
Fordが車内アクセサリーの3Dプリント用CADファイルを公開|ユーザーの美意識がものをいう「センスの時代」が自動車業界に到来
Fordが車内アクセサリーのCADファイルを公開
大手自動車メーカーのFordが、3Dプリントで自作できる車内アクセサリーの提供を開始した。
これはもともとFordの新型モデルであるハイブリッド・ピックアップトラック「Maverick」の発表の際に示唆された話だったのだが、Newsweek誌によると、Fordは「Maverick」のセンターコンソールの後方に備わっているFord Integrated Tether System(FITS)スロットと、シート下の収納ボックスに対応するアクセサリーのCADファイルを先日、実際に公開したようだ。
このCADファイルによって、カーオーナーは自分好みにカスタマイズしたカップホルダーやスマートフォンホルダーなどを3Dプリンターによって自作できるようになったわけだが、実はこのFordの動きに対しては「遅い」という声もある。なんでも「Maverick」が発表されてから現在までの間に、すでに3Dプリンター愛好家たちがFITSに合わせたアクセサリーを自作しており、公式のCADファイルの発表はそうした動きに比較するとだいぶ遅れているということなのだ。
もちろん、公式のデータがあれば、それだけアクセサリーの作成は簡単になるわけで、今後は一層活発に愛好家たちのオリジナルアクセサリー作成が活発化するだろうと見込まれている。これは是非とも他メーカーにも追随して欲しい流れだ。
3Dプリンターによって「センスの時代」が到来する?
Fordのデザインマネージャーのスコット・アンダーソン氏はNewsweekに、今回のCADファイルの公開が同社のユーザーに対する態度のかなり大幅な変化を意味すると語っている。これはつまり、企業がコントロールする既成の製品をより多くの人に買ってもらう段階から、ユーザー自身によるカスタマイズに開かれたオープンソースのスタイルへと、Fordが転換していくことを意味するものだろう。
現状ではCADファイルの公開は車内のアクセサリーなどに限定されてはいるが、今後はより多くのパーツについて、この流れが及んでいくことになるかもしれない。もちろんFordのような大手がその方向に舵を切った場合、自動車業界全体のフェイズが更新されていくことになる。
そうすると、問われてくるのはユーザーのセンスだ。これまではある既成のモデルを選択することこそがユーザーの美意識の発現であったと言えるが、今後はそうではなくなっていく。つまりFordを所有することのみならず、Fordをどのようにカスタムするかが、ユーザーの審美眼を表す指標になっていくというわけだ。
おそらく、これは自動車業界に止まらない。3Dプリンターの普及によって世界はやがて「センスの時代」へと突入していくだろうと筆者は睨んでいる。私たちも今のうちに「既製品」に慣れ親しむあまりに鈍ってしまった創造的感性を磨いておいた方がいいかもしれない。