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1つの素材で「筋肉」も「骨」も再現。象から着想を得た3Dプリントロボットがすごい
2025年7月24日

1つの素材で「筋肉」も「骨」も再現。象から着想を得た3Dプリントロボットがすごい

スイスのローザンヌ連邦工科大学(EPFL)で、象の身体構造から着想を得たユニークなロボットが開発されました。やわらかくしなやかな鼻と、力強い足をあわせ持ち、花をつまむような繊細な動きからボウリングの玉を蹴るような力強い動作までこなします。驚きなのは、ロボット全体がたった1種類の3Dプリント素材で作られているという点です。 このプロジェクトを率いたのはEPFLのJosie Hughes教授。彼女のチームは、素材を変えるのではなく、素材の中身(内部構造=ラティス)を変えることで剛性をコントロールするという新しい方法を採用。これにより、1つの素材でも、部位ごとに「やわらかい」や「硬い」といった性質を持たせることができるようになりました。 “筋肉”も“関節”も設計で作る ロボットの構造設計には2つの技術が使われています。1つはトポロジー・レギュレーション(TR)という手法で、ラティスの形状を連続的に変えることで、柔らかい部分から硬い部分へと滑らかに剛性を変化させることができます。もう1つはスーパーインポジション・プログラミング(SP)という方法で、ラティス構造を重ねたり回転させたりして、特定の方向に強くしたり、柔軟にしたりできる技術です。 これにより、象の鼻のように自由に曲がる構造や、関節のように一方向に動く構造など、“生き物らしい”動きを人工的に設計できるようになりました。鼻の部分にはねじれ・曲げ・回転の3種類のセクションがあり、たった4つのモーターと少数のテンションコードで動かせるそうです。 EPFL 構造で性能をつくる新しいロボット設計 この象ロボットは3Dプリントされた弾性樹脂とラティス構造でできていて、内部は空洞になっているためとても軽量。水中での動作も可能だそうです。素材は1種類でも、内部のラティスを変えるだけで100万通り以上の「細胞」的構造を作り出せるというから驚きです。 EPFL 研究チームは、象だけでなく他の生き物の運動メカニズムにも注目していて、「将来的にはこの構造設計を応用して、義手や義足、災害救助用のロボット、小型で器用な産業用アームなどにも展開できる」と話しています。センサーや知能システムを内部に組み込むことも可能で、強くて柔らかく、しかも“賢い”ロボットが登場する日も遠くないかもしれません。 このプロジェクトは、「素材そのもの」ではなく「素材の構造」に注目することで、これまでにない柔軟で効率的なロボット設計を実現しています。構造をデザインすることで生き物のような動きや感触を作り出せる――そんな新しい発想が、ロボット工学の未来を大きく変えるかもしれません。 動画はコチラから↓https://www.youtube.com/watch?v=aKARkChpDVE&embeds_referring_euri=https%3A%2F%2F3dprint.com%2F&source_ve_path=Mjg2NjQsMjM4NTE

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19世紀の数学モデルが3Dプリントで蘇る ― イリノイ大学の学生たちが歴史的教材を現代に再現
2025年7月16日

19世紀の数学モデルが3Dプリントで蘇る ― イリノイ大学の学生たちが歴史的教材を現代に再現

米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois Urbana-Champaign)で、学生たちが数学の古典的モデルを3Dプリントで蘇らせるプロジェクトを進めています。この取り組みを主導しているのは、イリノイ・マスマティクス・ラボ(Illinois Mathematics Lab)とシャンペーン・アーバナ・コミュニティ・ファブラボ(CU Community Fab Lab)。学部生たちは、1800年代から大学に残る貴重な数学モデルの一部をFDM方式の3Dプリンタで再現しました。 このモデルコレクションは、石膏や木材、段ボール、金属などで作られた複雑な定理や曲面の可視化模型で、総数400点に及びます。中にはドイツから輸入されたものも含まれ、世界でも最大級の数学模型コレクションのひとつとされています。イリノイ大学数学部の司書サラ・パーク氏は「これらは学科の宝物です。学生や研究者にとって他に代えがたい教育的価値があります」とコメント。注目が集まっています。 学生たちが一つひとつをデジタル化 プロジェクトのきっかけは、大学の数学部があるオルトゲルト・ホール(Altgeld Hall)の改修工事だったそう。この機会に保管されていたオリジナル模型が取り出され、学生たちは歴史的なコレクションを間近で観察し、記録し、3D化するチャンスを得ました。 学生たちは Mathematica やスライサーソフトを活用して3Dデータを作成し、CU Community Fab Labでプラスチックフィラメントを使って最適な設定でプリント。代表的な作品には、円錐曲線の証明に使われる「ダンデラン球(Dandelin sphere)」や「クマー曲面(Kummer surface)」、糸を張って作る直線生成曲面などが含まれます。さらに、各模型に付ける解説も学生が自ら作成し、ドイツ語のオリジナル文献から数式を学び直すという貴重な体験になったそうです。 生徒が制作したクマー曲線 3Dプリントだからできる新しい学び方 新しく作られた数学模型は、地元の中学校や高校を含む地域の教育アウトリーチ活動でも活用される予定とのこと。オリジナルの模型は石膏などで作られているため壊れやすい一方で、プラスチックで再現したものは耐久性が高く、実際に手に取って触りながら学べるのが大きな魅力です。デジタル教材やシミュレーションでは得られない“立体で理解する”体験が、数学をより身近にしてくれるかもしれません。 オリジナルの歴史的模型は引き続き大学の保存サービスが大切に保管を続けており、並行して高解像度写真や解説、3Dモデルのデータを誰でも使える形で公開するデジタルアーカイブの整備も進められています。教育者や研究者は、これらのデータを無償でダウンロードできる予定です。 歴史を未来につなぐ学生たちの挑戦 学生たちの手で蘇った数学模型は、貴重な学術遺産を守りながら、地域の子どもたちや次世代の研究者が気軽に触れられる“生きた教材”として役立っていきます。古くて壊れやすいものを最新の技術で引き継ぐこの試みは、数学を愛するすべての人にとって小さな宝物になるかもしれません。 参照記事https://mathmodels.illinois.edu/cgi-bin/cview?SITEID=4  

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3Dプリントのリアル昆虫で「自然界のモノマネ進化」の限界を探る新研究
2025年7月16日

3Dプリントのリアル昆虫で「自然界のモノマネ進化」の限界を探る新研究

イギリスのノッティンガム大学の研究チームが、実物大で色までそっくりな昆虫を3Dプリントで作り出し、自然界での「擬態」がどこまで通用するのかを調べるユニークな実験を進めています。工学部のルース・グッドリッジ教授やマーク・イーストさんを中心に、生物学の研究者チームと協力して、リアルな人工の“獲物”を大量に作っています。 この3Dプリント昆虫の面白いところは、本物の虫を再現するだけでなく、形や模様を組み合わせて「もしこんな虫がいたら?」という仮想パターンも作れること。自然界では見られない模様を試すことで、進化の仕組みをより詳しく調べられる、とのこと。 野生の鳥たちにどこまで騙せる? 研究チームはイギリス・ケンブリッジ近郊のマディングリー・ウッドという森でフィールド実験を行いました。この森は2000年代から野鳥の研究拠点として使われている場所です。2022年10月から2023年2月までの間、学生たちは週に2〜3回現地に通い、森の中に6つの給餌ステーションを設置しました。お皿のフタの上にパターンの異なる3Dプリント昆虫を置いて、野鳥たちがどの虫を食べるかを観察したそうです。 Credit: Christopher Taylor 実験ではPITタグやRFIDリーダー、トレイルカメラも駆使して、鳥たちの行動をモニタリング。結果として、鳥は「毒を持つ虫のそっくりさん」を意外としっかり見分ける一方で、少しぐらい似ていなくても騙されてしまうケースもありました。特に模様のコントラストや体のシルエットといった特徴が、モノマネ成功のカギになることが分かってきたそうです。 クモ相手には“動き”が重要 研究は鳥だけにとどまりません。ポルトガルではカニグモを使った別の実験も行われました。ところが、静止した3Dプリント虫にはクモが全く反応せず…。どうやらクモは“見た目”よりも“動き”を頼りに獲物を見分けているよう。そこで研究チームはArduinoを使って虫モデルに動きをつけたところ、クモがちゃんと捕食行動を起こすことが分かりました。相手によってモノマネの要点が全く違うというのは、面白い発見ですね。 3Dプリントだからできる自然界の実験 今回の研究は、擬態の進化がなぜ途中で止まるのか、どこまでの精度が必要なのかといった、自然選択の“限界”を探る手がかりになります。これまで頭の中やシミュレーションでしか考えられなかったことが、3Dプリントのおかげでリアルに野外でテストできる時代になってきました。 今後は鳥やクモだけでなく、いろいろな捕食者で試すことで、どんなモノマネが一番効果的か、どの特徴が重要かをもっと詳しく探れるそう。科学と3Dプリントの組み合わせで、自然界の“だまし合い”の秘密が少しずつ解き明かされつつある。今後の展開に注目です。 参照記事https://communities.springernature.com/posts/how-3d-printed-insects-curious-birds-and-clever-spiders-helped-us-map-the-limits-of-mimicry

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失われた顔を取り戻す――75歳のサイクリストが手にした“3Dプリントの新しい顔”
2025年7月9日

失われた顔を取り戻す――75歳のサイクリストが手にした“3Dプリントの新しい顔”

2021年7月、イギリス・サマセット州を自転車で走っていたデイブ・リチャーズさんに、突然の悲劇が襲いました。仲間と一緒にサイクリング中、スマホを操作しながら飲酒運転をしていたドライバーの車に衝突し、彼は車の下敷きに。左目を失い、顔と体の半分に大やけどを負い、肋骨は右側が押しつぶされる大ケガをしました。 それでも彼は何度も手術とリハビリを繰り返し、自転車への情熱を失わずに人生を取り戻そうとしています。そして今年、75歳になった彼にとって大きな希望となったのが“3Dプリントで作られた新しい顔”でした。 英国で初めての“病院内3Dプリント” デイブさんの顔の手術を手がけたのは、イギリス・ブリストルの「Bristol 3D Medical Centre NHS」。今年4月に開設されたばかりの施設で、イギリスではまだ珍しい“病院内に3Dプリンターを常設”している先進的な拠点です。 彼の顔はまず3Dスキャナーでデジタル化され、そのデータをもとにいくつもの義眼周りのプロトタイプが作られました。最終的には「動きを邪魔せず、ぴったりフィットする」形状を決め、医療用グレードの高性能3DプリンターでPEEK樹脂の義眼プロテーゼを出力。印刷には最大250℃まで加熱できる専用のチャンバーを備えたminiFactory製のプリンターが使われたそうです。 「鏡を見るのが怖くなくなった」 デイブさんはBBCの取材にこう語っています。 「人と会うとき、自分の顔がちゃんとしていると思えるだけで、ずっと安心できるんだ。」 事故で奪われた顔の一部を取り戻したことで、外見だけでなく、心の回復も進んでいるといいます。大好きな自転車にまた乗れる日々に向けて、彼の笑顔も取り戻されつつあります。 医療と3Dプリントの可能性は、まだまだ広がる 今回のようなカスタム義眼や顔のプロテーゼだけでなく、ブリストルの3D Medical Centreでは、手術計画用の臓器モデルをプリントしたり、一人ひとりに合わせたインプラントを作ったりと、さまざまな応用がすでに動き出しています。 デイブさんの例は、3Dプリントが単なる試作ツールにとどまらず、“人の暮らしを取り戻す医療の一部”になりつつあることを教えてくれる出来事かもしれません。 参考:BBC News|75-year-old cyclist gets new 3D-printed face(https://www.bbc.com/news/articles/cx2epz2gep1o)

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3Dプリントで唯一無二の「物理トークン」 所有権と真正性をオフラインで守る新技術
2025年7月9日

3Dプリントで唯一無二の「物理トークン」 所有権と真正性をオフラインで守る新技術

3Dプリント技術を活用して、貴重なブレスレットなどの高価値品に「唯一無二の物理トークン」を付与し、所有権や真正性を証明する取り組みが注目されています。これは「S.A.M.(Signatures Anti-Mimicry)」と呼ばれる仕組みで、物理的に複製が困難なサインを3Dプリントで生成し、所有者情報や秘密鍵を内部に埋め込めるのが特徴です。認証は完全オフラインで行われ、サーバーやデータベースを介さないため、外部からの攻撃や不正アクセスのリスクを極力抑えられるといいます。 signaturesam.com 量産と個別性を両立する3Dプリントの強み この技術の要となるのは、3Dプリントだからこそ可能な“量産しながら一つ一つが異なる構造を持つ”という仕組みです。 内部の物理コードは人間の虹彩のように一つとして同じものがなく、表面の模様をコピーしても内部構造が一致しない限り認証は通りません。 既存の刻印やシリアル番号とは異なり、可視部分だけでなく内部の物理特性まで含めて“本物である”ことを示せるのが大きなポイントです。 必要なのは市販のFDMプリンタと専用フィラメントだけ S.A.M.トークンの発行には、特別な産業用機械が必要というわけではありません。ダブルヘッド式のFDMプリンタと、専用の「S.A.M.コーディング素材」というフィラメント、そしてGコードを生成する専用アプリケーションを使えば、必要なトークンを短時間で出力できます。出力後は専用の物理デコーダーで読み取ることで、埋め込まれた情報をオフラインで認証します。 signaturesam.com 個人でのプリントも可能ですが、製造からカスタマイズまでをまとめて依頼することもできるため、技術に詳しくなくても導入できるのが特徴です。秘密鍵や所有情報は外部に共有されない仕組みのため、委託してもセキュリティは保たれます。 データ流出対策としての可能性にも期待 近年、3Dプリント分野では設計データの流出や模倣品の問題が指摘されることも増えています。物理トークンで真正性を保証する仕組みは、ブランド品や高級品だけでなく、工業部品や限定生産品などでも活用が期待されています。量産性と個体識別を両立できる技術として、3Dプリントの新たな役割を示す事例になりそうです。 詳細は公式サイトで S.A.M.の仕組みや技術の詳細は、公式サイト(signaturesam.com)でも公開されています。認証や真正性の課題に興味がある人は一度チェックしてみても良さそうです。

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伝統の「組子」を3Dプリントで再現!樹脂だからできる新しい挑戦
2025年7月9日

伝統の「組子」を3Dプリントで再現!樹脂だからできる新しい挑戦

木の伝統技術をプラスチックで 組子(くみこ)は、日本の伝統的な木工技法のひとつ。小さな木片を切り出して組み合わせ、繊細で美しい幾何学模様をつくる職人技です。本物の組子を作るには、材料の木目を読む力も、精密な手仕事も、何より“気の遠くなるような忍耐”も必要。でも現代人、なかなかそんな時間は取れません。 そこで登場したのが、3Dプリンタで“それっぽい”組子を作ってしまおうという挑戦です。今回取り上げるのは、YouTubeチャンネル[Paper View]さんによるプロジェクト。木ではなく樹脂フィラメントを使い、プリンタで細かいパーツを連続出力して組み合わせ、伝統の組子風デザインを大判パネルに仕立てています。 ポイントは“つなぎ目をどう隠すか” 大きな組子パネルを3Dプリンタで作ると、必ず出てくる問題が「分割のつなぎ目」。プリンタの造形サイズには限界があるので、何枚かのタイルに分けてプリントし、それを後でつなぎ合わせるしかありません。でも、せっかく繊細な幾何学模様がつなぎ目で台無しになるのは避けたいもの。 [Paper View]さんの面白い工夫は、このつなぎ目をカバーするために上に被せる“フタパーツ”をデザインしているところです。これで余計な後処理を極力減らし、きれいな仕上がりを実現しています。これも、木の組子ではなかなかできない3Dプリントならではの方法です。 自分だけの組子パネルが誰でも作れる さらに嬉しいのは、この組子風パネルを誰でも作れるように、[Paper View]さんはパラメトリックな「組子パネルジェネレーター」を公開していること。フレームサイズや模様の種類を自分好みに設定して、1枚ものとしてプリントするもよし、分割して組み立てるもよし。 ちなみに、このジェネレーターはMakerWorldのパラメトリックモデル機能をフル活用しているそうです(時々タイムアウトするほどの凝りっぷり)。OpenSCADをベースにしているので、もし要望が集まれば、今後よりオープンな形でSCADファイルが公開されるかもしれません。 伝統を知っているからこその“遊び心” 本物の組子はもちろん釘を使いませんが、これまでにも木とエポキシで作った組子模様のギターや、なんと釘で作ったメタル組子まで登場しているとか。伝統の技術を知っているからこそ、ちょっとした“皮肉”や“アレンジ”が生まれるのも面白いところです。 3Dプリントで組子を再現する試みは、職人技の本物には及ばないかもしれませんが、手軽に「和」のデザインを楽しむ入り口としては十分魅力的。組子の世界にちょっと触れてみたい人は、ぜひ挑戦してみては?

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昆虫のためのユートピア|モアザンヒューマンと3Dプリントの交差点
2025年6月29日

昆虫のためのユートピア|モアザンヒューマンと3Dプリントの交差点

フランスのアーティスト/デザイナーであるラファエル・エミーヌ(Raphaël Emine)が手がけた新プロジェクト「Les Utopies Entomologiques(昆虫学的ユートピア)」は、環境保全とアート、そして先端の3Dプリント技術を重ね合わせる試みとして注目を浴びています。 不思議なタイトルの作品の正体は、都市空間に置かれるセラミック製の「バグホテル(虫のホテル)」。六角形のパターンや曲線的なフォルムは、ミツバチの巣やシロアリの塚など自然界の建築物に着想を得てデザインされたものだそうです。 Raphaël Emine 「モアザンヒューマン」と「マルチスピーシーズ」 ここ数年、人文学では「モアザンヒューマン(more-than-human)」や「マルチスピーシーズ(multi-species)」という視点が活発に議論されています。 これは、人間中心主義(ヒューマニズム)を一度問い直し、人間以外の存在 ― 動物、昆虫、植物、菌類、さらには非生物的な存在まで ― とどう共生していけるのかを探るものです。 例えば、アナ・チンの『マツタケ』という著作に代表されるような多種共生的な世界観をフィールドワークやデザインに取り入れる動きが広がっています。 この潮流は、単なる生物学やエコロジーではなく、人間の暮らしや都市空間、テクノロジーの使い方そのものにも再考を迫っています。 土とデジタルのあいだに エミーヌの「バグホテル」も、まさにこうした思想に根差した作品です。 イタリアのセラミック3Dプリンタ企業WASPと協働し、WASP 40100 LDM や Delta WASP 2040 Clay といったマシンを使ってリサイクル粘土から複雑な形状を造形。その後、一つ一つを手作業で仕上げ、釉薬をかけずに焼成することであえて多孔質の表面を残しています。 これにより、苔が育ちやすくなり、昆虫が巣を作りやすい環境が整う。作品が都市の公園や庭に設置されると、それは単なる彫刻作品ではなく、昆虫、コケ、バクテリア、微細な植物などが共生する“生きたラボ”になるのです。 Raphaël Emine...

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自然のしくみを家具デザインに活かす。Ta.Tamuが示す3Dプリント家具の最前線
2025年6月29日

自然のしくみを家具デザインに活かす。Ta.Tamuが示す3Dプリント家具の最前線

最近、家具界隈でひそかに話題を呼んでいる椅子があります。それがDassault Systèmes(ダッソー・システムズ)とフランス人デザイナーのパトリック・ジュアンが発表した、世にも美しい3Dプリントチェア「Ta.Tamu」。 こちらの写真がその椅子。一見、繊細でレースのような骨組みが目を引きますが、このデザインには最先端のテクノロジーと自然の知恵が詰まっている、とのことです。 4年間のコラボが生んだ革新的プロジェクト Ta.Tamuは、Dassault Systèmesの3DEXPERIENCEプラットフォームを活用して開発されました。開発は約4年にわたって進められ、AIを活用したバーチャルツイン(仮想双子)技術と、材料効率を追求するデザインプロセスを組み合わせて形にされたそうです。 驚きはその耐荷重。椅子自体の重さはわずか3.9kgなのに、最大で100kgもの重量を支えることができるそう。構造は生物の骨の密度や関節の動きから着想を得たバイオミミクリ(生体模倣)デザインで、内部はラティス(格子)構造になっています。 しかも、Ta.Tamuは折り畳まれた状態で平らに3Dプリントでき、追加の組み立てが不要という点もユニークです。 自然から学ぶ、無駄のないデザイン哲学 パトリック・ジュアンは、この椅子に込めた思いについて「自然は必要な分だけのエネルギーと材料を使う。私たちもそのシンプルな哲学をTa.Tamuの開発に取り入れました」 と語っています。 Dassault Systèmesの新しいコラボレーション技術を活用することで、従来の家具づくりでは考えつかなかった形や構造を、効率的に、しかも廃棄物を減らしながら生み出すことができたのです。 3Dプリント家具に挑み続けるデザイナー ところでパトリック・ジュアンという方、この人は2004年に「Solid Collection」という3Dプリント家具を発表して以来、この分野を切り拓いてきた第一人者です。2019年からはDassault Systèmesとのパートナーシップを開始し、ジェネレーティブデザインや折り畳める構造の開発に取り組んできました。 Dassault Systèmes自体も、航空宇宙や自動車、ライフサイエンスなど幅広い産業で37万社以上が利用するプラットフォームを提供しています。まさに業界のパイオニア。その彼が満をじしてリリースするのが、このTa.Tamuということです。 デザインとテクノロジーの未来 Ta.Tamuのような椅子は、単なるプロダクトではなく、これからのデザインやものづくりの在り方を示す一つのビジョンでもあります。自然に学ぶ材料効率の考え方、AIで形状を最適化するジェネレーティブデザイン、そして3Dプリントでしか形にできない造形美。 これらが組み合わさることで、家具は単なる道具ではなく、構造美を備えたアートのような存在へとも進化していきます。デザインの最前線が、自然のしくみとテクノロジーの融合で、どこまで進化できるのか――これからの展開にも注目したいところです。  Dassault Systèmes 公式サイト  Patrick Jouin 公式サイト  

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ガラス3Dプリントがついに一般ユーザーにも可能に?低温造形に挑むLincoln Laboratoryの新技術
2025年6月29日

ガラス3Dプリントがついに一般ユーザーにも可能に?低温造形に挑むLincoln Laboratoryの新技術

ガラス。 それは私たちが日常で当たり前のように使っている素材の一つです。窓やコップはもちろん、スマホの画面や光ファイバーなど、ガラスはさまざまな形で私たちの生活を支えています。 ガラスが優れているのは、単に透明だからというだけではありません。化学的に安定していて、電気を通さず、熱に強く、さらにリサイクル性も高い。こうした特性は産業分野でも非常に魅力的です。 ところが、これまでガラスは3Dプリントにはあまり向いていないとされてきました。その最大の理由は、成形に必要な温度の高さです。ガラスを溶かすにはおおよそ1,000℃以上もの高温が必要で、しかも温度管理を少しでも誤ると割れやすくなったり、内部に気泡が入ったりと、非常に繊細な工程になります。 そもそもガラスの3Dプリントはどう進化してきた? 実はガラス3Dプリントの研究自体は10年以上前から進められてきました。代表例として有名なのが、MIT(マサチューセッツ工科大学)のG3DP(Glass 3D Printing)プロジェクトです。 2015年頃に発表されたこのプロジェクトでは、高温で溶かしたガラスをチャンバー(加熱室)の中で押し出すことで造形する手法が注目を集めました。ただしこの方式は1,000℃以上の高温に耐える機材や安全対策が不可欠で、一般的な樹脂3Dプリンターのように気軽に使えるものではありませんでした。 他にも、微細なガラスパウダーをレーザーで焼結させる方法(SLS方式)や、紫外線硬化型のガラス樹脂を使う研究も進められていますが、いずれも高価な設備や高度な後処理が必要になる点は課題として残っていました。 低温でガラスをプリント?Lincoln Laboratoryの挑戦 こうした中、アメリカのMIT Lincoln Laboratoryの研究チームが発表した新しい技術が話題を呼んでいます。今回のチームは、「Direct Ink Printing(直接インクプリント)」と呼ばれる手法を使い、なんと常温からわずか250℃の加熱でガラスの3D造形を実現したんです。 従来の高温での溶解とは異なり、この手法ではシリケート溶液と無機ナノ粒子を組み合わせた特製の「インク」を使います。インクは直径約410ミクロンのノズルを通じて、一層ずつ押し出されます。このとき、プラスチック、金属、ガラス、シリコンなど様々な基盤に常温で積層できるのが大きな特徴です。 積層後、シリケート粒子同士が化学反応を起こし、シリカ粒子と結合して3次元構造が形成されます。いずれにせよ、これはすごい技術革新です。 造形後の後処理もポイント Lincoln Laboratoryのプロセスでは、プリント後に後処理(ポストプロセス)が行われます。具体的には、造形物を250℃に加熱したミネラルオイル浴に浸し、構造を硬化させます。その後、残留した鉱物成分を取り除くために有機溶媒(トルエンとイソプロパノールの混合液)で洗浄します。 実はこの一連の流れにより、高解像度で収縮の少ないガラス構造体を比較的低温で作ることができ、熱安定性も確保できるとのこと。ポイントは後処理にあったんです。  MIT Lincoln Laboratory の公式サイトより 気になる今後の可能性 今回の成果はまだ初期段階。しかし、これまで高温がネックだったガラス3Dプリントにとっては大きなブレイクスルーになる可能性が十分にあります。 もちろん、後処理工程が増えるため、造形にかかる時間自体は短縮できません。しかし、装置の安全性やエネルギーコストの面では大きな躍進です。...

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PartCrafterという新しい挑戦|これまでの3Dモデル生成AIとどう違う?
2025年6月29日

PartCrafterという新しい挑戦|これまでの3Dモデル生成AIとどう違う?

最近また一つ、AIが3Dプリンティングの可能性を大きく広げるプロジェクトが登場しました。それが PartCrafter(パートクラフター) というツールです。これは一枚のRGB画像から、異なる形状の複数の3Dメッシュを生成できるというもので、2Dのイラストからでも非常に複雑な3Dモデルを作り出せるのが特徴とのこと。 もしこのプラットフォームがその性能を十分に発揮できれば、わざわざモデリングソフトを使って一から形を作らなくても、写真一枚から必要な部品を3Dプリントできるようになるかもしれません。 3Dモデル作りの「面倒くささ」をAIが解決? 3Dプリンティングにおいて、3Dモデルを作る工程はとても重要で、同時に一番ハードルが高い部分でもあります。3Dモデリングは時間がかかる上に、思い通りの形にするには専門的なソフトの操作スキルが必要です。 一部では、既に完成した3Dデータをオンラインプラットフォームで探してダウンロードする方法も普及していますが、自分の欲しい形が必ず見つかるとは限りませんし、カスタマイズ性にも限界があります。 「どうすれば、もっと効率的にモデリングできるか?」「エラーや失敗を減らして、時間も短縮できないか?」こうした課題に対して、PartCrafterは一つのヒントを示しています。 PartCrafterの仕組みとは? PartCrafterは、中国の北京大学、アメリカのカーネギーメロン大学、そしてByteDance(TikTokで有名ですね)のチームが開発したオープンソースのプラットフォームです。 使い方はとてもシンプルで、ユーザーがまず2D画像をアップロードします。するとツールがその画像を解析して、3Dのパーツに分解していきます。 ここでポイントになるのが、PartCrafterが活用している膨大なデータベースです。複数のソースを組み合わせて、約13万点の3Dオブジェクトを収集しており、そのうち10万点は複数のパーツで構成されています。 ただ集めただけではなく、テクスチャのクオリティやパーツの数、パーツ同士の交差の割合(IoU:Intersection over Union)などの基準でフィルタリングを行い、質の高いデータを残しています。最終的にはおよそ5万点のタグ付きオブジェクトと、30万点もの個別パーツで学習しているそうです。 AIは新しいデータを学習し続けることで進化していくので、PartCrafterも使われれば使われるほど、より正確で複雑な形状を生成できるようになります。つまり、これは進化型ツールであるということです。 実際にどんなことができる? たとえば、複雑な形状の航空機の部品を写真一枚から再現できたらどうでしょう?これまでなら専門のエンジニアが何時間もかけてモデリングしていたものを、PartCrafterが自動で3Dメッシュに分解してくれます。 そのメッシュを3Dプリンタ用のデータに変換すれば、部品の試作などにもすぐ活用できるかもしれません。 もちろん、まだまだ課題もあります。たとえば、本当に既存の3Dモデリングソフトで作ったものと同じレベルの精度や解像度が出せるのか?テクスチャや細かいディテールはどこまで表現できるのか? こういった点は今後ますます改良されていくだろうと予測されていますが、現行の3Dデータ生成ツールにおいて、このPartCrafterは一つ頭が抜け出る可能性を秘めています。 実用レベルまで進化する日はいつ? 3Dプリンティングの分野では、AIを使った自動モデリングの研究は以前から進められてきましたが、PartCrafterの面白いところはオープンソースである点と、画像一枚から複数パーツを生成できる点にあります。 もしこれが実用レベルまで進化すれば、デザイナーやエンジニアだけでなく、3Dプリンティング初心者でももっと気軽にオリジナルパーツを作れるようになるかもしれません。現状、その日がいつになるかは発表されていませんが、近い将来、リリースされることになりそうです。 実際にPartCrafterはGitHubでプロジェクトがすでに公開されていて、誰でもコードや論文を読むことができます。気になる方はぜひチェックしてみてください。 AI×3Dプリンティングの未来は、まだまだ発展途上ですが、だからこそ目が離せません。今後も面白い動きがあれば、またご紹介していきます。  PartCrafter GitHub リポジトリ  PartCrafter...

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伝統のハリスツイードと最先端の3Dプリント技術が出会ったら?
2025年6月15日

伝統のハリスツイードと最先端の3Dプリント技術が出会ったら?

スコットランドの最果て、アウター・ヘブリディーズ諸島で織られる「ハリスツイード」。 日本でもファッション好きの間でおなじみの高級ツイード生地ですが、その裏には100年以上続く職人たちの伝統技術が詰まっています。実はこのハリスツイード、スコットランドの法律でも守られていて、「アウター・ヘブリディーズの職人が手織りしたもの」だけが正式にハリスツイードと名乗れるんです。 20世紀初頭のハリスツイードの機織り機 そんな歴史ある技術の世界にも、ちょっと意外なハイテクの風が吹いてきました。そう、3Dプリント技術が、伝統を守りながら未来へとつなぐために活躍しているんです。 壊れたら半年待ち?伝統機織り機の課題 ハリスツイードの生産には、専用の手織り機(loom)が必要ですが、これがまた精密で複雑。中には100年前の機械を使い続けている職人さんもいます。もし部品の一つが壊れてしまったら、なんと修理に最大半年かかることも。 ある織り職人のジョン・ベニーさんは、部品が壊れたときに、なんと自分の車のパーツ(Ford Kaのフライホイール)を使って修理したというエピソードも。創意工夫でどうにかする精神はまさに職人魂ですが、さすがに限界があります。 そこで立ち上がったのが、Harris Tweed Loom Spares社とスコットランドの国立製造研究機関(NMIS)のコラボチーム。3Dプリンターとデジタル技術を活用して、壊れた部品をその場でプリントして修理できる仕組みを開発しています。 これにより、例えば7つの部品で構成されていた複雑なパーツも、わずか3つの3Dプリント部品に集約。しかもコストは従来の1%以下、最短2時間で修理完了という驚きのスピード感。現場の職人さんたちも「壊れてもすぐ直せるから、仕事に集中できる」と喜んでいるそうです。 画像引用:NMIS 伝統×イノベーション=未来への橋 このプロジェクトの注目ポイントは、単に修理効率を上げるだけではなく、伝統を守るためのテクノロジー活用だということ。ハリスツイードの機織り機は、それぞれの職人によってカスタムされているため、部品も一つひとつ違います。そこで開発チームは、カスタマイズしやすい柔軟な部品設計を目指して、職人と一緒にテストと改良を重ねています。 ハリスツイード協会のマネージャー、ケリー・マクドナルドさんもこう語っています。 「私たちは伝統を大切にしています。でも、次の世代のためにはイノベーションも欠かせません。3Dプリントによって、生地の質を保ちつつ、職人が安心して働ける環境が整いました。」 日本のファンにも届けたい、伝統工芸とテクノロジーの物語 ハリスツイードはその美しさと品質で世界中のファッションブランドに愛されています。ヴィヴィアン・ウエストウッドやディオールといったハイブランドも、この生地を使っています。 でも、こうした伝統の背景に3Dプリンターが活躍していることは、あまり知られていないかもしれません。手工業と3Dプリント技術は対立的に語られることもありますが、実は新しい技術が100年の歴史を持つ織物の世界を支えていることもあるんです。 参照記事https://www.nmis.scot/whats-happening/news/harris-tweed-weaves-next-generation-technology/

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3Dプリントを変えるAI技術|7つの最前線
2025年6月15日

3Dプリントを変えるAI技術|7つの最前線

AI(人工知能)はあらゆる産業に変革をもたらしていますが、3Dプリントの世界も例外ではありません。設計から製造、品質管理、そしてメンテナンスまで、AIが関わることで「速く」「賢く」「ムダなく」ものづくりができるようになってきました。 ここでは、3Dプリント×AIの最前線を7つのトピックに絞ってご紹介します! 1. スケッチから3Dモデルを自動生成! 「紙に描いたアイデア、すぐに立体にできたらいいのに」──そんな願いをAIが叶えます。手描きのスケッチや設計図をAIが読み取り、3Dデータを自動で生成してくれるんです。これにより、CADの専門知識がなくても、アイデアをすぐにカタチにできるようになってきています。まさに、デザインの民主化! 2. モデル設計をAIが最適化してくれる AIは「重さを軽くしたい」「強度を上げたい」などの条件をもとに、最適な形状を自動生成してくれます。これは「ジェネレイティブデザイン」と呼ばれる手法で、人間の想像を超えた効率的な形が次々と提案されています。材料コストや開発時間の削減にもつながる、まさに一石三鳥の技術です。 3. STLファイルのエラーを自動でチェック&修正 3Dプリントの失敗原因で多いのが「STLファイルの不備」。パッと見では分からない細かいミスが、印刷エラーにつながります。そんなとき、AIがファイルを自動でスキャンし、エラーを検出・修正してくれるツールも登場しています。他人からもらったファイルや複雑なモデルでも、安心して使えるようになります。 4. サポート材と内部構造を最適化 AIは「どこにサポート材が必要か」「中をどう埋めたらいいか」も判断してくれます。必要最小限のサポートで後処理がラクになり、材料のムダも削減。さらに、使い方に応じて内部構造を変えることも可能で、強さ・しなやかさ・軽さなどを自由に調整できます。 5. 印刷前に「失敗しそう」なポイントを予測 AIが印刷前に熱変形、素材の収縮、ノズルの衝突などをシミュレーションで事前チェック。問題が起きそうな箇所をあらかじめ教えてくれるので、長時間かかるプリントでも安心です。失敗してから気づくのではなく、始める前にミスを防げるのがAIの強みですね。 6. 印刷中のトラブルもリアルタイムで検出! 造形中に起きがちな「反り」「つまり」「定着失敗」なども、カメラとAIでリアルタイムに監視。問題が発生するとアラートを出したり、プリントを自動で一時停止したりできます。複数台のプリンターを遠隔管理している人にとっては、無駄な失敗を減らせる強力な味方になります。 7. プリンターの健康状態を“予知”する 3Dプリンターも、使い続けるうちに部品が劣化します。ベルトの緩み、ノズルの汚れ、モーターの異常などは、意外と気づきにくいもの。でもAIなら、センサーで集めたデータを分析して、「そろそろメンテナンスが必要かも」と事前に教えてくれるんです。突発的なダウンを防げるので、連続稼働の現場では特にありがたいですね。 AIと3Dプリントの未来は、もう始まっている 3Dプリンターの普及は「誰でも作れる時代」の到来と言われています。そして、その裏側ではAIが静かに、でも確実に革命を起こしているんです。スピードも、精度も、効率も、全部AIでレベルアップしていくことは間違いありません。 3Dプリンターにすでに関わっている方も、これから始めたいという方も、AIを味方にすれば、きっと新しい発見があります! ものつくりの民主化のネクストステージはまもなくです!

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世界初!8歳の少年に3Dプリントのチタン製大腿骨を移植——ベトナム発、挑戦の物語
2025年6月15日

世界初!8歳の少年に3Dプリントのチタン製大腿骨を移植——ベトナム発、挑戦の物語

がんと闘う8歳の少年の脚を守るために、世界で初めて完全3Dプリントのチタン製大腿骨(だいたいこつ)が移植されました。この画期的な手術を行ったのは、ベトナム・ハノイにあるVinmec Times City 国際病院。少年の脚を残すことができただけでなく、子ども向けの骨肉腫(こつにくしゅ)治療に新しい希望の道を切り開いたとして、世界中の医療関係者の注目を集めています。 子どもの未来に合わせて設計された、大腿骨 通常、大腿骨の全置換手術では既製品のインプラントが使われることが多いのですが、特に成長期にある子どもには合わないことが多く、何度も再手術が必要になるケースもあります。 そこで今回使われたのが、完全オーダーメイドの3Dプリント大腿骨。しかもその設計・製造は、すべてベトナム国内で行われたというから驚きです。設計を担当したVinUni(ヴィン大学)の3D医療ラボでは、少年の骨の形や将来的な成長も細かく分析。将来の変化にも対応できるモジュール式の設計で、これまでにない柔軟性を実現しました。 “断脚”を拒んだ母の強い想いが動かした医療チーム この挑戦のきっかけは、少年のお母さんの強い願いでした。がん治療後、医師たちは断脚(脚を切断)を提案しましたが、母は「息子の未来を奪いたくない」と断固として拒否。医療チームはその思いに応え、誰も挑戦したことのない新しい道を選ぶ決断をしました。 手術は2段階で実施。2024年1月に腫瘍を除去し仮の人工骨を入れて治療を進め、2025年5月に本番の手術で3Dプリントされた大腿骨を移植。少年の体調と成長、そして精密な設計の完成を待った上での慎重なステップでした。 東南アジアから、世界へ。進化する地域医療の力 この手術は単なる成功例にとどまりません。「高性能な医療機器は欧米製」という常識に挑んだ、地域主導の医療イノベーションの象徴でもあります。 3Dプリント技術を活用することで、海外メーカーに頼らず、早く・安く・患者にぴったり合った医療機器を作れる。しかも、地元の医師・技術者・研究者が一体となって進めたプロジェクトだからこそ、ここまで実現できたのです。 ベトナムはもちろん、東南アジア全体が、世界水準の「精密医療」を自国で実現する力をつけ始めていることを、この手術ははっきりと示しています。 あきらめなかった親子の想いが新しい医療を生み出す もちろん、3Dプリントや最先端医療の話としても十分に興味深いですが、この物語の核にあるのは「あきらめなかった親子の想い」かもしれません。 「手術が成功する保証はなかった。でも、可能性が少しでもあるなら挑戦したかった」——そんな想いが、医療チームに火をつけ、技術者を動かし、国の医療体制に新たな一歩を踏み出させました。 今、少年は自分の脚で、自分のためだけに設計され、成長に合わせて伸びる、未来を見据えた大腿骨と共に、再び歩いています。 写真:Vinmec Healthcare System

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AI × 3Dプリントで靴を「誰でも作れる」時代へ──Syntilayが切り拓く次世代フットウェアの可能性
2025年6月8日

AI × 3Dプリントで靴を「誰でも作れる」時代へ──Syntilayが切り拓く次世代フットウェアの可能性

ファッション業界の中でも、近年とくに注目されているのが「フットウェア(靴)」における3Dプリンティング技術の進化です。これまでは大量生産が前提だった靴づくりに、カスタマイズやオンデマンド生産、さらにはAIを活用した新しい創造の形が加わりつつあります。 そんな中、フロリダを拠点に活動するスタートアップ「Syntilay(シンティレイ)」が登場しました。同社は、これまで靴づくりにアクセスできなかったクリエイターたちに、その可能性を開放しようとしています。AIと3Dプリント技術を融合し、誰もがオリジナルの靴をデザイン・制作・販売できる新しいプラットフォームを構築しているのです。 靴づくりは「一部の人のもの」ではなくなる これまで、靴を自分で作るというのは、資金や工場、専門知識がなければ不可能に近いものでした。YouTuberやインフルエンサーであっても、大手ブランドと契約を結ばなければ、自分のシューズラインを出すことは難しかったのです。 Syntilayは、そうした制約を取り払いました。同社のプラットフォームでは、デザイナーやブランドがわずか3カ月で靴を企画・制作・販売できる仕組みを提供しています。従来のフットウェア業界では、新しい靴を市場に出すのに約18カ月かかると言われているため、これはまさに“異次元のスピード”です。 AIがデザインを、3Dプリンターが現実化する Syntilayの最大の武器は、AIによるデザイン支援と、Zellerfeld社との提携による3Dプリント製造です。 まず、靴のデザインは手描きから始まるのではなく、AIによるコンセプト生成からスタートします。Vizcomなどのツールを用いて、AIが形状や構造を提案し、それを人間のデザイナーがブラッシュアップしていくというハイブリッドな体制がとられています。 また、シューズの模様やテクスチャー、内部構造にもジェネレーティブAIが活用されており、約70%の工程はAI主導で進められています。これにより、従来の「大量生産・画一的なデザイン」では生まれなかった、まったく新しいシューズのスタイルが次々と登場しています。 そのデータを元に、TPU素材を使ったフル3Dプリントが行われます。Zellerfeldは、あのNikeの初のフル3Dプリントスニーカーも手がけた企業であり、プリント精度と耐久性に定評があります。 Syntilay 「型」がないから、すべてが自由に 従来の靴づくりでは、サイズごとに異なる金型(6号、7号、8号…)を作る必要がありました。これは膨大なコストと時間を要し、大量生産でなければ割に合わない構造でした。 しかしSyntilayのシステムでは、その「型」が不要。3Dプリントによって、注文が入ったサイズ・カラーだけをオンデマンドで出力できるため、在庫を持つ必要もありません。これにより、失敗や在庫ロスのリスクを極限まで削減することが可能となっています。 内部構造も工夫されており、三角構造を持つインナーグリッドは、履き心地と出力効率を両立。これもAIと3Dプリントの融合だからこそ実現したデザインです。 Syntilay 「靴を作る」という行為の民主化 Syntilayが目指しているのは、靴の開発や製造に必要だった資金・知識・人脈といったハードルをなくし、「誰でも靴を作れる」未来を実現することです。販売面でも、完成した靴はSyntilayのオンラインプラットフォームを通じて世界中に販売可能で、クリエイター自身がファンに向けて自由に発信できる仕組みが整っています。 将来的には、人気モデルは従来の大量生産体制でも製造し、3Dプリントはカスタマイズやテスト、初期リリースに特化させるというハイブリッドモデルも視野に入れています。 3Dプリントの未来と、その先にあるSyntilayのビジョン Syntilayが描く未来像は明確です。今後10年で、3Dプリントによるシューズ製造コストは、伝統的な製造方法と同等かそれ以下にまで下がると見ています。生産拠点も分散型に展開できるため、世界中どこでも、必要な地域にだけプリンターを置けばよいという新しいグローバルモデルが生まれるのです。 その中でSyntilayは、AIが設計し、3Dプリンターで実現される次世代フットウェアのリーダーとして、より多くのブランドやクリエイターとコラボレーションしていく方針です。 デジタルとフィジカルの融合が“ものづくり”を変える AIと3Dプリントは、単なる技術トレンドではなく、物理的なプロダクトの制作プロセスそのものを変える鍵です。Ben Weiss(Syntilay CEO)も語るように、AIによって生み出されたデザインは、これまで人間の発想が届かなかった新しい形や構造をもたらします。そして、それを具現化するのが3Dプリントなのです。 「靴を作るのは、もはや一部の企業や職人の特権ではない」。そんな時代が、確実に近づいています。  

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工具不要、3Dプリントだけで組み立て可能!子どもたちのための次世代車いすが誕生
2025年6月8日

工具不要、3Dプリントだけで組み立て可能!子どもたちのための次世代車いすが誕生

もしも、3Dプリンターだけで、しかも工具やネジを一切使わずに、子ども用の車いすを作れるとしたら? そんな“夢のようなプロジェクト”が、アメリカ・ニューオーリンズを拠点とする非営利団体「MakeGood」によって実現されました。 このたびMakeGoodが発表したのは、世界初となる完全3Dプリント製の子ども用車いす。すでにプロトタイプが完成し、将来的には誰でもダウンロードして、家庭用3Dプリンターで出力・組み立てできる形での提供が予定されています。 2歳から8歳までを対象にした“未来のモビリティ” この車いすは、2〜8歳の子どもを対象にデザインされており、特に運動障害を抱える子どもたちに、早期からの「自立した移動手段」を提供することを目的としています。 開発にあたり使用されたのは、弊社SK本舗でも取り扱い中のBambu Lab社のデスクトップ3Dプリンター「A1」。家庭用ながら高精度かつ高速な出力が可能で、すべての部品がこの1台でプリントされています。 最大の特徴は、工具・ネジ・接着剤が一切不要な点。パーツ同士がパズルのように組み合わさる構造で、直感的に組み立てることができます。組み立てのハードルを下げることで、必要とする家族が世界中どこにいてもアクセスできるようになるというわけです。 Credits: Noam Platt, LinkedIn 子どもの成長や使用シーンに合わせた実用性 素材にはPETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール変性)という耐衝撃性に優れたプラスチックが使われており、屋外使用や日常の衝撃にも安心。フレームからホイール、タイヤ、座面、さらには安全ベルトに至るまですべてが3Dプリントで製作されています。 座面にはラティス(格子)構造が採用されており、通気性と柔軟性を兼ね備え、子どもたちの体に優しくフィット。成長に応じて調整可能なフットレストや、呼吸器などの医療機器を収納できるリアコンパートメント(小物入れ)など、実際の使用を想定した細やかな配慮が詰まっています。 さらにホイールは通常の円形ではなくやや長めの楕円形状。これにより小さな子どもでも回しやすくなっており、「初めての車いす」として理想的な操作性を実現しています。 壊れた際にはモジュール式構造のおかげで、壊れた部分だけを再出力すればOK。全体を買い直す必要がなく、メンテナンス性にも優れています。 デザインの裏にあるコラボレーションと挑戦 このプロジェクトの背景には、MakeGoodのほかにも複数の団体が関わっています。 もともとMakeGoodは、「Toddler Mobility Trainer(TMT)」という幼児向けの木製歩行トレーナーを開発していました。このTMTをより多くの人に届けるために、「Tikkun Olam Makers(TOM)」というグローバルな福祉機器デザインの支援団体と連携し、3Dプリントで再設計するプロジェクトが立ち上がったのです。 さらには、産業デザインを専門とする「LINK PBC」とも協業し、木工製品から3Dプリント製品への移行が実現。工具を必要とする従来の製造方法に縛られず、自由度の高いデザインと生産性の両立が可能になりました。 「誰でも作れる」未来を目指して この車いすは、現時点ではプロトタイプの段階ではあるものの、将来的にはデータをオンラインで無料公開し、誰でも好きな色でプリントして使えるようにする計画です。 MakeGoodの創設者Noam Platt氏によると、現在もフィールドテストやユーザーからのフィードバックを通じて、さらなる改良が進められているとのこと。すでにSNSでは製作過程や試作機の写真・動画が多数シェアされており、世界中の注目が集まっています。...

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あの『アキラ』のバイクが現実に!? DAB Motors×VVTによる近未来3Dプリント電動バイクが話題
2025年6月8日

あの『アキラ』のバイクが現実に!? DAB Motors×VVTによる近未来3Dプリント電動バイクが話題

1988年に公開された日本の伝説的アニメ映画『アキラ』。その中でも特に強烈な印象を残しているのが、主人公・金田正太郎が乗る赤いバイクです。日本国内外のバイクファン、デザイン業界、そしてSF映画ファンにとって、あのバイクは『アキラ』が描き出した未来の象徴とも言える存在でした。 そんな“金田バイク”にインスピレーションを受けて誕生した現実の電動バイクが、いま世界中で注目を集めています。手がけたのはフランス発のモーターサイクルメーカー「DAB Motors」と、コロンビア出身の人気アーティストJ Balvin、そしてデザイナーのMattias Gollinが率いる「Vita Veloce Team(VVT)」です。 彼らが共同制作したのは、3Dプリントによるボディワークを搭載した、まさに“近未来的”とも言えるオリジナル電動バイク。その第一号機はJ Balvin自身の誕生日イベントで初公開され、大きな話題となりました。 「アキラ」のバイクを現代のテクノロジーで再現 このバイク最大の特徴は、やはりそのデザインです。真っ赤なボディに大きなタイヤを包み込むようなカウル、流線型のフォルム…。まさにあの“金田バイク”を現代の技術で再構築したかのようなスタイリングとなっています。 画像引用:DAB Motors and Vita Veloce Team しかも、ただ見た目を真似たわけではありません。デザインのプロセスにはAIツールと伝統的な職人技の両方が活用され、スケッチや3Dモデリング、そして3Dプリントによる外装製作など、様々な技術が組み合わされています。 また、ボディには手作業でマット仕上げの深い赤色が塗られ、あえて細かな傷や擦れを残すことで、“使い込まれた未来のマシン”のようなリアリティを演出しています。このディテールが、まるでアニメの中からそのまま飛び出してきたような説得力を生み出しているんです。 音や光で“乗る楽しさ”を演出 視覚的なインパクトだけでなく、乗り心地にもこだわりが詰まっています。ホイールカバーとリムの間には吸音素材が仕込まれており、走行時には低音の振動が体に伝わるような設計に。これは静かな電動バイクにありがちな「味気なさ」を解消し、まるで鼓動のようなエンジンの存在感を演出しています。 さらに、ボディ内部に埋め込まれたLEDライトが、夜間走行時には車体下部に紫がかった青いグローを放つという演出も。これは単なるギミックではなく、未来的なスタイルと視認性の両立を図るものとなっています。正直、とてもカッコいいです。 画像引用:DAB Motors and Vita Veloce Team 限定販売も決定!“買えるアキラバイク”に このバイク、最初はJ...

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スイスの山奥に突如現れた「白い塔」――住民11人の村に3Dプリントのランドマークが誕生!
2025年5月30日

スイスの山奥に突如現れた「白い塔」――住民11人の村に3Dプリントのランドマークが誕生!

人口わずか11人。 スイス・ミュレーニュスという小さな山間の村に、高さ30メートルの“真っ白な塔”が建ちました。 その名もTor Alva(トール・アルヴァ)。見た目はまるで異世界建築、でも中身はれっきとした最先端の3Dコンクリートプリント技術でできています。 村を救う!?未来の建築がポツンとスイスの村に この塔がつくられたのは、村の再生を目的としたプロジェクトの一環。設計と技術開発を担ったのは、スイスの名門ETHチューリッヒ工科大学と、文化団体Origen財団の共同チームです。 「この村に文化と人の流れを取り戻したい」――そんな想いのもと、5年限定の“文化的ランドマーク”として2025年5月にオープン。5月23日からは毎日ガイド付きツアーが開催され、7月からは塔内でのパフォーマンス公演も予定されているとのことです。 32本の柱が支える、まるで生き物のような建築 この塔、ただのモニュメントではありません。32本の彫刻のような白いコンクリート柱が支える4階建ての構造で、上に行くにつれて枝分かれするように細くなり、軽やかさを増すという独特のデザイン。 Credit:ethz この有機的な形状を手がけたのは、建築家ミヒャエル・ハンスマイヤー氏とETH教授のベンヤミン・ディレンブルガー氏。アルゴリズムを駆使して、装飾性と構造性を同時に生成する設計手法を取り入れた、まさに計算された美しさです。 「3Dプリントの柱」で荷重を支えるという革命 実はこの塔、単に「表面が3Dプリントされている」だけではありません。なんと、柱そのものが構造体(荷重支持部材)として機能しているのです。 これができたのは、ETHのロバート・フラット教授が開発した特殊なコンクリートミックスと、“成長する補強”という新しい工法のおかげ。 ロボット1号がコンクリートを積層 ロボット2号が20cmごとにリング状の補強材を挿入 という、2ロボット連携による印刷+補強の同時作業が行われています。 これにより、一般的な鉄筋コンクリートに匹敵する安全性が確保され、スイス国内の建築基準もクリアしたとのこと。 Credit:ethz 製造から輸送まで、大学キャンパスで始まったチャレンジ 塔の柱の製造には5ヶ月を要し、作業はETHチューリッヒのHönggerbergキャンパス内で行われました。 完成した部材はスイス・ザヴォニンで組み立てられ、標高約1,500メートルの山間地ミュレーニュスまで運搬されたというのだから、そのスケールの大きさにも驚かされます。 科学と文化のコラボが生んだ「次の建築」 ETHの学長ジョエル・メソ氏はこのプロジェクトを「科学と産業の協働の象徴」と語り、Origen財団の創設者ジョヴァンニ・ネッツァー氏も「技術を超えて建築業界に刺激を与える存在になった」と絶賛。 スイス政府のギー・パルムラン連邦参事も、「かつてヨーロッパ各地に広まったグラウビュンデン州の菓子職人たちの文化的遺産を思い起こさせる」として、歴史×革新の融合を高く評価しています。 ただの“未来的な塔”を超えて トール・アルヴァは、その奇抜な見た目や技術力だけでなく、 限界集落の復活に貢献 持続可能な観光と文化交流を創出 建築の未来を提示するモデル...

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指がなくてもまたタイピングができる!3Dプリント製の「自分仕様」補助ツールがスゴい
2025年5月30日

指がなくてもまたタイピングができる!3Dプリント製の「自分仕様」補助ツールがスゴい

「キーボードが打ちづらい。でも、もう一度ちゃんと文字を打ちたい。」 そんな思いに応えたのが、デザイナーのロエイ・ワイマンさんによる3Dプリント製のタイピング補助ツール。このツールは、指を2本失ったテック系プロフェッショナル、ヨニさんのために作られたそうです。 指が足りない。でも「打てる」って素晴らしい ヨニさんは仕事柄、タイピングは欠かせないスキル。でも、事故によって2本の指を切断してしまったことで、打ち間違いやスピード低下に苦しんでいました。 そんな彼のために、ワイマンさんは何度も試作を重ねながら“本人に最適な”補助ツールを開発。それは「誰にでも使える汎用品」ではなく、その人の手にフィットする完全カスタムメイドの設計です。 結果として完成したのは、指の代わりになるブレース(固定器具)や延長デバイス。まるで“もう一本の指”が生えたかのように、自然にキーボードを操作できるようになったそうです。 作り方も“自由度高め”。SLSでもFDMでもOK! この補助ツール、もともとはSLS方式(粉末焼結型)3Dプリンターとナイロン素材を想定してデザインされています。が、うれしいことに一般的なFDM方式の3DプリンターとPETGフィラメントでも造形可能。 つまり、「家庭用3Dプリンターでも十分に再現できる」ってこと。高価な設備がなくても、アイデアさえあれば生活を変えるものが作れる。これこそ3Dプリントの魅力ですね。 さらに快適に使うには?シリコンキャストでグリップ力UP さらに一歩進んでグリップ感をアップしたい場合は、シリコンキャスト(型取り・流し込み)を使ってパーツの表面を加工するのがおすすめとのこと。 これによって、長時間のタイピングでも滑りにくく、手の疲れも軽減。もちろん、シリコンキャストの方法もネット上に資料が豊富なので、DIYが初めてでもトライできるようになっています。 作りたい人はどうぞ!無料で設計データも公開中 このプロジェクトの素敵なところは、「設計データを無料で公開している」ところ。Instructables(インストラクタブルズ)というDIYレシピ共有サイトで、誰でもこの補助ツールを自作できるようになっているんです。 「市販の製品には頼れないけど、自分でなんとかしたい」そんな人たちにとって、これはまさにテクノロジーと優しさの融合といえるでしょう。 「自分にしか使えない」が最高の設計かもしれない 今回のタイピング補助ツールは、特定のひとりのために作られたプロダクトです。でも、それがどれだけ多くの人に勇気を与えるかは計り知れません。 指がないからタイピングできない 市販のツールが合わない 自分の手にぴったりくるものが欲しい そう感じていた人にとって、誰かが誰かのために考えたカスタムデザインは、ものすごく大きな希望になるのです。 そして、それを実現しているのが、たった1台の3Dプリンターとアイデアとちょっとの工夫だなんて、すごくワクワクしませんか? 皆さんもぜひ、身近な「不便」や「困ったな」から、新たな3Dプリントアイディアを探してみてください。 【お役立ち記事】2025年に3Dプリンターを買うならこれ!https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/2025osusumeおすすめのスライサーソフト6選|スライサーソフトの基本も解説!https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/2022soft?_pos=12&_sid=8d1033306&_ss=r3Dモデリングの基礎知識と初心者がつまずきやすいポイントhttps://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/moderingkisozen?_pos=7&_sid=b0e55afc3&_ss=r3Dデータを無料でゲットするならここ!|おなじみサイトからこれから伸びそうなサイトまで紹介https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dmuryodata2022 【FDM方式VS光造形方式】 違いや選び方|初心者にも分かりやすく解説 https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dbegin   【通販はこちらから】 3Dプリンターの通販ページ...

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高校生がやってのけた!市販ドローンの1/5の価格で作れるVTOL型ドローンがスゴい
2025年5月30日

高校生がやってのけた!市販ドローンの1/5の価格で作れるVTOL型ドローンがスゴい

「え、これ本当に高校生の作品なの?」3Dプリンターで本体パーツを自作し、プログラムからはんだ付けまで全部ひとりでこなした、超ハイレベルなVTOL(垂直離着陸)型ドローンが話題になっています。 開発したのは、アメリカの高校生、クーパー・テイラーさん(17歳)。驚くべきはその価格。なんと、市販の同クラスのドローンが数千ドル(数十万円)するのに対して、クーパーさんのモデルはその約1/5のコストで実現されているとのこと! 3Dプリント × 自作ドローンの完成度が高すぎる! クーパーさんはこれまでに6つのプロトタイプを制作。 3Dプリントでパーツを出力し、回路設計・はんだ付け、ソフトウェアのプログラミングまで全部自分でこなしているというから驚きです。 今回のVTOLドローンは、チルトローター構造(飛行中に不要なモーターを休ませる効率的な設計)を採用し、飛行時のエネルギー効率を大幅に改善。しかもフルモジュール式で、翼や尾翼を自由に交換・拡張できるという、まさに「使えるDIYドローン」に仕上がっています。 どこがスゴい? 価格差に驚き、性能にも驚き! 市販のVTOLドローンって、性能がいい分どうしても価格が跳ね上がりがち。普通に数千ドル=日本円で数十万円はザラです。 でも、クーパーさんのモデルは、その価格の1/5。3Dプリンターを活用した自作ならではの低コスト&高カスタマイズ性を実現していて、「この値段でここまで飛ぶの?」と業界人もびっくりの完成度です。 飛行時間もガチ、スペックもガチ 最新のプロトタイプは、 重さ:約2.7kg(約6ポンド) 翼長:約120cm(約4フィート) 飛行時間(実測):約15分 理論上の最大飛行時間:105分(時速72kmで巡航) というスペック。もちろん実験ベースではあるものの、軽量・長時間・高機動の三拍子が揃った性能にはプロのロボティクス研究者も太鼓判を押すレベル。 賞もガンガン取ってます このプロジェクトにより、クーパーさんはすでに複数の賞を受賞。 アメリカ国防総省主催のジュニア科学シンポジウム:奨学金8,000ドル(約120万円) Regeneron国際科学技術フェア:アメリカ海軍より奨学金15,000ドル(約225万円) 高校生ながら、すでに次世代ドローン開発の期待株として評価されています。 「誰もが手にできるドローン」を目指して クーパーさんがこのドローンで目指しているのは、「研究者や災害救助の現場、あるいは日常の課題解決に使えるようなツールを、もっと身近な価格で提供したい」という想い。 価格の壁を取り払い、実用性もカスタマイズ性も両立したDIYドローンの可能性を切り拓くプロジェクトは、いままさに第7世代のプロトタイプへと進化中。さらに小型で、分解すればバックパックに入るサイズを目指しているとのことです。 ちなみにクーパーさん、今年の夏はMIT(マサチューセッツ工科大学)の自律システム研究所で新たなドローンプロジェクトに取り組むそうです。いや、どこまで行くの、この高校生…。 「市販の1/5で作れます」は未来の当たり前かも? DIYや3Dプリントというと「趣味レベル」というイメージが根強いですが、クーパーさんのプロジェクトを見ると、アイデアと工夫次第で“市販製品の壁”は超えられることを証明しています。...

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Gaussian Splatsとは何か – メッシュに代わる新しい3Dスキャン手法
2025年5月18日

Gaussian Splatsとは何か – メッシュに代わる新しい3Dスキャン手法

Gaussian Splats(ガウシアン・スプラッツ)は、最新の3Dスキャン・再構成手法の一つ。 従来のフォトグラメトリ(写真測量法)が多数の写真からポリゴンメッシュ+テクスチャを生成するのに対し、Gaussian Splatsではシーンを「点」とその周囲に広がるガウス分布のボリューム(スプラット)の集合で表現します。各点(スプラット)は位置座標だけでなくサイズ(スケール)や形状(異方性の広がり)、色、透明度、向き(法線方向)といったパラメータを持ちます。 簡単に言えば、シーン中の点群一つ一つをぼんやりと広がる半透明の「しみ」のような粒で表し、それらを重ね合わせることで写真のようにリアルな3Dシーンを再現する手法です。この方法は光の反射や透明感、境界のぼやけなど従来のメッシュでは表現しづらい視覚効果も自然に表現できる点が特徴です。 ここではそのGaussian Splatsについて、できる限り詳しく解説してみたいと思います。 点群データと色の3D表現方式 Gaussian Splatsのデータは、一種のカラー付き点群ですが通常の点群とは異なります。 通常の点群スキャンでは各点は位置と色情報のみを持ちます。対してGaussian Splatsでは、各点に半径(スプラットの広がり)や形状(楕円体の軸方向への伸縮)、色と透明度による密度などが割り当てられた「ガウシアン関数」(3次元ガウス分布)として扱われます。 例えばある点が赤い球状のガウス分布として空間に存在すると、その点は中心が濃く周辺ほど薄い赤い半透明の球体として表現され、複数のスプラットが重なり合うことで物体表面の色や濃淡が滑らかに再現されます。これにより滑らかな境界や半透明の素材、光沢の反射なども、点群の集合として自然に表現できるのです。 Gaussian Splatsはニューラルレンダリング(NeRF)の発展系として登場した技術で、数枚~数十枚の写真から点群と各点のガウシアンパラメータを機械学習で最適化して得ます。生成されたデータは座標と色の大量の点集合ですが、各点が持つガウス分布のおかげで、単なる点の集まり以上に連続的でフォトリアルな3D表現となります。実際、スマートフォン向けアプリ(PolycamやLuma、Scaniverseなど)がこの技術を搭載し始めており、写真から直接Gaussian Splats形式の3Dモデルを生成・閲覧できるようになっています。 フォトグラメトリとの違い – 「見た目」を重視したデータ フォトグラメトリは重なり合わない三角形のメッシュを作り、その表面に写真に由来するテクスチャを貼り付けて3Dモデルを構築します。これは形状の正確さに優れますが、一方で透明な素材や光の反射、微妙な陰影の表現は苦手でした。 Gaussian Splatsはこの弱点を補うアプローチと言えます。メッシュではなく無数の半透明点でシーンを表すため、視点による光の透過や反射の変化をそのままデータに含めることができます。結果として、鏡面やガラスのようにメッシュではモデル化が難しい要素もリアルに再現できるのです。 もう一つの大きな違いはデータ量とレンダリング速度です。Gaussian Splatsのデータは基本的に点群+パラメータの集合で、メッシュに比べ軽量かつリアルタイム描画に適しています。例えば大規模なシーンでも、モバイル端末上で高速に表示可能であることが報告されています。 一方で、Gaussian Splatsはあくまで「見た目重視」の表現であり、得られた点群データから直接きれいなポリゴンモデルを起こすことは簡単ではありません。そこで次に、この点群+ガウス分布データをどのように3Dプリント可能な形に変換したかを見てみましょう。 Gaussian Splatsデータをポリゴンモデルに変換する方法 3Dプリント系YouTuberとして知られるWyatt Roy氏は、Gaussian...

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