「あ、ちょっと待ってね、今お菓子を出力するから」近未来のティータイムを現実にする東大研究チームの最新技術「magashi」
平面状の出力物を焼くと……
前回、3Dフードプリンターについて書いたばかりだが、今回、それに関して新たなニュースが届いた。東京大学が開発したある最新技術についてだ。
その名は「magashi: Fabrication of Shape-Changing Edible Structures by Extrusion-Based Printing and Baking」。
なんでも3Dプリンターで印刷した平面状の食材を、熱を加える(焼く)ことによって立体物へと変形させる技術らしい。
画像:Material Experience Design | Yasuaki Kakehi Laboratory, The University of Tokyo
写真のサンプルは「もなか」だ。プリントしたのはもなかの皮にあたる。これを焼いたものにあんこを入れれば、ちょっとした茶菓子が出来上がるということだ。
通常、3Dフードプリントは積層方式で出力されるものが一般的だ。しかし、今回は平面素材を事後的に変形させるという手法をとることで、通常の積層方式では不可能な立体物の作成が可能になったらしい。
画像:Material Experience Design | Yasuaki Kakehi Laboratory, The University of Tokyo
立体造形の仕組みは、焼成による収縮効果を利用している。オーブンで食品を焼いた場合、食品は基本的に縮む。この収縮をコントロールし、特定のフォルムへの変形を果たしていようだ。
素材として用いられているのは米粉と水あめと水を混合したものとシンプル。3Dフードプリンターは現状で素材が限られており、一般的にペースト状のものではないと扱うことができない。今回は研究チームの試行錯誤によって最適量の米粉ペーストが作成された。
出力にかかる時間は一枚9分ほど、焼成には12分ほどかかるという。見た目的にもちょっと小洒落たお菓子であり、実用性も高そうに思う。研究チームのデモンストレーションでは食べられるフォークやスプーンなども作成された。
画像:Material Experience Design | Yasuaki Kakehi Laboratory, The University of Tokyo
以下は研究チームのステイトメントだ。
「我々は、射出成形による食品印刷と造形後の加熱・変形を利用して、複雑なパターンを持つさまざまな形状の食品を設計することができる手法「magashi」を開発しました。この手法では、平面パターンとして印刷した食品を焼くと、加熱とともに変形し曲面状の構造物になります。素材成分の調整、印刷パターン、および素材の乾燥プロセスの制御により、焼成時に上向きまたは下向きに曲がる設計を可能にしました。本手法を活かして、最中などの立体構造を持つ和菓子デザインへの適用や変形するカトラリーなど、いくつかのアプリケーションを提案しています。」(https://xlab.iii.u-tokyo.ac.jp/projects/magashi/)
前回の記事でもお伝えした通り、3Dフードプリント技術はまだまだ黎明期。しかし、これまでに登場したものと比較して、見た目の良さでは抜群である気がする。
果たして、今後この最新技術「magashi」は一般にも普及するのだろうか。「あ、ちょっと待ってね、今お菓子を出力するから」、午後のティータイムにそんな会話が当たり前のようにかわされる日が来ることが待ち遠しい。
参考記事:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2109/09/news048.html