海藻由来のバイオインクが3Dプリント業界を一新する!? 市販製品も開発中
3Dプリントの原材料をサステナブルに
環境の時代において3Dプリンターはサステナブルな技術として注目を集めている一方、やはりプラスチックへの依存度の高さにおいて、懸念が示されてもいる。
もちろんプラスチックそのものが「悪」ではない。問題なのはプラスチック製品の大量生産大量消費のための石油資源の乱費、そして製品の大量廃棄によるプラゴミ問題であり、そうした「無駄」を省く上では3Dプリンターの普及はむしろプラスチックをめぐる環境政治においてポジティブな効果をもたらすことだろう。
ただ、一方でプラスチック以外の原材料の開発もまた期待されている。プロセスをより持続可能にしていくことは、3Dプリント技術においても重要な関心事項だ。
その中で現在、人気が高まってきているのがバイオインクと呼ばれる生物由来のインクである。これを現在のプラスチック中心の原料の代替品にしていけるのではないかと考える研究者も多く、それは注目に値することだと思う。
今最も注目すべきバイオインクは、米国エネルギー省のパシフィックノースウェスト国立研究所の研究チームによって開発されている。
このバイオインクは藻類に含まれる化合物を雲母色素と組み合わせることで、作られる。非常にエコな素材であり、またオーガニックでもある。環境意識の高いアーティストやデザイナー、メーカーにとっては、是非ともその普及が待たれるところだろう。
Image courtesy of ACS Omega.
なんでも従来の熱可塑性プラスチックとは異なり、これらのバイオインクは熱処理の必要がないという。バイオインクは生分解してしまうため、そこが難点とされてきたが、研究チームはこれを利点とみなした。バイオインクで印刷された出力物は塩化カルシウム溶液で保存が可能であり、そのオブジェクトが不要になれば、廃棄物を残すことなく自然分解することができる。
Image courtesy of ACS Omega.
研究チームによれば、バイオインクは2Dインクとしても使うことができるらしい。フルカラーにも対応しているため、汎用性は高い。顔料にはマイカ顔料が使われている。いずれも鮮やかで、アーティスティックな用途にも応じることができそうだ。
また医療用3Dプリンターの素材としてもバイオインクが注目されている。たとえば植皮や傷を覆う創傷被覆材だ。アオサ由来のバイオインクは、生体構造をサポートし、治癒過程に分子レベルで作用するという説もある。傷が傷跡になることを防いでくれるかもしれないのだ。
Image courtesy of ACS Omega.
今後の数年間でこうしたバイオインクが非常に重要な存在になってくる可能性があると専門家は指摘している。まだ研究段階だが、一般向けの商品開発も始まっており、もしそれらが安価でマーケットに登場した場合、3Dプリント界に激震が走ることは間違いない。
もちろん本体となるプリンターだって変容を迫られる。まだまだ乱世が続きそうだ。