3Dプリンターは本当に環境に優しい? 鍵となるのは「再生可能素材」か
再生可能素材の最前線
3Dプリンターと環境問題については、様々な議論が交わされている。とりわけサステナビリティに関しては、従来の製造方法を超える大きな長期的な可能性があるとされている。
ただ、課題がないわけでもない。3Dプリンターが廃棄物や資源の無駄遣いを減らすことになるのは、それがオンデマンド生産を可能にし、生産量を必要に応じて正確に計画することができるからだ。とはいえ、3Dプリンターを使ってこれまで以上に多くのものが製造、消費するようになったとしたら、これは意味がない。また物がやがて廃棄されるという点を踏まえるなら、使用素材の再生可能性も重要なポイントとなる。
その上で、現在、注目されているのは、再生可能なフィラメントの開発だ。この流れはすでに数年前からある。生分解性材料、つまり自然に帰せば自ずと分解される材料の開発は、ポリ乳酸、通称PLAという形で様々に行われてきた。
パスタ製造の廃棄物でつくられた生分解性フィラメント
たとえば有名なのはコーンスターチから作られたプラスチック代替品だ。ポーランドのスタートアップであるGREENFILL3Dは、ヨーロッパ最大の食品生産企業の一つであるMASPEXと行なった共同プロジェクトで、PLAや小麦ふすま、あるいはその他の生分解性成分から作られたフィラメントを使用して箱入りパスタのディスプレイを製造するというデモンストレーションを行なっている。
PLAがどれくらい環境に優しいかをめぐってはまだ議論の余地があり、その生産過程で大量の化石燃料を必要とする作物から作られているという点などは、慎重に検討されていかねばならない。しかし、GREENFILL3Dはすでに商品化されているパスタの製造過程において生じた廃棄物を積極的に使用している。確かにこの方法ならば、PLAを使用する量を今まで以上に低く抑えることができる。
その仕組みはこんな感じだ。まずMASPEXがGREENFILL3Dに廃棄された小麦ふすま材料を供給する。生の小麦ふすまはふるいにかけられ、乾燥させられる。その後、PLAを含む他の材料と組み合わされ、細いフィラメントワイヤに加工される。最後に、GREENFILL3Dは、Ender 3Dプリンターを使用して、小麦ふすまで構成される再生可能なフィラメントを素材に、小麦ふすまパスタのディスプレイスタンドをはじめとするさまざまなアイテムを出力していく。
環境問題への対策は複雑だ。あれを減らせばこれが増え、これを減らせばあれが増える。結局のところ環境問題を改善することのない堂々巡りがマーケティング都合で様々に展開されているというのが偽らざる現状でもある。しかし、そんな中でも環境への負担を微減させる技術が、少しずつ着実に生まれ始めている。もちろん3Dプリンティングがその中心的な役割を果たすテクノロジーであることは今も変わらない。