アフリカではいずれ30億人分の住宅が不足状態に|ケニアに建設予定の3Dプリント住宅街
アフリカ最大の3Dプリント住宅街の建設計画
3Dプリント住宅関連のニュースが相次いでいる。もはや新たな建設ラッシュのように各地で3Dプリント住宅街の建設計画が立てられているのだ。
たとえば、アフリカはケニアにおいても、アフリカ最大の3Dプリント住宅プロジェクトの開始が発表された。手掛けるのはスイスのセメント大手であるホルシム社。およそ52棟からなる集合住宅を建設予定とのことだ。
ケニアでは手頃な価格の住宅不足が続いている。このプロジェクトはそうした住宅不足の解消と同時に、熟練した地元の雇用を創出することが目指されている。もちろん、建てられる住宅はケニアの環境に合った素材が用いられ、またデザインもケニアの風景に溶け込む形でローカライズされたものが考案された。
画像:Holcim
ホルシムは以前にもアフリカはマラウイ共和国において学校を3Dプリントするプロジェクトを行ったことがある。その際、従来の技術と比較しても環境負荷を50%以上削減でき、かつ建設にかかる時間も以前なら作るのに4日間はかかっていた壁をわずか12時間で作ることができるというデータが得られている。
ホルシムのCEOにとって、今回のプロジェクトはほんの始まりに過ぎない。アフリカ大陸では今、急速な都市化が進んでいる。このままいくと、2030年までに約30億人以上が手頃な価格の住宅を必要とするようになると予測されているのだ。現状でもケニアでは推定で200万戸の住宅が不足しており、もはや時間的猶予はない。当然、従来の建設方法では間に合わないだろう。
だからこそ3Dプリント建築の出番なのだ。CEOは「3Dプリント技術を導入することで、この大規模なインフギャップに対処し、全ての人々の生活水準を向上させることができるはずだ」と述べている。
グリーンウォッシングを超えて
さて、現在、開発中の住宅タイプは3つだ。1ベッドルームの42平方メートルの家の価格は2,436,000ケニアシリング(〜USD $ 21,600)から、3ベッドルームの76平方メートルの家の価格は4,484,000 KES(〜USD $ 21,600)。さらにハイクラスのものでも、USD $ 40,000以内となっている。これは通常の住宅建築から比較すれば、かなりの破格だ。
実に素晴らしい取り組みだが、ホルシムにはあまり評判の良くない部分もある。まず、環境の取り組みに対して、ホルシムの本業であるコンクリート製造が二酸化炭素を大量に放出しているというポイントだ。つまり、今回のような3Dプリント住宅建設のプロジェクトは同社によるグリーンウォッシングではないかという意見もあるのだ。
また、同社のシリアの子会社が現地での地域スタッフを保護するためにイスラム国などへ保護費を支払うことで人道の罪に加担している可能性があるというニュースもあった。こうした負のニュースをかき消すために耳障りの良いプロジェクトを行っているのではないかという指摘もある。
もちろん、ある企業の取り組みに対しては、時代の価値観に基づいて適切に監査していく必要はあるだろう。だが、仮にグリーンウォッシング的な要素があるにしても、やらぬ偽善よりやる偽善という言葉もある。
いずれにしても3Dプリント住宅建設の拡充が時代の急務であることは変わらない。素材から地産地消にこだわっている企業も多くある。また今後は気候変動により世界規模で災害が増加していく可能性もある。その点、日本には多災害国家として積み重ねてきた耐震設計のノウハウなどがある。是非ともそうした技術を3Dプリント建築にも落とし込み、世界をリードしていってほしいところだ。