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アフリカではいずれ30億人分の住宅が不足状態に|ケニアに建設予定の3Dプリント住宅街
アフリカ最大の3Dプリント住宅街の建設計画 3Dプリント住宅関連のニュースが相次いでいる。もはや新たな建設ラッシュのように各地で3Dプリント住宅街の建設計画が立てられているのだ。たとえば、アフリカはケニアにおいても、アフリカ最大の3Dプリント住宅プロジェクトの開始が発表された。手掛けるのはスイスのセメント大手であるホルシム社。およそ52棟からなる集合住宅を建設予定とのことだ。ケニアでは手頃な価格の住宅不足が続いている。このプロジェクトはそうした住宅不足の解消と同時に、熟練した地元の雇用を創出することが目指されている。もちろん、建てられる住宅はケニアの環境に合った素材が用いられ、またデザインもケニアの風景に溶け込む形でローカライズされたものが考案された。 画像:Holcim ホルシムは以前にもアフリカはマラウイ共和国において学校を3Dプリントするプロジェクトを行ったことがある。その際、従来の技術と比較しても環境負荷を50%以上削減でき、かつ建設にかかる時間も以前なら作るのに4日間はかかっていた壁をわずか12時間で作ることができるというデータが得られている。ホルシムのCEOにとって、今回のプロジェクトはほんの始まりに過ぎない。アフリカ大陸では今、急速な都市化が進んでいる。このままいくと、2030年までに約30億人以上が手頃な価格の住宅を必要とするようになると予測されているのだ。現状でもケニアでは推定で200万戸の住宅が不足しており、もはや時間的猶予はない。当然、従来の建設方法では間に合わないだろう。だからこそ3Dプリント建築の出番なのだ。CEOは「3Dプリント技術を導入することで、この大規模なインフギャップに対処し、全ての人々の生活水準を向上させることができるはずだ」と述べている。 グリーンウォッシングを超えて さて、現在、開発中の住宅タイプは3つだ。1ベッドルームの42平方メートルの家の価格は2,436,000ケニアシリング(〜USD $ 21,600)から、3ベッドルームの76平方メートルの家の価格は4,484,000 KES(〜USD $ 21,600)。さらにハイクラスのものでも、USD $ 40,000以内となっている。これは通常の住宅建築から比較すれば、かなりの破格だ。実に素晴らしい取り組みだが、ホルシムにはあまり評判の良くない部分もある。まず、環境の取り組みに対して、ホルシムの本業であるコンクリート製造が二酸化炭素を大量に放出しているというポイントだ。つまり、今回のような3Dプリント住宅建設のプロジェクトは同社によるグリーンウォッシングではないかという意見もあるのだ。 また、同社のシリアの子会社が現地での地域スタッフを保護するためにイスラム国などへ保護費を支払うことで人道の罪に加担している可能性があるというニュースもあった。こうした負のニュースをかき消すために耳障りの良いプロジェクトを行っているのではないかという指摘もある。もちろん、ある企業の取り組みに対しては、時代の価値観に基づいて適切に監査していく必要はあるだろう。だが、仮にグリーンウォッシング的な要素があるにしても、やらぬ偽善よりやる偽善という言葉もある。いずれにしても3Dプリント住宅建設の拡充が時代の急務であることは変わらない。素材から地産地消にこだわっている企業も多くある。また今後は気候変動により世界規模で災害が増加していく可能性もある。その点、日本には多災害国家として積み重ねてきた耐震設計のノウハウなどがある。是非ともそうした技術を3Dプリント建築にも落とし込み、世界をリードしていってほしいところだ。
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世界が注目する6人の3Dプリントファッションデザイナー|新たな時代のココ・シャネルは誰なのか
3Dプリントファッション時代のココ・シャネル 3Dプリンターがファッションプロダクトにもたらす可能性はいまだ未知数だ。世界ではすでに様々な取り組みが行われ、この二つの出会いが素晴らしいものであることを物語っている。しかもアディティブマニファクチュアリングの進化は、新しい材料やアプリケーションをデザイナーたちに提供し続けている。これまでは、より芸術的な作品としての3Dプリントファッションが注目を集めてきたが、今後はウェアラブルな一般人向け衣服の3Dプリントプロジェクトがいよいよ活性化していくと見込まれている。なんといっても、3Dプリントファッションの利点はカスタマイズ側の自由度の高さだ。3Dプリントファッションが一般化すれば、これまでの大量生産ベースの産業構造を根本的に変革するだろう。ディティールやサイズ、あるいは素材に関しても、まるでラーメン屋さんで麺の硬さやスープの濃さを選ぶような感覚で、選択できるようになるのだ。もはや某有名ファストファッション店のアイテムを着用したところ、その日に会う友人と丸かぶりになってしまった、みたいな悲喜劇ともおさらば。すでに、アディダスをはじめ大手ブランドも3Dプリント技術を使用し始めており、これが本格化するのは時間の問題だとされている。言うなれば、現在は3Dプリントファッション元年の前夜。今後の発展を踏まえた上で、ここでは現在注目の世界的な3Dプリントファッションデザイナーたちを紹介してみたい。果たして3Dプリントファッション時代のココ・シャネルとなる人物は誰なんだろうか。 ①Anouk Wipprecht 画像:Anouk Wipprechtのスパイダードレス 一人目はオランダのデザイナー兼イノベーターのAnouk Wipprechtだ。ファッションデザインとエンジニアリング、ロボット工学などを組み合わせて、単なる外見を超えた体験をファッションにもたらしている。彼女の代名詞と言えば「スパイダードレス」だ。ドレスのセンサーと可動アームは、着用者の呼吸リズムを感知して、プライヴェートエリアの境界設定を行なってくれる。男女平等の機運が高まる今日らしい、実にアクチュアルなデザインだ。 ②Julia Daviy 画像:Julia Daviy 2人目は3Dプリント技術を使用して生分解性のファッションを制作しているJulia Daviyだ。彼女の服の特徴は、そのエコロジカルな素材と、デザインのオーソドックスさにある。これまで多くの3Dプリントファッションが「着やすい」ものではなかったのに対し、彼女の3Dプリントする衣服はデイリーユースを前提としたカジュアルなデザインとなっている。 制作プロセスにおいても多くのテキスタイルを無駄にすることがなく、大量生産に対する批判意識を持った、倫理的な3Dプリントデザインを追求しているのもポイントだ。 ③Travis Fitch 画像:Travis...
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ベルリンのアディダスショップに展示された革新的な3Dプリントオブジェ|製作者アルトゥーロ・テデスキが切り拓く新時代のデザイン
再生プラスチックを使用した重さ300kg以上の3Dプリントオブジェ 日本でも定番の人気スポーツブランド「アディダス」が、ドイツのベルリンに革新的な旗艦店をオープンした。コンセプトは「ベルリンを更新する」。この3階建て、1400㎡の敷地を持つ新たなアディダスストアは、同ブランドの地域への特化、サステナビリティへの意識、スポーツブランドとしての社会参加を体現する、まさに21世紀のスポーツショップとなっている。なにより話題となっているのは、デザイナーであるアルトゥーロ・テデスキが3Dプリンターで作成した、重さ300kg以上の再生プラスチックを使用したと言う、巨大なインスタレーション《bECOme》だ。 店内に吊り下げられた長さ17メートルのその彫刻によってアルトゥーロが表現したのは、様々な変換プロセスを経て廃棄物を資源へと変えるというエコサイクルのプロセスだ。それは同時に、プスチック廃棄物の再利用を、日常の行動を通して追求していこうというアディダスからのメッセージでもある。この彫刻自体、PLAフィラメントに変換された再生プラスチックを使用して出力されている。つまり、これはまさにサステナビリティこそが時代を救うという声明であり、環境時代のシンボルマークでもあるのだ。 アルトゥーロ・テデスキの先進的デザイン 制作を行ったアルトゥーロは、3Dプリント技術を使用したアート作品の造形に関して、世界でも最も知られたデザイナーの一人だ。これまでにも、たとえば3Dプリントされた靴の作品である「NU:S シューズ」や「ILABO シューズ」や、ほぼ完全に3Dプリントされた電気自動車「XEV Yoyo」など、 様々な3Dプリント作品を発表している。 アルトゥーロの高度な設計方法、材料や製造技術の研究、様々な分野の境界線を曖昧にする先見的なアプローチは世界的にも高い評価を得ている。3Dプリント技術の機能性、持続可能性、革新性をフルに活かした制作を行う、まさに3Dプリントデザインの世界を牽引するデザイナーなのだ。今回の作品も実に見事。ビジュアルで圧倒しながらも、来場客に問題提起を行い、かつその3Dプリンターを用いたエコロジカルな制作方法によって問題解決の実践も行なっている。社会のために未来を思索する、こうしたデザインの新領域は近年「スペキュラティブデザイン」とも呼ばれており、アルトゥーロもまた、そう自称しているわけではないかもしれないが、そうした潮流を担っている人物の一人だろう。現在、アルトゥーロはイタリアはミラノを拠点に活動しており、2019年にはイタリア外務省よりデザインに関するイタリア大使に任命されている。果たして、今後アルトゥーロはどんな未来をデザインしてくれるのか、そして世界の先端とリンクするアディダスは今後どのような取り組みを社会に対してなしていくのか、いずれもその動向から目が離せない。
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3Dプリントされたウッドギターが「凄い」と話題に|木材3Dプリントの最前線を疾走するDesktopMetal
Forustのウッドバインダー噴射システム 現在、木材3Dプリントにおいて最も意欲的な展開を見せているのは工業用3DプリンターメーカーのDesktop Metalだろう。今年の5月にはバインダージェットによる機能的な最終用途木材部品の3Dプリントに特化した子会社Forustを設立。いよいよ木材3Dプリントが一般に普及しようとしている。Forustの3Dプリントプロセスは、一般の木材製造プロセスや製紙業界が排出されるおがくずやリグニンなどを利用するもので、これらに特殊なバイオエポキシ樹脂複合体を混合して、3Dプリント材料として使用するものだ。いわば、これまでは捨てるだけだった端材のリサイクルである。エコロジー的にも実に理に適った方式だと言えるだろう。この技術の注目ポイントは、従来の木工品のように木目を活かした構造にも対応可能であることだ。ローズウッド、アッシュ、エボニー、マボガニーなど、様々な木目にも対応しており、その対応範囲は今後ますます広がっていく予定だという。 画像:Forust 現在はまだForustのウッドバインダー噴射システムの3Dプリンターは一般発売されていないものの、Forustのwebサイトでは同社の技術で3Dプリントされた木製アイテムを購入することができる。それらはいずれも滑らかに湾曲した美しい木製のインテリアであり、言われなければ一流の職人の技巧が込められたハイエンドな一品にも見える。だが、実際はおがくずから再構成され、3Dプリンターによって出力されたものだ。造形の自由度の高さに、木材3Dプリントの可能性を感じさせてくれる。 https://www.forust.com/store 3Dプリントされた超完成度のウッドギター ところで、実は最近、Forustの技術を使って出力されたあるオブジェが話題を呼んでいる。こちらだ。 My friend Olaf Diegel at Wohlers Associates just sent me pics of this...
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3Dプリンターの導入でインプラントの費用が10分の1に!? 整形外科、形成外科で活躍する3Dプリント技術
コロナ禍で業績アップのある業界 コロナ禍は様々な産業に大きな打撃を与えた。しかし、その一方でコロナ禍になって盛り上がりを見せた業界もある。その一つが美容外科だ。第一に、世界的なパニックに際して、人々が自分の身体というものにあらためて関心を深めたという点もあるだろう。だが、より大きな要素としては、在宅ワークの一般化により、美容整形につきもののダウンタイムを人と会わずにやり過ごすことができるようになったのが大きい。要は人と会わなくて済むこのタイミングに、せっかくだから美しくなってしまおうというわけだ。 実際、この2年で美容整形の広告を多く目にするようになった印象がある。一方でその広告のあり方については様々な批判も寄せられている。たとえば近年、広く知られるようになった言葉に「ルッキズム」というものがある。これは外見で人を差別することを意味する言葉で、美容整形の広告はこの「ルッキズム」を煽る効果があるのではないかという批判もあるのだ。確かに広告のあり方に関しては検討の余地があるかもしれない。不安を煽るような文言を広告に用いるのは確かに品が良いとは言えない。さりとて、人が美しくなりたい、カッコよくなりたいと思う気持ちもまた、否定されるべきものではないだろう。美容整形は是か非かという古典的な議論もあるが、現在はそれ以上にどのように美容整形技術を使うかがより問われるようになっているように思う。何よりそれは人々をエンパワーするためのツールのはずであり、問われるべきはどのように技術を用いれば、より人々をエンパワーするものになりうるか、という点ではないだろうか。さて、枕が長くなってしまったが、実は美容外科、引いては形成外科、さらに整形外科においても、現在、3Dプリント技術が大きく役立てられている。一つの目立った技術革新があるというより、もはや3Dプリンターは整形、形成外科医療の全域にわたって使用されているのだ。では一体、3Dプリント技術はどのように役立てられているのだろうか。※なお一般に美容整形は形成外科に属するものとされている。一方、整形外科は骨、関節、筋肉、神経など運動をつかさどる運動器の機能障害を治療する分野とされている。 整形外科が3Dプリンターを導入することで得られる18のメリット このことに関して、先日、世界的な3Dプリントメディアである「3DPRINT.COM」が面白いまとめを出していた。3Dプリント技術の導入で特に整形外科が得ているメリットが18点に渡って紹介されていたのだ。ここでは、その見出しをざっと紹介しておこう。1. 安い2. 新製品の再生産と開発が迅速になる3. より多くのソリューションがテスト、試行、評価されている4. より良い製品、市場への適合、またはより良いソリューションを得られる5. デジタルアドバンテージのための新しいソフトウェアと連携することができる6. グループ固有の/ニッチなインプラントをより安価に製造販売することができる7. オッセオインテグレーション(チタンと骨の結合)に利点がある8. 骨の弾性率をより正確に模倣することができる9. 質量を減らすことができる10. 患者によりよくフィットする内部構造を持ち、拡張性の高い、肯定的な機能を示す部品を作ることができる11. ジオメトリ固有のIPに繋ぐことができる12. 患者固有のインプラントを作ることができる13. 高価な素材を最大限に活用することができる14. 工業化できる15. アップグレード可能16. 永続的な競争優位につながる可能性がある17. より少ないステップで医療を行うことができる18....
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宇宙ゴミの衝突が国際問題に発展する!? スペースデブリを追跡するPrivateerSpaceの3Dプリント人工衛星
宇宙開発を阻むスペースデブリ問題とは? スペースデブリという言葉をご存知だろうか。通称「宇宙ゴミ」。現在、地球周回軌道に存在する大量のスペースデブリが大きな問題となっている。それらスペースデブリの正体は、これまで地球より放たれ、宇宙空間での役目を終えた人工衛星やロケットなどだ。それらはただ無限に宇宙空間を彷徨い続けており、年を追うごとにその量を増やしている。現在、それらは総量4500トンにも昇るとされ、回収や制御が難しい状況にあるそうだ。問題なのは、それらスペースデブリが、活動中の人工衛星や有人宇宙船と衝突を起こしてしまうこと。実際、そうした事故はすでに起こっており、今後の宇宙開発における大変なリスクとなると言われているのだ。 高度2,000km以下の軌道を周回するスペースデブリの分布。(画像:Wikipedia) この問題をどう解決すべきなのか。そこに向き合っている企業がある。Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズアニックが設立したPrivateerSpace。彼らが最近開発したある人工衛星がこのスペースデブリの問題を解決に導くかもしれないのだ。 リアルタイムで宇宙ゴミを監視する PrivateerSpaceが試みているのは、新しく開発されたチタンを用いた3Dプリント衛星シャーシを製造すること、そして、その衛星によってスペースデブリを探索することだ。PrivateerSpaceの共同創設者であるアレックス・フィールディングはこの問題について次のように語っている。「20年前でも、宇宙に約2,000個の物があったとき、その半分はゴミでした。それで、私たちはピクニックに行き、宇宙船からゴミを捨て続け、決してそれを拾いません。そして今ではかなり危険になっています。過去数か月で多くのニアミスが見られました。また、過去2か月間に2回の衝突が発生しました」なんでも現在、宇宙では約21000個のオブジェクトが宇宙でう移籍されていて、そのうちの約3500個が宇宙ゴミであるらしい。これらのゴミは時速18000マイルで移動しており、国際宇宙ステーションに衝突するリスクを抱えている。さらに、宇宙開発企業は今後の5年で90,000を超える衛星を打ち上げることを目指しているため、この問題はさらに悪化する。どうにかして対処しなければならないのだ。Privateer Spaceが現在発売している製品は、リアルタイムで宇宙を監視するためのまったく異なるアプローチを提供する高度なセンサーと光学系を含む360°センサーパックを備えた衛星だ。その際、用いられたのが3Dプリント技術だ。3Dプリント技術によって必要に従って素材をフィーチャーするためにデザインを最適化することができたのだ。また、フォールディングによれば、新開発されたチタンが宇宙開発のゲームチェンジャーになるという。「センサーが非常に繊細であるため、このアプローチを採用せずにそれを行う方法はないと思います。測定は非常に正確であるため、オブジェクト(宇宙ゴミ)の特定のタイプのスピンを説明できますが、シャーシの応力を簡単に説明することはできません。ですから、これが宇宙で回転しているとき、それはほとんど360°カメラのようなんです。6つの平面すべてに光学系とセンサーがあります。課題は、デザインの振動やあらゆる種類のぐらつきを減らして安定性を高め、非常に正確な測定値を取得できるようにすること。プラスチックやアルミニウムから印刷した場合、それを行うことはできません」 打ち上げ予定は2022年2月 スペースデブリのクリーンアップを行う第一歩として、同社が目指すのは宇宙からの宇宙の監視だ。宇宙をさまようスペースデブリを測定し、その動きを予測した上でデータを共有することで、接触事故のリスクを減らすことができる。もちろん、これだけではスペースデブリとの接触を回避できても、スペースデブリを減らすことはできない。スペースデブリを掴み上げ、軌道を外すためのシステムの開発は、企業が目指す次の段階として掲げている。フィールディングによると、未使用となりデブリと化した衛星を修理し、燃料を補給するなどして、それらにセカンドライフを与えるなどの可能性も想定しているという。「今、人々はそれができるかどうかを確認するためだけに物を宇宙に置き始めています。そして、今、私たちはレッカー車会社を必要としています。保険会社を必要としています。給油するにはガソリンスタンド会社が必要です。宇宙に適したコンビニエンスストアが必要です。宇宙サービスの業界全体が進化しつつある今日の状況は、私たちが船乗りとして海洋に進出し始めたときに海洋業界がどのように進化したかという歴史に少し似ています」スペースデブリを放置していれば、いずれある国の放ったデブリ衛星が、他の国の宇宙ステーションに衝突するなどして、国際問題に発展する可能性もある。そうした事態の回避を試みる上で、Privateer Spaceのプロジェクトが一縷の希望となっている。宇宙から宇宙を監視する人工衛星の最初の打ち上げは2022年2月に予定されているという。宇宙という新しいフィールドが新たな争いの、新たな汚染の場とならないことを願うばかりだ。(参照)https://3dprint.com/285815/wozniaks-privateer-space-unveils-3d-printed-satellite-for-monitoring-space-debris/
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世界が注目するイタリアの3Dプリント企業「WASP」の挑戦 「世界を救うために私たちは3Dプリントから始めるんです」
「私たちはメーカーであると同時に夢想家です」 現在、3Dプリント技術の開発と革新に関しては世界中の企業がしのぎを削りあう、群雄割拠の状況にある。3Dプリント先進国として最新技術の開発を続けるアメリカ、安価で高性能な3Dプリンターを多く開発提供している中国、技術を改良しディティールにおける改良を行う日本、そして環境に配慮しながら3Dプリント技術のエシカルな利用のための開発に意欲的なヨーロッパ。中でも近年、注目の3Dプリント企業がある。イタリアのWASPだ。生土と米の加工廃棄物で3Dプリントしたゼロインパクトハウスや、ドバイにオープンしたディオールのコンセプトショップの3Dプリンティングなどを手掛け、国際的な注目を集め続けているこの企業は、いまやヨーロッパで最も有名な3Dプリント企業の一つにまで成長している。超高性能なハイエンドマシンの開発のみならず、そうした技術の利用方法においても驚くべき利用の仕方においても業界を牽引するWASPは、技術とアイディアの両面においてまさに独創的と言うべき活動を行なっていると言えるだろう。 画像:Mohamed Somji / Dior / WASP 「私たちはメーカーであると同時に夢想家です。この世界を救うために私たちは3Dプリントから始めるんです」これはWASPのホームページに掲げられたWASPの企業精神を示した言葉だ。特に建築部門で比類なき活動を行う彼らのマニフェストには「健康的で美しく、人間規模の家を、ゼロに近いコストでプリントすること」が彼らの夢であると書かれている。実際、これまで彼らは周辺地域で見つかった材料を使用することで、限りなくコストをかけない地産地消型の3Dプリント建築の出力に挑戦してきた。その上で粘土の家を作るための3Dプリンターの構築も行っている。どうやら「世界を救う」というのはハッタリではないようで、WASPが目指しているのは3Dプリント技術を駆使した住宅建築革命のようだ。2015年には、家を建てるための高さの12mの巨大なプリンターBigDeltaを開発。翌年にはMaker Economy Starter Kitをリリースし、3Dプリント専用の大規模なモバイルテクノロジーパークを形成する巨大な建設システムを発表。さらに2018年には、住宅を丸々印刷できる3DプリンターCraneWASPもリリースと、その勢いは止まらない。 画像: Bigdelta / WASP WASPのCEOであるマッシモ・モレッティは次のように語っている。「自分たちが世界を救うことができると考えるなんて狂ったことですよね? でも、私たちはそのために働くのに十分なくらい狂っているんです」 地元で採れた粘土で建物を出力する「CraneWASP」 さて、そんなWASPが2021年11月にドイツで開催されたFormnext2021において発表した革新的な7台のマシンが話題となっている。それらのマシンはそれぞれ異なる産業部門に向けて開発されたものであり、いずれにおいても持続可能性がテーマとして通底している。WASP開発のロボットアーム、最新のFDMマシンである「3MT...
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3Dプリントされたボディを持つ猫型未来ロボット「ディアナ」|人間は機械を愛玩できるか?
あの「aibo」から20年、ペットロボットは今 ペットロボットと聞いて、真っ先に思い浮かべる存在といえば「aibo」だ。ソニーが1999年に発表し、一世を風靡したロボット犬であるaiboは、AI時代を先取りする形で世界に発信され、技術大国日本の真骨頂を見せつけた。その後もaiboを超えるほどの話題となったペットロボットは世界から出てきていない。もちろん当時と今とでは技術力に関しては雲泥と言っていい差があるが、とはいえ、ペットを代替するようなロボットとなると、なかなかどうしてその開発は困難を極めているようだ(aiboもまた幾度もヴァージョンアップを重ねている)。 ところで、aiboは犬型のロボットだったが、ペット市場において犬と双璧をなす人気種といえば、ご存知「猫」である。日本では2010年代、歴史上初めてペット頭数として猫は犬を追い抜き、栄えある人気ペットナンバー1の座を獲得している。人呼んで「猫の時代」。個人主義の強い現代人のライフスタイルには、従順だがそのぶん世話の焼ける犬よりも、気まぐれだが放っておいても特に問題のない猫の方が合っているという分析もあるほどだ(古谷経衡『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』参照)。となると、想像せずにいられないのはロボット猫がいつ登場するのか、ということだが、なんでも最近、スイスのチューリッヒ大学の学生たちのチームが3Dプリントされた外装を持つ、まるで生きているかのようなロボット猫を開発したらしい。 新時代の猫型ロボット「ディアナ」 開発の中心的役割を担っているのはアンドリーナ・グリムというチューリッヒ大学工学部の学生だ。その他、応用科学部、芸術部など、領域横断的に有志が集まり、このプロジェクトは進められているという。彼女たちが作り出そうとしているロボット猫の名前はディアナ。ギリシャ神話に登場する月の女神の名前だ。 画像提供/Andrina Grimm / Sintratec 目指したのは、アニマトロニクスとモバイル四足動物との間のギャップを埋める、ダイナミックなアニマトロニクスロボットを構築すること。アニマトロニクスとはコンピューター制御されたロボットを人工の皮膚で覆い、リアルで滑らかな動きのある生物を演出する技術をいう。要はより生き生きとした「ロボットらしからぬ」ロボットの構築を行うことが目指されたというわけだ。そのために彼女たちが考えたのは、コンピューターアニメーションの動きを現実世界の歩行ロボットで行う方法だった。だが、プロジェクト参加者は皆学生、時間は限られている。開発期間はたった9ヶ月。その短期間で独自のメカニズムを備えたロボット全体をゼロから構築した。 動画を見てみると分かるが、なるほど、1999年のaiboと比較して、格段に進化していることがうかがえる。周囲の様子を見回しているような眼球の運動、各関節の滑らかな動き、動作パターンの多様さ、さすがに「本物の猫のようだ」とはまだ表現しえないものの、ディアナの存在にはaiboからは得られなかった「生きている」という感覚を得ることができる。ディアナを本物の猫のような様々な感情を表現できるキャラクターとするために、グリムたちは特にエクステリアデザイン、つまり外装パーツにかなりこだわったという。その際に欠かせなかったのが3Dプリンターだった。 画像提供/Andrina...
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寿司テレポート、コオロギクッキー、違法フカヒレ…、加速する3Dフードプリントの世界
日本からアメリカへ寿司が瞬間移動する? 3Dプリントによるフェイクミート、オルトミートの出力については、これまで幾度も取り上げてきた。最初はビーフに始まり、現在ではチキンやポーク、あるいは魚介類の3Dプリントも研究されている。たとえばオーストリアのスタートアップRevo Foodsが手掛けているのが3Dプリントサーモンだ。すでに試食会なども行われており、ネット上でレビューを見る限り、味もかなり良さそう。こうなると期待されるのが、アジやマグロなどの他の魚肉への展開である。 Revo Foods そんな中で、変わった取り組みを行っているのが日本の「OPEN MEALS」だ。何より目を引くのは、そのキャッチーなプロジェクト名だろう。「寿司テレポーテーション」「デジタルおでん」「サイバー和菓子」「寿司シンギュラリティ」。聞くだけでも想像力を刺激される「OPEN MEALS」の取り組みは、最近もメディア『現代ビジネス』に取り上げられ話題となった。具体的にどんなプロジェクトかといえば、たとえば「寿司テレポーテーション」は寿司をデジタルデータ化し3Dプリンターで出力するというもの。こちらは実際にそのデモンストレーションが2018年に行われている。ピクセル化されたマグロの寿司のデータを、日本からアメリカに送信、実際にそれを出力して見せたのだ。 さらに「OPEN MEALS」はそこに客それぞれの個人の健康データを紐付け、それぞれの健康状態に合うように栄養価をカスタマイズした形で寿司を提供するサービスまで構想しているという。「寿司シンギュラリティ」とはいつか始まるだろうその実店舗の名称だそうだ。どんな技術もまずはアイディアから。いささか突拍子もなく聞こえはするが、これらが実現すれば日本ではおなじみの「出前」の概念が根底から覆される。お気に入りの寿司屋の寿司を食べるために、その店の近くにいる必要がなくなるというのはすごい。ニューヨークにいようがジンバブエにいようが火星にいようが、3Dプリンターさえあれば気ままに寿司が食べられるのだ。もはや便利を通りこして、夢のような話である。 昆虫が苦手でも食べられるコオロギクッキーとは 3Dプリンターを用いたユニークな「食」の実践は他にも様々に行われている。たとえば今夏、山形大学の研究チームは「代替食品における3Dフードプリンターの活用」研究において、昆虫のコオロギを粉末状にしてクッキー生地と混ぜた材料を3Dプリントするという研究を発表した。昆虫はたんぱく質やミネラルを豊富に含み、また飼育にかかる環境負荷が少ないことから食肉の代替品としての期待を集めている。しかし、いかんせん、あの見た目が忌避感を呼んでしまい昆虫食の普及を妨げているのでだ。そこで研究チームは昆虫をいったん乾燥させ、パウター化することによって忌避感を抑えようと考えた。粉末化したそれを、他の材料と混ぜてクッキーの形状に3Dプリントすることで、コオロギ感のないコオロギクッキーを作ることにしたのだ。 画像:山形大学 試行錯誤の末に出来上がったクッキーは、すごく美味しそうではないものの少なくともコオロギの面影はとどめていない。これならば、こっそり茶菓子として出せば昆虫嫌いな人もうっかり食べてくれそうだ。 違法フカヒレを防ぐために超精巧の3Dプリントフカヒレが あるいは、全く別のところで、3Dフードプリントが思わぬ活躍をしているケースもある。それは他でもない、あの高級食材「フカヒレ」に関するものだ。 ...
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知られざる金属3Dプリンターの世界~現状と基礎知識~
(出所:スギノマシン) 目次 金属3Dプリンターはなぜなかなか普及しないのか 金属3Dプリンターの種類 まとめ 礼に始まり礼に終わる。どうも合氣道初段、広報エリナです。 秋の味覚を堪能しすぎて最近ちょっと太ったぞ、おすおすっ!!(ヤケ) 皆さんもご存知のように、いまや金属も3Dプリンターで出力可能な時代となった。とはいえ未だ金属3Dプリンターは工場などでの使用がメインあり、個人使用となるとちょっと敷居が高い。ありていに言えば、まだその実態がよく分からない(私を含む)。 とはいえその技術進歩は著しい。また低価格化も進んでいるようで、つい先日テックショップジャパンが金属造形可能な3Dプリンターを初めて試験導入し話題になった。このテックショップジャパンでは会員であれば、誰もがそこに置かれている工作機械を自由に使えるため、これは今後、金属3Dプリンターの一般人への普及を大いに促すことになるのではないだろうか。 そこで今回は知られざる金属3Dプリンターの世界を少し覗いてみたいと思う。 都産技研 金属3Dプリンターによる造形 金属3Dプリンターはなぜなかなか普及しないのか さて、奇しくも10月21日に発売された雑誌『機械技術』では、「金属3Dプリンタが拓くモノづくり」なる特集が組まれていた。どうやら、さまざまなタイプの金属3Dプリンターをはじめ各種金属粉末、ソフトウエアなどの周辺技術が紹介されているようだ。 画像:機械技術2019年11月号 勇んで読んでみたが、専門的な言葉が並んでいる。金属3Dプリンタによる特異組織形成、トポロジー最適化のカツヨウホウ、サイテキラティスコウゾウノカイハツ・・・む、寝てないぞ・・・! 専門誌だから当然といえば当然だが、これはどうも難しい。このあたりの話はとりあえず今回は置いておき(横に置くジェスチャー)、ここではまず基礎的な話をするとしよう(今後、勉強します)。 まず何より重要なのは、金属3Dプリンターで何を作ることができるのか? ということだろう。 もっとも使われているのは航空宇宙業界や自動車業界、医療業界においてのようだ。アメリカのゼネラル・エレクトリック傘下の企業が航空機エンジンの部品などを金属3Dプリンターで製造した、なんてニュースもあった。 ただ、これはすでに数年前のニュースであり、こうした巨大な機械の部品製造で3Dプリンターがどんどん大活躍していくのか! とも思われたものの、実は普及はあまり進んでいない。その原因は金属3Dプリンターが高価格であることだ。3Dプリンターの世界出荷台数においても、金属3Dプリンターの出荷台数は全体の1%にも満たないという。 もちろん高価格というハードルを乗り越えて、金属3Dプリンターを活用している企業も存在する。日本国内においては例えば山口県の伸和精工が、金属3Dプリンターを使った超小型人工衛星の部品製作に参入することを10月に発表した。 (画像引用:伸和精工) こうした事例はあるものの、ただやはり金属3Dプリンターが持つポテンシャルを考えれば、導入している企業はほんの一握り。 現在、国内外のメーカーが小型の金属3Dプリンターをせっせと低価格で展開できる金属3Dプリンターを開発中であり、現状では最安値で3000万円ほど。これが1000万円以下になったとき爆発的に普及するのではないか、とも見込まれており期待が高まる。 中でも注目したいメーカーは日本のニコンだ。今年の4月に冷蔵庫程度のサイズの金属3DプリンターLasermeister 100Aの発売を発表した。このサイズなら大きな工場などではなくとも、オフィスや下手をすれば家庭にでも置けてしまう。自宅で金属の立体物をプリントするなんて夢のような世界が、すでに到来しているのだ(私は買えないが)。 (出典:ニコン) スギノマシンも同様にDED(Direct Energy...
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都市に巨大キノコが出現? 3Dプリントされた「菌類の家」がタリン建築ビエンナーレで最優秀賞を受賞
キノコ繊維が注入された「人間と非人間のための家」 エストニアで開催されたタリン建築ビエンナーレ(TAB2022)に出展されたある3Dプリント建築が注目を集めている。製作したのは、オーストラリアの建築事務所SimulaaとデザインエンジニアのNatalie Alima。見るに異様なその建築の素材は、地元の木材企業が廃棄した木材と生分解性ポリマーとを組み合わせたもの。まずそれらの素材を3Dプリント造形することで基礎を形成し、そこにキノコ繊維が注入された。 菌類の家「Burlasite」 今回のTAB2022のコンセプトは「食」そして「代謝の建築」。そのテーマを受けて、SimulaaとAlimaが挑んだのは環境適応を備えた持続可能なデザインだ。Similaaの研究チームはこのプロジェクトについて次のように述べている。「このプロジェクトは生物学的変換と、生成アルゴリズムのパフォーマンスとの間の不安な同盟をキュレートする」やや難しい物言いだが、つまりは設計された人工的な建物と、それを侵食するキノコ菌との緊張状態に、人間中心主義的な建築とは異なる本当に持続可能な建築のあり方を模索している、ということだろう。 菌糸体を接種した3Dプリントモデル(Burlasite) この建築の名は「Burlasite」。時間の経過とともに分解されていくことがそのコンセプトになっている。通常、建築とはより頑丈で、より長持ちすることを前提に建てられるものだが、それがこの「Burlasite」では逆転しているのだ。あらかじめどう崩壊していくかという生成変化を含めて想定されているという点は、実に革新的であり、環境の時代に即したサステナブルなアイディアである。 最終的な菌糸コロニーのテクスチャを示すプレビュー(Burlasite) 今回、菌たちはアルゴリズムによって木造の基盤を取り囲むように設計されている。基盤は菌糸体の成長にとっては理想的な生息地となるようにゼロから設計されており、Simulaaチームはこれを2021年の8月に設計した。およそ2ヶ月後に成長に達するという予想がなされていたが、現在は3ヶ月目、季節変化により菌類が分解を始めたところだという。チームはこれをやがては「非人間と人間の両方の家」に変えていくという壮大な計画を立ているそうだ。なんでもTAB2022は2022年9月7日に一般公開され、この「Burlasite」も2024年までエストニア建築博物館の前に展示されるとのこと。最先端テックと菌類との建築におけるコラボレーション。是非とも肉眼で鑑賞してみたいものだ。 「Burlasite」の展示イメージ
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WASPが手掛けたDiorの3Dプリントコンセプトストアがドバイにオープン
3Dプリントされた土と砂のコンセプトストア いまや世界の最先端都市の一つであるドバイ。世界各国のテック企業がドバイを舞台に先端技術を競い合い、ドバイのスマートシティ化を押し進めている。たとえば数年前に話題となったのは警察ロボットだ。警察の制服を着て街を移動するロボットの存在は当時、人々に「不気味の谷」現象を引き起こしたと言われる。「不気味の谷」とは、人間に近いロボットや人形を見た時に感じる違和感のこと。確かに街中でおまわりさんだと思って声をかけた相手が、振り向いたらロボットだったとしたら、ちょっとビクっとしてしまうかもしれない。なんでもドバイでは2030年までに警察の1/4をロボットへと移行させていく予定だという。 ドバイの警察ロボット もちろんドバイでは3Dプリントシーンも活況を呈している。たとえば現在、世界でもっとも注目の3Dプリンター関連技術のイノベーターであるイタリアのWASP(World's Advanced Saving Project)もまた、ドバイを舞台に意欲的な試みを行っている。ちょうど前回の記事で紹介したドバイ万博のスペインパビリオン、あれもまたWASPの技術的支援を受けて作られたものだ。そのWASPが今回手掛けたのは、高級ブランド「Dior」のコンセプトストア。ドバイのジュメイラビーチに突如出現したこのスタイリッシュな造形のコンセプトストアも、3Dプリンターによって出力されたものだ。 Diorの代名詞「カナージュモチーフ」も完全再現 今回、用いられたのはクレーンWASPと呼ばれるWASPが独自開発した3Dプリントシステム。生の土や砂などの天然素材を組み合わせて、2つの円形モジュールから構成されるストアが出力されることとなった。壁にはDiorの特徴的なパターン、通称カナージュモチーフを再現。ブランドのクリーンなイメージをあらためて強めることに成功した。 画像:Mohamed Somji / Dior / WASP WASPのディレクターによれば、最も難易度が高かったのは、やはり壁の表面上のカナージュモチーフだったとのこと。しかし、WASP独自のソフトウェア機能が、再現の困難なカナージュモチーフを正確に再現してみせた。写真を見比べてみると、ディオールのハンドバッグに施されたカナージュモチーフが実に巧みに再現されているかが分かる。 画像:Mohamed Somji / Dior...
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2022年、100棟からなる3Dプリント住宅街の建設があの高級エリアで着工
テキサス州オースティンに100棟の住宅を3Dプリント 技術的発展の著しい3Dプリント住宅業界から新たなニュースが届いた。2022年、アメリカはテキサス州オースティンで、100世帯分の3Dプリント住宅の建築が着工されることが決まったのだ。建設を手がけるのは国際的な建築会社BIG-Bjarke Ingels Group、積層造形を手がけるのはICON、さらに米国を代表する住宅建築業者のLennarの三社だ。3Dプリント建築では近未来的なデザインが追求されがちだが、今回、この三社が手掛けた住宅は典型的なアメリカの「郊外の家」の美学を現代的にアレンジしたデザインとなっている。材料もまた伝統的な建築材料を用いており、さしずめ新しさと古さの融合といったところだろうか。 画像提供:ICON 3Dプリントを用いることで、曲がりくねった曲線状の壁が可能となることから、形状は従来の建築と比較してもより自由になる。各住宅の屋上にはソーラーパネルも設置され、建設プロセス、建設後の運用を含めて、環境を意識した持続可能性が追求されているというところもポイントは高い。 米国では約500万戸の新築住宅が不足状態 今回、この住宅街が建設されるオースティンというエリアは、米国でも最も繁栄しているエリアの一つと言われており、2021年には住宅価格の中央値が過去最高の575,000ドルに達していた。現在はやや落ち着いているが、人気エリアであることには変わりない。住宅の買い手も急増しており、そうした背景もあり、今回の住宅街建設が決まったようだ。 画像提供:ICON ICONはこれまで、ホームレスのための仮設3Dプリント住宅や、メキシコにおいて1日3ドルで暮らす家族のための3Dプリント住宅コミュニティを提供してきている。こうした住宅問題を解決する上で欠かせないのがコストの削減だ。3Dプリント建築は何より建設にかかる日数を大幅に縮減できる。人件費だけを見ても大幅なコストを節約できるのだ。 ICONが使用している住宅3Dプリンター「ヴァルカン」( 画像提供:ICON) 現在、米国全体で約500万戸の新築住宅が不足状態にあるという。品質、美しさ、持続可能性を損なうことなく、住宅不足を解決するためには3Dプリント技術が欠かせないのだ。実際、耐久性も優れているとのことで、ICONの3Dプリント建築が用いる先端材料は、従来の建築材料よりも強力で長持ちすると考えられている。こうしたことから、ICON以外の様々な企業がこの分野に参入しており、以前、記事でも取り上げたMighty Buildingsはカリフォルニアのランチョミラージュに3Dプリント住宅コミュニティを建設して話題となった。このままのペースで進めば、5年後には世界各地に3Dプリント住宅街が乱立している可能性もある。果たして日本はどうなるか。今後の展開を注視していきたい。
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3Dプリントされた人工の森が「光合成」を起こす|ドバイ国際博覧会で話題のスペインパビリオン
コロナ時代の万博に現れた「知性の森」 コロナ禍の影響により1年遅れでの開催となったドバイ国際博覧会が現在開催中(来年3月31日まで)だ。これは中東アフリカでは初となる歴史的な国際的「万博」。加えて、いまや世界の最先端建築が集まるドバイでの開催ということもあって、大変注目度も高い。各国がそれぞれのパビイリオンで自国の先端技術、先端デザインをアピールする中、とりわけ今回目立っていると評判なのがスペインパビリオンらしい。スペインパビリオンで展示されているのは3Dプリントされた人工の森。その名も「Forest of Intelligence」だ。 画像引用:Onionlab バルセロナを拠点とするOnionlabとExternalReferenceによって考案されたこの展示は、生分解性の有機材料を使用して3Dプリントされた樹々と、インタラクティブな床から構成されている。その背景には国連による持続可能な開発のための2030アジェンダがある。注目すべきは樹々の機能だ。これらの樹々は二酸化炭素をリアルタイムで吸収し、酸素を生成することができる特殊材料からなる。つまり、単に見て美しいだけではなく、その存在がすでにCO2の削減を担っているというわけだ。 画像引用:AdriàGoula/Labóh このインタラクティブな拡張現実空間においては、様々な仕掛けが用意されており、訪問者は現在の環境問題に対する様々な教育的体験をすることができるという。アートとデザインとテクノロジーを交差させながら地球環境を問い直すという試みは、まさに時代の気分ともマッチし、今回の万博におけるひとつの目玉となっているのだ。何より注目したいのは、その最前線に3Dプリント技術があるということだろう。その素材は、コーンデキストロース(砂糖)で作られた持続可能なバイオプラスチックポリマー、そしてCO2を含む温室効果ガスや汚染物質の一部を捕捉し、鉱化する作用があるという天然ミネラル化合物PURE,TECHの混合からなる。つまり、人工であるにも関わらず光合成を行っているに等しい優れもので、今後の3Dプリント建築などにおいても大変注目度の高い素材である。 画像引用:Onionlab 肉眼で見る限り、それは単に美しくSF的な技術が駆使された展示空間かもしれない。しかし、目には見えないミクロの領域において、それは地球環境に溶け込み、機能を果たしている。その二重性こそが今後テクノロジーやアートに求められているものだろう。そして、その上でも3Dプリンターが鍵となる。こうした国際展示にはそれ自体が環境に優しくないという批判もあるが、それを言い出したら野暮というもの。まだコロナは完全収束には至っておらず、なかなか現地に行くことが難しいが状況だが、もし叶うなら来年春までに足を運んでみたい。
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NFT市場で次に盛り上がるのは「3Dプリンターアート」か?
6900万ドルのデジタルデータ 今年、最もホットな話題とはなんだろうか。日本国内的に言えば、東京オリンピックの開催は世間に賛否を巻き起こした一大現象だったと言えるかもしれない。では世界的にはどうだろうか。まず昨年以来のコロナの問題、ワクチンの問題がある。しかし、こちらも発生から2年目に突入し、状況は依然として揺れ動き続けているとは言え、話題としての新鮮さは欠く。すると2021年に端を発して、世界中を最も熱くさせた話題とは一体どれなんだろうか。おそらくその答えは一つしかない。「NFT」だ。NFTについてはすでに様々なところで解説がなされているためご存知の方も多いだろう。 NFT、すなわち非代替性トークン。ざっくりとした説明をしておくと、これまでデジタルデータに関してはオリジナルという概念がなかった。それらはネットワーク上でいくらでもコピー可能なものとしてあり、せいぜいが著作権によって上映や展示などの使用に関して法的な制限が設けられていたくらいだった。この状況を変えたのがNFTだ。仮想通貨イーサリアムのブロックチェーン技術を用いて、オリジナル/コピーという二分法の存在しなかったデジタルデータに「オリジナルデータ」という概念を持ち込むことに成功。これによって世界で唯一のデジタルデータの存在が認められることとなり、あるデータが本物であるという保証を持った「作品」として取引可能になったのだ。 このNFTの存在を世に知らしめたのは、アーティストBeepleのデジタル作品「Everyday:The First 5000 Days」だった。同作品は2021年のはじめ、現代アートオークションの大手クリスティーズにおいて、6900万ドルという驚異的な金額で落札された。これはアート界において一つの事件だった。なんせ今までは展示上映権としてくらいしか売りようがなく、そもそも所有することが難しいとされてきデジタルデータが、あらあめてアートコレクションの対象として売買できるように(それもこんな高額で)なったのだから。 BeepleのJPEGコラージュ「Everyday:The First5000Days この一件によってNFTは一挙に話題となり、多くのアーティストや著名人がNFT市場に参画した。テクノの大御所であるエイフェックスツインの新作ミュージックビデオの映像データ、あるいはTwitterの創設者であるジャックドーシーの最初のTwitter投稿なども取引の対象となった(こちらは300万米ドルで販売された)ことは記憶に新しい。現在、話題としては一旦沈静しているようにも見えるが、水面下ではいまだにNFTアート市場は活況を呈している。いまだ手探りの段階であり、それだけにフロンティアを狙う作家や買い手たちがシノギを削りあっているのだ。 NFTアートの魅力と注意点 アート作品の良いところは、一度値がついたら基本的に価値が下がらないところだろう。これは通常の投資財とは明らかに異なる点だ。もちろん、作家の人気や評価が下がれば売ることが難しくはなってしまうが、1000円で買ったものが翌年に500円で売られているというような悲しい事態はまずない。一方で価値の膨らみ方は企業株などよりもはるかにすごい。たとえばバスキアを例にとってみよう。バスキアはかつて路上で絵を売ってた時代もある。当時の値段は一枚10ドル程度。それが現在ではどうか。元ZOZOTOWN代表の前澤氏がバスキアの作品を落札した価格は1億1050万ドル、日本円にして約123億円だ。もちろん、これはかなりレアなケースだが、5万が50万くらいならば無名レベルの作家でもザラにある。そのアーティストが業界で生き残っている限り、キャリアとともに作品の値段は上がっていくものだからだ。 とはいえ、作家全員が10年後にも生き残っているというわけではなく、そこを見抜くだけの審美眼は求められるところだろう。また、アートを投資目的で購入するという行為は基本的には「邪道」でもある。アートはアートのために、ノット・フォー・マネーというのは、それはそれで大事な美意識だ。さりとて、アーティストを応援しながら、利益を得ることもできるというのであれば、それはウィンウィンであるとも捉えられる。もし少しでも興味があるならば、今のうちにマーケットに参画しておくのも一手かもしれない(その際、節操のない青田買いは若手作家の今後のためにも控えよう。キャリアの浅い段階で値段ばかりが上がってしまい後々に作品が販売しづらくなってしまうケースもある。投資意識ばかりが先行して業界を荒らしてしまっては、誰にとってもマイナスにしかならない。アート売買には品位が欠かせないのだ)。ただし、気をつけなければならない問題もある。NFTの中でも人気の高いCryptoPunksというジャンル(デジタルキャラクター画像から構成されるNFTアート)があるのだが、まさに先日、このCryptoPunksに関して事件が発生したのだ。何が起こったのか。まず背景としてCryptoPunksの爆発的な値上がりがあった。今年の頭の段階ではCryptoPunksは1枚数十万円くらいが相場だったが、そこから徐々に値上がりを続け、現在では平均5000万円くらいで取引されるようになっていたのだ。中でも、あるCryptoPunksがとんでもない価格で売却される。その額、なんと500億円。Beepleどころの話ではない。当然、すぐに話題となった。 Punk 9998 bought for 124,457.07 ETH ($532,414,877.01 USD)...
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現代映画と3Dプリンターの切っても切れない関係|MARVEL、007、ジュラシックワールドまで
映画製作に欠かせない3Dプリント技術 映画製作においては様々な衣装や小道具が用いられる。特に映画の舞台が現代ではない場合、それらは特注によって作られることになる。大量生産するわけではないオブジェクトをそれぞれ一つずつ手作業で作るというのは、想像するだに大変なコストだ。そのため、現在では映画業界に3Dプリンターは欠かせない存在となっている。もちろん近年ではCGも多用されているが、CGだけでは補えない部分に関しては、3Dプリンターによってオブジェクトを出力し、映画をよりリアルにすることに役立てているのだ。最近、最も話題となったところでは、昨年、第77回ゴールデングローブ賞「アニメーション映画賞」を受賞したアニメーション作品『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』だろう。 これはいわゆるストップモーションアニメと呼ばれるジャンルで、対象物を小刻みに操作して、個々にコマ撮りを行うことで連続再生した時に対象物が動いているように見えるという、アナログな手法で制作された。その上で活躍したのが3Dプリンターだ。今回、作品を制作したLAIKA Stuidosはあのストラタシス社全面協力のもと、なんと30万点以上のパーツを3Dプリントして、ポップで可愛い世界観を作り上げたのだそう。その結果は世界からの大絶賛。今後、同種の映画で3Dプリンターが大活躍していくことになるのは間違いない。 あるいは実写映画でも3Dプリンターの活躍は眼を見張るものがある。 たとえばMARVELシリーズ。このシリーズでは現実離れした様々な衣装が登場するが、近年、とりわけ目を引いた衣装といえば、『マイティ・ソー バトルロイヤル』に登場したヘラの仮面だ。演じたのがあの大女優ケイト・ブランシェットだったこともあり、世間からも大きな注目を浴びた。 動画の0:20くらいから登場するこの異形化したカブトムシのような仮面(兜?)もまた3Dプリントによって作られた。ケイトの頭部を3Dスキャンした後、そのデータをもとに炭素繊維で強化された複合粉末を素材とする、重さ約1.8kgの軽量性と安定性に優れたオブジェクトだ。この独創的なフォルムは3Dプリンターならでは。まさに次世代クリエイションと呼ぶにふさわしい逸品だろう。もちろん、ヘラだけではない。同じくMARVELシリーズの大ヒット作『マイティ・ソー/ダークワールド』でも3Dプリンターは活用されている。ご覧になった方は印象に残っていると思うが、雷の神が装備していたあのケルティック模様のハンマー。あれもバインダージェット方式の3Dプリンターで作られたものなのだ。 さらには映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスターロードのマスクや、コラスの鎧もそう。そして、あの『アイアンマン』のスーツにも3Dプチントテクノロジーは使用されている。『アイアンマン』に関してはファンたちの二次創作としてもスーツが人気で、その際にも3Dプリンターが使用されている。 以前は病気で右手のない少年に対して、『アイアンマン』の主演俳優ロバート・ダウニー・Jrが3Dプリントされたアイアンマンの腕がプレゼントされるというハートウォームなニュースが話題になったこともある。 あるいは、ちょっと変わった3Dプリント技術の映画への登場例としては映画『オーシャンズ8』がある。このシリーズをご覧になったことある方には説明不要だろうが、本作では複数のやり手泥棒たちがタッグを組んで宝を狙うというのがストーリーの骨子となっている。スピンオフである「8」では、スパイチームがダイヤモンドの散りばめられた超高級ジュエリーを違法複製する際に3Dプリンターを用いているのだ。こちらに対しては「まだそんな高性能な3Dプリンターはないだろ!」と鑑賞者からツッコミも入ってしまったのだが、とはいえ、それだけ3Dプリンターの技術に人々が夢を持っているという一つの証だろう。 ...
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集団行動する3Dプリント昆虫ロボットが人間を狩猟するディストピア
3Dプリント技術の兵器利用をめぐって 3Dプリント技術の発展は人類にさまざまな恩恵をすでにもたらしている。地産地消の促進、環境破壊を引き起こす大量生産の抑止、国家間搾取を引き起こすサプライチェーンの見直し、医療技術の発展、食糧不足のソリューション、民間のものつくり意欲の向上、などなど、そのポジティブな側面を挙げていけば枚挙にいとまがない。しかし一方で、いくつか危険視されている点もある。たとえば3Dプリント銃の普及は、手放しには肯定することができない問題を引き起こしている。そして、もう一つ、今最もされているのは3Dプリント技術の兵器としての利用だ。たとえば、最近、ノートルダム大学の電気工学教授であるYasemin Ozkan Aydin氏が発表した論文では、3Dプリントされた多脚ロボットの群れが個々のロボットの地上の移動性を高める可能性が指摘された。 画像:ノートルダム大学 ここで想定されたロボットは昆虫型であり、その脚の柔軟性により、障害物があってもセンサーなしに避けることができるという。さらに道に隙間があっても自らの体で橋をかけて渡ることができ、また、それぞれのロボットが接続することでより移動性を高めることもできるそうだ。果たして、そのような障害物や亀裂をロボットが軽快に超えていくことが求められる現場とはどのような現場だろう。そう、建物が立ち並ぶ市街地、そして戦場だ。もちろん、現状でこのロボットが兵器として開発されようとしているわけではない。しかし、このロボットがもし武装したら? それは陸上戦における戦車以上の最強の存在となりうる可能性があるのだ。実際、新しいテクノロジーが兵器として用いられることはとても多い。今では一般人の映像撮影でも多用されるドローンなどもそうだ。すでにドローン爆撃は現代的な戦争において欠かすことができない作戦攻撃となっている。つまり、これは決して杞憂とは言えないのだ。集団行動研究を援用した自律型ロボット兵器システムが今後、どのように国家間の戦争を変えることになるのか。そして、その中で3Dプリント技術がどのように利用されていくことになるのか。グレゴワール・シャマユー著『人間狩り』によれば、権力とは群れを安全に管理する司牧権力と、群れの中から異物を探し出し、排除、抹消する狩猟権力とがあり、それらはコインの裏表として機能しているという。巨大な3Dプリント昆虫ロボットは、もしかしたら近未来の狩猟権力の担い手となる可能性もある。 グレゴワール・シャマユー著『人間狩り』 もちろん、それは全て我々人類がこのテクノロジーをどう使うかにかかっている。街中に警察昆虫が蠢くディストピアを妄想しつつ、テクノロジーのよりクリエイティブな利用を心がけ、異なる未来の可能性を切り拓いていきたいところだ。
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ハロウィンを120%楽しむために3Dプリンターを活用しよう|仮装グッズから室内装飾まで
ハロウィンをより創造的に楽しむ 日本でハロウィンが盛り上がるようになったのはいつからだろう。昭和生まれ世代にとって、ハロウィンは決して馴染み深いイベントではない。もちろん存在は昔から知っていたが西洋のお祭りという印象が強く、自分たちがそれを祝うという感覚はなかった。それがいつからか、毎年恒例の大イベントになっている。おそらく、明治や大正に生まれた人たちにとってのクリスマスもこんな感じに見えていたんじゃないだろうか。とはいえ、街中で仮装する若者たちの姿は楽しげで、見ているだけでも不思議と明るい気持ちになってくる。今年はコロナ禍の影響で大規模なお祭りとはいかないだろうが、感染対策をした上での小規模な仮装パーティーなどはきっと各所で開催されるのだろう。さて、そんなハロウィンをより創造的に楽しむ上でも、3Dプリンターは実に有用なテクノロジーだ。ここではハロウィンに最適な無料の3Dプリントプロジェクトをいくつか紹介してみたい。 3Dプリント「仮面」で仮装行列の主役に まず、ハロウィン仮装として真っ先に思い浮かぶのは「仮面」だろう。衣装をしっかりと準備する時間はないが、仮面だけ被ってちょっと仮装行列に参加してみるくらいなら、忙しい方にも可能だ。そうとはいえ、量販店で売っている仮面となると、オリジナリティに欠ける。街中で同じ仮面を被った人に遭遇するのもなんだか気恥ずかしい。だったら自分にぴったしの仮面を出力しちゃえばいいのだ。たとえば3DデータサイトのThingiverseには、ハロウィン仮装にぴったりの様々な仮面のデータがアップされている。たとえばこちら。 https://www.thingiverse.com/thing:32189 うーん、これなら仕事帰りにスーツで被っても合いそうだ。それにかなり気色悪い。目を引くのは間違い無いだろう。 あるいは、これなんかどうだろうか。 https://www.thingiverse.com/thing:2402310 昔懐かし映画『マスク』に登場するロキのマスクだ。これもなかなか迫力がある。黒いパーカーに合わせフードを被るだけでも、ひときわの禍々しさを放つことができそうだ。もうひとつ、個人的に気になったのはこちら。 https://www.thingiverse.com/thing:2828079 そう、人気ゲーム「Dead by Daylight(DBD)」に登場する殺人鬼ハントレスの仮面だ。今や天井知らずで人気が上がり続けてる世界的なゲームだけに、DBDのキャラクターへの仮装はハロウィンにおいてもかなり注目を集めることができるはずだ。中でもハントレス仮面を被りながら鼻歌を歌って歩いた日には、周囲のDBDファンは戦慄して逃げ出すことだろう。 さらに差をつけるには3D装飾小道具 さて、仮面だけじゃ物足りないという方には小道具なんかはいかがだろうか。ホラーな仮面に黒いローブコート、そこにプラスアルファ、気の利いた小道具があればハロウィン気分はまた一段階アップするはずだ。再びThingiverseを覗いてみよう。 ...
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水溶性サポート材(PVA)の除去速度が約4倍に! Ultimakerが来春発売予定のPVAリムーバルステーションとは?
簡単だが時間がかかる水溶性サポート材の除去 普段、SK本舗では主に光造形方式の3Dプリンターについての情報を紹介することが多いが、ユーザーの皆様の中にはFDM方式の3Dプリンターも併用されている方もいることだろう。そこで今回はFDM方式の3Dプリンターを使用されている方に向けた最新の耳寄りニュースをお届けしたい。さて、造形方式を問わず、3Dプリンターユーザーにとって最も面倒で苦痛を伴う工程のひとつに「サポート材の除去」がある。本来なら出力ボタンを押して造形物が出力されたら、サッとそれを洗い流し、あとは新作の出力品を眺めながらコーヒーを一杯といきたいところだが、そうはさせてくれないのがサポート材の存在なのだ。このサポート材には種類がある。今回、取り上げるのは水溶性サポート材、通称PVAだ。PVAはFDM方式で選択できるサポート材の種類であり、これは通常のサポート材に比べて、もともと非常に除去が簡単であることで知られている。通常、サポート材の除去といえば、出力者が自らの手作業で行うのが一般的だ。しかし、このPVAは水溶性のため、水に漬けておくだけでサポート材が自動的に除去される。要は出力したら水に漬け、あとは放置するだけでいい、というわけだ。しかし、PVAは非常に便利な反面、問題もあった。時間だ。ユーザーにたっぷりと時間的余裕があるならば、問題はないかもしれない。しかし、例えば3Dプリンターを使用した副業をしていたり、納期の伴うような制作をしているという場合、かかる時間はかかる労力と同等かそれ以上に重要な問題だ。実際、この問題がユーザーにとっても気がかりなようで、手間がそれほど掛からないにも関わらず、いまだPVM一択となっていないのもこのためだろう。手間を取るか、時間を取るか。しかしこの二者択一は過去のものとなろうとしている。鍵となるのは今月(2021年10月)に3DプリンターメーカーのUltimakerが発表した最新機器だ。 除去速度はなんと4倍!? PVAリムーバルステーションとは Ultimakerが発表したもの、それはPVAリムーバルステーションだ。 その名の通り、これはPVA除去のための機械。メーカーによるとこれによってサポート材の後処理が現在の4倍速で行えるようになるという。CEOは次のように述べている。「PVA除去ステーションを含む当社の3D印刷プラットフォームにより、プロトタイピングおよび製品開発プロセスをスピードアップし、最も複雑な設計や形状からでも安全、迅速、かつ効果的なPVA除去を可能にします。これにより、チームはより迅速な承認プロセスを視覚化できるため、組織はよりスムーズに、よりスマートに運営できます」実際、これはさほど大げさな話でもないだろう。これまでPVAサポートの溶解には複雑さによっては1日以上かかる場合さえあった。そのタイムロスは計り知れない。それがおよそ75%カットできるというのだ。これは例えるならADSLから光回線への転換のようなものだ。操作も簡単だ、出力したパーツをバスケットに入れ、ステーションに水を入れる。その後、スタートボタンを押すだけで数時間後にはすべてのPVAが完成した出力品から消え去っているという。もちろん、粘着性の残留物を心配する必要もない。必要に応じて速度を自分で調整することもできる。 さらに、容器が透明なため、中を覗くことで水交換の必要性を飽和インジケーターによって確認できるなど、お手入れも簡単らしい。 既に開発は最終段階に入っており、メーカーによれば来年春には販売する予定だという。おそらくは今後、これに限らずサポート材の除去をめぐっては様々な技術革新が行われていくに違いない。光造形のサポート材除去にもその波が到来することを願うばかりだ。
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HERON01がスニーカーを刷新する? 最先端3Dプリンターシューズに業界が大混乱
世界初の完全3Dプリントスニーカー 今、世界中の名だたるスニーカーブランドに激震が走っている。その震源地となっているのは、テック企業Heron Prestonと靴メーカーZellerfeldの提携によって発表されたスニーカー〈HERON01〉だ。 この〈HERON01〉の何がすごいのか。他でもない、この〈HERON01〉はすべてのパーツが完全に3Dプリントされた世界最初のスニーカー製品なのだ。シューズ業界はこれまでも3Dプリント技術に着目してきた。アディダスやナイキ、ニューバランスなどの大手メーカーは、それぞれテック企業と提携し、スニーカーのミッドソールなど部分において3Dプリント技術をすでに導入している。しかし、それでも縫い目やステッチ、パーツを接合する接着面など、一つのスニーカーを完全に3Dプリントするまでには至っていなかった。今回、〈HERON01〉はそうした技術的問題をすべてクリアし、同時に高いフィット感、通気性、クッション性を有するスニーカーの開発に成功した。これがスニーカーのワークフロープロセスに革命を起こすと言われているのだ。 単一素材によるサプライチェーンからの脱却 もともと、Zellerfeldは2015年の設立以来、3Dプリントシューズの研究開発を続けてきた。ある時、Zellerfeldが発表した初期のプロトタイプスニーカーがHeron Prestonの目に止まった。そこから二社の提携が始まり、今回の〈HERON01〉において、ファッションシューズの業界へと進出することになったのだ。〈HERON01〉のコンセプトは「テクノロジーと循環性による革新」。実際、〈HERON01〉は単一素材からなるため、完全にリサイクルが可能。また、大規模工場も必要なく物流に依存しないためサプライチェーンに悩む必要もない。 デザインはサギから着想を得た。サギは英語でHERONと呼ばれる。現在はベータプログラム中で参加者はホワイト、ブラック、オレンジの三色から選ぶことができる。なお、収益はサプライチェーンによる児童労働問題の改善に取り組む慈善団体グローバルマーチに寄付するなど社会問題にも意欲的に取り組んでいる。このベータプログラムが成功した後、いよいよ〈HERON01〉は市場へと投下されるらしい。これは靴の世界市場を混乱させることになるとも言われている。発売されたら是非とも履いてみたいところだ。 Heron Prestonはこう述べている。「これはほんの始まりにすぎません。3Dプリンティングの可能性は無限大です。機能的で進化するプロトタイプを数時間で設計および印刷することができました。従来の製造では、これには数か月かかったものです。さらなるアップデートを経た靴を印刷する日が待ちきれません」。
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