Thingiveseの3Dデータをディズニーが不正使用? 問い直されている3Dデータの権利

Thingiveseの3Dデータをディズニーが不正使用? 問い直されている3Dデータの権利

 

インフラストラクチャーとしての3Dデータ配布サイト

 

一般人の間に3Dプリンターが浸透し、ものつくりが活発化していく上で、3Dデータ配布(販売)サイトは欠かすことができないインフラストラクチャーだ。

あらためて説明すると3Dデータ配布(販売)サイトとは、誰かがモデリングした3Dプリント用の3Dデータを無料で配布、あるいはモデラーが設定した価格によって販売を行なっているサイトのことだ。

現在、世界的に有名なのはThingiverseやMyMiniFactoryなどがある。それぞれのサイトに得意分野があり、また無料データに特化しているサイトから有料データを中心としているサイトまで、体裁も様々だ。弊社メディアでも以前、まとめ記事を作成したことがある。


3Dプリンター用無料データ配布サイトおすすめ9選
https://skhonpo.com/blogs/blog/osusume9


こうしたサイトは3Dプリンターに関わる人々の集合的な知識を拡張し、技術を磨き上げていく上で、非常に大きな役割を果たしている。あるいはモデリングに慣れていない3Dプリンター初心者にとっては、まず出力の楽しみを味わう上で、3Dデータ配布サイトはなくてはならない存在だとさえ言える。

しかし一方で、3Dデータ配布サイトにはいくつか問題がある。たとえば知的財産権の問題だ。

実際、今Thingiversにアップロードされたある3Dデータを中心にある事件が発生しているという。発端となったのはAndrew Martinという作家が作成し、Thingiverseにアップしたある3Dデータだった。

 

 

あのディズニーがThingiverseの3Dデータを盗用?


下の作品はAndrew Martinがディズニーランドにあるアトラクション「魅惑のチキルーム」にインスパイアされて制作した作品らしい。「魅惑のチキルーム」とは、オーディオアニマトロニクスで動く鳥や花、ポリネシアやタヒチなどの南洋文化の雰囲気をもつ木彫りの人形たちがエスニックな音楽に合わせて歌うショー形式のアトラクションで、東京ディズニーランドをはじめ世界のディズニーランドで展開されている。

 

 

 

https://www.thingiverse.com/thing:3778083



すると、この作品に対してディズニーがなんらかの訴えを起こしているのか、というと、違う。実は今回訴えているのはこの作品を制作したAndrew Martinで、訴えられているのがディズニーなのだ。

どういうことか。Andrew Martinによる訴えの内容を見て見ると、なんでもディズニーが彼の作った3DファイルをThingiverseからダウンロードし、彼のデザインをコピーして使用しているらしい。その真相については分からないが、これはなんとも厄介な話だ。

まず第三者がディズニーの「魅惑のチキルーム」にインスパイアされた作品を制作する自由についてだが、これは「インスパイア」の範囲内、つまり模倣ではなく影響と呼べる範囲内であれば、問題にあたらない。一方、ディズニーが彼の制作した作品をダウンロードして出力し、それをグッズとして販売した場合。これは確かに問題があるように思う。

現在、Andrew Martinは自身のTikTokアカウントから、ディズニーが販売している作品と自身の作品とを比較しながら「Why did Disney steal my work?」と訴えている。今後これが法廷闘争となった場合の結果は分からないが、同様の事件が今後発生した場合の重要な判例にもなるため、注目度は高い。

 

 

 

 

いずれにしても、その3Dデータを誰がいつ作成し、どんな目的で共有し、それらの3Dデータは第三者にどう利用されるべきなのかということを今後しっかりと確立していく必要はあるだろう。特にデータはコピーが簡単なために繊細さが求められる。


中にはNFTの技術などを応用しつつ(※)、データの移動履歴、帰属、権利などを透明化していくブロックチェーンソリューションの必要性を説いている人もいる。一方でそうした透明化が、リミックスやサンプリング、コラージュなど、既存のデータを用いたクリエイティビティを抑圧してしまうことを懸念する声もある。

 

※NFT市場で次に盛り上がるのは「3Dプリンターアート」か?

https://skhonpo.com/blogs/blog/nftart3d


正解はまだない。ただ、どうなるにしても重要なことは「敬意」を欠かさないことだろう。芸術の歴史は模倣と剽窃の歴史でもあり、真にオリジナルな作品などは一つたり存在しない。その歴史の誠実さを担保するのは、先行者に対する「敬意」でしかありえない。どうか皆さんも「ものつくり」に際しては、こうした「敬意」を欠かすことがないようにくれぐれも気をつけてください。