WASPが手掛けたDiorの3Dプリントコンセプトストアがドバイにオープン
3Dプリントされた土と砂のコンセプトストア
いまや世界の最先端都市の一つであるドバイ。世界各国のテック企業がドバイを舞台に先端技術を競い合い、ドバイのスマートシティ化を押し進めている。
たとえば数年前に話題となったのは警察ロボットだ。警察の制服を着て街を移動するロボットの存在は当時、人々に「不気味の谷」現象を引き起こしたと言われる。「不気味の谷」とは、人間に近いロボットや人形を見た時に感じる違和感のこと。確かに街中でおまわりさんだと思って声をかけた相手が、振り向いたらロボットだったとしたら、ちょっとビクっとしてしまうかもしれない。なんでもドバイでは2030年までに警察の1/4をロボットへと移行させていく予定だという。
ドバイの警察ロボット
もちろんドバイでは3Dプリントシーンも活況を呈している。
たとえば現在、世界でもっとも注目の3Dプリンター関連技術のイノベーターであるイタリアのWASP(World's Advanced Saving Project)もまた、ドバイを舞台に意欲的な試みを行っている。
ちょうど前回の記事で紹介したドバイ万博のスペインパビリオン、あれもまたWASPの技術的支援を受けて作られたものだ。そのWASPが今回手掛けたのは、高級ブランド「Dior」のコンセプトストア。ドバイのジュメイラビーチに突如出現したこのスタイリッシュな造形のコンセプトストアも、3Dプリンターによって出力されたものだ。
Diorの代名詞「カナージュモチーフ」も完全再現
今回、用いられたのはクレーンWASPと呼ばれるWASPが独自開発した3Dプリントシステム。生の土や砂などの天然素材を組み合わせて、2つの円形モジュールから構成されるストアが出力されることとなった。壁にはDiorの特徴的なパターン、通称カナージュモチーフを再現。ブランドのクリーンなイメージをあらためて強めることに成功した。
画像:Mohamed Somji / Dior / WASP
WASPのディレクターによれば、最も難易度が高かったのは、やはり壁の表面上のカナージュモチーフだったとのこと。しかし、WASP独自のソフトウェア機能が、再現の困難なカナージュモチーフを正確に再現してみせた。写真を見比べてみると、ディオールのハンドバッグに施されたカナージュモチーフが実に巧みに再現されているかが分かる。
画像:Mohamed Somji / Dior / WASP
WASPは建築慣行に革命を起こすということを企業ビジョンの一つとしている。その上で、重要視しているのは、建設現場の近くから材料を調達するということだ。同社のマニュフェストには「地球資源は人口爆発をサポートする上で十分ではない」とあり、やがて訪れるだろう深刻な資源不足を見越して、そうした状況に対応するための技術開発を行なっている。
画像:Mohamed Somji / Dior / WASP
実際、3年目の企業にもかかわらず、WASPはすでに様々なことを実現している。たとえば再生利用可能な天然素材だけを材料とする円形住宅モデルを建設するプロジェクト「TECLA」もその一つだ。あるいは日本の自動車メーカーであるHONDAともコラボし、3Dプリント技術を使用した持続可能なオートバイ製造の提案なども行なっている。
現在、ドバイのあるUAEは国をあげて先端技術の積極導入を目指している。3Dプリント技術はその要の一つだ。今後もドバイの動きには要注目だろう。