超音波によって壁や皮膚の反対側にマテリアルを造形する未来の3Dプリント技術「ダイレクトサウンド」方式が特許を取得
壁や皮膚の向こう側にオブジェクトを構築
これまで3Dプリント技術は、樹脂を用いた積層溶解や光造形、あるいは金属粉末、さらにはナノ、バイオ、ボリュメトリクスまで、様々な造形方式を発明してきた。
この度、そこに新しい方式が加わった。その名も「ダイレクトサウンド」方式だ。これはカナダのコンコルディア大学の機械・産業・航空宇宙工学科のマイクロナノバイオ統合センターに寄って開発された方法で、集束超音波を用いたこれまでにない新しいプロセスとなっている。
研究チームによると「ダイレクトサウンド方式(DSP)」の説明によると、これは材料(硬化剤または異なる混合物と混合されたモノマー)を集束超音波場に晒すことによって造形する方式だという。
モノリシック球形集束トランスデューサーによって生成される超音波場は、ビルドチャンバーのシェルを通過した後、ビルド材料に到達するという。その際、音圧の変化を利用して、バブル内にマテリアルを生成するということだ。
画像引用:nature communications
この方式の非常に刺激的なところは、リモートプリンティングが可能であるということだろう。つまり、音波を壁や皮膚を通過させて、壁や皮膚の向こう側にオブジェクトを触れずに構築できるのだ。研究チームはこれによって「航空宇宙産業における隠れた部分のエモート修復やオンサイトメンテナンス、および医療アプリケーションにおける体内部分の生体内リモートおよび非侵襲的バイオプリンティング」にこの「ダイレクトサウンド方式(DSP)」を使用できるとしている。
注目すべきは「医療アプリケーションにおける体内部分の生体内リモートおよび非侵襲的バイオプリンティング」だろう。これは身体の外にある3Dプリンターを用いて、身体の内部においてマテリアルを構築できる可能性があるということだ。手術なしで定義された構造を局所的に印刷することができるというのは端的に言ってすごい。具体的には、例えば皮膚に材料となる液体を注入することで、皮膚を切り開かずにフェイスリフトを皮膚下に挿入するということが可能となる。これは全く新しいアプローチだ。
もちろん、今後様々な使用実験を重ねる必要はあるだろうが、すでにチームは特許も取得している。つまり、何らかの形で商業化する準備があるということだ。今後の展開に注目していきたい。