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頭部が結合された双子の命を救う画期的な分離手術を3Dプリント技術がサポート

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頭部が結合された双子の命を救う画期的な分離手術を3Dプリント技術がサポート

 

結合双生児の分離手術

 

かつて日本でも有名だった双子がいる。

「ベトちゃんドクちゃん」。そう呼ばれたベトナム生まれの二人の子供たちの下半身は繋がっていた。彼らは結合双生児と呼ばれている。およそ5万〜20万出生あたり1組程度の割合で発生すると言われる、体の一部が結合して生まれてくる双生児のことだ。

彼らの存在が話題となったのは80年代。ベトナムには長く続いたベトナム戦争の傷跡がまだ生々しく残されていた頃であり、ベトちゃんドクちゃんもまた、米軍がベトナム戦争時に大量にベトナムに散布した枯葉剤の被害の可能性があるとも言われた。日本でも数多くのメディアで紹介され、様々な支援が二人に寄せられた。

ベトちゃんドクちゃんの二人はやがて分離された。きっかけはベトちゃんが意識不明の重体となり、このままだと2人とも死亡してしまう危険があるとされたことだ。この際の手術には日本から医師団が派遣され、ホーチミンにて17時間に及ぶ大手術が行われた。結果、二人は無事に分離され(足は一本ずつ残された)、ベトちゃんは重い脳障害が残り寝たきりの状態が続いたものの、ドクちゃんはその後、社会生活を取り戻し、2006年には結婚も果たしている。

 

  

 


こうした結合双生児たちの存在は、私たちにとって良くも悪しくも大変興味をそそる存在だ。それぞれが単独の個人であるということが前提とされた社会で、彼らは個人と呼ぶにはあまりに単独性がない。一心同体という日本語があるが、彼らはさしずめ二心同体、果たしてその暮らしがどのようなものなのかは、いつだって多くの人々の関心を集めてきた。

たとえば、アビゲイルとブリタニーの姉妹もそんな一組。1990年生まれの二人は、米国のテレビ番組『アビーとブリタニー』によって広く知られている。現在、二人は二人で一組として小学校教師と働いており、今に至るまで分離手術は行われていない。カメラに映る二人は実に生き生きとしているが、彼女たちの生は健常者にとって時にファンタジーを掻き立てるものでもあるのだ。


 

 

 


現在、結合双生児の分離手術は極めて難度の高い外科手術のひとつだ。時として手術によって、二人のうちの片方が亡くなってしまうようなこともあり、その施術においては細心を要する。とりわけ頭部が繋がった結合双生児の分離手術は困難だと言われ、前例も世界で20件ほどと少ない。しかし一方で頭部結合の双生児は延命率自体が低く、両親は究極の選択を迫られざるを得ない状況がある。

もちろん、結合双生児だからと言って必ずしも分離しなければならないということではない。本人たちがそれを望まないケースも多く、結合された生は一つの生のあり方として捉えられて然るべきだ。ただ、今書いたように、結合しているがゆえのリスクが生じてしまうケースもある。分離手術の技術的向上は、その上でも極めて重要なテーマなのだ。

 

難易度の高い分離手術を3Dプリンターがサポート


そんな中、イスラエルのソロカ大学医療センターのチームが国内で初めてとなる頭部結合双生児の分離手術を成功させたという報が届いた。対象となったのは現在1歳の結合性双生児。二人の頭部は頭蓋骨ごと繋がっているため、その手術は難度を極めるものだった。

まず医師が手がけたのは二人の頭部の皮膚を成長させることだった。双子の頭皮と頭蓋骨の間の双子の頭の隣接する部分に膨張可能なシリコンバッグを挿入し、それらの上で皮膚を成長させたのだ。

十分に皮膚が成長した段階でようやく手術の準備が整う。しかし、この手術は12時間に及ぶ大手術が予定されていた。加えて先例の少ない、極めて高い技術が求められる手術だ。医師たちにかかるプレッシャーも尋常ではなかった。

その際に活躍したのが3Dプリンターだった。3Dプリンター企業最大手のストラタシスと医療機器スタートアップの3D4OPが、双子の頭部の3Dモデルと、仮想現実における手術の練習環境を提供したのだ。

 

 

Photo/Soroka-University Medical Center.



重要なポイントは二人が血管構造を共有しているところだ。繋がった血管構造を分離することは簡単ではない。医師たちは双子が生まれてからの一年、両親の協力、3Dプリンターによる技術支援を得ながら、手術の準備を進めた。

解剖学的組織まで模倣された3Dモデルによって外科医たちは実際の分離がどのように実行されるかをあらかじめ視覚化することができた。血管手術はともすれば赤子たちに壊滅的な結果を引き起こす可能性がある。しかし、事前の練習によって、外科医たちは本番に自信をもって臨むことができた。

 

 

Photo/Soroka-University Medical Center.



果たして9月上旬、手術は行われた。結果は成功。赤子はともに意識もあり、神経も無傷のままだ。


これまで後頭部が結合していた赤子たちは、術後、初めて兄弟の顔を見た。9月5日は、二人にとって2つめの誕生日となったのだ。

 

 

Photo/Soroka-University Medical Center.

 


イスラエルでは初となる頭部結合双生児の分離手術、その成功を支えたのが3Dプリント技術であったということは実に喜ばしい。数奇なる運命を背負って生まれた二人を救ったのは最新技術がどうか世界各地で同じ状況に苦しむ人々を救ってくれることを、そして今後、この二人が健やかに育ってくれることを、切に願うばかりだ。

 

 

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