3Dプリント止血帯を戦場の最前線に届けるボランティアプロジェクト
戦地で傷ついた人を支援する3Dプリント技術
人類の長きに渡る努力にも関わらず、世界平和はいまだ実現したことがない。
ご存知のように、現在も世界の各地では戦争が続いている。もちろんロシアとウクライナに限った話ではない。中東で、アフリカで、アジアで、ほぼ毎日のように誰かが戦争によって命を落としている。
戦地、あるいは紛争地で苦しんでいる人々に3Dプリント技術はどんな援助を行うことができるだろうか。武器の製造、いや、武器は戦火を広げることには役立っても、戦火を鎮めることには役立たない。今まさに砲撃に怯えている市民にとって、外野にいながらできることというのは極めて限られている。
とはいえせめても何かできないだろうか。そういう意志を持って3Dプリンターによって可能な救援方法を模索している人たちもいる。たとえば、[3DPrintingforUkraine]だ。
[3DPrintingforUkraine] https://3dprintingforukraine.com/
戦地においてなんらかの理由で怪我をしてしまった場合に怪我を治療するための医療キットの一部を、3Dプリントすることならできるかもしれない。そう考えた彼らが現在、取り組んでいるのは、市民が自分自身でも迅速に使用することができる軽量で強力な止血帯の3Dデータ作成とその配布だ。
一般に市販されている止血帯は、成形ナイロンバックルとファスナーバンド、およびねじれたときに必要な閉塞力を提供するウィンドラスとして機能する非常に頑丈なプラスチックハンドルなどから構成されている。3Dプリントバージョンの止血帯は、そうした商用ユニットのパーツほど合理化はされていないが、かなりの力に耐えるのに足る強度は担保できているという。すでに一部は戦地に届けられているようで、彼らのサイトを見ると、近日中にこの止血帯の配布を寄付制で大規模に展開する予定であることが示されている。
[3DPrintingforUkraine]は、ロシアによるウクライナ侵攻が開始され、まもなく立ち上げられた国際的なボランティアチームだ。医療専門家、エンジニア、学生、そしてこの危機を支援する意欲のあるすべての人々からなり、3Dプリント止血帯の開発、生産を調整し、それらを最前線に直接配布することを当面の目標としている。
ちなみにサイト内にはそのテスト動画も掲載されており、またウクライナ語による使用ガイダンス動画も掲載されている。フォームから申し込めば、止血帯のSTLファイルと印刷手順がメールによって送られ、それを元に出力した部品を所定の収集場所に発送すると、そこで部品が組み立てられ、戦場に届けられるというシステムだ。
同団体はあくまでもウクライナ支援を目的に設立された団体だが、3Dプリンターによって可能な戦場支援の試みとして、こうした動きが様々な形で立ち上がっていくことは望ましいことだ。確かにそれぞれの戦争、それぞれの紛争については、個々人それぞれに様々な考えや意見があるかもしれない。だが、一人でも多くの方の命が救われてほしいと願う気持ちそのものにはイデオロギーは関係ないだろう。3Dプリンターを通じた支援の輪がますます広がっていくことを願うばかりだ。