
自然のしくみを家具デザインに活かす。Ta.Tamuが示す3Dプリント家具の最前線
最近、家具界隈でひそかに話題を呼んでいる椅子があります。それがDassault Systèmes(ダッソー・システムズ)とフランス人デザイナーのパトリック・ジュアンが発表した、世にも美しい3Dプリントチェア「Ta.Tamu」。

こちらの写真がその椅子。一見、繊細でレースのような骨組みが目を引きますが、このデザインには最先端のテクノロジーと自然の知恵が詰まっている、とのことです。
4年間のコラボが生んだ革新的プロジェクト
Ta.Tamuは、Dassault Systèmesの3DEXPERIENCEプラットフォームを活用して開発されました。
開発は約4年にわたって進められ、AIを活用したバーチャルツイン(仮想双子)技術と、材料効率を追求するデザインプロセスを組み合わせて形にされたそうです。
驚きはその耐荷重。椅子自体の重さはわずか3.9kgなのに、最大で100kgもの重量を支えることができるそう。
構造は生物の骨の密度や関節の動きから着想を得たバイオミミクリ(生体模倣)デザインで、内部はラティス(格子)構造になっています。
しかも、Ta.Tamuは折り畳まれた状態で平らに3Dプリントでき、追加の組み立てが不要という点もユニークです。
自然から学ぶ、無駄のないデザイン哲学
パトリック・ジュアンは、この椅子に込めた思いについて
「自然は必要な分だけのエネルギーと材料を使う。私たちもそのシンプルな哲学をTa.Tamuの開発に取り入れました」
と語っています。
Dassault Systèmesの新しいコラボレーション技術を活用することで、
従来の家具づくりでは考えつかなかった形や構造を、効率的に、しかも廃棄物を減らしながら生み出すことができたのです。
3Dプリント家具に挑み続けるデザイナー
ところでパトリック・ジュアンという方、この人は2004年に「Solid Collection」という3Dプリント家具を発表して以来、この分野を切り拓いてきた第一人者です。
2019年からはDassault Systèmesとのパートナーシップを開始し、
ジェネレーティブデザインや折り畳める構造の開発に取り組んできました。
Dassault Systèmes自体も、航空宇宙や自動車、ライフサイエンスなど幅広い産業で37万社以上が利用するプラットフォームを提供しています。まさに業界のパイオニア。その彼が満をじしてリリースするのが、このTa.Tamuということです。
デザインとテクノロジーの未来
Ta.Tamuのような椅子は、単なるプロダクトではなく、これからのデザインやものづくりの在り方を示す一つのビジョンでもあります。自然に学ぶ材料効率の考え方、AIで形状を最適化するジェネレーティブデザイン、そして3Dプリントでしか形にできない造形美。
これらが組み合わさることで、家具は単なる道具ではなく、構造美を備えたアートのような存在へとも進化していきます。
デザインの最前線が、自然のしくみとテクノロジーの融合で、どこまで進化できるのか――これからの展開にも注目したいところです。