水溶性サポート材(PVA)の除去速度が約4倍に! Ultimakerが来春発売予定のPVAリムーバルステーションとは?
簡単だが時間がかかる水溶性サポート材の除去
普段、SK本舗では主に光造形方式の3Dプリンターについての情報を紹介することが多いが、ユーザーの皆様の中にはFDM方式の3Dプリンターも併用されている方もいることだろう。
そこで今回はFDM方式の3Dプリンターを使用されている方に向けた最新の耳寄りニュースをお届けしたい。
さて、造形方式を問わず、3Dプリンターユーザーにとって最も面倒で苦痛を伴う工程のひとつに「サポート材の除去」がある。本来なら出力ボタンを押して造形物が出力されたら、サッとそれを洗い流し、あとは新作の出力品を眺めながらコーヒーを一杯といきたいところだが、そうはさせてくれないのがサポート材の存在なのだ。
このサポート材には種類がある。今回、取り上げるのは水溶性サポート材、通称PVAだ。
PVAはFDM方式で選択できるサポート材の種類であり、これは通常のサポート材に比べて、もともと非常に除去が簡単であることで知られている。通常、サポート材の除去といえば、出力者が自らの手作業で行うのが一般的だ。しかし、このPVAは水溶性のため、水に漬けておくだけでサポート材が自動的に除去される。要は出力したら水に漬け、あとは放置するだけでいい、というわけだ。
しかし、PVAは非常に便利な反面、問題もあった。時間だ。
ユーザーにたっぷりと時間的余裕があるならば、問題はないかもしれない。しかし、例えば3Dプリンターを使用した副業をしていたり、納期の伴うような制作をしているという場合、かかる時間はかかる労力と同等かそれ以上に重要な問題だ。実際、この問題がユーザーにとっても気がかりなようで、手間がそれほど掛からないにも関わらず、いまだPVM一択となっていないのもこのためだろう。
手間を取るか、時間を取るか。
しかしこの二者択一は過去のものとなろうとしている。
鍵となるのは今月(2021年10月)に3DプリンターメーカーのUltimakerが発表した最新機器だ。
除去速度はなんと4倍!? PVAリムーバルステーションとは
Ultimakerが発表したもの、それはPVAリムーバルステーションだ。
その名の通り、これはPVA除去のための機械。メーカーによるとこれによってサポート材の後処理が現在の4倍速で行えるようになるという。
CEOは次のように述べている。
「PVA除去ステーションを含む当社の3D印刷プラットフォームにより、プロトタイピングおよび製品開発プロセスをスピードアップし、最も複雑な設計や形状からでも安全、迅速、かつ効果的なPVA除去を可能にします。これにより、チームはより迅速な承認プロセスを視覚化できるため、組織はよりスムーズに、よりスマートに運営できます」
実際、これはさほど大げさな話でもないだろう。これまでPVAサポートの溶解には複雑さによっては1日以上かかる場合さえあった。そのタイムロスは計り知れない。それがおよそ75%カットできるというのだ。これは例えるならADSLから光回線への転換のようなものだ。
操作も簡単だ、出力したパーツをバスケットに入れ、ステーションに水を入れる。その後、スタートボタンを押すだけで数時間後にはすべてのPVAが完成した出力品から消え去っているという。もちろん、粘着性の残留物を心配する必要もない。必要に応じて速度を自分で調整することもできる。
さらに、容器が透明なため、中を覗くことで水交換の必要性を飽和インジケーターによって確認できるなど、お手入れも簡単らしい。
既に開発は最終段階に入っており、メーカーによれば来年春には販売する予定だという。
おそらくは今後、これに限らずサポート材の除去をめぐっては様々な技術革新が行われていくに違いない。光造形のサポート材除去にもその波が到来することを願うばかりだ。