
世代間で分断された香港社会を3Dプリントアートがつなぐ|アート集団LAABの制作した「Harbour Cup」とは
テーブルサッカーの伝統的な概念を再定義する
香港に登場したインタラクティブな3Dプリントアートが話題になっている。
Harbour Cup(以下、ハーバーカップ)と題されたこのインスタレーションは、単なる芸術作品としてのみならず、スポーツ、科学、社会的交流など様々な分野の融合として制作されたものだ。
画像引用/https://www.laab.pro/en/work/harbour-cup/
香港セントラルハーバーフロントの遊歩道沿いのサイエンス・イン・アート展のために、革新的なアーティスト集団LAABによって作成されたこのハーバーカップは、なんでも「テーブルサッカーの伝統的な概念を再定義する」というコンセプトとなっているらしい。
このハーバーカップ、基本的な構造は日本でもお馴染みのテーブルフットボールゲームによく似ているが、相違点も多い。まずハーバーカップには、あらかじめ決められたチームというものが示されておらず、また唯一のルールのようなものも存在していない。プレイヤーはまずどのようにプレイするかを相手と交渉して決定する必要がある。競争的に楽しむこともできるし、協力的に楽しむこともできる。つまり、重要なのはコミュニケーションということだ。
またハーバーカップの大きな特徴としてテクノロジーが使用されているという点もある。アートワークには蹴られたボールの軌道を照らす太陽光発電のLEDライトが組み込まれている。これらは防水3Dプリントユニット内のセンサーによって作動するため、野外展示の中で雨に濡れても問題はないとのことだ。
デザインも美しい。その光沢のあるメタリックボディは、周囲の建物からのカラフルな光を反射することで、香港の都市風景にハーバーカップを融合させている。
背景にあるのは香港社会が抱えるある問題
ハーバーカップが、あらゆる年齢、あらゆる体型の人でも遊ぶことができるように設計されているように、この作品の目標は社会的コミュニケーションの促進にあるようだ。
制作チームはこのハーバーカップが「誰もが携帯電話を置いて、物理的および社会的な遊びに従事することを奨励」するものであると説明しており、ヴァーチャル空間の中に置き忘れてきてしまったコミュニティの感覚と共有された経験をハーバーカップによって取り戻すことが目指されているという。
実際、物理的に対面して行われるコミュニケーションから得られる感情的な喜びはソーシャルメディアでは得られない。これは現代において、うつ病の増加などとも関連づけて考察されている、重大な問題だ。
香港では、多くの若者がまだ共有された経験を求める意欲がある一方で、主にデジタル活動の過剰使用のために、これらの相互作用から得る満足度とつながりが時間の経過とともに減少していることが研究によって示されている。
ハーバーカップの背景にはそうした社会的課題がある。世代を超えた新しいフィジカルな交流を提案するLAABの試みに注目したい。