3Dプリントで自作するパノラマフィルムカメラ

デジタルカメラの普及によって、写真は誰でも気軽に楽しめるものになりました。しかし、その内部構造は非常に複雑です。その一方、アナログのフィルムカメラは実は驚くほどシンプルにできています。
極端な話をすれば、光を遮断できる箱、フィルムを固定する仕組み、シャッター、この3つがあれば写真は撮れます。
その「シンプルさ」に着目し、3Dプリンターで本格的なフィルムカメラを作り上げた人物がいます。Denis Aminev氏によってYouTubeに公開されている動画では、その設計から組み立て、実際の撮影までを見ることができます。
35mmフィルムを“横長”に使うという発想
彼が紹介するモデルは「Infidex 176 V」。35mmフィルムを使ったパノラマカメラです。
通常、35mmフィルムは1ロールで36枚撮影できます。しかしこのカメラでは、1コマあたりの露光面積を横方向に広げることで、ワイドなパノラマ写真を撮影します。
その結果、撮影枚数は36枚から19枚へ減少しますが、得られる写真は映画のワイドスクリーンのような横長構図に。
フィルムを“どう使うか”を設計で変えることができる、これは自作カメラならではの面白さです。

Denis Aminev氏
3Dプリントでもここまで作れる
Infidex 176 Vは、単なる実験機ではありません。機能面では市販のフィルムカメラに匹敵するレベルに仕上がっているようです。
搭載されている主な機能は、
・露出カウンター
・フィルム用プレッシャープレート
・巻き上げ機構
・交換式レンズ
・ファインダー
・三脚マウント
と、実用に必要な要素をしっかり押さえています。
もちろん組み立ては簡単ではありません。動画でも、細かな部品の調整やフィルム経路の精密な合わせ込みが必要なことが分かります。しかしその分、完成したときの達成感は大きいものがあります。
3Dプリンターによって、“ほぼフル機能のアナログカメラ”を自作できるという事実は、DIY好きにとってかなり魅力的です。
ピンホールから始まった進化
Denis氏のカメラ開発は、いきなり本格機から始まったわけではないそうです。最初はピンホールカメラでした。
そこから、一眼レフカメラを分解し、内部構造を理解、3Dプリントで部品を再現し、それをベースにパノラマ化するという段階的な進化を経ています。
つまりこのカメラは、「いきなり思いついたアイデア」ではなく、試行錯誤の積み重ねの結果。
特に印象的なのは、既存の一眼レフを分解し、パーツを3Dプリントで再構築しようとした点です。構造を理解したうえで再設計する。このプロセス自体も3Dプリントのものつくりの醍醐味でしょう。

実際に撮影した写真
3Dプリントが可能にする“カメラの再発明”
それにしても、市販カメラではなかなか手に入らないフォーマットや仕様を、自分で設計して作れるというのは、まさに3Dプリントの強みです。
今回のパノラマカメラも、市販では選択肢が少ないフォーマットになっていて、映画的な横長比率を実現しています。
さらに、部品が壊れた場合でも、データがあれば再プリント可能です。これは古いアナログ機材にとって大きなメリットです。
動画では、さらにシンプルな“ミニマム構成カメラ”にも触れられています。実はフィルム写真を撮るために、すべての高機能は必須ではありません。
しかし、あえて多機能に作ることもできる。その選択肢を持てるのが、自作の面白さでしょう。皆さんも是非お試しあれ!
