古代生物は垂直に泳いでいた!? 3Dプリント技術が明らかにした絶滅種の生態
3Dプリンターで化石動物を精巧再現
3Dプリンターの用途は様々だが、近年、自然科学の世界で注目されているのが、化石データに基づいた3Dプリンターによる絶滅種動物の再現だ。
これは何も精巧なフィギュアを制作し、博物館に展示するためではない。最先端の3Dスキャン技術によって得られた3Dデータを3Dプリント技術で正確に再現することで、その知られざる生態を明らかにすることだ。
今回届いたのは、アンモナイトなどの古代種の研究を行うAMMlabの最新研究の成果である。研究チームのデヴィッド・ピーターマンとキャスリーン・リッターブッシュが3Dプリント再現に用いたのは古代の頭足類だった。頭足類とはタコやイカ、オウムガイなどの頭、胴、腕をもつ軟体動物種のこと。今回はオルソコヌスアンモナイトというイカのような形のアンモナイトの化石が3Dプリントで再現された。
画像引用:AMMlab
もちろん、外側の形状のみではない。数学的シミュレーションに基づき、軟体組織と身体内の空隙もリアルに再現。これによって古代動物がいかなる動態を持っていたのかが分析できるのだ。
最も効率的な移動方法は「垂直移動」だった
果たして、水中に3Dプリントアンモナイトを投入してみたところ、左右の動きが効力を生み出すことが判明、つまり彼らが移動するための最も効率的な方法は垂直移動であることが分かった。
画像引用:AMMlab
「おそらく実際のオルソコヌスは自分では自分の方向を変えられなかった可能性があります」とピーターマンは語る。
あるいは別研究においてはトルチコンアンモナイトの化石から3Dプリント再現が行われたのだが、ピーターマンによれば、「トルチコーンは回転の達人でした」とのこと。これもまた実際に出力してみたことで分かったことだ。
画像引用:AMMlab
いくらシミュレーション技術が発達したとしても、やはり実際に物質化することで得られる情報量はいまだに多いということだろうか。ピーターマンはこうした実験が「古代の生態系に対する私たちの理解を変える」と語っている。
3Dプリント技術によって明らかにされる生物の秘密。あるいは世紀の大発見として生物史を覆すような発見も今後出てくるかもしれない。引き続き注視していきたいと思う。