超粘度のレジンが使用可能に! 「VLM」と呼ばれる光造形3Dプリントの最新方式
高粘性レジンを造形する粘性リソグラフィー方式
3Dプリントにおける光造形方式といえば、液状のレジン(樹脂)に光やレーザーなどの紫外線を照射することで硬化し、造形を行う方法のことだ。これは現在、熱溶解積層方式と並ぶ3Dプリント技術を代表する造形方式として広く知られている。
一般に光造形方式にはSLA方式(ステレオリソグラフィ)とDLP方式(デジタルライトプロセッシング)がある。ごく簡単に説明すると、SLA方式は光やレーザーを点で照射する方式、DLPは光やレーザーを面で照射する方式だ。
実は最近、ここに新しい方式「VLM」が登場した。今回はそのVLM(Viscous Lithography Manufacturing/粘性リソグラフィー)と呼ばれる新しい方式を紹介したい。なんでも、この方式を用いれば、今までの50倍の粘性を持つレジンを処理することができるようになるらしい。
BCN3Dが実現する今までにない高い弾力を持った造形物
VLM方式を開発したのは3DプリントソリューションメーカーのBCN3Dテクノロジーだ。バルセロナを拠点とする同社は、ヘンケルアドヒーシブテクノロジーズとのコラボレーションによって、すでに特許取得済みのVLMプロセスのさらなる開発を継続させている。
VLM方式の特性は何よりその粘性にある。高い粘性を持ったレジンを使用することによって、今までになかった弾力を持った造形物を3Dプリントすることができるようになったのだ。
この技術においては、透明な転写フィルムの両面に高粘度レジンの薄層をラミネートすることで、BCN3Dが「低粘度制約」と呼ぶものが取り除かれている。それによってレジンに新しい改質剤と成分を追加することが可能になった。VLMのこの独自の特性は、今までには光造形で使うことができなかった高い粘性のレジンを使った造形を可能にする。これらの材料は、緩く架橋されたポリマーネットワークを得るために、高い割合のオリゴマーを含むことができる。これは、機械的応力に耐え、工業用グレードの成形エラストマーのように動作する機械的特性を提供できる構造だという。
これまでもゴムライクレジンのような、弾性に富んだ造形物を出力するためのレジンは存在したが、VLMによってその弾力と伸縮性、強度が飛躍的に向上するということだ。果たして、この技術的革新がどのような可能性を切り開くのか、注目していきたい。