たった6分でハンバーガーを3Dプリントするマシンがついに実装|外食産業に混乱をもたらすロボットシェフシステムとは?
3Dフードプリント業界に激震を走らせた「ロボットシェフシステム」
3Dフードプリント技術が大幅に飛躍しようとしている。
これまで3Dフードプリンターの可能性は様々に語られてきた。ボタン一つで好きな食べ物が自動的にプリントされるようになるかもしれない未来をめぐって、半ば夢想的な語りが多くなされてきたのだ。
たとえば、こんな物語だ。レストランに入店したあなたは、テーブルのモニターを操作し、好きな食べ物を選択する。するとテーブルに備え付けられた小型の機械が瞬時に動き出し、瞬く間に注文した料理をプリントしてくれる。もちろん、ステーキからお寿司まで、メニューのバリエーションも完璧だ。
しかし、なかなかどうして、3Dフードプリント技術の進歩は思ったように進んでこなかった。ペースト状にした食材を成型し、ムースのような食事を提供することはできても、複雑な料理を出力するとなると様々な技術的障壁があり、実現できずにいたのだ。
それが変わりつつある。その遥かな夢の鍵を掴んだのは、イスラエルの3Dプリント食品会社SavorEatだ。
なんでも最近SavorEatは「ロボットシェフシステム」なる新しいマシンを発表したという。そして、すでにその「ロボットシェフシステム」はイスラエルのハンバーガーチェーンBBBのいくつかの店舗に導入されているというのだ。
画像引用:SavorEat
料理の脱人間化に混乱する外食産業
まず、この「ロボットシェフシステム」とはどのようなものだろうか。
このマシンは、ジャガイモ、ひよこ豆、えんどう豆などのたんぱく質の混合物が入ったカートリッジを使用して、ヴィーガンにも優しいベジタブルハンバーガー(のハンバーグ部分)をたった6分で出力してくれるというものだ。さらに、お客さんは自身の好みや健康状態に合わせて、脂肪分やたんぱく質のレベルを選択し、ハンバーガーをカスタマイズできるという。
以下は実際のBBBの体験動画。登場する3Dプリントハンバーガーは見た目も味も従来のバーガーと比べてなんら遜色がなさそうだ。
「これは革命的なことだ。決して忘れることができない体験を生み出すだろう」
そう語るのはBBBのCEOであるAhuva Turgemanだ。それもそのはず、この「ロボットシェフシステム」は先に書いた夢をすでに小さく実現しているのだ。つまり、もはやBBBにおいては少なくともハンバーグ部分を作るシェフがいらないということになる。店員はあくまでもハンバーガーのラッピング、商品の受け渡しを行うウェイターとしての役割、そして店内を清潔に保つ清掃員としての役割を持つに過ぎない。
画像引用:SavorEat
この技術的革新は、今まで3Dプリント技術を採用してきた様々な産業を襲った変化以上の変化を食品産業にもたらす可能性があると言われている。「ロボットシェフシステム」がさらに進歩を続け、様々なレストランに普及していった時、今までレストランで人間が行なっていた仕事の大部分はロボットによって取って代わられることになる。たとえばアメリカでは全人口の3分の1以上が外食産業で働いていることを考えると、これは労働市場を根底から覆す大事変とさえなりかねない。実際、すでにSavorEatは米国市場のために植物ベースの豚肉を使った朝食用ソーセージを3Dプリントによって提供する準備を始めているという。
この「ロボットシェフシステム」を取り上げた世界大手3Dプリントメディアである「3DPRINT.COM」の記事には次のように書かれている。
“テクノロジーの準備がほぼ整った今、必要となるのは、人口の大部分が3D印刷された食品を受け入れることと、自動化されデジタル生産された食品が大規模に採用された場合に最終的に置き換わる膨大な数の労働者を補償/再訓練する方法に関する計画です”
日本の場合、外国産業従事者数は464万人、これは全従業者の7%に当たる数だ。いつの時代も大きな技術的革新は労働市場に混乱をもたらす。果たして、今回はどうなるだろうか。