宇宙ゴミの衝突が国際問題に発展する!? スペースデブリを追跡するPrivateerSpaceの3Dプリント人工衛星
宇宙開発を阻むスペースデブリ問題とは?
スペースデブリという言葉をご存知だろうか。通称「宇宙ゴミ」。現在、地球周回軌道に存在する大量のスペースデブリが大きな問題となっている。
それらスペースデブリの正体は、これまで地球より放たれ、宇宙空間での役目を終えた人工衛星やロケットなどだ。それらはただ無限に宇宙空間を彷徨い続けており、年を追うごとにその量を増やしている。
現在、それらは総量4500トンにも昇るとされ、回収や制御が難しい状況にあるそうだ。問題なのは、それらスペースデブリが、活動中の人工衛星や有人宇宙船と衝突を起こしてしまうこと。実際、そうした事故はすでに起こっており、今後の宇宙開発における大変なリスクとなると言われているのだ。
高度2,000km以下の軌道を周回するスペースデブリの分布。(画像:Wikipedia)
この問題をどう解決すべきなのか。
そこに向き合っている企業がある。Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズアニックが設立したPrivateerSpace。彼らが最近開発したある人工衛星がこのスペースデブリの問題を解決に導くかもしれないのだ。
リアルタイムで宇宙ゴミを監視する
PrivateerSpaceが試みているのは、新しく開発されたチタンを用いた3Dプリント衛星シャーシを製造すること、そして、その衛星によってスペースデブリを探索することだ。
PrivateerSpaceの共同創設者であるアレックス・フィールディングはこの問題について次のように語っている。
「20年前でも、宇宙に約2,000個の物があったとき、その半分はゴミでした。それで、私たちはピクニックに行き、宇宙船からゴミを捨て続け、決してそれを拾いません。そして今ではかなり危険になっています。過去数か月で多くのニアミスが見られました。また、過去2か月間に2回の衝突が発生しました」
なんでも現在、宇宙では約21000個のオブジェクトが宇宙でう移籍されていて、そのうちの約3500個が宇宙ゴミであるらしい。これらのゴミは時速18000マイルで移動しており、国際宇宙ステーションに衝突するリスクを抱えている。さらに、宇宙開発企業は今後の5年で90,000を超える衛星を打ち上げることを目指しているため、この問題はさらに悪化する。どうにかして対処しなければならないのだ。
Privateer Spaceが現在発売している製品は、リアルタイムで宇宙を監視するためのまったく異なるアプローチを提供する高度なセンサーと光学系を含む360°センサーパックを備えた衛星だ。
その際、用いられたのが3Dプリント技術だ。3Dプリント技術によって必要に従って素材をフィーチャーするためにデザインを最適化することができたのだ。また、フォールディングによれば、新開発されたチタンが宇宙開発のゲームチェンジャーになるという。
「センサーが非常に繊細であるため、このアプローチを採用せずにそれを行う方法はないと思います。測定は非常に正確であるため、オブジェクト(宇宙ゴミ)の特定のタイプのスピンを説明できますが、シャーシの応力を簡単に説明することはできません。ですから、これが宇宙で回転しているとき、それはほとんど360°カメラのようなんです。6つの平面すべてに光学系とセンサーがあります。課題は、デザインの振動やあらゆる種類のぐらつきを減らして安定性を高め、非常に正確な測定値を取得できるようにすること。プラスチックやアルミニウムから印刷した場合、それを行うことはできません」
打ち上げ予定は2022年2月
スペースデブリのクリーンアップを行う第一歩として、同社が目指すのは宇宙からの宇宙の監視だ。宇宙をさまようスペースデブリを測定し、その動きを予測した上でデータを共有することで、接触事故のリスクを減らすことができる。
もちろん、これだけではスペースデブリとの接触を回避できても、スペースデブリを減らすことはできない。スペースデブリを掴み上げ、軌道を外すためのシステムの開発は、企業が目指す次の段階として掲げている。フィールディングによると、未使用となりデブリと化した衛星を修理し、燃料を補給するなどして、それらにセカンドライフを与えるなどの可能性も想定しているという。
「今、人々はそれができるかどうかを確認するためだけに物を宇宙に置き始めています。そして、今、私たちはレッカー車会社を必要としています。保険会社を必要としています。給油するにはガソリンスタンド会社が必要です。宇宙に適したコンビニエンスストアが必要です。宇宙サービスの業界全体が進化しつつある今日の状況は、私たちが船乗りとして海洋に進出し始めたときに海洋業界がどのように進化したかという歴史に少し似ています」
スペースデブリを放置していれば、いずれある国の放ったデブリ衛星が、他の国の宇宙ステーションに衝突するなどして、国際問題に発展する可能性もある。そうした事態の回避を試みる上で、Privateer Spaceのプロジェクトが一縷の希望となっている。
宇宙から宇宙を監視する人工衛星の最初の打ち上げは2022年2月に予定されているという。宇宙という新しいフィールドが新たな争いの、新たな汚染の場とならないことを願うばかりだ。
(参照)https://3dprint.com/285815/wozniaks-privateer-space-unveils-3d-printed-satellite-for-monitoring-space-debris/