
ベルリンのアディダスショップに展示された革新的な3Dプリントオブジェ|製作者アルトゥーロ・テデスキが切り拓く新時代のデザイン
再生プラスチックを使用した重さ300kg以上の3Dプリントオブジェ
日本でも定番の人気スポーツブランド「アディダス」が、ドイツのベルリンに革新的な旗艦店をオープンした。コンセプトは「ベルリンを更新する」。この3階建て、1400㎡の敷地を持つ新たなアディダスストアは、同ブランドの地域への特化、サステナビリティへの意識、スポーツブランドとしての社会参加を体現する、まさに21世紀のスポーツショップとなっている。
なにより話題となっているのは、デザイナーであるアルトゥーロ・テデスキが3Dプリンターで作成した、重さ300kg以上の再生プラスチックを使用したと言う、巨大なインスタレーション《bECOme》だ。
店内に吊り下げられた長さ17メートルのその彫刻によってアルトゥーロが表現したのは、様々な変換プロセスを経て廃棄物を資源へと変えるというエコサイクルのプロセスだ。それは同時に、プスチック廃棄物の再利用を、日常の行動を通して追求していこうというアディダスからのメッセージでもある。
この彫刻自体、PLAフィラメントに変換された再生プラスチックを使用して出力されている。つまり、これはまさにサステナビリティこそが時代を救うという声明であり、環境時代のシンボルマークでもあるのだ。
アルトゥーロ・テデスキの先進的デザイン
制作を行ったアルトゥーロは、3Dプリント技術を使用したアート作品の造形に関して、世界でも最も知られたデザイナーの一人だ。これまでにも、たとえば3Dプリントされた靴の作品である「NU:S シューズ」や「ILABO シューズ」や、ほぼ完全に3Dプリントされた電気自動車「XEV Yoyo」など、 様々な3Dプリント作品を発表している。
アルトゥーロの高度な設計方法、材料や製造技術の研究、様々な分野の境界線を曖昧にする先見的なアプローチは世界的にも高い評価を得ている。3Dプリント技術の機能性、持続可能性、革新性をフルに活かした制作を行う、まさに3Dプリントデザインの世界を牽引するデザイナーなのだ。
今回の作品も実に見事。ビジュアルで圧倒しながらも、来場客に問題提起を行い、かつその3Dプリンターを用いたエコロジカルな制作方法によって問題解決の実践も行なっている。社会のために未来を思索する、こうしたデザインの新領域は近年「スペキュラティブデザイン」とも呼ばれており、アルトゥーロもまた、そう自称しているわけではないかもしれないが、そうした潮流を担っている人物の一人だろう。
現在、アルトゥーロはイタリアはミラノを拠点に活動しており、2019年にはイタリア外務省よりデザインに関するイタリア大使に任命されている。
果たして、今後アルトゥーロはどんな未来をデザインしてくれるのか、そして世界の先端とリンクするアディダスは今後どのような取り組みを社会に対してなしていくのか、いずれもその動向から目が離せない。