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FDM3Dプリンターを使用する上で最適のノズルのサイズは? 新たに浮上する「0.6mm」説
2022年8月31日

FDM3Dプリンターを使用する上で最適のノズルのサイズは? 新たに浮上する「0.6mm」説

  FDMノズルの最適サイズに関する新説登場   現在、デスクトップ型のFDM(熱溶解積層方式)3Dプリンターのほとんどは0.4mmのノズルを使用している。ここまで多くの人がさらに精緻な表現を求めてより小さいノズルを、あるいはさらなる高速印刷を求めてより大きなノズルを試してきたが、結局ほとんどのユーザーはその中間である0.4mmにこだわってきた。0.4mmノズル。すでにFDM3Dプリンターの常識といってもいいこの数値に対して、しかし、いま変化の時期が到来しているとしたらどうだろうか。その提案をしているのは3Dプリント動画を定期配信している人気YouTuberのThomas Sanladererだ。トーマスによれば最新版のスライサーソフトを使用する場合、0.4mmノズルは最適の選択ではないという。新たな推奨値は0.6mmだ。       0.6mm説の条件は「Prusa」のアラクネモード   トーマスは3Dプリンターユーザー系のYouTuberとしては非常に高い信頼を集めている。その理由は彼が机上の空論ではなく検証をベースとして論を展開するところにある。もちろん、今回も彼はその主張をするにあたり、きちんとテストを行っている。   どうやら今回のトーマスの主張と鍵となっているのは人気スライサーソフト「Prusa」のアルファ版で現在利用可能なアラクネモードのようだ。このアラクネモードは押し出す樹脂量をパスの最中に変更することで造形幅を可変させる技術で、元々はCuraが開発し、先行して搭載していた技術だ。このアラクネモードを使用することで、パスとパスの間に生じる小さなギャップを幅を変更することで埋めることができるため、パスの無駄がなくなり造形品質が向上すると言われている。造形物のディティールの精度に関してはFDMよりもSLAの方が上だ。これはすでに分かりきっていることである。確かに今回の0.6mmノズル&Prusaアラクネモードを試してみたところで、その差が完全に埋まることはないだろう。ただ、下の動画を見ればわかるように、トーマスは今までFDMではうまく出力できなかったものを、この新設定とスライサーによって出力してみせている。       細かい設定などは是非動画を参考していただくとして、まずは試してみてほしい。いずれにせよ、昨日の常識が今日の非常識であるというのはテクノロジーの常である。今の推奨値に安住せず、より最適解を目指して、新たな設定を野心的に試し続けていきたいものだ。      

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植物の感情を表現するプランターが話題に|3Dプリンターで自作も可能
2022年8月25日

植物の感情を表現するプランターが話題に|3Dプリンターで自作も可能

  もし植物ともっとコミュニケーションができたら   仕事の都合もあり動物のペットを飼うことは難しい。だけれど、せめて日々の暮らしに彩りを添えたい。そんな思いから観葉植物を家に飾っている方は少なくない。確かに、植物は散歩に連れ出す必要もなければ、動物のように排泄物の掃除や世話をする必要はないだろう。ただ、植物もまた生命であることには変わらない。日光や水分をはじめとする適切な栄養を補給しなければ、瞬く間に枯れてしまう。かくいう筆者もまた基本的には手入れが難しくないはずのサボテンをさえ枯らしたことがある。もちろん、放置していたわけではない。逆に干渉しすぎたのだ。世話焼きのつもりで水を大量にあげすぎていたことで、根腐れを起こしてしまったのである。植物のプロであれば、おそらくそうなる前に植物から発せられるサインを読み取っていたはずだ(そもそも水をあげすぎたりはしないだろうけど)。だが、植物の素人にとって植物から発せられるサインを読み取るのはたやすくない。そのサインに気づいた頃には、植物はすっかり枯れきってしまい、再起不能になっているというケースも少なくないだろう。もし植物の感情が、表情が、もっと簡単に読み取れたら、どんなに良いことか。枯らさないで済むだけじゃなく、もし彼らの気分をシェアできるなら、動物のペットに対して抱くような親密な感覚だって味わえるはずだ。実は今、植物の気分が一目で理解できるプランターが話題となっている。その名はFytó。このスマートプランターが実現したのは、植物に豊かな表情を持つ「顔」を与えることで、それらをペットに変えることだ。     植物の感情を表現するプランター「Fytó」   Fytóは Raspberry Pi 2W上で動作し、容量性土壌水分センサー、LM35温度センサー、および光レベルを検出するLDR モジュールに基づく、植物の6つの感情をアニメーション絵文字を用いて表現してくれるプランターだ。植物の状態が満たされている時、Fytóは幸せそうな顔をしている。あるいは、適切なタイミングで水を注いであげると唇をなめて「美味しい」と言わんばかりの顔をしてくれる。光が足りていない時は眠たそうに見える。水を必要としている時は、Fytóの顔は汗まみれになり、やがて顔が赤くなり、カラカラになる。あるいは熱くなりすぎているときは体温計を咥えて熱っぽい顔に変わる。     これはいわば植物の擬人化だ。その表情は確かに植物の状態とリンクしているが、普段ならそれは単なる状態としてしか認識できない。しかし、そこに「顔」が付与され、共感力を刺激する様々な表情を示されると、途端に状態は感情として認知され、あたかも植物と人間的なコミュニケーションを取っているかのように錯覚してしまうのだから不思議だ。今回のFytóではアニメーション絵文字が採用されているため、その感情表現はごくごくシンプルなものだ。ただ、センサーをより精緻にしていけば、これ以上に複雑な表現を植物に与えることだってできるかもしれない。付属する「顔」も、より人間的にリアルなものにして、さらに言葉でそれを表現する機能も付与したら、もはや植物がペットを超えて、友達や家族の領域に達する日だってくるかもしれないだろう。そう思うと、Fytóは新しい人間と植物との関係のひとつの画期となるかもしれない。ところで、なぜ今回このFytóを取り上げたのかというと、Fytóのこのポップなボディは3Dプリンターで作られたものなのだ。この流線的なシルエットもまたFytóの近未来感を演出する上で欠かせない。新しいアイディアの実現は3Dプリンターと共にある。ちなみにこのプリンターは販売されているわけではない。youtubeやサイト上で作り方も公開されている。気になった方、是非この新時代のプランターの自作を試してみて欲しい。 作り方紹介サイトhttps://www.instructables.com/Fyt%C3%B3-Turn-Your-Plant-Into-Pet/     

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Androidユーザー待望の3Dスキャンアプリ「Kiri Engine」の評価と将来性
2022年8月23日

Androidユーザー待望の3Dスキャンアプリ「Kiri Engine」の評価と将来性

  ほとんどの3DスキャンアプリはiOS向け   3Dスキャンに初挑戦しようという方にとって、3Dスキャナーをいきなり購入するというのは、ややハードルの高い選択かもしれない。実際、3Dプリンターユーザーの中でもスキャナーまで揃えているという人はまだ限られている。現状で最もハードルの低い3Dスキャンの方法はスマホのアプリだろう。現在、多くのスマホでアプリさえ入れれば3Dスキャンが可能となっている。もちろん、高品質の3Dスキャナーと比較すればその能力は目劣りせざるを得ない。しかし、まず手軽に3Dスキャンに挑戦するという上で、3Dスキャンアプリは非常に優れた選択肢だと言える。ところで、ここにひとつ問題がある。現在、メジャーな3Dスキャンアプリのほとんどが「iOS」向けに作られているということだ。つまり、Androidユーザーの場合、これらを使えないということだ。ただしAndroid向けの3Dスキャンアプリが全くなかったわけではない。それらは一応存在するにはしていたのだが、正直なところ機能は低く、また使い勝手が悪いと酷評されていた。そんな中、昨年末頃より、Androidユーザーでも使用でき、かつ機能も優れていると評価の高い3Dスキャンアプリが登場したと話題になっている。Kiri Engine。それがそのアプリの名称だ。       基本は無料だけどプレミアムコースも   Kiri Engineは2021年12月よりPlayストアで利用開始となった3Dスキャンアプリだ。基本的な機能は、これまで存在した3Dスキャンアプリと変わらない。基本的には無料で使用でき、ログインしなくともスキャンまではできるが、スキャンしたデータをダウンロードする場合は、アカウント登録が必要になる。   無料アカウントの場合は1週間に3つまでデータをダウンロードできるが、それ以上ダウンロードしたい場合はトークンを購入することになる。1回につき0.99ドル。決して高額ではない価格設定だ。       またプレミアムコースも存在していて、こちらを利用すると、スキャン一回の画像数が通常の70から200に増加する。さらにブラウザベースの写真アップロード機能など、通常コースにはない機能がいくつか利用できるようになる。     Kiri Engineの3Dスキャンのクオリティは?   で、実際に使用した際のクオリティはどうかといえば、必ずしも現行のスマホ用3Dスキャンアプリの最高レベルには達していないものの、Android対応の3Dスキャンアプリとしては、これまでで最高の機能性を持っているというのが大方の評価のようだ。とりわけその使いやすさ、シンプルさは好意的に受け止められており、またDiscordを通じてユーザーから得たフィードバックを踏まえた定期更新が行われているという点も将来性を含めて期待値は高い。現状では後処理は必須になるが、今までAndroidユーザーであるがゆえに3Dスキャンアプリを使ってこなかった人たちにとっては、待望のアプリであることは間違いない。なにはともあれ、百聞は一見にしかず。まずは無料コースだけでも試してみるのが良いのではないだろうか。    

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マッハ5を超える「ハイパーソニック」飛行サービスが来年にも提供開始か? 実現の鍵を握っているのは3Dプリント技術
2022年8月21日

マッハ5を超える「ハイパーソニック」飛行サービスが来年にも提供開始か? 実現の鍵を握っているのは3Dプリント技術

  スーパーソニックを超えるハイパーソニックとは?   近年、「超音速」というワードが注目を集めている。この「超音速=スーパーソニック」とはマッハ1を超える速度のことを指す言葉で、現在ではおよそマッハ1.3〜5の範囲についてそう呼ばれている。現在、軍などで使用されているジェット戦闘機の最高速度がこの範囲にあるとされているが、近年では旅客機にも超音速機が登場し、海外旅行にかかるフライト時間が大幅に短縮されると話題になっていたのだ。一応、解説しておくと、マッハとはすなわち音速のこと。マッハ1を時速1225kmとするのが現在では一般的で、つまりこれ以上の速度で動くものは超音速にカテゴリーされることになる。       それにしてもすごい時代になったものだ。「スーパーソニック」と聞けば英国のロックバンドOASISの不朽の名曲がまず思い浮かぶものだが、あの歌詞においては気分の高揚感を自分が体験したことがない速度に喩えて「スーパーソニック」と表現していただけだった。それがいまや一般人がスーパーソニックで移動する時代になったというのだから、隔世の感がある。ところで、近年、実はこの「超音速=スーパーソニック」を超える速度についての研究が飛躍的に進んでいるという話をご存知だろうか。その名も「極超音速=ハイパーソニック」。その速度としての定義は、なんとマッハ5.0以上。人類は再び新しい壁を越えようとしているようだ。     3Dプリンターはマッハ5の旅を実現するか   極超音速はこれまでスペースシャトルの再突入時の速度と、その際に生じる特殊な現象(衝撃波層の出現など)のことを指して使ってきた言葉だった。しかし、2022年の頭に米国政府が、極超音速航空機のテストを米軍が開始しているということを発表したことで、その一般実用化の実現がいきなり射程に入ってきた。そして注目すべきは、この極超音速域の研究において大活躍しているのがAM企業、つまり3Dプリント技術だということだ。極超音速域においては、様々な特殊な状況が発生する。そのため、極超音速航空機の製造においては、こうした様々な状況に耐えうるエンジンやボディパーツが欠かせない。これは基本的に実験によってトライ&エラーを繰り返すしかないのだが、そのための最適な設計を考案し、実際に形にするまでにかかる時間を、3Dプリント技術が大幅に短縮しているのだ。たとえば極超音速域の研究をしているパデュー大学のザクロー研究所では、主にVELO3Dという3Dプリンターを使用しているそうだが、実際、研究者たちはこの研究にVELO3Dが絶対に不可欠であるということをメディアの取材に対して述べている。   VELO3D 先日も米国のStratolaunch社が、極超音速航空機「Talon-A」の実験を年内に実施すると発表して話題になった。同社のCEO兼社長のZachary Krevor博士は「当社の極超音速航空機Talonが、極超音速条件の広範な設計範囲を達成するために必要な機体性能を実証している」と話しており、同社の公式Twitterアカウントは、Talon打ち上げに必要な高度まで到達可能であることを示しているとツイートしている。さらには2023年には極超音速飛行サービスの実用化を進めたいとも話しており、ハイパーソニック時代の到来は決して夢物語ではなくなってきているのだ。   Stratolaunch社の双胴航空機「Roc」。同社はRocにTA-0を装着し空中で発射分離する試験を2022年中に実施する可能性があるという。 果たして、人類が気軽にマッハ5を超える速度で国々を行き交う日は訪れるのだろうか。実現へと向かう速度をハイパーソニック化させるための鍵を握っているのは3Dプリント技術かもしれない。    

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「まるで煮込み牛肉のよう」すでに多くの高級レストランでも採用されている3Dプリント代替肉の最前線
2022年8月17日

「まるで煮込み牛肉のよう」すでに多くの高級レストランでも採用されている3Dプリント代替肉の最前線

  高まるオルトミートへの関心   これまでも3Dプリント人工代替肉(オルトミート/ビヨンドミート)については多く取り上げてきた。いまや活況を呈しているその業界において、とりわけ初期より技術的にオルトミート産業を牽引しているのがイスラエルのベンチャーRedefine Meat(以下、RM)だ。同社の製造するオルトミートは、植物ベースの成分を肉の構成によく似た複雑なマトリクスとして積層させることで、動物のリアルな肉と同じ外観や食感、風味を再現していることで知られている。   Redefine Meat https://www.redefinemeat.com/ RMが注目を浴び出したのは2010年代の後半頃。当時はまだ3Dプリント代替肉については、世間的にも全く知られておらず、また世間の関心も今ほどに高くなかった。あれから数年、環境問題への意識の高まりとともに、食糧危機に対する有効な解決策として人工代替肉に注目が集まり始めた。2021年には、マイクロソフトのビル・ゲイツやアマゾンのジェフ・ベゾスなども、人工代替肉について発言して話題となった。ビル・ゲイツは「すべての富裕国は100%合成牛肉産業へとシフトすべきだ」という考えをインタビューにおいてはっきり示し、ジェフ・ベゾスもまた”家畜からの世界的な温室効果ガス排出量 “を削減するためには、オルトミートを開発している企業に積極的に投資していく必要性があるだろうと、雑誌《WIRED》の取材に答えている。さらに同年の資金調達ラウンドにおいて、にRMは2900万ドルを調達。この資金を元に産業用代替食肉(オルトミート)3Dプリンターの大規模生産施設を建設、いよいよ世界市場へと自社のオルトミートの流通を開始しようとしている。   なぜRedefine Meetに注目が集まるのか   このように、RM、そして3Dプリント人工代替肉は、現在、非常に大きな注目を集めているわけだが、もちろん、それが食肉である以上、重要なポイントとなるのは「味」だ。いかにそれが先進的な技術によって作られ、環境問題の解決に向けて有効であると言っても、おいしくなければ人々に普及することはない。この点に関しても、RMのオルトミートの評価は高い。たとえば英国で最も有名なシェフの一人であるマルコ・ピエール・ホワイトは、最近、彼の手がける多くのレストランでRMのオルトミートを取り扱っている。ホワイトは肉の多いイギリス料理とフランス料理を専門とするシェフだ。その彼が他のオルトミートではなく、RMのオルトミートを選ぶ理由は、その食肉としてのクオリティが高いからに他ならない。現在、ヨーロッパでは、すでにオルトミートを提供しているレストランは少なくない。ホワイトのレストランも同様だ。実際、その味はどうなのか。そこに関し、最新の「3DPRINT.COM」の記事では、ホワイトのレストランが提供しているオルトミートのステーキを実際にライターが食し、それについてのレビューを行なっている。レビュアーによれば、見た目は「ステーキのようには見えなかった」と書いている。それは確かに肉には見えたが、いわゆる「ステーキ」ではなかったらしい。さて、味と食感はといえば、やはり「ステーキ」とは違うものだったという。だが質感的には明らかに肉だったとも書いている。本物の肉と同様の不規則で柔らかな歯ごたえのある繊維質の食感は、どちらかといえば「煮込み牛肉」のようだった、と。     総評としては、RMのオルトミートは完璧ではないが、レビュアーがこれまでに試した他のどの代替肉製品よりも本物の肉の触覚を再現している、というものだ。もちろん、技術は日々進歩している。これはあくまでも2022年の最前線の代替肉がそうであったという話だ。   日本のネクストミーツにも注目   ちなみに日本にも欧米と比較した場合に数は少ないもののオルトミートを提供しているレストランは存在する。多くはベジタリアン向けの植物由来肉として提供されているようであり、今のどころRMを使用しているレストランの話は聞かない。あるいは3Dプリント代替肉の開発を行う日本の企業としては「Nexxt Meats(ネクストミーツ)」が注目だろう。同社は「地球を終わらせないために」をスローガンに、2020年に立ち上げられた代替肉開発、製造、販売の企業で、すでに「NEXT牛丼」や「NEXTメンチカツ」など自社商品の販売も行っている。コンビニやスーパーでも店舗によっては取り扱いがあるため、すでに食べたことがあるという方もいらっしゃるかもしれない。   Next Meats|地球を終わらせない https://www.nextmeats.co.jp/ いずれにしても2022年を一つの境に3Dプリント人工代替肉の猛進撃がようやく始まりつつあるという印象がある。今後の動向から目が離せない。  

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紫外線から近赤外線へ? 光造形3Dプリンターに迫る大転換
2022年8月5日

紫外線から近赤外線へ? 光造形3Dプリンターに迫る大転換

  近赤外線を使用することは紫外線を使用する場合と比較して様々な利点がある   光造形ユーザーにとっては寝耳に水かもしれない。ご存知のように、光造形3Dプリンターとは、液体レジンに紫外線を当てることによって硬化し、オブジェクトを造形する3Dプリンターのことである。光で造形するから光造形。そして、その光とは他でもない紫外線のことだ。これまで様々な光造形3Dプリンターが生産されてきたが、この基本設定に関してはいずれのマシンも共有していた。しかし、もしかすると、近い将来、その基本の部分が変わってしまうかもしれない。現在、テキサス大学オースティン校の研究者たちはある研究を進めている。その研究とは、近赤外線(NIR)を使用した光学3Dプリントの研究だ。研究チームによれば、近赤外線を使用することは紫外線を使用する場合と比較して様々な利点があるという。一体どういうことだろうか。研究チームいわく、紫外線にはある欠陥があるという。それは紫外線には特定の材料を劣化させ、媒体を傷つけてしまうという性質があるという点だ。また、光の波長を短くすると、解像度が低下し、硬化速度が遅くなるという問題もある。彼らによれば、近赤外線を用いた場合、その問題は克服されるという。彼らが提唱しているのは、急速な光硬化を可能にするNIR吸収シアニン色素という光を、ナノ粒子を注入したレジンに照射する3Dプリントのようだ。実際、それがどの程度変わるのかといえば、いわく一層あたり60秒という速度と、300マイクロメートルの解像度が今すぐにでも実現可能とのこと。これは確かにすごい。     上がデジタルファイル、下がNIRとカスタムレジンを用いた実験プリント。(テキサス大学オースティン校) ただし、現状でこのデータはあくまでも概念実証に基づくものだともいう。まだ具体的な近赤外線3Dプリンターの開発が行われているわけではなく、その事前段階における実験ということだ。しかし、これが光造形の世界を根底から揺るがす可能性を秘めた研究であることは間違いないだろう。光造形推しのSK本舗としては、今後の研究の発展に注視し続けたい。

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3Dプリンターが食を「芸術化」する?|BluRhapsodyが起こしたパスタ革命
2022年8月4日

3Dプリンターが食を「芸術化」する?|BluRhapsodyが起こしたパスタ革命

  これまでのパスタの概念を3Dプリンターが覆す   パスタには様々な種類がある。スパゲッティ、ペンネ、リングイネ、フェットゥチーネ。ただ、これらはいずれも基本的には同じ方法で作られる。パスタの原料である穀物を捏ねたものを、押し出し機によってそれぞれの形に成形するのだ。今では家庭用パスタ製麺機などもメジャーだ。それらを用いれば本当に簡単に自家製の生パスタを作ることができる。作れるパスタの種類も豊富で、なおかつ原材料の配合なども自在。筆者も使用しているが、料理前に気軽に製麺できるのは嬉しい。それにどこか製麺機を使ってパスタを押し出していく感覚は、3Dプリンターで好きなものを出力している時の感覚にも似ている。ただ、これまでは製造できるパスタの形状にはある制約があった。その制約とは押し出し機によって成形可能な形状であること。たとえば、どうしても成形が難しいのは球体形だ。あるいは、より意匠を凝らした複雑なフォルムのパスタを作ろうという場合、押し出し機では限界がある。そこを変えたのが3Dプリンターだ。     BluRhapsodyの革新的な3Dプリントパスタ   パスタの本場であるイタリアでは、すでにパスタメーカーBarillaとオランダの科学調査会社TNOとのコラボによる、BluRhapsodyというプロジェクトが立ち上がっている。このBluRhapsodyが行おうとしているのが、3Dプリンターを用いたパスタの形状革命だ。実際、このプロジェクトの成果は目覚しい。すでに彼らは全く新しい形状のパスタの3Dプリントに成功している。その形状は実に様々だ。公式サイトを覗いてみると、まるで木ノ実や貝殻、あるいは陶器のような、独創的なパスタの写真が並んでいる。これらはいずれも従来の押し出し機では作ることが難しかったものだ。     BluRhapsodyの様々な3Dプリントパスタhttps://blurhapsody.com/prodotto/forme-pasta-stampata-3d/ 使用されている食材は、最高級の穀物から得られるセモリナなど厳選された最高品質のものとのこと。料理人たちは3Dプリント技術によって、自然や季節の味からインスピレーションを受けて、これまでよりも自由に、かつ高度にカスタマイズされた、芸術作品としてのパスタを作ることができるようになったのだ。   現在、BluRhapsodyの3Dプリント製パスタは通販でも販売されているものの、発送先はイタリア、英国、スイスのみに限定されており、残念ながら日本への通販は行なっていない。是非とも実際に食べて試してみたいところだが、今しばし待つ必要がありそうだ。   いずれにしても3Dプリント技術が、食の可能性をこれまで以上に拡張しつつあることは間違いない。今後も引き続き注目していきたい。

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米国企業が3Dプリンターを使って電気自動車を完全自動製造|オートメーションと〈ものつくり〉の未来とは?
2022年8月2日

米国企業が3Dプリンターを使って電気自動車を完全自動製造|オートメーションと〈ものつくり〉の未来とは?

  3Dプリント技術が目指している到達点   3Dプリンターの本質は立体物を自動で出力することにある。 つまり、その理想形は、造形から組み立てに至る製造の全行程を、オートマティックに行うことにある。それも、シンプルな構造のオブジェクトのみにとどまらない。大量の部品によって複雑に構築されたような精密機械も、その射程には含まれている。たとえば自動車だ。すでに自動車業界は部品やカスタムパーツに関して、多く3Dプリント技術を導入している。世界各国の名だたる自動車メーカーにとって3Dプリント技術はすでになくてはならない技術になっている。ただ、現状において自動車一台を丸々3Dプリントしたという例はない。パーツそれぞれは3Dプリントすることが可能だとしても、それらを組み立てていく過程において、なんらかの手作業の介入が必要とされてきた。今、米国アーカンソー州に本拠を置くAMBOTSが、そうした状況に一石を投じようとしている。AMBOTSが試みているのは、自動車の完全自動製造だ。今回、AMBOTSが行なった小規模なデモンストレーションは、その可能性を十分に示すものだった。       小型電気自動車を製造するAMBOTSのオートメーション   AMBOTSのデモンストレーションでは、同社の3Dプリント技術がロボットプログラムと接続することによって、自動車製造の全行程を自動で行うことが試みられた。まず3Dプリンターが電気自動車のフレームを製造、さらに別の3Dプリンターがカバープレートを印刷する。その工程が終わると、輸送ロボットが3Dプリンターを移動させ、他のコンポーネントを3Dプリントしていく。こうしてパーツの全ての3Dプリントが完了すると、ピックアンドプレースボットに自動的に搬入され、それらの組み立てがロボットによって行われる。残念ながら、その際に取り付けられる、モーター、バッテリー、マイクロコントローラーなどは既製のものだが、組み立ては基本的にオートマティックに行われる。組み立て後の接着硬化も同様で、レーザーボットが自動的に行なってくれる。ちなみに、こうした様々なマシンの移動を制御するのは、作業領域に設置されたグリッドフロアだ。このグリッドフロアが、製造工程の全体を管理する監督の役割を果たしていく。こうして完成したのが以下の小型電気自動車だ。   製造工程のオートメーション化については、20世紀を通してその実現がさまざまに目指されてきた。しかし、それは常に障壁に阻まれてもきた。進歩した3Dプリント技術は、その最後の障壁を突破するポテンシャルを秘めている。今回、AMBOTSはその夢がかなりの高い水準で実現しつつあることを示した。ここからの課題は、それが実際の製造タスクに適用できるかどうかを検討していくことだろう。少なくとも、今回の作業領域を、実際の工場のサイズにスケールアップすることは技術的、物理的にも可能だと言われている。こうした自動製造が一般化した暁には、自動車の製造コストは大幅に抑えられることになるだろう。   もちろん、労働の現場から人間の役割をこれ以上減らして良いのだろうか、という問いもある。しかし、それはまた別の議題だ。あらゆるものが自動化されたとしても手仕事の魅力が消えるわけではない。むしろ、その時ようやく「ものつくり」は次の段階に入るのだと言えるかもしれない。      

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世界が注目する3Dプリント製バイオリン「Karen」|リリースしたのは日本の楽器メーカー
2022年7月25日

世界が注目する3Dプリント製バイオリン「Karen」|リリースしたのは日本の楽器メーカー

  長野の楽器メーカーが開発した3Dプリント製バイオリン 楽器の3Dプリントに関してはこれまでも種々の楽器の出力が試されてきた。しかし、そのほとんどは、「試しに出力してみた」というレベルのものでもあり、大規模な生産工程で利用できる高価な3Dプリント楽器となると、これまでほとんど例がなかったのも事実だ。そんな状況を、ある楽器メーカーが変えようとしている。KATAHASHI INSTRUMENTS、この日本の長野県の楽器メーカーが開発したある3Dプリント楽器が、今世界中の3Dプリントメディアから注目を集めている。今回、KATAHASHI INSTRUMENTSがリリースしたのは、スペインのデザインスタジオ Anima Design が提供するコンピュテーショナル・デザイン・システムによってデザインされた未来的な3Dプリントフレームを搭載したエレクトリック・バイオリン「Karen(可憐) Ultralight」だ。   楽器の基礎となる部分の全てを設計したのはKATAHASHI INSTRUMENTS。そこに加えてAnima Designが計算設計システムを使用して人間工学に基づき、可能な限りでの軽量化を果たした。肝心のボディはリサイクル可能なナイロン素材を使用して3Dプリント、さらにネック部分はバーチフィンガーボードを備えたメープルウッドで作られている。もちろん、バイオリンをアンプに接続するための1/4インチのジャック、9Vバッテリーで駆動するプリアンプ、アクティブ/パッシブスイッチ、ヘッドフォン出力、さらにトーンコントロールノブも搭載されている。気になる価格は1850ユーロ。ブラックピアノ、パールホワイト、ダークプラチナ、レッドカッパーの4色の展開だという。もちろん、新しいのは製造法ばかりではなく、音質にも徹底したこだわりが反映されているという。KATAHASHI INSTRUMENTSのサイトによれば、この新しいバイオリンを「Karen(可憐)」と名付けたのは、女性らしい華奢な体型に加えて、立ち居振る舞いがエレガントである、という意味を込めてとのことらしい。実際、そのフォルムは実に独創的だ。   かつてなら楽器職人が複雑なデザインを求めた場合、それは数ヶ月、あるいは数年の作業を必要とするものだった。あるいは、使用している材料の特性に応じて、試みることが不可能な形態も多くあった。今回のKarenのフォルムも、3Dプリント技術なしでは実現しえない未来的なフォルムとなっている。果たしてKATAHASHI INSTRUMENTSの挑戦は、バイオリンユーザーたちにどのように受け止められるのだろうか。現在、ホームページより実際にKarenを購入することができるようになっている。日本の技術をベースとした楽器の未来を切り拓くエレクトリックバイオリン。気になる方は是非チェックしてみてほしい。 KATAHASHI INSTRUMENTShttps://katahashi.com/  

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人体のスペアパーツを3Dプリントする時代に|小耳症患者を救う「AuriNovo」の挑戦
2022年7月17日

人体のスペアパーツを3Dプリントする時代に|小耳症患者を救う「AuriNovo」の挑戦

  個人に合わせて新しいカスタムボディパーツを3Dプリント   人体の修復に関しての大きな問題。それはスペアパーツを入手するのが難しいということだ。いかに医学が発達した現代においても、膝関節や新しい肺をすぐに購入するということは不可能だからだ。その際、医師と外科医が提示するオプションとしては、ドナーからの移植というものがある。しかし、これらは常に不足しており、さらに患者の体に拒絶されてしまうリスクもある。では個人に合わせて新しいカスタムボディパーツを3Dプリントすることができればどうだろう。おそらく、多くの問題を解決することができるようになる。この可能性に関して、3DBio Therapeuticsによって開発された新しい人工内耳が、新しい一歩を踏み出そうとしている。       バイオ3Dプリントされた自分の耳   その新しい3Dプリント・インプラントは「AuriNovo」と名付けられた。これは「新しい耳」という意味を持つ言葉で、主に小耳症と呼ばれる、耳の先天異常を補うように設計されている。小耳症は耳の先天異常のうち変形が一番強いものと言われ、耳の形が完全にできあがらなかったため、耳が通常よりも小さいものを呼ぶ。世界的にみて地域差のデータはなく、頻度は、およそ1ー2万人に1人の割合だと推定されている。現在の治療法は、患者の肋骨から軟骨のサンプルを採取し、それを手作業によって典型的な耳の形に似せ、移植するという方法が一般的だ。これは、患者自身の細胞から作られているため、拒絶の可能性が低い状態で移植することができる。あるいは、インプラントを合成材料から作り、皮膚の下に配置するという方法もある。AuriNovoが採用しているのも基本的にはこの方法だが、AuriNovoは従来の方法とは異なり、肋骨から大量の軟骨を採取する必要はないという。代わりに、先駆的な手術によって、患者の既存の耳の構造から生検としてわずか0.5グラムの軟骨を採取する。そこから、軟骨細胞と呼ばれる特殊な細胞を分離し、その後、独自の栄養溶液で培養され、数十億個に増殖させていく。患者のサンプルから成長した軟骨細胞は、コラーゲンベースの「バイオインク」と組み合わされる。こうして得られた混合物が、生物学的構造を作成するために特別に構築された3Dプリンターによって新たな耳として造形されるというわけだ。インクとプリンターはどちらも、合併症や患者の体からの拒絶の可能性を減らすために、すべてを無菌状態に保つように特別に設計されているという。さらに、耳にはサポート用の特別な生分解性オーバーシェルが与えられ、冷蔵で出荷され、到着後すぐに、印刷された構造が患者の皮膚の下に埋め込まれる。オーバーシェルは、時間の経過とともに体に吸収され、印刷された軟骨構造のみが残ることになるのだ。     「AuriNovo」が見据えるカスタムボディパーツの未来   これが「AuriNovo」の3Dプリントに関しての一連の流れだが、これはまだ初期の段階であり、現在、11人の患者を対象とした臨床試験が進行中だという。ただし、見通しは良好で、結果として得られる構造は、生体適合性のある材料と、患者自身から成長した細胞でできているため、拒絶反応の恐れはない。さらに、インプラントは生体材料でできているため、柔軟性を維持し、通常の人間の耳の質感を長期間維持することができるとも言われている。外耳の構造は比較的単純であり、複雑な生化学、静脈、または神経を伴わずに、主に単一の材料で作られているという利点がある。したがって、耳の再建は、新しい体のパーツを最初から作成するという試みにおいて、出発点的な位置付けになると言われている。このプロジェクトの成果は、より機械的な複雑さを伴う部位の交換に取り組む科学者にとっても大きな示唆に富むものになるはずだ。長期的な目標としては、腎臓や肝臓などの臓器全体を3Dプリントすることが含まれている。もちろん課題もまだ多く残されてはいるが、AudiNovoは、カスタムボディパーツをオンデマンドで3Dプリントできる新しい未来への確かな第一歩であることは間違いない。

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次の注目すべき素材は「小麦ふすま」?|デスクトップ3Dプリンターで技術革新を
2022年7月17日

次の注目すべき素材は「小麦ふすま」?|デスクトップ3Dプリンターで技術革新を

  デスクトップ3Dプリンターで技術革新   昨今、3Dプリント素材の多様化が進んでいる。従来の金属粉末やプラスチックなどの素材に加えて、現在は環境時代を意識した、よりオーガニックな素材を3Dプリントする試みが各方面で行われているのだ。たとえばポーランドの新興企業GREENFILL3Dは、小麦ふすま3Dプリント原料の用途を拡大している。GF3D Branfillと呼ばれる3Dプリント材料を製造するために、同社が組み合わせたのはPLAとパスタ製造時に排出される廃棄物だ。これまで、同社はフィラメントを使用してポップアップのPOSスタンドを3Dプリントしてきたが、現在はDeckard Designと協力して、ふすまで満たされた部分にフルカラーのUVラベルを追加した鉢植えの植物ラベルを3Dプリントしている。   Deckard Designとはポーランドで家具装飾に関するガジェットを提供する企業であり、これまで主に北米、ヨーロッパに向けて自社の3Dプリント製品を流通させてきた。今回の3Dプリント植物ラベルは、庭に植える可能性のある植物やハーブの説明用に使用できるという。素材となった小麦ふすまは部品の表面仕上げを改善するばかりでなく、部品を丈夫にもするらしい。カラフルな着色技術もまた庭を彩るのに最適だ。またさらに注目すべきは、両社が非常に安価なデスクトップ3Dプリンターを使用して今回の技術革新に挑んでいる点だ。これはつまり、数万円の3Dプリンターを購入する余裕がある人なら誰でもこのテクノロジーに参画できるということ。これこそまさにイノベーションの民主化というものだろう。   彼らがこれらの生産をうまくスケールアップすることができれば、低コストの基盤を持つビジネスモデルとして、今後、大きな市場へと育っていく可能性もある。チャンスは至るところに転がっているのかもしれない。

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3Dプリント月面基地「LINA」のデザインをNASAが発表|SF映画のような未来的デザインが話題に
2022年7月17日

3Dプリント月面基地「LINA」のデザインをNASAが発表|SF映画のような未来的デザインが話題に

  世界初の3Dプリント月面基地「LINA」とは   NASA のフィールドセンターの一つである宇宙建築テクノロジー企業 AI SpaceFactory が、ケネディ宇宙センターのエンジニアらと共同で開発した、世界初の3Dプリント月面基地「LINA(Lunar Infrastructure Asset)」のデザインを発表、その未来的なフォルムが話題となっている。   そもそも3Dプリント月面基地「LINA」とは、NASAの共同研究発表プロジェクトとして、月面に安全な避難所型構造物を建設することを可能にする技術の開発に焦点を当てた「Relevant Environment Additive Construction Technology」プロジェクトのひとつとして始まったものだ。今後 AI SpaceFactoryとケネディ宇宙センターは、「LINA」を具現化するための技術と材料開発を発展させていく予定だという。     ちなみにこのプロジェクトの背景にあるのは「アルテミス計画」と呼ばれる計画だ。これは今後10年以内に月の南極に宇宙飛行士を送り込むためのプロジェクトであり、「LINA」もまたそのための施設として研究されている。実際の施工においては自律型ロボットを使用する予定で、月の南極部にあるシャックルトンクレーター付近に建設を予定しているという。さて、この斬新なデザインの基地を実際に構築するために、今回AI SpaceFactory は-170°から70°Cの温度範囲で真空中でも動作するように設計された宇宙仕様の3Dプリントシステムを開発した。素材には、NASAによって合成された、月のレゴリス(表土)とポリマーバインダーから調合した材料が使用される予定とのことだ。また、今回の「LINA」では、地球から運び入れるポリマーの質量を最小限に抑えるため、厚いシェルから薄いシェルまで様々な形状を検討し、荷重が分散されるように設計された、放物線状の断面を採用したという。      「LINA」は共同の中庭を有する3つの独立したユニットから構成されている。各ユニットの面積は75平方メートル、中央のステージングエリアは90平方メートルで、3Dプリントされたシェルは8メートル×9.4メートル、高さ5メートルの空間となる。人がその中で生活する上で十分な広さだろう。   「LINA」に電力を供給するのは大規模な太陽光発電機能。さらに「LINA」は、少なくとも50年の寿命を持つよう設計されており、宇宙探査車や通信機器、居住モジュールなども収納することができる。いずれにしても、月面探査の拠点が3Dプリンターによって建設されようとしているというのは、なんとも胸が躍る話である。今後の展開にも注目し続けていきたい。 

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米国でプールをまるまる3Dプリント、いずれはお風呂の浴槽も出力か?
2022年7月6日

米国でプールをまるまる3Dプリント、いずれはお風呂の浴槽も出力か?

    グラスファイバープールの老舗が製造ラインのAM化を決定   記録的猛暑となりそうな今夏。お盆休みはお子さんを連れてプールに出かけようと計画中の方も多いことだろう。ところで、普段、私たちが使っているプールはどのような素材でできているかご存知だろうか。実はその多くがグラスファイバー(ガラス繊維)とポリエステル樹脂なのだ。このグラスファイバーとポリエステル樹脂はお風呂の浴槽の製造などにもよく使われている素材で、一般にガラス繊維強化プラスチック(FRP)とも呼ばれており、主にその耐久性、防水性の高さと、軽量さによって採用され続けている。現在、数多くのプールで使用されているグラスファイバー(ガラス繊維)プールを1958年に発明したのは米国のSaunJuanという企業だった。その画期的発明から70年が経過した今日、同社が社運をかけて取り組んできたのは、労働力を削減し、市場投入までの時間を短縮するための技術革新。そして、その技術革新において主役となったのがお馴染み3Dプリンターである。その際、同社が組んだのはカスタム3Dプリンターを構築し、AM(アディティブマニュファクチャリング)サービスを提供する企業Alpha Additiveだった。いわく、グラスファイバープールの製造をAM化することにより、従来の数分の一の時間でプールを製造することができるようになったという。プールにはそれぞれの会場に適した形状が異なるものだが、従来はまず最終的なグラスファイバー製品を形成するために必要な木型の構築に数か月かかっていた。しかし、製造プロセスを3Dプリント化したことで、木型構築のプロセスが省略され、製造全体の時間が大幅に短縮されることになったというわけだ。   SaunJuanが製造した世界初の3Dプリントプール Baja Beach もちろん、AM化で得られるメリットはそれだけではない。ガラス繊維製品がこれまで抱えてきた問題、そう環境負担を大幅に減らすことができる可能性があるのだ。伝統的に作られたグラスファイバープールと比較して、今回3Dプリントされた新たなグラスファイバーは「完全にリサイクル可能」なのだという。この3Dプリントされた素材が使用を終えた際には、プラスチックシュレッダーに通すことで、それらのプラスチックペレットを再利用することができるのだ。実はすでにSaunJuanの3Dプリントグラスファイバープールは完成しており、ニューヨークはマンハッタンに出荷されている。Baja Beachと名付けられたそのプールは、傾斜したプールの入り口と、壁面の透明ガラスを擁し、大きさは7.92mx 3.66 m、深さは91 cmで、面積は7平方メートルと泳ぐには手狭なサイズである。だが、これが今後のプール業界において大きな転換点となることは間違いない。あるいは同様に、今後、お風呂の浴槽の3Dプリント化も進んでいくかもしれない。当然、この流れが進んでいけば、やがて業界全体に低価格化の波が訪れるだろう。         米国ドラマや映画などでおなじみのプール付きの庭や大きな浴槽のあるバスルームも夢ではなくなる日が来るかもしれない。今後の展開に期待したい。      

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100年の歴史を持つ駅舎を3Dプリンターで改修|細かな装飾もスキャンして再現
2022年7月5日

100年の歴史を持つ駅舎を3Dプリンターで改修|細かな装飾もスキャンして再現

  複雑な伝統技術を3Dスキャンして修復   ここ数年、3Dプリント住宅に関する話題が多い。世界各国で競い合うように3Dプリント住宅建設が試みられ、大規模なプロジェクトがいくつも進行している。その一方であまり注目を浴びていない分野がある。修復工事における3Dプリント技術の活用だ。実はすでに建物の細部を復元する上で、3Dプリント技術は大いに活用されている。ただ、そのようなプロジェクトは通常、あまり脚光を浴びていない。そんな中、あのフォード社が手がけている修復プロジェクトが注目を浴びている。修復対象はアメリカ・ミシガン州のミシガンセントラル駅だ。100年の歴史を持つこの駅舎が、現在、起業家、新興企業、フォードのモビリティチームが、都市交通ソリューションを作り出すためのハブとして機能するように改修されようとしているのだ。フォード社はこれまでもヘンリーフォードアメリカンイノベーション博物館の復元を始め、3Dプリント技術を多く活用してきた。今回の改修工事においてもまた3Dプリント技術が重要な役割を果たすことになる。特にミシガンセントラル駅には装飾的な柵やタイルが多く用いられており、それらを精巧に復元する上では、3Dプリント技術が最適だというわけだ。   細やかな装飾の施されたミシガンセントラル駅の装飾   チームはまず、現状のミシガンセントラル駅を構成しているピースを3Dスキャンし、それらをCADファイルとして調整したデータをフォードの先端製造センターで3Dプリントした。今回フォードが意識したのは、ミシガンセントラル駅をいわゆる近代的な建造物に改修するのではなく、100年の歴史が持つ雰囲気を崩さず、改修の入らない部分と入る部分とのギャップに違和感が生じないような改修を行うことだった。駅の3Dスキャンにはおよそ数ヶ月を要したという。一方、3Dプリントは3週間で完了した。フォードの研究と高度なエンジニアリングによるこのプロジェクトは、今後、大きな可能性を持ったモデルとなるとみられている。各国には様々な建築があり、そこには素晴らしい技術の数々の痕跡がある。それらの職人技をコピーすることはたやすくない。通常であれば法外な費用と時間がかかってしまうだろう。現状では、3Dプリントと3Dスキャンが、費用対効果の高い方法でこれらを復刻する唯一の方法だろう。もちろん日本においても例外ではない。精巧な寺社建築の装飾などの改修に、今後3Dスキャン技術と3Dプリント技術がが用いられていくケースはどんどん増えていくだろう。職人技術を繋ぐのはもはや人ではなくテクノロジーなのかもしれない。    

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障害を抱えた友達が困っている時に3Dプリンターを使って出来ること
2022年6月30日

障害を抱えた友達が困っている時に3Dプリンターを使って出来ること

  3Dプリンターが日常の些細な「SOS」を解決する   いまや様々な産業で役立てられ、技術革新を起こし続けている3Dプリンターだが、3Dプリンターが活躍するのは必ずしもそうした大きな場面ばかりではない。日常の些細な場においても工夫ひとつで3Dプリンターが大いに役立つことはある。たとえば、STEM for ALL賞を受賞したアメリカ・テネシー州のアダライン・ハムリンの3Dプリンターの活用の仕方は非常に心温まるものだった。ハムリンは15歳の学生だ。彼の創作は学校生活の中である場面に遭遇したことをきっかけに始まった。ハムリンが遭遇した場面、それは同じ学校の障害を抱えた生徒が食堂を歩いている時、ランチトレイの中身を落としてしまっている場面だった。その光景を目にしたハムリンは考えた。「僕に何かできることはないだろうか」。こうしてハムリンの実験が始まった。どうすれば身体に障害のある人でもランチトレイを安定して使えるようになるだろうか。結論から言えばハムリンのアイディアは実にシンプルなものだった。トレイに付属させるアタッチメントを制作することにしたのだ。プレートやカップなど、トレイに収まる全てのものに合うようなストッパーを形成し、それをトレイに接着。そうすることで、ランチトレイから物が落ちるのを防ぐことにしたのだ。   15歳のアダライン・ハムリンと学友 ハムリンはこのアタッチメントを3Dプリンターで造形、出力した。技術的には極めて簡単な技術だ。3Dプリンターに少し触れたことがある人にとってはわけもないものだろう。しかし、この些細なアイディアはすぐさま評判となり、他の学校にも波及することになった。かくしてハムリンはIT技術、ロボット技術の教育に関するアワードであるSTEM for ALL賞を受賞するに至ったのだ。もちろん、技術の革新はとても重要なことだろう。しかし、それ以上に重要なことは、その技術をどのように使うかという点である。ハムリンは3Dプリント技術の初歩的な技術を使用して、これまで誰もきちんと気づくことができずにいた小さな「SOS」に向き合い、応えたのだ。これはまさにテクノロジーの理想的な形ではないだろうか。      皆様も是非、日常に潜む小さな「SOS」をあらためて目を凝らし、探してみて欲しい。あなたがすでに持っている技術で救える人は、きっとあなたが思っているより多くいるはずだから。    

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バクテリアを用いた生体素材を3Dプリントすることでファッション産業による環境汚染を防ぐ
2022年6月27日

バクテリアを用いた生体素材を3Dプリントすることでファッション産業による環境汚染を防ぐ

  バイオマニファクチュアリングがファッション業界を刷新する   3Dプリント技術がファッション業界を揺り動かしている。この環境時代において、ファッション業界は多くの批判を集めてきた。とりわけ2000年代以降のファストファッションが全盛する状況において、着なくなった大量の衣服の廃棄物と、シーズンごとに大量生産される際に用いられる膨大量の資源について、世間の目は厳しさを増す一方だった。ファッション、特にモードとは時代の先端の価値観の表現でもある。そのモードが時代から取り残されているとしたら、これはその存在の存続に関わる大きな問題だ。当然、ファッション業界も自身の行く末を考えさせられることになった。その中で注目を集めているのが3Dプリント技術だ。これまでもSK本舗メディアでは3Dプリント技術を用いた様々なファッションを取り上げてきたが、その多くは靴だった。3Dプリント技術を用いることによって、素材の無駄遣いを省くことができる。また方法によっては、一挙に大量生産せずに、需要に応じて製造することも以前より容易になる。ただ、取り組まれてきたのはそれだけではない。いかに素材の無駄遣いを減らすといっても、それが環境負荷の高い素材だった場合、結局、そこで作られた靴が短期間で廃棄されてしまえば元も子もない。そこで、業界は素材の開発にも努めてきた。たとえば、Bolt Threadsのスパイダーシルクアパレル、Pangaiaの持続可能な成長を遂げた海藻繊維と花のジョガー、MycoWorksのマッシュルームレザーなど、メーカーーはそれぞれ持続可能な素材を開発し、エコファッションの追求を進めてきた。あのアディダスもまた、新たに発表されたUNLESSベンチャーにて、廃棄物を出さない靴の製造に取り組むことを発表している。これはある意味で新たなニッチセグメントでもある。今、そこに特化して取り組んでいるのが、イギリスのスタートアップであるModernSynthesisだ。同社は微生物繊維プラットフォームなどを作成する、いわゆる「生体材料」のメーカーとして知られる。   ModernSynthesisの素材の特徴はバクテリアを利用して、農業廃棄物の糖分をナノセルロースに変換することだ。ナノセルロースとは、その豊富さと強さで評価されている生分解性材料である。同社はこのナノセルロースを素材に、かつ3Dプリンティングによってピースを形作るよう設計することで、端材や廃棄物のスクラップをゼロにすることを目指している。   先日、同社は410万ドルのシード資金を調達した。これによってプロジェクトは一気に進むと見られている。   「私たちは、より明るい物質的な未来への楽観的な見方を共有し、バイオテクノロジーとファッションの両方の分野からの豊富な経験を私たちのチームにもたらす投資家のグループと提携することに興奮しています」そう語るのはModernSynthesisのCEOであるジェン・キーンだ。ファッションに特化したバイオマニュファクチャリングを行う同社は、もしかしたらファッション業界を刷新するキーマンとなるかもしれない。

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大学生チームが3Dプリントして製造したロボットが低重力の小惑星探査を可能にする
2022年6月24日

大学生チームが3Dプリントして製造したロボットが低重力の小惑星探査を可能にする

  低重力対応の探査ロボット「Space Hopper」   今後の宇宙開発において重要なことは無人探査技術の発達だ。宇宙探査と聞くと有人宇宙飛行ばかりに注目が集まりがちだが、実際に有人探査が可能な地球以外の星は現時点において月に限定されている。これまでにも有人火星探査が何度も計画されてきたが、現時点においてはまだ実現していない。オバマ元大統領が2030年代半ばを目標にした有人火星探査を発表しているが、それも不透明さを多く残している。すると、やはり重要になってくるのが無人探査技術である。その際、人間に代わって別の惑星を探査してくれるのはロボットだ。実は最近、最先端の3Dプリント技術を用いたあるロボットが開発された。この低重力用に設計された新しいロボットが、将来の小惑星探査の鍵となると言われている。このロボットの名前は「Space Hopper」。3本足を持つホッピングロボットであり、開発者たちはこれを太陽系の未知の領域を探査することができる革新的なモビリティプラットフォームであるとしている。   開発にあたったのはなんとまだ大学の学部生のチームらしい。今回の開発においては、炭素強化コンポーネントを3Dプリントすることでロボット設計の最適化が図られている。この学部生研究チームはそれぞれ様々な工学分野を専攻したメンバーからなり、中でも繊維複合技術に関してはチューリッヒ拠点の企業「Scheure Swiss」のサポートを得ながら、安定性と軽量性を兼ね備えた部品を3Dプリントしたとのことだ。宇宙探査においては超えなければならないハードルが様々あるが、まず何より考慮すべきは重力の問題だろう。地球の4割程度の重力の火星や1.5割程度の重力の月ならばまだいいが、その他の小惑星の重力はもっと低い。とてもじゃないが人間がその上を歩き回ったりするというのは困難である。そうした低重力惑星を探査するためには新しいソリューションが必要であり、今回開発された「Space Hopper」にその可能性があるというわけだ。こうした小惑星を探索するために設計された「Space Hopper」の動きを制御するのは人工知能で、3本の足を巧みに動かしながらジャンプによって向きを変えて進行ができるようになっている。このメカニズムが低重力での運動を可能にするという。研究チームによれば、そのために必要なボディの支持構造を製造する上では積層造形技術が理想的であり、また費用対効果も優れているという。最も課題だったのは、ロボットの総重量を最小限に抑えるためにも、脚をできるだけ薄壁にすること、その上で飛び跳ねる衝撃に耐えうる強度を担保することだったそうだ。開発期間はわずか8ヶ月。まさに若い才能が新たな可能性を切り拓いたのだ。        小惑星は、地球を含む内惑星を形成した過程で残された断片であり、太陽系の形成や地球に暮らす我々の存在にまつわる根源的な問いを明らかにする可能性を秘めた存在である。あるいは、もう一つの探査の目的として、長期間の宇宙ミッション中にエネルギーを補給するための小惑星資源を抽出する方法を発見するというものもある。今のところ、第一のハードルは、ロボットが長距離を飛び回り、所定の地点に着陸し、空中で姿勢を制御し、科学的なデータを運ぶことができること、かつ着陸に失敗した後に立ち上がることができることを証明することだという。果たして、うまくいくのだろうか。いずれにせよ、3Dプリント技術が宇宙空間の謎を解く役に立つかもしれない、というのは胸が躍る話じゃないだろうか。  

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熱や光で造形する時代は終わる? 超音波3Dプリンターの可能性
2022年6月22日

熱や光で造形する時代は終わる? 超音波3Dプリンターの可能性

  音波が起こすキャビテーションで造形   3Dプリントを熱や光で行う時代はやがて終わるかもしれないと言われている。ではその時、何が立体物を造形することになるのか。今もっとも注目されているのは超音波だ。超音波を用いた3Dプリントは、すでにこれまで多く研究が行われてきた。まだ一般化されてこそいないが、それも時間の問題だとも言われている。実際、2022年4月に『Nature』誌に掲載されたある論文が現在注目を集めている。   論文を執筆したのはカナダのコンコルディア大学の研究者だ。彼は超音波で活性化される音響化学反応を使用した3Dプリンターを提案している。これは音波がキャビテーション(液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象)を引き起こすことで、液体ポリマーを固体にするというアイディアだ。その際に必要なものは集束超音波ビームである。   現在、実験的に超音波3Dプリントされたオブジェを見てみると、お世辞にも綺麗なエッジとは言えない。はっきり言って見栄えは悪い。しかし、この方法の優れた点は、障壁物を透過して、その内側に物質を作り出すことができる点だ。これは特に医療の分野で注目されている。つまり、誰かの関節にポリマーを注入し、そこに超音波ビームを当てることで侵襲性をほぼ伴うことなく、体内の構造を3Dプリントできるようになるかもしれないのだ。   もちろん、簡単な技術ではない。しかし、以下の動画にもあるように、すでに超音波造形は実現している。あとは今後、造形の精度をどれくらい高めていけるかだろう。    

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3Dプリントインテリアの最前線|技術がデザインのモードを更新する
2022年6月16日

3Dプリントインテリアの最前線|技術がデザインのモードを更新する

  オランダの積層造形会社Aectualの3Dプリントインテリア   家具の3DプリンターはIKEAを始めとしてすでに多く取り組まれている。通常の製造法と比較した際、3Dプリント技術を用いた場合、非常に多くの利点がある。まずは生産量の調整を行いやすい。必要なタイミングで必要な量に限定していて製造するということが行いやすく、言ってしまえば無駄な材料を出さずに済む。また、造形において、3Dプリンターを用いることで、通常の造形方法だとつくることが難しい形状の家具を作ることができる。多くの場合、造形は素材からの切り出しによって行われるが、3Dプリントを用いた場合、主に積層造形によって行われるため、切り出しなどでは表現しづらい複雑な幾何学パターンの形状を生み出すことができるのだ。先日開催されたミラノデザインウィークでも3Dプリントされたインテリア群が注目を浴びた。制作したのはオランダの積層造形会社Aectual。これまで3Dプリント技術を使用して、床、音響拡散パネル、間仕切りスクリーン、天蓋とパビリオン、洋服ハンガーなど、持続可能でカスタマイズ可能な建築製品を作成している企業だ。今回、Aectualがミラノデザインウィークに出品したのは、同社が製造している円形の製品だ。コンセプトラインは、プランターウォール、パーティションスクリーン、ウォールクラッディング、シートプーフなど、カスタマイズ可能な一連の3D印刷されたインテリアオブジェクトと仕上げで、リサイクルされたテトラパックドリンクカートン素材から作られている。     AectualのCEO兼共同創設者であるHansVermeulenは次のように語っている。「毎年約2,000億個の飲料用カートンが生産されており、世界には推定50億個の建物があります。では、これらのカートンを価値の高い建築材料に変えて、日常生活や作業スペースの構築と提供に使用される未使用の材料の必要性を減らすとしたらどうでしょうか?」「テトラパックとのコラボレーションは、再生された円形の素材がインテリアデザインの標準になる未来を示していると確信しています」Aectualは、ゼロウェイストのオンデマンドデジタル制作ネットワークを使用して、循環型のオーダーメードのカスタマイズ可能なアーキテクチャ製品を作成し、回収サービスを通じて、材料を最大10回再利用している。これにより同社は製造にあたって排出されるCO2の量を最大80%削減することに取り組んでいる。一見するとサボテンのような南欧風の造形は実に繊細で精緻だ。プランタースクリーンは、テラコッタの色とマットな外観のためにセラミックに似ており、PolyAlから3Dプリントされている。この材料は、ドリンクカートンのリサイクルされた内側のホイルから得られるポリマーとアルミニウムの混合物だという。       一方、Aectualの別のパートナーであるHouseofDUSは、グラデーションカーブスクリーンを設計している。このシステムは、グラデーション効果によって徐々に開閉するカスタマイズ可能なセルで構成されており、ウィンドウスクリーン、フィーチャーウォール、部屋の仕切りなどに使用できるようだ。   これまでもデザインのモードは技術の革新とともにアップデートされてきた。たとえば19世紀末に流行したアールヌーボー、20世紀初頭に流行したアールデコもまた、技術や素材の革新と共に生まれたデザインの潮流だった。すると、3Dプリント技術の登場もまたデザインの様式を更新する可能性がある。果たして今後3Dプリントデザインはどのように発展していくだろうか。時代を作る新たな潮流を生み出してくれることを期待したい。 

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世界で最も高い3Dプリンターとは?|超高価格帯3Dプリンターの現在
2022年6月15日

世界で最も高い3Dプリンターとは?|超高価格帯3Dプリンターの現在

  3Dプリンターの低価格化の一方で   かつて3Dプリンターといえばハイエンドな先端機器であり、個人にはとてもじゃないが手が届かない高価なものだった。それが変わったのは2010年代だ。黎明期の3Dプリント関連技術に関する重要な特許のいくつかが期間満了となったことで、個人でも購入可能な低価格3Dプリンターが市場に登場し始めたのだ。 SK本舗が取り扱っているのも、そうした低価格3Dプリンターの一群だ。特にここ数年、低価格3Dプリンターの機能は向上の一途をたどっており、それに比例するように一般の個人の方でも3Dプリンターを使用すると方が増えてきている。それゆえ、最近では3Dプリンターに関して「いかに低価格で高品質か」という点ばかりが注目されやすい。もちろん、それは非常に大事なポイントなのだが、一方で現在ももちろんながらハイエンドな高価格3Dプリンターも開発されている。いわゆる企業向け、工業向けの3Dプリンターなどの中にはそれこそ目が飛び出るような価格の3Dプリンターも多い。ここで気になる疑問がある。では現在、世界で最も高価な3Dプリンターとはどのようなもので、どれくらいのお値段なのだろうか。3Dプリンターの種類はあまりにも多く、また価格の変動もあるため、どれか一つのプリンターを取り上げ、これが最も高い3Dプリンターだと言い切ることは難しい。ただ現在、最も高価格帯の3Dプリンター群としては、現在の為替レートの円換算で「7000万円以上」が一つの基準になるかもしれない(もちろん億越えする3Dプリンターも存在する)。ここでは試しにこの価格帯に入る3Dプリンターを「超高価格帯3Dプリンター」と呼んでみることにしよう。     7000万円以上の超高価格帯3Dプリンター では、ここでいう「超高価格帯3Dプリンター」とはどんな3Dプリンターたちなのだろうか。超高価帯プリンターは通常、独自のテクノロジー、高度なオートメーション、そして大容量であることなど、いくつかの要素を備えている。中にはマシンの上部に到達するために階段が用意されているような巨大規模なものも少なくない。たとえば超高価格3Dプリンターのひとつ「ブラックバッファロー」などは、モジュール式の建築3Dプリンターであり、最大3階建てのプロジェクトに使用可能だといい、その容貌は3Dプリンターというよりまるでコンサートの舞台装置かのように見える。   ブラックバッファロー あるいは中国を拠点とするEPlus3Dの3Dプリンターもすごい。同社は中国の厳しい製造業向けに大規模な金属3Dプリンターを製造しており、同社の最もハイエンドなマシン「EP-M450H」などは、航空宇宙、自動車、電子機器、工具で使用され、重工業用の金型などの巨大な部品だけでなく、大量生産された部品も製造している。ビルドボリュームは、456 x 456 x 1,080 mm。さまざまな材料で1時間あたり55cm³の速度で99.9%の密度の金属部品を製造できるという。   EP-M450H もちろんビルドボリュームが小さめの超高価格帯3Dプリンターも存在する。オーストリアを拠点とするUpNanoが開発した「NanoOne Bio」などは、一見すると10万円以内の家庭用3Dプリンターと見た目はほとんど変わらない。しかし、同社は2光子3Dプリンターと、メソスケールとマイクロスケールの両方で生細胞を含む3D構造の直接印刷を可能にするヒドロゲルベースのバイオインク「X Hydrobio INXU200」を開発しており、「NanoOne Bio」は、同社のNanoOneシリーズのレーザー駆動プリンターをベースに設計された、超最先端バイオ3Dプリンターなのだ。UpNanoによれば、「X Hydrobio INXU200」と「NanoOneBio」の組み合わせは、産業界と学界の両方で生物医学の研究開発に新しい可能性を開き、製薬会社や研究機関が人体の自然な成長条件を模倣する細胞モデルを設計できるようにするのだそうだ。   NanoOneBio 超高価格帯3Dプリンターとしては他にもOptomec社のハイブリッド金属3Dプリンターである「LENS 860」や、イスラエルのXJet社のセラミック3Dプリンター「Carmel1400C」、ドイツのSLMSolutions社の「工業生産における革命」とまで言われた金属3Dプリンター「NXG...

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