
都市に巨大キノコが出現? 3Dプリントされた「菌類の家」がタリン建築ビエンナーレで最優秀賞を受賞
キノコ繊維が注入された「人間と非人間のための家」
エストニアで開催されたタリン建築ビエンナーレ(TAB2022)に出展されたある3Dプリント建築が注目を集めている。
製作したのは、オーストラリアの建築事務所SimulaaとデザインエンジニアのNatalie Alima。見るに異様なその建築の素材は、地元の木材企業が廃棄した木材と生分解性ポリマーとを組み合わせたもの。まずそれらの素材を3Dプリント造形することで基礎を形成し、そこにキノコ繊維が注入された。
菌類の家「Burlasite」
今回のTAB2022のコンセプトは「食」そして「代謝の建築」。そのテーマを受けて、SimulaaとAlimaが挑んだのは環境適応を備えた持続可能なデザインだ。Similaaの研究チームはこのプロジェクトについて次のように述べている。
「このプロジェクトは生物学的変換と、生成アルゴリズムのパフォーマンスとの間の不安な同盟をキュレートする」
やや難しい物言いだが、つまりは設計された人工的な建物と、それを侵食するキノコ菌との緊張状態に、人間中心主義的な建築とは異なる本当に持続可能な建築のあり方を模索している、ということだろう。
菌糸体を接種した3Dプリントモデル(Burlasite)
この建築の名は「Burlasite」。時間の経過とともに分解されていくことがそのコンセプトになっている。通常、建築とはより頑丈で、より長持ちすることを前提に建てられるものだが、それがこの「Burlasite」では逆転しているのだ。あらかじめどう崩壊していくかという生成変化を含めて想定されているという点は、実に革新的であり、環境の時代に即したサステナブルなアイディアである。
最終的な菌糸コロニーのテクスチャを示すプレビュー(Burlasite)
今回、菌たちはアルゴリズムによって木造の基盤を取り囲むように設計されている。基盤は菌糸体の成長にとっては理想的な生息地となるようにゼロから設計されており、Simulaaチームはこれを2021年の8月に設計した。およそ2ヶ月後に成長に達するという予想がなされていたが、現在は3ヶ月目、季節変化により菌類が分解を始めたところだという。チームはこれをやがては「非人間と人間の両方の家」に変えていくという壮大な計画を立ているそうだ。
なんでもTAB2022は2022年9月7日に一般公開され、この「Burlasite」も2024年までエストニア建築博物館の前に展示されるとのこと。最先端テックと菌類との建築におけるコラボレーション。是非とも肉眼で鑑賞してみたいものだ。
「Burlasite」の展示イメージ