10年に1度、世界最大級の園芸国際展示で最先端3Dプリント技術が大活躍
国際的な園芸の祭典で活躍する3Dプリント技術
オランダで10年に一度だけ開催されるフロリアード・エキスポは、世界でも最も有名な園芸の国際展示会の一つだ。
2022年はそのエキスポイヤーであり、すでに4月14日からオランダの首都アムステルダムから約30キロほどの距離にあるアルメーレトいう町にておよそ40カ国以上の参加国による展示が始まっている。ここから10月9日までの約半年間、アルメーレは世界中の園芸ファンたちにとって非常に熱い地となる。「Growing Green City」をテーマに掲げた今回のフロリアード・エキスポ2022は、未来の温室やサステナブルなイノベーションにあふれたパビリオン、あるいはアートやカルチャーイベントなど花と園芸に関する最新テクノロジーを巻き込んだ多様な展示が行われており、すでに見所満載だと高い評価を集めている。
さて、そんなフロリアード・エキスポ2022の中で、今回、特に注目すべき点が3Dプリント技術の活躍だという。たとえばカタールのパビリオンにおける鳩のような形を3Dプリント建築や、持ち運び可能でサステナブルな3Dプリントワークスペースなど、10年前のエキスポの際には見られなかった新しい可能性が模索されているようだ。
注目はやはりカタールの3Dプリント建築だろう、。今回、「都市地区」エリアでカタールが展開したのは、都市の抱える諸問題のソリューションをテーマとする、美しく実用的な3Dプリント建築のプロトタイプの展示だ。
パビリオン内の約2000平方メートルの区画内に建造された4つの塔にはそれぞれのストーリーがあり、中でも「ピジョンタワー(鳩の塔)」と名付けられた建造物は視覚的に美しいだけではなく、実際にそれが都市に生きる鳩の避難所として機能するなど、生態系農業の実現を促進する独自の構造となっており、すでに多くの鳩たちがその塔を使用しているという。
このピジョンタワーを印刷したのは建築会社のBAM。使用したのはSaint-GobainWeberBeamixと呼ばれる工業用3Dプリンターで、これまでに歩道橋や住宅など様々な建造物を3D印刷してきている。画期的な点は鉄筋やコンクリートを用いていない点だろう。タワーは66のパーツから構成され、63トンの重さがあるが、その建設から排出される二酸化炭素は、通常の建設にかかるよりも60%も少なくなっているようだ。
もちろん、3Dプリント技術を駆使しているのはカタールパビリオンだけではない。たとえばUAEは約825平方メートルのパビリオン自体を3Dプリントで建設した。これは3Dプリントされたものとしては世界最大のファサードを持つものになるらしく、今回のエキスポの目玉の一つとなっている。また、素材が完全にリサイクル可能なものであるという点も注目すべきだ。
また、エキスポのフレボキャンパスではR-lgloと呼ばれる移動可能な3Dプリントポータブルワークスペースも見ることができる。このワークスペースはあらゆる需要、あらゆる場所に適合する多機能なものとなっており、たとえばイベント会場やガーデンハウス、ビーチハウスなどとしての使用が想定されている。洗練されたデザインも目を引くが、何より素晴らしいのはわずか2週間で製造可能で、2日で組み立てるという簡便性だろう。今後どのように実用されていくのか楽しみだ。
さて、エキスポ全体において、エコロジー、そしてサステナビリティへの意識がかなり高く設定されていることが分かる。それが今の時代の空気であり、関心事であるということだろう。そして、3Dプリント技術に関して言えば中東国家の活躍がめざましい。もちろん日本もパビリオンを出展しており、華道などをモチーフにした日本らしいわびさびのある園芸空間が作られているようだ。
いずれにせよ、取り上げたものだけではなく見所満載のエキスポである。以下のリンクから公式サイトに飛べるので是非覗いてみてほしい。
FLORIADE2022 https://floriade.com/en/