、家庭それぞれに異なる3Dプリントミートが出力されるような日も来るのかもしれない。いずれにせよ、人類と肉食の関係は今大きく変わろうとしている。