3Dプリントされた人工の森が「光合成」を起こす|ドバイ国際博覧会で話題のスペインパビリオン
コロナ時代の万博に現れた「知性の森」
コロナ禍の影響により1年遅れでの開催となったドバイ国際博覧会が現在開催中(来年3月31日まで)だ。これは中東アフリカでは初となる歴史的な国際的「万博」。加えて、いまや世界の最先端建築が集まるドバイでの開催ということもあって、大変注目度も高い。
各国がそれぞれのパビイリオンで自国の先端技術、先端デザインをアピールする中、とりわけ今回目立っていると評判なのがスペインパビリオンらしい。
スペインパビリオンで展示されているのは3Dプリントされた人工の森。その名も「Forest of Intelligence」だ。
画像引用:Onionlab
バルセロナを拠点とするOnionlabとExternalReferenceによって考案されたこの展示は、生分解性の有機材料を使用して3Dプリントされた樹々と、インタラクティブな床から構成されている。その背景には国連による持続可能な開発のための2030アジェンダがある。
注目すべきは樹々の機能だ。これらの樹々は二酸化炭素をリアルタイムで吸収し、酸素を生成することができる特殊材料からなる。つまり、単に見て美しいだけではなく、その存在がすでにCO2の削減を担っているというわけだ。
画像引用:AdriàGoula/Labóh
このインタラクティブな拡張現実空間においては、様々な仕掛けが用意されており、訪問者は現在の環境問題に対する様々な教育的体験をすることができるという。アートとデザインとテクノロジーを交差させながら地球環境を問い直すという試みは、まさに時代の気分ともマッチし、今回の万博におけるひとつの目玉となっているのだ。
何より注目したいのは、その最前線に3Dプリント技術があるということだろう。その素材は、コーンデキストロース(砂糖)で作られた持続可能なバイオプラスチックポリマー、そしてCO2を含む温室効果ガスや汚染物質の一部を捕捉し、鉱化する作用があるという天然ミネラル化合物PURE,TECHの混合からなる。つまり、人工であるにも関わらず光合成を行っているに等しい優れもので、今後の3Dプリント建築などにおいても大変注目度の高い素材である。
画像引用:Onionlab
肉眼で見る限り、それは単に美しくSF的な技術が駆使された展示空間かもしれない。しかし、目には見えないミクロの領域において、それは地球環境に溶け込み、機能を果たしている。その二重性こそが今後テクノロジーやアートに求められているものだろう。そして、その上でも3Dプリンターが鍵となる。
こうした国際展示にはそれ自体が環境に優しくないという批判もあるが、それを言い出したら野暮というもの。まだコロナは完全収束には至っておらず、なかなか現地に行くことが難しいが状況だが、もし叶うなら来年春までに足を運んでみたい。