
普通の3Dプリンターにあるキットを接続するだけでフードプリンターに変身!? Cakewalk3Dの斬新な試み
「3Dプリントを民主化する」
待望されながらもなかなか技術的進展が少ないフード3Dプリント業界。最近では食といえばバイオ3Dプリンターで造形したオルトミートばかりが話題だ。
とはいえ、3Dプリントクッキングの技術も少しずつ進んでいってはいる。たとえば、3Dプリンター企業Sculpteoの元ディレクターが設立したプロジェクトCakewalk3D。その名の通り、これはケーキの出力を目的とした3Dプリント技術を提供するプロジェクトだ。
Cakewalk3Dの面白いところは、一般的な3Dプリンターを利用する点にある。市販の多くの一般的な3Dプリンターに直接適合する食品用の押し出し機を提供することで、自宅のプリンターからチョコクリームやメレンゲを印刷してくれるという。
食品3Dプリンターは現状で専門性が高く、一般にはほぼ普及していない。その点、Cakewalk3Dはあくまで一般使用目的。プロジェクトの設立動機も「3Dプリントを民主化する」というもので、一般家庭での使用が目指されている。
Kickstarterから始まったこのプロジェクトだが、どうやらすでに接続キットは販売されているらしい。値段も145€と安価。なお、兌換性のある3Dプリンターのリストは以下のリンク先で公開されている(これが全てというわけではなく現状で確認が取れている機種のリストということらしい)。残念ながら構造上、光造形には対応してない。このキットはFDM方式の3Dプリンターに限られているようだ。
さて、実際の使用感としてはどうだろうか。youtube上にキットの組み立てから使用までの流れを紹介している動画があったので見てみたい。
組み立て自体は難しくなさそうだ。そして実際のケーキの印刷に関しては、なるほど、デコレーションには使えそうだ。とはいえ、まださほど複雑なレベルとは言えない。現状ではお遊び感覚でケーキ作りの一部に採用できるかなという感じ。いずれにせよ、プロトタイプ感はある。
ただ、一般の3Dプリンターがキットを接続するだけで食品3Dプリンターに早変わりするのは新鮮だった。今後の発展可能性を考えれば、十分に意欲的な試みだと言えそうだ。
3Dフードプリンターはこれからが本番?
もちろん、3Dプリント食品はこれだけではない。以前も紹介したことがあるが、2015年には3Dプリントピザの自販機が実際に始まっている。
また、現状ではレストラン向けにだがフード3Dプリンターも出回り始めている。ただ、実際に食材を調理するのではなく、複雑な形状を設計するためや、Cakewalk3Dと同様にムース状のものをデコレーションするために用いるのが一般的なようだ。
たとえばプロフェッショナル向けのフード3Dプリンターとして知られるFoodiniは、5つの異なるカートリッジを同時に使用して、ゼリーからハンバーグまで、あらゆる材料の処理が可能となっている。価格は4000ドルほどなので、一般人でも手の届く範囲だ。
あるいはPancakeBotのようなパンケーキ専用3Dプリンターなどはあるが、これもまたホットプレート上に直接バッターを押し出すまでであって、ゼロから完成までを成し遂げてくれるわけではない。ただ、形状で遊べるのは、ちょっと楽しいかもしれない。
このように、2021年現在においては、3Dフードプリンターはまだ決して汎用性が高いと言える段階にはない。技術的には黎明期といったところだろう。食材のカットや焼く煮る炒めるなどの工程は、基本的な3Dプリント技術とは相性が悪い。もっともイメージとして近いのは、以前にも消化した明治大学開発のFunctgraphだろうか。
https://skhonpo.com/blogs/blog/sandwitch
願わくば、食材を放り込んだら、自動的にカレーが出力されるようなプリンターが誕生してほしいものだが、その道のりはまだまだ長そうだ。