パリ五輪に合わせて3Dプリントされた巨大なエッフェル塔|素材は1.3トンの海洋廃棄物
チェコで開催されていたオリンピックフェスティバルにエッフェル塔が出現
大きな盛り上がりを見せたパリ2024年夏季オリンピックも閉幕し、そろそろ夏の終わりの気配が漂い始めた昨今。数々のアスリートたちの活躍に目を奪われた一方で、実はパリ五輪の傍らにおいて、チェコでは国の公式オリンピックフェスティバルが開催されていた。
そのフェスティバルの中で今回のパリ五輪に合わせて展示されたある作品に注目したい。
それはチェコのオリンピックチームによって制作された巨大なエッフェル塔のレプリカだ。フランスへのオマージュとして制作されたこのエッフェル塔、実はその素材は全て海洋廃棄物からなり、それらの素材を用いて3Dプリンターで制作したものだという。
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制作を手掛けたのはチェコの会社3DDenとチェコオリンピックチーム。元々は2024年4月に今回のフェスティバル会場がある北ボヘミアのモスト湖の近くに建てられたものだ。素材を海洋廃棄物としているのも、オリンピック事業の持続可能性へのコミットメントの一環だ。
環境への配慮をクリエイティブに実践する
そもそも「環境への配慮」はパリ五輪2024における大きなコンセプトだった。フランス当局は、提供される食料をより多く植物ベースのものとする、一時的なアリーナをリサイクル材料によって製造する、公共交通機関や新しい自転車レーンに焦点を当てるなど、可能な限りオリンピック事業をグリーンにするために取り組んでいた。
このエッフェル塔もまたそのアイデアを引き継いだものだ。使用された海洋廃棄物の量は約1.3トン。これは世界が直面している最大の環境問題の1つである海洋プラスチック汚染に対する取り組みとなっている。
そのうち主な廃棄物はペットボトルで、その総数は約80万本。これらをリサイクルするために、3DDenは、プラスチック廃棄物を3Dプリンターフィラメントに使用するために、OPETと呼ばれる特別な技術を作成。これによりフィラメントになる前に廃棄物を顆粒に変化させ、その後、3Dプリントを行うにあたり、それらの素材を用いるための特別なプリンターを使用した。
最終的に3Dプリントされたのはおよそ1500個のピース。それらをモスト湖の会場近くで組み立てることで、この高さおよそ12.5メートルのエッフェル塔は完成した。
オリンピックは世界的なスポーツの祭典というだけにとどまらず、国際社会が今後向かうべき方向を指し示す、一つの指標ともなる祭典である。環境問題は現在の世界が抱えている最大の問題の一つであることは間違いない。「環境への配慮」をよりクリエイティブな形で実現していく上で、3Dプリント技術が大いに役立てられている。