3Dプリンターは、さまざまな業界で活躍し、製造の効率化や新しいモノづくりの可能性を広げています。しかし、その一方で「失敗しやすい」という課題もあります。
たとえば「反り(ワーピング)」や「層ズレ」「ゴースティング」など、印刷品質を左右するトラブルは少なくありません。
そんな3Dプリントのトラブルの原因のひとつに、フィラメントの湿気があります。
「えっ? フィラメントって湿気を吸うの?」と思うかもしれませんが、実は3Dプリント用のフィラメントは、空気中の水分を吸収しやすい性質を持っています。
特にPA(ナイロン)、TPU、PVA、PMMA、BVOHといった吸湿性の高い素材はもちろん、PLAやPETG、ABSなどの一般的なフィラメントでも湿気の影響を受けます。
今回は、フィラメントの湿気が引き起こすトラブルと、その乾燥方法について詳しく解説します!
この記事でわかること
フィラメントが湿気を吸うと起きるトラブルと見分け方
オーブン/フードドライヤー/専用乾燥機の使い方と使い分け
PLA〜ナイロンまで素材別の乾燥温度・時間の目安(早見表)
乾燥後にリバウンドさせない保管方法
まず結論:印刷中に「プチプチ音・気泡・白い煙・表面のザラつき」が出たら湿気のサインです。素材に合った温度で乾燥し、乾燥剤入りで密閉保管するのが基本です。
なぜフィラメントの乾燥が必要なのか?
フィラメントに湿気が含まれていると、次のようなトラブルが発生します。
・ノズルから「プチプチ」と音がする(水分が熱せられ気泡ができる)
・ 表面がザラザラする(水蒸気の影響で層がうまく定着しない)
・ フィラメントが途中で折れる・割れる(水分を含んで劣化)
・ エクストルージョン不良(詰まり・吐出不安定)
・ レイヤーの接着が悪く、造形がもろくなる
実際に湿気がどれだけ造形に影響するかを検証した記事(フィラメントは本当に湿気に弱いのか|ある実験)もあわせてご覧ください。
特に「プリント中に白い煙が出る」「気泡が発生している」という症状が出たら、かなり湿気を吸っているサインです。
フィラメントの乾燥方法
① 家庭用オーブンは使わない(メーカーが明確に非推奨)
家庭用オーブンと電子レンジは、メーカーが使わないよう明記しています。Bambu Lab 公式Wiki「Dry Filament」には次の記載があります(2026年8月2日取得)。
Do not use a microwave oven or a kitchen oven to dry filaments. Microwave heating is uneven and temperature cannot be controlled; kitchen ovens have very uneven heat distribution, and areas near the heating tubes/plates can become extremely hot and easily damage the spool or filament.
(電子レンジと家庭用オーブンでフィラメントを乾燥させないでください。電子レンジは加熱が不均一で温度を制御できません。家庭用オーブンは熱の分布が非常に不均一で、ヒーター管やプレートの近くは極端に高温になり、スプールやフィラメントを傷めやすいためです。)
温度を管理できる装置を使ってください。確実な順に、①フィラメント専用の乾燥機 → ②対応機種ならプリンターのヒートベッド乾燥 → ③強制対流式(熱風循環)オーブンです。家庭用オーブンの節で紹介していた温度・時間は、この後の②③でそのまま使えます。
参考:素材別の温度と時間(専用乾燥機・ヒートベッド・強制対流式オーブンで使う値)
注意点
-
温度が高すぎるとフィラメントが変形・溶けるので、設定温度を必ず守ってください。
-
家庭用オーブンは温度が安定せず、庫内の場所で温度差が大きいため、上の公式記載のとおり使わないでください。
② フードドライヤーを活用する
食品を乾燥させるためのフードドライヤー(食品脱水機)も、フィラメントの乾燥に使えます。
オーブンよりも温度管理がしやすく、長時間一定の温度で乾燥できるのがメリットです。
推奨温度と時間
-
40〜50℃で6〜8時間
食品乾燥機があるなら、是非フィラメント乾燥にも使ってみてください!
③ フィラメント専用ドライヤーを使う(最適な方法)
3Dプリンター向けに作られたフィラメント専用の乾燥機を使えば、より確実に水分を飛ばせます。
これらの装置は、適切な温度・湿度管理が可能で、フィラメントを最適な状態に保てるのが強みです。
おすすめのフィラメント乾燥機
Polymaker PolyDryer(温度・時間を設定できる乾燥・保管システム。印刷しながら防湿できるタイプもあります)
手軽に始めるなら密閉ドライボックス+乾燥剤(シリカゲル)の組み合わせも有効です
乾燥機・ドライボックス・乾燥剤はフィラメントの便利グッズ一覧からご覧いただけます(在庫・価格は各商品ページをご確認ください)。
特にナイロン系のフィラメントは、専用乾燥機の使用が推奨されます!
素材別 乾燥温度・時間の目安
フィラメントは素材ごとにガラス転移点(軟化する温度)が異なるため、適切な乾燥温度も変わります。下表は Bambu Lab・Polymaker 等の各メーカー公式ガイドで概ね共通する目安です。
| 素材 | 吸湿性 | 乾燥温度 | 乾燥時間 |
|---|---|---|---|
| PLA | 中 | 45〜55℃ | 6〜8時間 |
| PETG | 中〜高 | 55〜65℃ | 6〜8時間 |
| ABS / ASA | 中 | 70〜80℃ | 4〜8時間 |
| TPU(軟質) | 高 | 50〜60℃ | 4〜6時間 |
| PA(ナイロン) | 非常に高 | 75〜90℃ | 8〜12時間 |
| PVA / BVOH(水溶性サポート材) | 非常に高 | 45℃前後 | 4〜6時間 |
| PC(ポリカーボネート) | 高 | 80〜90℃ | 6〜8時間 |
| PA-CF(カーボン強化) | 非常に高 | 75〜90℃ | 8〜12時間 |
※温度はガラス転移点を考慮した目安です。設定温度が高すぎるとフィラメントが変形・固着するため、必ず各メーカー公式の乾燥ガイドやスプール表記を優先してください。特にPLAは軟化温度が低いため、Bambu Lab公式でもAMSでの乾燥はPLA 45〜55℃とされ、55℃を超えるとスプールが変形しやすいため注意します(出典:Bambu Lab公式乾燥ガイド/2026-07-12確認)。ナイロン(PA)系は吸湿性が極めて高く、開封後わずか数十分でも吸湿するため、乾燥後は乾燥剤入りの密閉容器で保管してください。
フィラメントを湿気から守る保管方法
せっかく乾燥させても、保管方法が悪いとまた湿気を吸ってしまいます。
湿気を防ぐために、次の方法を実践しましょう!
乾燥剤と一緒に密閉保管
・ジップロック + シリカゲル(最も手軽な方法)
・ 密閉できるストレージボックス + 乾燥剤
・ 真空保存バッグで空気を抜く
フィラメント用ストレージケースを活用する
専用のフィラメント保管ボックスを使えば、湿気対策をしつつ、スムーズにプリンターへ給紙できます!
おすすめのストレージボックス
Polymaker PolyBox(湿度計付きで湿度を管理できる保管ボックス)
密閉ストレージボックス+乾燥剤や真空保存バッグでもしっかり防湿できます
「保管+給紙」を同時に行えるので、プリントミスも減らせる!
直射日光・高温を避ける
乾燥剤で湿気を防いでも、置き場所の「温度」は見落としがちです。PLAは熱に弱く(ガラス転移点は約60℃)、直射日光の当たる窓辺や夏場の車内では、印刷前のフィラメントやスプールが柔らかく変形してしまうことがあります。
風通しのよい冷暗所(目安15〜25℃)で保管する
直射日光・暖房・機器の排熱など熱源から離す
ほこり・異物の付着を防ぐ
開封後のフィラメント表面にほこりや繊維くずが付くと、そのままノズル内部へ運ばれて詰まりの原因になります。湿気対策とあわせて、表面を清潔に保つことも造形の安定につながります。
使わないときは密閉容器や専用袋に戻す
長期間セットしたままのスプールにはカバーをかける
よくある質問(FAQ)
PLAも乾燥は必要ですか?
PLAの吸湿性は中程度ですが、湿気を吸うと表面のザラつきや糸引き、積層不良の原因になります。開封から時間が経ったものや印刷面が荒れる場合は、45〜55℃で6〜8時間の乾燥が有効です(55℃を超えるとスプールが変形しやすいため注意)。
一度湿気を吸ったフィラメントは元に戻りますか?
多くの場合、素材ごとの推奨温度で乾燥させれば印刷品質は回復します。ただし高湿度で長期間放置し劣化(加水分解)が進んだものは、乾燥しても脆さが残ることがあります。
乾燥させながら印刷できますか?
「保管+給紙」を兼ねるストレージボックスや一部の乾燥機は、スプールをセットしたまま給紙できます。ナイロンなど吸湿の速い素材では、印刷中も防湿できるこの方式が有効です。
乾燥剤(シリカゲル)は再利用できますか?
多くのシリカゲルは加熱で水分を飛ばせば繰り返し使えます(再生方法は製品表示に従ってください)。吸湿で色が変わるタイプは交換・再生の目安になります。
フィラメントを乾燥させすぎると問題がありますか?
推奨温度を超える加熱や長時間の過加熱は、変色・脆化・スプール変形を招くことがあります。素材ごとの推奨温度・時間を守ることが大切です。
電子レンジでフィラメントを乾燥できますか?
電子レンジは加熱ムラが大きく、スプールの金属パーツや局所過熱のリスクがあるため使えません。家庭用オーブンも同じ理由でメーカーが明確に非推奨としています。フィラメント専用乾燥機、対応機種のヒートベッド乾燥、フードドライヤー、強制対流式オーブンを使ってください。
フィラメント乾燥で快適な3Dプリントを!
フィラメントが湿気を吸うと、プリント品質が低下するだけでなく、失敗率もアップします。
湿気を防ぐために、正しい乾燥方法と適切な保管を意識しましょう!
重要なことは、
プリント時に気泡・煙・異音があれば、フィラメントの湿気を疑う!
オーブン・フードドライヤー・専用乾燥機を使って適切に乾燥!
乾燥後は湿気対策をしっかり行い、長期保管も安心に!
この3点!
フィラメントを正しく管理することで、3Dプリントの成功率を大幅に向上させることができます。
皆さんもこの記事を参考に快適な3Dプリントライフを楽しんでください!
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